弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
被申請人は申請人P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6をその組合員としての
権利を有する組合員として仮りに取り扱え。
申請人P7の申請を却下する。
訴訟費用中、申請人P7と被申請人との間に生じたものは同申請人の負担とし、その
余の申請人と被申請人との間に生じたものは被申請人の負担とする。
       事   実
第一 当事者双方の求めた裁判
 申請人等訴訟代理人は「被申請人は申請人P7をその組合員として取り扱え。被申
請人が昭和四三年三月六日申請人P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6に対し
てなした各昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日までの権利停止処分
の効力を停止する。」との判決を求め、被申請人訴訟代理人は「本件申請を棄却す
る。」との判決を求めた。
第二 申請の理由
一 当事者について
 被申請人組合(以下、組合という)は日本アルミニウム工業株式会社(以下会社
という)の従業員約八〇〇名をもつて組織される労働組合であり、中央機構に最高
議決機関として中央大会を次級議決機関として中央委員会を、また執行機関として
中央執行委員会を各有し、さらに大阪本社工場、東京事務所、伊勢原工場(神奈
川)の事業所単位に支部を設置して、各支部に議決機関として支部代議員会、執行
機関として支部執行委員会を有する。そして、中央大会の承認を得て、大阪支部執
行委員九名が中央執行委員となつて中央執行委員会を構成し、そして同支部代議員
一八名、東京支部長、伊勢原支部長および同支部選出委員二名が中央委員となつて
前記中央執行委員とともに中央委員会を構成する。
 申請人P7は、昭和三二年三月に会社に入社し、同年五月に組合に加入して、昭和
三八年一一月以降会社総務部勤労課に所属し、組合では昭和四二年一〇月一八日大
阪支部代議員に、翌一一月六日中央委員に各選任された。その余の申請人らは、い
ずれも会社の従業員であるとともに組合の組合員であり、そのうち申請人P1、同P
2、同P4、同P5は同P7と同様に組合の中央委員兼大阪支部代議員に選任されてい
た。
二 組合が申請人P7を非組合員としたこと
(一) 経緯
 組合は、昭和四二年一二月二六日申請人P7に対し、組合規約第二条第八号、第一
一条第三号を適用して、組合員資格を喪失させた。
 すなわち、組合規約には、第二条において組合員の範囲につき「本組合は日本ア
ルミニウム工業株式会社在籍社員の内次の者を除いた全従業員を以つて組織する。
1会社役員、相談役、顧問 2各課長以上及び技師、参事、部長付、3経理部各課
主任以上、4総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者 5総務部守衛全
員 6秘書 7嘱託及び試用期間中の者 8其の他会社組合双方協議の上承諾した
者」、第一一条において組合員資格の喪失につき「組合員は次の各号のいずれかに
該当するときはその資格を喪失する。3第二条により非組合員になつたとき」、と
定められているところ、組合では昭和四二年一二月一三日大阪支部代議員会(総代
議員一八名中一三名出席)において、会社が申請人P7に会社の労政上の機密に属す
る職務を取り扱わせるため同申請人を非組合員にしてもらいたい旨、会社から申し
出があつたとして、その可否につき審議したうえ、同申請人を非組合員とする旨の
決議(以下本件組合脱退決議という)を七対六で可決した。そして、組合は右決議
に基づき前記各規約を適用して、昭和四二年一二月二六日申請人P7を組合から脱退
させて非組合員とした。
(以下本件組合脱退処分という)
 しかしながら、右決議には次に述べるように手続上および実体上の瑕疵があるの
で無効ないしは取消されるべきであり、したがつて同申請人は組合員として取扱わ
れるべきである。
(二) 手続上の瑕疵
1 大阪支部代議員会には議決権限がないこと
 組合規約第二九条第二号には「重要な会社提案に対する方針及び具体策」は中央
委員会の議決又は承認を要する旨の規定がある。ところで、申請人P7は大阪支部代
議員であるとともに中央大会の承認により任ぜられた中央委員でもあるから、同申
請人を非組合員とする案件は組合規約第二九条第二号にいう「重要な会社提案」に
該当し中央委員会の承認がなければ決せられないというべきところ、本件において
は本来右案件につき議決権限のない大阪支部代議員会で議決されたのであるから前
記組合規約に違反し手続上の瑕疵があつて無効である。なお、被申請人はこの点に
つき、大阪支部代議員会と中央委員会の各構成員が概略一致することを理由とし
て、前者が後者を兼ねていた旨主張するが、両者が混同されたことはなく峻別した
運用がなされていた。
2 招集手続が違法なこと
 仮りに大阪支部代議員会に申請人P7を非組合員とするにつき議決権限があつたと
しても、その招集手続には次のような違法があるので、前記決議は無効である。す
なわち、前記大阪支部代議員会は招集されるに際し、議題として「(1)旅費規定
労使小委員会に係る件(2)年末年始特出割増に関する会社回答に係る件(3)年
間休日協定に係る件(4)その他の件」が明示されていただけで、申請人P7を非組
合員とする案件はあらかじめ代議員に知らされていなかつた。
 そもそも大阪支部代議員兼中央委員である申請人P7を非組合員とするかどうか
は、本人の意向やその職務上の義務や責任が組合の組合員としての誠意や責任と直
接に抵触する監督的地位にあるかどうかもしくはそのような地位に就任することが
予定されているかどうか等を十分検討し審議を尽さなければならない重要問題であ
り、しかもこの案件はそれ以前の代議員会でも問題とされていた重要事項であり、
また人事とはいつてもプライバシーに関することではなく組合における公的なもの
である。したがつて、これを代議員会において審議するには、その招集に際してあ
らかじめ議題として提示され代議員にこれを周知せしめる必要があると解されると
ころ、本案件についてはかかる手続がとられることなく代議員一八名中一三名出席
の代議員会において突如議題として提出されたうえ、これを賛成七名反対六名とい
う一票差で強行採決したことは適正な手続に違反し右決議は無効である。なお、人
事問題は案件として事前に通知しない旨の慣例などはない。
3 なお、昭和四三年六月八日にあらためて中央委員会で本案件につき議決が為さ
れたとの点は知らない。
(三) 実体上の無効
 組合が申請人P7を非組合員とするのに根拠とした、組合規約第二条第八号の趣旨
は、その規定からも明らかなごとく同条第一号から第七号には直截に該当しないが
右各号のカテゴリーに近接するものであつて、その者の職務上の義務や責任が組合
員としての誠意や責任と直接抵触する監督的地位にある労働者、その他使用者の利
益を代表するものであることが必要であつて、組合は右に該当しない者に対してま
で、だれかれとなく非組合員とすることはできないのである。
 ところで、申請人P7の会社における職務は勤労課に所属し(1)労働統計調査
(2)勤怠並びに労働時間の管理及び統計調査(3)有給休暇並びにその他諸休暇
の管理(4)家情調査並びに家庭との連絡業務(5)旅費の査定(6)通勤定期券
購入等の手続である。なお、被申請人の主張する、経営協議会に出す会社側の書類
作成等の機密事項は、勤労課長以上の職制が担当する職務である。そして、かかる
申請人の職務上の義務や責任は、組合員としての誠意や責任に直接に抵触しない
し、ましてや使用者の利益を代表するものでないことは明白である。従つて、組合
においては、本人から表明されていた極力反対の意思に反してまで同申請人を非組
合員としなければならない合理的理由は全くない。
 そもそも組合においてかかる処置をとるに至つた真の理由は、申請人P7は他の申
請人らとともに現組合執行部の批判勢力の中核であつて、昭和四一年一〇月および
昭和四二年一〇月の組合役員選挙(三役および執行委員)には現組合執行部の対立
候補として出馬したりしたため、現組合執行部は申請人らの批判勢力を目のかたき
とし、さらにはその拡大に脅威を感ずるのあまり、卑劣にも申請人らを何とかして
組合から排除しようと考え、その方策としてまず申請人P7に対して非組合員とする
ことを思いつき、会社に圧力をかけて会社から組合に対して、同申請人を非組合員
にしたい旨の申し入れをなさしめ、ついでこれに基づいて大阪支部代議員会で同申
請人を非組合員とする決議を強行採決したのである。そしてかかる意図は、同申請
人を非組合員にしたときに生ずるつぎのような不合理や異常さからも窺われる。す
なわち、同申請人の会社における職務は非組合員となつた前後で何ら変りがなく、
非組合員になつた後も依然として労政の主担者の職務からほど遠い定期券の購入、
旅費伝票のチエツク等の業務に従事していたにすぎず、また従前の社内慣行では非
組合員になるべき人事、労政の主担者には相応の年令や業務歴を有し、かつ大学卒
業者が任ぜられていたのに、今回は年令二六歳で高校しか卒業していない同申請人
をもつてこれに擬すべきことになつたのである。
 以上の次第で申請人P7を非組合員とする本件組合脱退処分は実体的にも組合規約
に違反し無効といわなければならない。
三 組合が申請人P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6を組合員の権利停止処
分にしたこと
(一) 本件権利停止処分の前提となる第一次処分とその無効性
1 第一次処分
 昭和四三年二月二日午前七時半頃から約一時間にわたり申請人P1、同P2、同P
3、同P4、同P5、同P6らは、外七名の組合員とともに前記決議の不当性を訴え
て、「組合員の皆様に訴える」旨のビラ(別紙第一)約六〇〇枚を組合員に配付し
た(以下第一次ビラ配布行為という)。
 しかるに組合は、同月一二日前記ビラ配布行為が組合規約第一五条「組合員は組
合機関の行動、決定についても報告を求め、意見を述べ其の他組合活動の自由を持
つが組合員として組合機関を通じて行なう」同第一七条「組合員は組合規約を遵守
し機関の決定にしたがい組合の健全なる発展のために努力する義務を負う」に違反
するものとして同第六一条「本組合員にして次の各号のいずれかに該当する行為の
あつたときは処罰を受ける」同条第一号「組合規約に違反し機関の決定に従わず統
制を乱したるとき」同第二号「組合の運営、事業の発展を妨げたとき」を適用し
て、右申請人らに対し、次のとおりの処分(以下第一次処分という)を行なつた。
(1)同P1。権利停止五日間(2)同P5、同P4。賦課金二日分戒告(3)同P
2、同P6、同P3。賦課金一日分戒告
2 第一次処分の無効性
 申請人P1等が第一次ビラ配布行為を為すに至つた理由は、申請人P2が、昭和四
三年一月三〇日右決議について組合より報告を求め、また再度審議してほしい旨の
緊急動議を書記局に提出したのにも拘らず、いずれもこれを拒否されて、組合執行
部の善処が全く期待できなかつたうえ、申請人P7を非組合員としたことは極めて異
常かつ不可解な事態であつて現組合執行部が申請人P7を組合から排除するための策
謀であることが歴然としていたので、右申請人等はやむなくこの事実を一般組合員
に訴えざるを得なかつたのである。そしてビラの内容も極めて穏健なものであつ
て、右行為は組合活動の自由、言論の自由の範囲に属するものである。組合がこれ
を組合規約第一五条同一七条に違反するとしたのは不当であつて、組合のした第一
次処分は無効といわなければならない。
(二) 本件権利停止処分とその無効性
1 本件権利停止処分
 申請人P1、同P2、同P3、同P5、同P4、同P6は、第一次処分が無効であると
考えたので規約に従つて再審査の申立を行なつたが、昭和四三年二月二〇日右申立
は却下された。
 そこで申請人P2、同P3、同P4、同P5、同P6は第一次処分が組合活動の自由、
言論の自由という組合員の基本的権利を不当に侵害した本質的に無効なものであつ
たので、いずれも賦課金の支払をせずかつ始末書を提出しなかつたし、また、申請
人P7も独自の立場で昭和四三年三月五日「公平な組合員の皆様に御協力をお願いし
ます」ビラ(別紙第二)を組合員に配布し、申請人P1等もそれに立会つたところ
(なお申請人P1の場合は五日間の権利停止期間を経過していた)、組合は三月六日
標記申請人らに対して、これらの事実を懲戒事由として、次のとおりの処分(以
下、本件権利停止処分という)をした。(1)同P1、同P2、同P4、同P5。組合
の役職を解任し、昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日まで組合員の
権利停止 (2)同P6、同P3。前記同一期間の権利停止
2 本件権利停止処分の無効性
 しかしながら、本件権利停止処分は次の理由により無効といわなければならな
い。
 すなわち本件権利停止処分も申請人P7の場合と同様に、組合の現執行部がその批
判勢力の中核たる申請人らを組合から排除すべく意図して為された不当なものであ
るうえ、前述のように第一次ビラ配布行為は組合員の正当な権利の行使であつてこ
れに対する第一次処分こそが無効なのであるから、申請人P2らに対してこの無効な
処分に従わないことにつき再び組合の統制をみだしたと判定として、再度加重的に
長期にわたる組合員の権利停止処分を行なつたのは全く不当であり、しかも、本件
権利停止処分は、一の行為に対して二重の重畳的処分をしたという意味においても
不当である。
四 保全の必要性
 以上のように、申請人P7に対する本件組合脱退処分およびその余の申請人らに対
する本件権利停止処分はいずれも無効であるというべきであるが、被申請人におい
ては、前記各処分が為されたことを理由として申請人らに対して、組合活動から排
除しあるいは組合の意思決定に参加させないでいる。しかるところ、申請人らは活
発な組合活動家であつて、ことに組合執行部に対する批判活動を行つて来た者であ
るところ、このまま組合活動が阻害されたのでは償うことのできない損害をこうむ
ることになるのでかかる事態となるのを避けるべく本件仮処分命令を求める。
第三 被申請人の答弁及び主張
一 被申請人の答弁
(一) 申請の理由一に対する答弁
 組合員数は一、一〇〇名である。その余の事実は認める。
(二) 申請の理由二に対する答弁
(一)記載の事実については、当該大阪支部代議員会の出席者数は大阪支部執行委
員八名、大阪支部代議員一三名計二一名であつて、採決では反対が六票あつたとし
ても賛成は一五票を下らなかつた。その余の事実は認める。
(二)1記載の事実のうち、組合規約二九条の文言は認めるが、その余は否認す
る。なお、大阪支部代議員会は、慣例により中央委員会を兼ねていた。
(二)2記載の事実のうち、大阪支部代議員会招集の際に明示されていた議題が申
請人主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。
(三)記載の事実のうち、申請人P7が高校卒業者であることは認めるが、その余は
否認する。
(三) 申請の理由三に対する答弁
(一)1記載の事実は認める。
(一)2記載の事実は否認する。
(二)1記載の事実のうち、申請人P3については、申立が受理されて再審査がなさ
れその結果原裁決が維持されたものであり、申請人らが第一次処分に従わなかつた
動機および本件権利停止処分の対象となつた行動については否認するが、その余は
認める。
(二)2記載の事実のうち、申請人P1が同P7のビラ配布に協力したのが権利停止
期間経過後であることは認め、その余を否認する。
(四) 申請の理由四に対する答弁
 争う
二 被申請人の主張
(一) 申請人P7を非組合員にしたこと(本件組合脱退処分)について。
1 経緯
 会社では、昭和四一年秋頃から営業部門を強化する方針をたて多数の従業員を事
務部門から営業部門へ配置換して来たため、事務部門の勤労課では人手不足となり
課員が兼務して事務処理せざるを得なくなつていた。そして、昭和四二年一〇月初
旬頃P8総務部長が組合に対して、「勤労課が人手不足のため申請人P7にP9主任
(労政担当)の業務を全面的に補佐させたいので非組合員にして欲しい」旨を申し
入れたので、組合としては、同申請人は中央委員なので慎重に取扱うことと、同申
請人が納得したら文書で申し入れて欲しい旨回答した。しかるところ、同月二八日
会社から組合に文書による申し入れが為され、それについては同申請人が現在若干
機密に属する部類の職務を行つており、且つ勤労課の手が足りないのでこれから経
営協議会に出す会社側の書類の作成等機密事項を職務内容としてつけ加えたい旨を
説明された。そして、会社は同申請人より職務内容の変更につきあらかじめ了承を
得ていたのであるが、組合においても同月三〇日P10書記長が組合事務所で前記申
入書を同申請人に示してこれを伝えたところ、同申請人も「しやないな」と述べて
暗に了承した。
 かくして組合では、右申入れについて同年一一月二日大阪支部代議員会兼中央委
員会を開いて検討したが結論に到らなかつたので、一二月一三日午後の支部代議員
会において若干の反対意見はあつたが絶対多数でP7を非組合員とすることに議決し
た。そこで、組合は、同年一二月一四日正式に文書で会社に対して前記申入を了承
した旨を回答し、同月二六日会社より同日付で申請人P7が非組合員となつた旨回答
されたものである。
2 本件組合脱退処分の手続要件について
(1) 中央執行委員会の同意
 申請人P7を非組合員とする件については、組合と会社間の経営協議会規約(以下
協議会規約という)によれば、会社からの提案に対して組合の執行委員会が同意し
て決定される旨規定されている。すなわち、同申請人を非組合員にするのに根拠規
定となつた組合規約第二条は組合と会社間の労働協約第三条覚書(一)(二)によ
つて更に人数等が具体化され、組合規約第二条第八号については、労働協約第三条
覚書(二)の第七号に同旨の規定が設けられている。そして、会社と組合の協議方
法については労働協約第九条によつて協議会規約に規定されることになり、労働協
約に「協議して」や「協議する」とうたわれている事項は協議会規約第四章(第六
条及び第七条)に、協議及び懇談事項として掲げられているところ、第六条には
「左の事項に関しては本会に事前に附議の上決定する。組合員の雇傭、解雇及び職
場の変更等人事に関すること」と定められている。そして、組合において申請人P
7につきその職務内容の変更を承認したうえ同人を非組合員にしたことは、右協議会
規約第六条第四号に該当ないしは準ずるものということができる。けだし「職場の
変更」とは、就業場所が変更される場合のほか職務内容のみ変更する場合も含むと
解され、そして変更される職務内容次第では必然的に非組合員にならねばならない
場合もあるから、この点より考えれば組合員を非組合員とするについての協議は右
協議会規約第六条第四号に準ずるといいうるからである。そして、同条但書には
「一部従業員に関する事項に付ては本会を省略し組合機関の同意を得て実施するこ
とができる」と規定されているので、申請人P7を非組合員にする件については、ま
さに右条項に該当し組合の執行委員会が同意すれば足りるわけである。もつとも組
合では次項で述べるとおり、大阪支部代議員会兼中央委員会において討議をなし議
決しているが、これは申請人P7が中央委員兼大阪支部代議員であつたため組合の実
際的な運営と団結上の配慮から政策的に行つたものである。
 なおこの点につき、申請人は、申請人P7が組合の大阪支部代議員兼中央委員であ
るが故に同人を非組合員とする案件は組合規約第二九条第二号にいう「重要な会社
提案に対する方針及び具体策」に該当し中央委員会の議決又は承認を要すると主張
する。
 しかしながら組合員及び非組合員の範囲は労働組合法第二条第一号ならびに組合
規約第二条により自ずと定まつているものであり、同申請人の職務内容の如何が判
断の対象とされるべきであつて、大阪支部代議員兼中央委員という組合の役職にあ
るか否かにはかかわらないものである。また、重要な会社提案というのは実質的に
も会社全体、あるいは組合員の大多数に関するもので、かつその変更内容が重要な
影響を与えるものであつて、形式的には社長名で提案されるべきものである。しか
るに右案件は申請人P7一個人の問題でありかつ、P8総務部長名で提案されたもの
であるからこの点からしても重要な会社提案に該当しない。
(2) 大阪支部代議員会兼中央委員会の議決
 仮りに、申請人P7を非組合員とする件が、組合規約第二九条第二号所定の「重要
な会社提案」に該当するとしても、中央委員会に相当する大阪支部代議員会の議決
を経ている。すなわち、申請人も認めるように、組合の大阪支部においては、支部
執行委員九名が即組合中央執行委員会を構成し、同支部代議員一八名が即組合中央
委員となつて伊勢原支部より三名、東京支部より一名の割合で選出された中央委員
ならびに前記中央執行委員九名をもつて組合中央委員会を構成している。このよう
に、大阪支部は他の支部に比べ非常に大きくかつ大阪支部代議員会の構成が中央委
員会の構成とほぼ一致し、しかも中央委員会が開かれる都度東京、伊勢原より駆け
つけるのは不可能に近い等の理由から、大阪支部の中央委員及び中央執行委員によ
つて行われる大阪支部代議員会が中央委員会を兼ね、その事前事後に東京、伊勢原
各支部選出の委員に電話連絡で意見を求めかつ報告するにとどめる慣行となつてい
た。そして、昭和四二年一二月一三日の大阪支部代議員会においても中央委員会を
兼ねていたものであつて、東京、伊勢原各支部選出の委員に事前事後に電話連絡
し、またそこで為された議決は中央委員会議決としての効力を有する。
 なお申請人は、右代議員会の招集に際して申請人P7を非組合員にする件が議題と
して掲げていなかつた点を違法であると主張するが、人事についてはプライバシー
の問題もあり案件として掲げないのが慣例となつている。
(3) 中央委員会の議決
 昭和四三年六月八日東京、伊勢原各支部選出の委員を含む正式の中央委員会が招
集され、申請人P7を非組員としたことにつき審議がなされ、全員一致で承認され
た。
3 本件組合脱退処分の実体要件
(1) 根拠規定について
 組合規約上の根拠としては、申請人P7が、非組合員の範囲を定める第二条各号の
うち第四号「総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者」の「人事主担
者」に準ずるものと判断し、同条第八号の「会社、組合双方協議の上承諾した者」
を適用し、第一一条第三号により組合員資格を失つたものであるが、右条項を実施
するためにはさらに労働協約においても次のように規定されている。すなわち、労
働協約にはユニオンショップ条項があり、非組合員となつた者については会社が解
雇する定めとなつているところから、これに対応して前記組合規約によつて組合員
資格を失なつた者に対しては、ユニオンシヨツプ条項の適用を受けないようにする
必要があり、そのために同条項の適用を受けない者の範囲を労働協約で定めること
とし、その第三条および同条覚書(二)において組合と会社は協議して一定の者を
非組合員とすることができることになつている。そして、この覚書(二)の(4)
によると「総務部勤労課主任以上及び人事担当者四名」につき会社と組合が協議の
うえ非組合員とすることになつており、この条項により、申請人P7は会社在籍の従
業員のままで非組合員になつたものである。
(2) 申請人P7の職務内容について
 申請人P7は昭和三二年三月頃入社したが、昭和三七年五月頃から総務部勤労課へ
転籍し、昭和三八年三月頃作業員から業務員に職掌をかえ、総務部保安厚生課に転
籍し、昭和四〇年九月頃保安厚生課は勤労課に吸収され、今日に至つた。そして、
同申請人は昭和三七年頃から保険事務を処理してきたが、保安厚生課が勤労課に吸
収された同四〇年九月頃以降人事的な事項や労政的事務の処理をはじめ、以来右業
務の処理には習熟していた。
 そして、昭和四二年一〇月頃の総務部勤労課の業務体制は、課長の統轄のもと
に、人事、労政、給与のグループと福祉厚生、社会保険のグループおよび安全警備
のグループの三グループに分かれて、課長以下三〇名が在籍し、その内訳は男子二
六名女子四名であつて、このうち組合員は女子の四名、男子作業員の二名、男子業
務員の三名計九名であつた。
 そして、申請人P7はP11勤労課長(人事等担当の副長兼務)ならびに労政担当主
任のP9主任のもとで、次のような業務に従事していた。(1)勤怠カードの確認
(2)旅費支給伝票の検印(3)労働時間外協定(4)実労働時間把握(5)通勤
定期券斡旋(6)出張者切符予約手配(7)有期工勤怠、異勤の把握。このうち
(1)(4)はいわば人事考課的な業務であつて第一次査定的役割をはたしてお
り、(3)については、申請人P7自身が会社側立場でもつて組合員と交渉する窓口
となつていたもので、残業を多くしたいという会社側の要求と、無理な残業はやめ
たいという組合員との双方の利害が対立すれば、同申請人は自ずと会社側の利益を
代表せざるを得なくなり、(7)についても、有期工に関して前歴照会や作業考課
あるいは人事資料を一手に収集し、有期工の採否や異動、本工への登用等に関する
機密事項も掌握できたのみならず、P9主任が不在の時には有期工との面接を担当す
るなど、人事権の行使にも関与していた。
 他方組合員のうち、女子の四名は庶務、賃金計算社会保険の補助事務に従事し、
男子作業員の二名は清掃係と安全通路線引係であり、また、男子業務員三名につい
ても、うち一名は安全管理業務に従事しており、労使の対立する利害の処理にかか
わらない分野であり、申請人P7を除く他一名の業務員(P12)も昭和四二年一〇月
二八日非組合員となつた。
 しかるところ、会社では前述のように、昭和四一年秋頃以降とられた営業強化策
の結果、勤労課では人手不足を来たしこれをカバーするために、会社は今後は申請
人P7にP9主任の担当事務を全面的に補佐させてゆこうとした。
 かくして、P8総務部長から前記申し入れがなされた次第であつたが、組合として
もこれらの業務上の義務及び責任が組合員としての誠意及び責任と相容れないもの
であると判断して会社の申入れに応ずることにしたものであつて何ら判断に誤りは
ない。なお、高校卒業者であつても副長、主任になる事は他にも多くの事例があ
り、大学卒業者でないからといつて不合理ではない。また勤労課の中でも重要な労
政担当者は、従来からの課長とP9主任及び申請人P7であつたから、同申請人が唯
一人の直属上司のP9主任の仕事を補佐し重要事項に携わることも十分ありうるわけ
である。
4 申請人P7を非組合員にした意図について
 現組合執行部がその有力な批判勢力の中核である申請人P7を組合から排除するた
め、会社に圧力をかけて会社から申請人P7を非組合員にしたい旨申し込ませたと主
張するが、否認する。申請人P7を中心とする申請人らのグループは、後に詳述する
ように会社の意を体して組合破壊活動に専念してきたものであり、組合は、会社が
申請人P7らを使嗾して行なつているかかる組合の団結に対する破壊行為をやめるよ
う、これまでにも再三会社に対し糾弾してきた。そして、組合としては申請人らの
これら団結破壊行為について統制処分をもつて対処することも可能であり、そうな
れば右行為は本来除名処分に相当するものであるが、労使間にはユニオンシヨツプ
協定が存在するため除名処分にすると、解雇という労働者にとつて決定的な打撃を
与えることになる。しかるところ、前述のようにP8総務部長から前述の申入れがな
されたので、組合としてもこの会社の申入れに応じて組合員として相応しくない団
結破壊者を非組合員にすることが、より妥当な解決方法であると考えて、会社の申
入れに容易に応じた次第である。このように、申請人P7を非組合員にしたことは、
労働者の生活を破壊することなく、かつ組合に対する破壊活動を防ぐためとられた
やむを得ない措置なのであつて、その動機を非難されるべきいわれはないし、また
この間の事情は、なんら本件非組合員化措置の有効性にはかかわりのないことであ
る。
5 組合規約の運用における自主性の尊重について
 申請人P7を非組合員にすべきかについては、その職階および職務に照らして文言
上直ちに該当する条項が組合規約になく、組合規約条項の解釈判断によつてかかる
結論が導き出されたわけである。
 しかして、このような場合の組合規約の解釈権は第一次的には当該組合にあり、
客観的にして重大かつ明白な規約の適用の誤りないし解釈の誤りがあると認められ
ない限りは、第三者(裁判所も含めて)は当該労働組合の自主的解釈、適用を尊重
すべきである。けだし、労働組合規約は当該労働組合の団結と統一のための規範で
あるところ、組合は独自のたたかいと生成発展の歴史をもち、かつ常に発展しつつ
ある運動体であり、自主的組織体であるから、第三者が組織の実体をよく理解せず
安易に当該組合の規約の解釈、運用を云々するときは、当該組合の組合員の規範意
識と実体から遊離し著しい誤りを犯すことになりかねないからであり、ことに第三
者が裁判所である場合は権力的にこの誤りを押し付けるという重大な結果を惹起す
ることにもなりかねない。そして、このように理解することが労働者の階級的組織
体である労働組合の自主性(使用者のみならず国家からの自主性)を尊重し保障す
る所以である。
 そして、前述したように組合においては、申請人P7の職務の性質(組合員として
の適格性ならびに会社の業務上の必要性)についての理解ならびにこれに対する組
合規約の解釈・適用には、客観的にして重大かつ明白な違法はない。
(二) 申請人P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6らに対する本件権利停止
処分について。
 申請人P1ら六名に対して為された第一次処分および本件権利停止処分は、申請人
らの行つた組合破壊をねらう不当悪質な行為を対象とするものであり、団結の擁護
上やむなく行つたものである。
1 申請人らにおける組合破壊の意図と反組合行為
 申請人らは、かねてからもと警察官で会社の勤労課係員として人事を担当してい
るP13や技術部次長で施設課長を兼務していたP14(現在技術部長)らに指導され
て組合内に反組合的グループをつくり、会社の意をうけあるいは会社と一体になつ
て組合を破壊しまたその階級性と自主性を抜き去つて、組合を会社に従属するいわ
ゆる労使協調路線に立つ非自主的労働組合に換骨奪胎し、もつて労働組合組織を会
社の人事管理機構に代置せしめるべくつくりかえていくことを意図し、策動してい
た。
 即ち、(1)申請人ら七名はたびたびP13と共に会社内で会合をもつたり、P
13方や申請人P7方あるいは特定の喫茶店で集合してあれこれ相談した。とりわけ組
合の支部代議員会および中央委員会のあつた後は、右のような会合をもつて、組合
中央委員会における討議状況等を会社側に流すなどして、情報の交換と組合対策を
協議していた。(2)昭和四一年一一月二日申請人P7は組合員で組合青婦対策部の
青婦会幹事であつたP15を喫茶店「はなぞの」に呼び出し、「あらぐさ」(青婦会
と教宣部が中心となつて昭和四一年六月頃開始した学習サークル)に出席するメン
バーと学習の内容についておしえてほしい、また誰がどのような発言をしているか
おしえてほしいとしつこく要求し、更に継続的にスパイ行為をするよう要求した。
(3)同申請人は昭和四二年一月九日午後七時頃から組合会議室において「あらぐ
さ」のサークル員が新年会を開催した際、午後七時頃から九時頃会の終了するまで
守衛室において様子を監視していた。(4)昭和四一年一二月頃申請人P6同P3同
P7同P2らは、中央委員兼大阪支部代議員であつたところ、その頃執行委員P16が
喫茶店で会社勤労課主任P9主任と話をしているところをとらえて、店にいあわせた
P13からP16執行委員を失脚させるとともに執行部に対する信用を失ついさせるた
めにこの事実を歪曲して利用するよう指示をうけて、右申請人らはその頃委員会に
おいて緊急動議と称してP16執行委員が組合委員を会社に売るような言動をしたか
ら事実を調査したうえ、しかるべき処分をなすよう提案して、組合を混乱におとし
いれようとした。(5)昭和四二年六月頃P13および当時同人らと同じグループに
属していたP17勤労課長は、組合中央委員P18を会社応接室に呼び出し「執行委員
に立候補すれば応援してやる」「お前の弟が巡査部長の試験に二回も落ちているの
はお前が組合に関係しているからだ。われわれの言うことを聞かないとまた落ちる
ぞ」とか「P7君(申請人)のように立派な組合委員もいる」のだからこの人を見習
えという趣旨のことを繰り返し述べて、会社の意図する組合活動を行なわせようと
した。(6)昭和四二年八月頃P13の指導下に申請人七名等は、交通事故のため約
一年間休職していた施設課P19(当時一七才)の全快祝を行うと称して、P19の職
場とは関係のない人物即ち申請人らの工作対象とする人物に呼びかけ、約一五名集
めて(多数の者が断わつたので)一人一〇〇円の会費で一人当り三本位の割合の量
のビールを接待した。ビールはP13を通じて入手したものであり同人は「私は組合
側でも会社側でもありません」「こんな機会を度々もとう」「組合が今のような状
態ではいかん」という趣旨の発言をした。(7)昭和四一年度役員選挙に申請人P
2らが立候補すると、P20事課長、P11副長、P13らが組合員に対して推せん依頼を
して廻つており、昭和四二年度役員選挙では申請人P7がP21主任(非組合員)に執
行委員に立候補するかを相談している。(8)昭和四二年度春闘大会では申請人ら
のグループの一人であるP22が、虚偽の事実を挙げてP23委員長不信任および青婦
会解散の緊急動議を提出した。
 しかして、最近では申請人らは、「組合員の権利を守る会」の名で「IMFJ
O」路線に沿つた鋼領的文書を配布して第二組合結成ののろしをあげ、公然と悪ら
つな組合幹部攻撃をはじめ組合の決定と方針を中傷しさらには思想攻撃まで加え
て、組合の混乱と分裂を策している。
2 第一次処分について
 そして、申請人ら七名は前述のような意図による組合破壊活動の一環として、昭
和四三年二月二日会社の出勤時である午前七時三〇分頃から約一時間にわたり会社
門前において出勤して来た組合員に対して、別紙第一記載のビラ約一、〇〇〇枚を
配付して、組合の統制を乱した。
 すなわち、右ビラは本件組合脱退処分という組合で決定された事項に対し、これ
を非難したものであるところ、そもそも組合員が組合運営上の問題について意見や
見解を発表し、これを組合の運営のうえに反映させようとする場合には、組合規約
第一五条によつて組合機関(委員会や代議員会)を通じて行なうことができるとと
もに、組合としても、無節操無定見な言論が無制限に流れて組合の団結に悪影響を
およぼすことを防止するために、組合員の意見発表は原則として同条項により組合
機関を通じて行なうことを要求しているのである。しかるに、申請人らはこの方法
をとることを怠り全く一方的に突然前記のビラを多数配付したものであつて、これ
が団結擁護の点から許されないことはいうまでもない。加えて、申請人らは、組合
では支部代議員などの地位にあるものであるから、本件組合脱退処分問題について
職場大会を開催し組合員の意見を求めるなどして組合運営の民主性は担保できるの
にも拘らずこれを怠り、組合員の意見も求めないで一個の独断的見解をビラに託し
てこれを一方的におしつけ、組合員の攪乱、動揺をはかろうとしたものである。そ
して、このようなやり方が言論発表の方法として相当でなく真に組合員の団結を願
うものの行動でないことも明らかである。もつとも、この点について申請人らは、
当該行為は「組合活動の自由」「言論活動の自由」の範囲内に属する問題であると
主張する。しかしながら、「組合活動の自由」なる観念は労働組合ないし組合員の
対使用者との関係において主張されるものであるところ、申請人らの所為は使用者
に対するものではなく、ことは労働組合内部における組合員と対組合ないし対組合
幹部との関係であるから「組合活動の自由」なる観念を容れる余地はない。そし
て、組合員としての「言論活動の自由」が保障されるべきであり、組合民主主義を
保障し、団結を維持、強化するうえにおいても極めて重要なものであることは、も
とより当然であるが、それも無制限に許されるものではなく、組合員の団結を破壊
し、統制を乱すような言論が許されないことはその性質上明らかである。
 さらにまた、申請人らは、その配布したビラの中に虚偽を書きつらね言葉のあや
を用いて、あたかも現組合が非民主的であるかのような印象付けを企らんだ。すな
わち、(1)ビラには、申請人P7が一貫して非組合員になることを拒否したかのご
とく記載し昭和四二年一〇月三〇日には「組合事務所へ会社から受けとつた文書を
調べに行き、『非組合員になるのはおかしいではないか』と抗議している」と記載
しているが、事実はこれに反し、同人は文書を見て抗議するどころか「しやあない
な」と了承の意を表明してその場を退去したのであり、また(2)ビラには「四二
年一一月四日P23委員長に…事情聴収した」と記載されているがこれも事情聴取な
どというものではなく、申請人P7は前記のとおり一旦暗に了承していたにもかかわ
らず何者の指導によるものか、申請人らグループが徒党を組んで大勢でP23委員長
のところへおしかけて理不尽な難詰をはじめ、組合内に混乱をもち込みはじめたの
で同委員長は改めていつでも相談に来るよう申し述べたのが、真相である。(3)
ビラには、支部代議員会における採決が七対六で強引に押し切つたかのように記載
しているけれども、真実は申請人らのグループが反対したのみであつて、これを六
とすれば賛否は一五対六であつた(一五票のうち七名は支部代議員兼中央委員八名
は執行委員)。また申請人P7を非組合員とする決議が実体的にも手続的にも有効で
あることはすでに述べたとおりである。そして、申請人P7を非組合員とする組合決
定に反対する行為および前記ビラ配布行為には共通の目的がある。即ち申請人らは
会社の意を体して、会社と一体となつて被申請人組合を破壊し階級的な自主組織と
しての労働組合の階級性と自主性を抜き去ろうとする策動の一環として右所為に出
てきたのである。
 かくして、組合では、この申請人らの重大な統制違反行為に対して、申請人ら主
張の組合規約を適用して第一次処分を行つたものである。
3 本件権利停止処分について
 前述のように不当な意図に基いて行われた第一次ビラ配布行為は、本来除名処分
にも相当すべきものであつたが、組合は申請人らに対して反省を求めかつまた反省
の機会を与える目的で極めて軽い第一次処分に付したのであるが、それにもかかわ
らず申請人らは何ら反省するところがないばかりか、かえつて再度にわたり組合機
関の信用を失墜せしめる目的でそのような内容を記載したビラを配布した。よつて
組合において慎重検討の結果申請人らは賦課金も支払わないで統制に服さずまた申
請人らのグループによる組合の団結破壊を目的とする攪乱行為をやめないことを重
要な情状として考慮して本件権利停止の処分をなしたものである。従つて、また、
二重の処分といわれる筋合もない。
4 組合の自主的判断を尊重すべきこと
 処分の対象となる行為が団結破壊行為と全く認められない場合はともかくそうで
ある場合にはどの程度の制裁が適当であるかは資本と権力に対する自主性を旨とす
る当該組合の自主的判断を第一次的に尊重すべきである。なぜならば何が団結を破
壊する行為であり、どの程度の悪影響があるかは複雑な組織活動の発展の道程の中
において生起する問題であり、組織の主体的条件と時期においてさまざまに異つた
意味をもつてくるからである。
 本件処分の内容は単なる権利停止処分に止まるものであつてユニオンシヨツプ協
定の関係上当然組合員の解雇を招来することによつて生存権的危殆を惹起したり、
組合員を組織外に永久に排除し組合員としての団結上の利益の享受を拒否するよう
な除名ではない。このような場合第三者(裁判所)の介入は極力慎重でなければな
らない。
 本件権利停止処分は、申請人らの一連の反組合的活動からみて処分の程度におい
て何ら相当性を欠くものではないし、また第三者が相当性を云々すべきではない。
(三) 保全の必要性について。
 申請人らは現在もひきつづき組合破壊行為に狂奔している。
 もともと仮処分の必要性は仮処分決定時において存在することを必要とするもの
であることはとりたてて論ずることもない。いま万が一申請人らの申請を認容する
ならば組合の団結に与える影響は甚だ大である。
 組合は申請人らの破壊行為から組織を守るため、昭和四三年六月一七日委員会に
おいて「申請人らの行為は団結を唯一のよりどころとする労働組合に対する攻撃で
ある」からこれに対する闘いは「組合の組織を守る闘いである」ことを確認し、対
策委員会を設置することを決定し、「組織を守る闘い」という活動方針等を作成
し、全組合員にこの方針書を渡して職場における職場大会でそれぞれ討議し、全員
一致でこれを決定した。さらに昭和四四年度定期大会において、これを特別議案と
して提出し討議のうえ組合の運動方針として決定しているのである。
 このように申請人らを除く全組合員が一致して組織および団結の破壊行為と断定
している申請人らの行為について何らこれを救済すべき権利も「必要性」も存しな
いことは明白である。申請人らの組合破壊行為が明らかであり、本申請もこのため
に為された訴権を濫用するものであり、申請を認めることはかえつて組合の破壊を
助けることになることは明白であるから、このような場合仮処分の必要はないもの
というべきである。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
一、組合が会社の従業員をもつて構成される労働組合であつて、中央機構に最高議
決機関として中央大会、次級議決機関として中央委員会をまた執行機関として中央
執行委員会を有し、さらに大阪本社工場、東京事務所、伊勢原工場(神奈川県)の
事業所単位に各支部を設置して、各支部には議決機関として支部代議員会、執行機
関として支部執行委員会を有すること、そして、中央大会の承認を得て、大阪支部
執行委員九名が中央執行委員となつて中央執行委員会を構成し、そして同支部代議
員一八名、東京支部長、伊勢原支部長および同支部選出委員二名が中央委員となつ
て前記中央執行委員とともに中央委員会を構成すること、申請人P7が昭和三二年三
月に会社に入社し、同年五月に組合に加入し、昭和三八年一一月以降会社総務部勤
労課に所属し組合では昭和四二年一〇月一八日大阪支部代議員に翌一一月六日中央
委員に各選出されたこと、その余の申請人らが、いずれも会社の従業員であるとと
もに組合の組合員であり、そのうち申請人P1、同P2、同P4、同P5は同P7と同様
に組合の中央委員兼大阪支部代議員に選出されたことはいずれも当事者間に争いが
ない。
二、組合が申請人P7を非組合員にしたこと(本件組合脱退処分)の適否
(一) 組合が申請人P7に対して、同申請人主張の如く組合規約「第二条。本組合
は日本アルミニウム工業株式会社在籍社員の内次の者を除いた全従業員を以つて組
織する。1会社役員、相談役、顧問 2各課長以上及び技師、参事、部長付 3経
理部各課主任以上4総務部勤労課及び人事課主任以上並びに人事主担者 5総務部
守衛全員 6秘書 7嘱託及び試用期間中の者 8其の他会社組合双方協議の上承
諾した者」のうち第八号、および、「第一一条。組合員は次の各号のいずれかに該
当するときはその資格を喪失する。3、第二条により非組合員となつたとき」を適
用して非組合員にした事実は、当事者間に争いがない。
(二) ところで、労働組合においては、自主性を害する構成や不合理な差別を含
まない限り(労働組合法第二条第一号、第五条第四号)、その構成員たる組合員の
範囲を自由に定めることができるものである。したがつて、右の制約を逸脱しない
限りは、その組合員資格を労働者のうち一定範囲に限定して、たとえば特定産業や
業種の業務に従事する労働者にしたり、あるいは特定企業に雇傭される従業員にし
たり、さらにはその内でも一定の従業員資格ある者(たとえば、工員、職員、職制
など)に限定することも可能である。そして、これを本件の組合規約第二条につい
て考察すれば、まず第一号および第二号の一部によつて労働組合法第二条第一号所
定の会社利益代表者を組合員資格者から除外したあと、組合の固有事情を考慮しそ
の政策的見地から、組合員資格者を会社の従業員と定め、さらにそのうちから第七
号で従業員資格が十分に安定していない者を除外し、また第二号ないし第六号では
労使関係を適正にするためにむしろ会社側の手駒として留保させておいた方が妥当
と考えられる者を除外したうえ、第八号で「其の他会社、組合双方協議の上承認し
た者」を除外している。このように、右規約では会社従業員のうちにおける組合員
資格のない者の範囲を、法律上ないし条理上当然に労働組合員たり得ない者ばかり
でなく、組合の固有事情にもとずき多分に政策的考慮も働かせて相当広範囲に定め
ているのである。そして、同条第一号ないし第七号については、対象となる従業員
としての職階が予め明確に決定されておりそれに該当する者は当然に組合員資格を
失うようになつているが、かかる事前の決定のみではあらゆる事態に対処すること
も不可能であるから同条第八号では、事前には白地のままにしておきその後従業員
のうちでも組合員にしない方がよいと考えられる者が出たときには、同条第一号な
いし第七号所定の場合に準じ政策的見地も加えて検討して、その都度組合員資格を
与えるか否かを決定してゆく、という建前をとつているのである。
 しかして、同条第八号に関する組合決定は、規約の白地部分について規範的およ
び政策的見地から意思決定してこれを補充する性質をもち、またその結果は個々の
組合員にも保障されている団結権に関係するものであるから、かかる案件は組合に
とつても重要な業務であり、また組合員の総意を代表する意思決定機関によつて決
せられるのが相当である。けだし、右協議が会社側の圧力のもとに、あるいは組合
役員の独善ないし独裁のもとになされる可能性のあることを考慮するとき、その必
要は特に甚大なものといわねばならない。そして、成立に争いのない疎甲第一号
証、疎乙第六号証によつて組合各機関の権限を考察すると、右案件は規約第二九条
第二号所定の「重要な会社提案に対する方針及び具体策」に該当するというべきで
あり、したがつて組合の中央委員会の議決又は承認を得なければならないものであ
る。なお、この点に関する被申請人の見解は、にわかに首肯できない。
(三) そうすると、昭和四二年一二月一三日の組合大阪代議員会で為された申請
人P7を非組合員とする旨の決議(その決議が為されたこと自体については、当事者
間に争いがない。)は、議決権限のない機関において為された点ですでに無効とい
うべきである。なお、この点につき被申請人は、組合の大阪支部代議員会はつねに
中央委員会を兼ねる慣行があつた旨主張するが、これを認めるに足る疎明はなく、
却つて成立に争いのない疎甲第二八、第二九号証によると、その然らざることが窺
われる。
 つぎに、弁論の全趣旨により成立の認められる疎乙第一三号証によれば、組合で
は昭和四三年六月八日の中央委員会において、あらためて申請人P7を非組合員とす
る旨の決議がなされたことが一応認められるので、右委員会の構成に瑕疵がなくま
た同申請人につき規約第二条第八号を適用した実体上の判断に違法がない限り、右
決議をもつて同申請人は非組合員となる。
(四) そこで、組合が右組合規約を適用した実体上の判断につき、違法がないか
を検討しよう。
1、申請人P7の職務内容
 成立に争いのない疎甲第二三(後記措信しない部分を除く)、第二四号証(後記
措信しない部分を除く)、疎乙第二二、第四一号証、弁論の全趣旨によりその成立
が認められる疎乙第六六号証および被申請人代表者の本人尋問の結果ならびに弁論
の全趣旨を総合すると次の事実が疎明され、右認定に反する疎甲第二三号証、二四
号証の一部記載は措信しない。
 申請人P7は昭和三二年三月作業員として入社し、現場工場部内に配属されたが、
昭和三六年一一月二三日作業中右手を旋盤機械にまきこまれて環指、小指に傷害を
受けた。そのため昭和三七年五月二一日以降総務部勤労課へ転籍し、これに伴い昭
和三八年三月二一日に作業員から業務員に職掌をかえ、総務部保安厚生課に転籍
し、さらに昭和四〇年九月一日この保安厚生課が総務部勤労課に吸収されたため、
勤労課に所属することになつた。
 ところで、勤労課の業務は課長の統轄のもとに、人事・労政・給与のグループ、
福祉厚生、社会保険のグループ、安全警備のグループの三グループに分かれて運営
されており、昭和四二年一〇月当時課長以下三〇名が在籍して、その内訳は男子二
六名、女子四名であつて、このうち組合員は女子の四名、男子作業員の二名と男子
業務員の申請人P7、申請外P12、同中下の三名、計九名であつた。そして、女子四
名は庶務・賃金計算・社会保険の補助事務に従事し、作業員の二名は清掃係と安全
通路線引係であつた。男子業務員の中下は安全管理業務に従事していた。労政担当
は、P9主任のもとに非組合員のP14、および、組合員である申請人P7、P12、P
24(女子)によつて構成され、同申請人は、次のような業務に従事していた。
(1)勤怠カードの確認(2)旅費支給伝票の検印(3)労働時間外協定(4)実
労働時間把握(5)通勤定期券の手配(6)出張者の切符予約の手配(7)有期工
勤怠、異動の把握。そして、そのうち(1)については従業員の勤怠考課を知るこ
とができる立場にあり、(7)については前歴照会や作業考課又その他の人事資料
をほぼ一手に集中して収集する建前上、大体有期工の採否や異動、有期工より本工
への登用を掌握でき、また、(2)については旅費請求が規則に合致しているかど
うかを査定し、(3)については申請人P7が交渉の窓口になつていた(会社と組合
は、二時間以上の残業については日毎に協定していた。)ものであり、(4)につ
いては第一次査定的な仕事もしていた。
 そして、会社では昭和四一年秋頃から営業部門を強化する方針のもとに事務部門
から営業部門に多数配置替しており、その結果事務部門では相対的に人手不足とな
り、勤労課においても昭和四二年一〇月頃は、課員が多くの業務を兼務していたう
え、さらには持ちまわりで業務処理したり、あるいは係の者がいないときは誰でも
ほかの者がやるという状態であつた。
 また、当時組合では、会社が組合活動に支配介入する不当労働行為を行つている
として再三にわたつて会社に抗議しており、そのなかでもことに勤労課員のP13お
よび申請人P7の行動が非難されていた。
2、申請人P7を非組合員とした経緯
 前顕疎乙第四一号証、成立に争いのない同第一〇号証、弁論の全趣旨によりその
成立が認められる同第一三号証および弁論の全趣旨を総合すると次の事実が疎明さ
れ、右認定を左右するに足る証拠はない。
 昭和四二年一〇月初旬、会社のP8総務部長より組合のP23委員長に対し、次のよ
うな申入れがあつた。即ち最近会社が営業部門強化策をとつて勤労課からも人を出
した、このため勤労課は人手不足となりP9主任(当時)一人ではどうにもならずま
た人事係も不足している、勤労課全体が業務運営上困つているのでこれを強化する
ため申請人P7及びP12をそれぞれ労政及び人事担当者として非組合員としたい旨の
申入れがあつた。これに対しP23委員長は、申請人P7は現在組合の委員であるので
慎重に扱つてほしい、本人がこれを了解したならば文書で申入れてほしい旨返事を
した。しかるところ、同月二八日午前、会社より正式に文書をもつて申請人P7を労
政担当、P12を人事担当とするので非組合員にしたい旨の申入れがあつた。同日午
後P23委員長がさらに説明を求めたところ、P8総務部長は、P12は人事担当者とし
て本店関係を担当させる、申請人P7は労政全般の仕事をしているP9主任の補佐を
させる、例えば経営協議会に提出する資料、労働組合対策資料作りなど、今後労政
上の重要事項、会社の機密事項も扱わせることにする、職務内容の変更については
申請人P7の了解を得ている旨の説明があつた。そして、同年一一月一日組合は中央
執行委員会を開いて右案件につき審議したところ、勤労課が極度に人員不足であり
業務がおくれ、資料等不足のために組合との日常の交渉も遅れていることなどか
ら、P9主任一人では手不足は明らかであること、従来四名いた人事担当者も現在二
名しかおらず本店担当者が欠けていることを確認し、また申請人P7とP12には、職
務を利用した反組合的行為が多いけれどもこれはその職務の性質と職制との結びつ
きが主たる原因になつていると判断して、同人らを非組合員にすることは相当であ
る旨決定し、かかる見解のもとに前認定のとおり申請人P7を非組合員とする旨が議
決された。
3、そして、右組合規約の適用に関する組合の判断は単なる規範適用の問題にとど
まらず、組合の次級意思決定機関である中央委員会による政策決定的要素をも含ん
だ判断なのであるから、そこには一定の裁量権が認められるものというべく、所定
の範囲内における裁量行為については当不当の問題を生ずることがあつても違法を
論ずべきではなく、その裁量が期待された範囲を超えた場合にはじめて違法となる
ものと解するのを相当とするところ、前記疎明された事実によると、申請人P7の担
当する業務には人事考課的事務や組合関係の労政事務が含まれていたことは否定で
きないうえ、さらに会社からの申し入れによれば、今後は同申請人にP9主任を全般
的に補助をさせて労政上の重要事項や会社の機密事項をも扱わせたい旨の説明があ
り、また同申請人の業務がそのように推移するであろう状況も一応認められるので
あるから、組合において同申請人の今後従事する業務について組合規約第二条第四
号所定の「人事主担者」に準ずると判定したことには一応の根拠も認められるの
で、右判定にもとづき同申請人に同条第八号を適用して非組合員とした判断には、
著しく不相当な点は見当らずこれを違法と論ずることはできない。
 なお、申請人は、前記会社の申入れについて、会社の真意としては申請人P7の職
務内容を何ら変更する意思などはなかつたが、組合が同申請人を組合活動から排除
すべく会社に不当な圧力をかけたため、やむなく会社は申請人P7を非組合員とした
い旨の申し入れをした旨、主張するが、右主張にそう疎甲第一四号証(弁論の全趣
旨により成立を認める。)第二四号証および証人P13の証言ならびに申請人P1の本
人尋問の結果は、前顕疎乙第四一号証、成立に争いのない同第七四号証弁論の全趣
旨により成立を認める同第七三号証に照らしてにわかに措信し難く、他にこれを認
めるに足る疎明はない。
三、本件権利停止処分について
(一) 労働組合の懲戒権について。
 およそ団体には、組織を維持発展させその目的達成のために活動するためには、
本来的に構成員に対する内部統制とその裏付けとして違反者に対する懲戒を必要と
するから、その意味では団体には存立が認められる以上その固有の権利として懲戒
権も認められるわけであるが、ことに労働組合においては、その団結体の存在と活
動が労使相互の利害対立と力関係による対決というきびしい局面のもとで展開さ
れ、労働者の生存確保を終極の目的としており、しかも憲法上団結権や団体行動権
をもつて保障されていることにかんがみると、その内部統制権の意味を考えるにあ
たつては団体一般の法理からだけではなく団結権保障の見地からも考察すべきであ
る。しかして、労働組合の存在と活動は自主性と強い団結を実質的基盤として営ま
れるものであるところ、この関係において自律的な内部統制作用の果す役割は極め
て重要なものであるうえ、他面で法は労働組合が民主的に運営されるべく配慮して
内部規律が適正に為されるべく期していることを考えあわせると、かかる内部関係
に対してはなるべく外部から干渉をおよぼさないようにするのが団結権保障にも適
うものであつて、そのためには内部統制の問題では自律的規範の実現を自治的措置
に委ねるを相当とする分野が広汎に認められるべきであろう。したがつて、労働組
合がその自主的判断において団結体を維持するべく組合員に対し統制権を行使して
懲戒した場合に、その判断の適否が問題にされたとしても原則的には組合内部で自
律的に審査や修正がなされるべきであろう。もつとも、他方、組合員が労働組合内
部で組合活動に参加しうる地位もこれまた団結権によつて保障されているところで
あるから、かかる地位も私権として保護せられるべく、したがつて前記労働組合の
内部統制作用においても、その行使が組合員の団結権を侵害するまでに至つたと認
められるときは、それは内部規律権の範囲を超えたものとして違法になり、その効
果は司法作用によつて排除せられるべきである。このように、労働組合がその自治
的範囲を超えて懲戒処分を加えたならばそれは無効となるわけであるが、組合運動
が不断に事態の推移するなかの動態として存在し、しかも組合にはなによりも自主
性が尊重せられるべきことにかんがみると、かかる無効な処分についても、その処
分の効力を維持したとしても私権の侵害が認められない範囲すなわち本来の自治的
範囲内においては、できるだけその自律的処置の結果を公認すべきであろう。そし
て、これを権利停止処分についてみるならば、たとえばその期間が本来的自治の範
囲を超えて著しく長期に過ぎたために違法となつた場合には、その超えた期間につ
いては当然これを無効とすべきであるが、その本来的自治の範囲内の期間について
まではことさらこれを無効としなければならない理由は見当らず、むしろその自主
的判断をもつて為された結果には干渉しないで、これを公認する方が、労働組合の
自主性を尊重する所以になる、と考えられる。
(二) 第一次処分について。
1 次の事実は、当事者間に争いがない。
 申請人P1、同P2、同P3、同P4、同P5、同P6らは外七名(弁論の全趣旨によ
つて成立を認める疎乙第一六号証によれば、七名のうち申請外P25も組合大阪支部
代議員兼中央委員であつたことが、疎明せられる。)とともに昭和四三年二月二日
会社の出勤時である午前七時三〇分頃から約一時間にわたつて会社の門前において
出勤者に対し別紙第一記載の「組合員の皆様に訴える」というビラを少なくとも六
〇〇枚配布した(右枚数を超えて一〇〇〇枚配布されたとの被申請人の主張につい
ては、それを認むるに足る疎明がない。)ところ、これに対して組合は前記のビラ
配布行為が、組合規約第一五条「組合員は組合機関の行動、決定についても報告を
求め意見を述べ其の他組合活動の自由を持つが組合員として組合機関を通じて行な
う」同第一七条「組合員は組合規約を遵守し、機関の決定にしたがい組合の健全な
る発展のために努力する義務を負う」に違反するものとして、同第六一条「本組合
員にして次の各号のいずれかに該当する行為のあつたときは処罰を受ける」同条第
一号「組合規約に違反し機関の決定に従わず統制を乱したるとき」同第二号「組合
運営、事業の発展を妨げたとき」を適用して標記申請人らに対し次のとおりの第一
次処分を行なつた。(1)同P1権利停止五日間(2)同P5、同P4賦課金二日分戒
告(3)同P2、同P6、同P3賦課金一日分戒告
2 そこで、組合員の言論活動が無制限に許されるものであるかどうかについて考
える。惟うに、団体が自治的に運営される場合には、これをめぐつて各構成員に意
見の対立が生れることは避けられないものであつて、この対立した意見を合理的に
集約するためには、なによりも意見表明と相互の討論が自由になされる必要がある
けれども、かかる過程を保障するについても各団体にはその特質に応じた型態が存
するのであつて、労働組合のように労使の利害が峻烈に対立する局面で強固な団結
を基盤として資本と対抗すべく存立活動し、そのためには強い内部統制をも必要と
する団体においては、組合員間の対立した意見の表明と討論および集約の過程が放
任されるならば、ともすれば右過程の適正を失つて無定見と不合理に流れ、ときに
は外部からの干渉をも招くおそれもあり、そうなればかえつて団結を害する結果に
なるため、労働組合は右過程を合理的に機能させる機構を組合内部に設置してその
利用を各組合員に保障する一方、内部統制権に基き組合員に対して意見を表明する
にはもつぱら右機構を利用すべき旨義務づけ、その他の方法はとらないよう制約を
加えることが必要となる。前記組合規約第一五条、第一七条はこの趣旨を定めたも
のといえよう。したがつて、組合は、組合員の組合機関以外の場における言論に対
しては、その言論の内容、表明の時期方法、表明するに至つた事情、組合内部の民
主性、組織状況、言論のおよぼす影響等の諸点から考えてみて合理的範囲におい
て、右組合規約に基いてこれを制約し、その違反については組合規約第六一条に該
当するものとして懲戒することができるものというべきである。
 ところで、別紙第一記載のビラの内容を検討するに、被申請人は三箇所の虚偽記
載を指摘するのであるが、まず、昭和四二年一〇月三〇日に申請人P7が組合事務所
へ会社からの申入文書を調べに行き、非組合員になるのはおかしいではないかと抗
議しているとの記載は、同申請人がその日、非組合員になることについて抗議した
と認むるに足る疎明はないが、他方前顕疎甲第二三号証、疎乙第四一号証によれば
同申請人が一貫して非組合員となることには抗争していたことが疎明せられるの
で、この態度に照すとむしろ了承の意を表明したと認めるに足る疎明もなされてい
ないというべく、右記載をもつて一概に虚偽と極めつけることはできないし、また
同年一一月四日P23委員長に本問題について疑問点が多く事情聴取したとの記載に
ついても前顕疎乙第四一号証によれば、その実態は同申請人が外数名とともにP
23委員長のもとへ押しかけて、同申請人を非組合員とすることについて種々難詰し
たものであると疎明されるけれども、かかる宣伝文書の記載としてはこの状況を
「事情聴取」と表現したからといつて、その当否は別としても、これらを直ちに虚
偽記載とまで断ずることはできないし、さらに「七対六の微差で執行部の提案が可
決された」との記載も、当日の大阪支部代議員会に出席していた代議員が一三名で
その賛否が七対六であつたことについては当事者間に争いがないところであるか
ら、右表現には議決に関して右代議員会の構成員である執行委員の態度につきこと
さら隠蔽し、それによつて読む者をして誤つた認識へ導こうとする意図も窺われる
にしても、かかる宣伝文書における記載としてはこの程度の脚色をもつて直ちに虚
偽であるとは極めつけられない。しかして、かかる宣伝文書においては与論の喚起
を投機的に試みるのあまり、応々にして情報に誇張や脚色が加えられまた一方の見
解が増幅されて伝達されるものであるが、別紙第一記載のビラの内容は、一方的見
解から組合の運営が著しく非民主的に行われている旨烈しく非難するものであつ
て、前述のような脚色や穏当を欠く表現も少なからず含まれているから、かかる文
書が同問題の審議や組合運営に関与しているはずの組合役員五名を含む一三名の一
団によつて公然と配布されたならば、配布を受けた組合員におよぼした影響は少く
ないと思われる。
 つぎに、ビラの配布された時期および配布されるに至つた事情等を認定すると、
前顕疎甲第二三号証の一部、疎乙第一三、第四一号証、成立につき当事者間に争い
がない疎甲第二一、第二二号証、疎乙第一二、第七二、第八七号証、弁論の全趣旨
により成立を認める同第六九号証および証人P26の証言および申請人P1の本人尋問
の結果の一部、被申請人代表者本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すれば
次の事実が疎明せられ、甲第二三号証とP1の供述中左記認定に反する部分は、にわ
かに措信しがたい。
(1) 申請人らは、遅くとも昭和四一年頃から組合運動に関して現組合執行部に
対抗するグループを結成し、同年と昭和四二年の一〇月には執行委員選挙にも立候
補していた。
(2) 申請人P7は、昭和四二年一〇月二八日頃会社のP11勤労課長から、重要な
会社機密に関する職務をさせるから非組合員になつてくれと言われたがこれを断わ
り、同月三〇日には組合事務所で、組合にもその旨を会社から文書で申入れされて
いることを確認していたところ、同年一一月二日の組合大阪支部代議員会において
執行部より、会社から同申請人を非組合員にしたいとの申入があつたのでこれを了
承したい旨の議題が出されたため、同申請人は「私は会社の申入を断つた」と発言
し申請人P4、同P2も反対し、さらに申請人P7が後日の証拠収集のためにとテープ
レコーダーで録音しようとしたため、同代議員会は結論の出ないまま審議を打切つ
た。そこで執行部は会社に対して、会社の説明が本人の言い分と食違つているこ
と、もし会社が同申請人の業務内容を真実変更するつもりならば充分本人を納得さ
せるように申し入れた。さらに、同月四日には申請人P6を除くその余の申請人六名
が外三、四名とともに組合のP23委員長を別室に呼出したうえ、申請人P7を非組合
員にするななどと口々に難詰し抗議した。その後、会社のP8総務部長から組合に、
申請人P7の了解も得た旨の返答があつたので、組合では同年一二月一三日の大阪支
部代議員会で執行部から再度右案件につき了解が求められ、採決された結果申請人
ら六名の反対を除く執行委員代議員の一四ないし一五名の賛成を得て、申請人P7を
非組合員にすることが承認された。そして、会社と組合は、同月二六日以降同申請
人を非組合員として取扱つた。しかしその後も、昭和四三年一月三一日昼休み時間
中に大阪支部代議員会が開催されたところ、その開催直前に申請人P2はP10書記長
に対し、申請人P7の業務内容が非組合員となつた前後で変りないからその点につき
緊急動議を出したい旨口頭で申し入れたが、P10から当日の委員会には時間の余裕
もないので委員会終了後にゆつくり事情を聞きたい旨返答されてこれを了承し、委
員会終了後組合事務所において申請人P2、同P1、P5、申請外P27とP23、P10と
の間で右緊急動議提出の件につき話し合われたところ、席上P23らが、その件につ
いては質問形式でやるべきこと申請人P7の業務の変更は徐々に行われるであろう旨
答えたので、申請人P2らにおいては、緊急動議提出の件については執行部に受理を
拒絶されたもの、と解して面談を終えた。かくして、同年二月二日に第一次ビラ配
布が行われた。
 なお、右経過中に申請人らを含む組合関係者間において、申請人P7を非組合員と
する件が組合規約第二九条第二号に定める「重要な会社提案」に該当ししたがつて
中央委員会の議決を要するから前記代議員会の決議は無効であるなどと考えた者は
なく、関係者すべてが右案件は大阪支部代議員会の議決事項であると考えていた。
(別紙第一記載のビラ参照)
(3) 組合では、昭和四三年一月三〇日の大阪支部代議員会において同年春闘第
一次方針案の職場討議の意見集約および春闘要求案作成小委員会で立案した春闘要
求案の概略説明等が行われ、同年三月一〇日の第一回春闘要求提出をめざして組合
の春闘要求案作成およびスト権確立のために組合員の意思を集約して行く段階にあ
つた。
 さらに前顕疎乙第一六号証、成立につき当事者間に争いがない疎甲第一号証、疎
乙第六号証、前記P26証言により成立を認める同第六二号証によると、組合大阪支
部代議員会では代議員総数一八名中五、六名というかなりな数を申請人らのグルー
プが占めており、これらの代議員が職場大会を開いて申請人らの所信を訴えればか
なり広範囲の組合員に問題を伝えることができたし、その結果組合員からの支持が
得られればこれを基盤にして中央大会を招集させたりまた再度代議員会で審議しな
おせば、申請人らの意見の占める比重がさらに増大したであろうし、あるいはかか
る手順をふまなくても代議員会で質問や再審議することも要求できたはずであつ
て、このように申請人らにおいては組合機関を通じても言論、審議等の活動を行な
う機会が十分にあつたことが疎明せられ、申請人らがかかる活動しようとするのを
執行部が故意に妨害するおそれがあつた、と窺うに足る疎明はない。
 以上論述して来たように、申請人P1らが行つた第一次ビラ配布は、文書の内容配
布の時期と方法に照らせば組合員の心理を相当に動揺させてその団結にも少なから
ず悪影響をおよぼしたであろうことが推認される一方、申請人P1らにおいてはかか
る方法によるほか組合機関を通じたのでは言論活動が出来なかつたような事情は何
ら見当らないのである。そうすると、右行為は組合規約第一五条第一七条に違反し
て第六一条第一、二号に該当するから、組合が統制権を行使して申請人P7を除くそ
の余の申請人らに対して懲戒したのは正当であり、また第一次処分で行われた懲罰
の程度が組合に認められている裁量権の範囲を逸脱するほど著しく過重であるとも
思われないから、結局第一次処分には違法がない。
(三) 本件権利停止処分について。
1 組合が昭和四三年三月六日に、「(1)申請人P1、同P2、同P4、同P5に対
し、組合の役職を解任し、昭和四三年三月一一日より昭和四五年一〇月三一日まで
権利停止。(2)申請人P6、同P3に対し、前記同一期間の権利停止。」旨の懲戒
処分をしたことは当事者間に争いがなく、成立につき当事者間に争いがない疎甲第
六号証によれば、申請人P2、同P5、同P4、同P6、同P3については、第一次処分
によつて命ぜられた戒告に伴う始末書提出および賦課金納付を履行しなかつたこ
と、申請人P1、同P4、同P6については、同月四日に行われた申請人P7のビラ配
布行為に立会つたこと、が懲戒事由であると認められる。
 そして、申請人P2ら五名が命ぜられた始末書提出および賦課金納付を履行しなか
つたこと、同P1ら四名が後記申請人P7のビラ配布に立会つたことは当事者間に争
いがなく、同申請人が同月四日に別紙第二記載のビラを配布したことは申請人らの
自認するところである。また、右処分の根拠となるべき組合規約の適条について
は、被申請人において明確な主張はないけれどもその主張の全趣旨に照らせば、第
一次処分同様に組合規約第六一条第一、二号を適用したことが一応認められる。
2 そこで、まず申請人P2ら五名が第一次処分で命ぜられた義務を履行しなかつた
ことが、前記組合規約に該当するかを考えるに、組合の懲戒処分とは組合員の非行
に対する応報的な不利益処分というものではなく、組合の内部統制をしてゆくため
の裏付けとなる行為と解するのを相当とするから、これに付された組合員が命ぜら
れた義務を履行しなければ組合の統制も何ら実を挙げ得ないことになるのであつ
て、かかる態度をとる組合員に対しては組合はこれを統制違反と評価して、さらに
それを統制しその実を挙げるべく懲戒を加えることも許容される、といわねばなら
ない。そして、これを評して同一懲戒事由に対する二重処分ということは、当を得
ておらない。
 つぎに、申請人P1ら四名が同P7のビラ配布に立会つた件について考えてみる
と、別紙第二記載のビラの内容は別紙第一記載のビラほどではないにしても組合運
営が非民主的に為されている旨組合執行部を誹謗するところがあり、かかる文書の
配布に申請人P1ら四名が立会うことは前記第一次処分についての項で述べたと同様
の理由によつて、組合の統制を乱し組合の運営を妨げたときにあたるというべきで
ある。
 したがつて、組合が申請人P7を除くその余の申請人らに対して前記各行為につき
組合規約第六一条第一、二号を適用して懲戒することは正当である。しかしなが
ら、その懲戒処分の結果をみると、右申請人六名については、右権利停止期間中各
種組合機関の審議および意思決定に参加することができなくなるほか、昭和四三年
度ないし四五年度(弁論の全趣旨によると、同年度の組合役員選挙は一〇月末頃ま
でには完了していると推測される)の組合役員選挙に参加する機会を失うほか、右
申請人らのうち同P1、同P2、同P4、同P5については、さらに昭和四二年度中央
委員兼大阪支部代議員の地位を失うことになる。そして、それが組合活動に参加す
ることを志す者に対して重大な苦痛を強いることは明らかである。しかして、前述
した申請人らの統制違反の程度に比較すれば、右懲戒処分における権利停止期間は
著しく長期に過ぎるというべきであるから、その長期に過ぎた超過期間分について
は組合の統制権を逸脱したものとして違法無効になるというべきであり、少くとも
本件の最終口頭弁論期日である昭和四四年七月一〇日現在では本件権利停止処分は
失効していると解される。(なお、前述のように、昭和四三年六月八日の中央委員
会で申請人P7を非組合員とする旨議決されたのであるが、当時においては権利停止
期間が未だ長期に過ぎておらないことは明らかであり、したがつて右委員会の構成
には瑕疵がない。)
 なお、被申請人は、申請人らの前記各行為につき、従前から行われて来た諸々の
組合破壊活動との結びつきを指摘するが、かかる事情については未だこれを認める
に足る疎明がなく、申請人らが従来から組合執行部に対し批判的であつたからとい
つて当然にその情状が加重されるものでもない。
 また、成立につき当事者間に争いがない疎乙第一七ないし第二〇号証、第三五な
いし第四〇号証、第五五ないし第五九号証、第七八ないし第八四号証、証人P28の
証言により成立を認める同第四四ないし第五〇号証、第六〇号証、弁論の全趣旨に
よつて成立を認める同第三二号証および証人P28の証言ならびに弁論の全趣旨によ
ると、申請人らは、本件権利停止処分後においてもその統制処分に誠実に服そうと
せずに執行部を誹謗するビラ配布活動を続けており、そのために組合では団結が崩
されるのをおそれてあらたな運動方針として「組織を守る闘い」をすすめているこ
とが疎明されるけれども、かかる事情は申請人らに新らたな統制を行う事由とはな
り得ても、本件権利停止処分の適否を判断するための資料とすることはできない。
四、保全の必要性について。
 以上のように、現在では本件権利停止処分は失効し、組合は申請人P7を除くその
余の申請人らを組合員の権利を有する組合員として取扱う義務があるところ、組合
は前記処分が為されたことを理由に同申請人らに対し、組合活動から排除し、ある
いは組合の意思決定に参加させないでいる。ところが、同申請人らは前記認定の如
く活発な組合活動家で、ことに組合執行部に対し批判的な立場にあつたものである
から、このまま組合活動が阻害されるようなことがあれば、償うべからざる損害を
蒙ることは明らかである。従つて、これを避けるために、右申請人らが現在組合の
組合員としての権利を有する組合員であることを保全する必要があるものというべ
きである。
五、そうすると、申請人P7の申請はその理由がないからこれを却下すべく、またそ
の余の申請人らの申請は正当であるから、無保証でこれを認容し、訴訟費用の負担
につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 大野千里 木原幹郎 近江清勝)
(別紙第一)
組合員の皆様に真相を訴える!
 過般組合ニユースで御存知のことと思いますが、本店一区P7代議員の非組合員扱
いの件につき会社より提案があり、執行部及び支部代議員会に於いて決議され、ご
く自然の形で処理されたかのように見えましたが、本人は非組合員になることを拒
否し続け又、組合運動を続けたい意志にもかかわらず非組合員の宣告を受けてしま
いました。
 ここに一般組合員の皆様にこの事件の経過を記し今後の組合運動のあり方につい
てもう一度考えて戴きたくここに真相を報告します。
一、四十二年十月三十日P10書記長より、P7代議員の席へ「君は会社より非組合員
になるように云われている」けど……と、P7代議員の意向を打診に行つているがP
7代議員としては非組合員になることを拒否し組合事務所へ会社より受けとつた文書
を調べに行き「非組合員になるのはおかしいではないか」と抗議している。
一、四十二年十一月四十二年度最後の支部代議員会に於いて組合として正式にP7代
議員の非組合員扱いの件を提出されたが、支部代議員会としては、会社側の提案と
本人の意志とに相違点があるため、支部代議員会としては了承できないとの結論に
達し、次期(四十二年度)代議員会に引継ぐことになつた。尚執行部としては、会
社側に了解する旨伝えたあとではあるが、本人の言い分との間に食違いがある為再
度調査の上決定したいとの意向を表明した。
一、四十二年十一月四日P23委員長に本問題について疑問点が多くあるため事情聴
取した。
一、四十二年十二月十四日四十三年度最初の支部代議員会に於いて、議題に含まれ
ず、その他の項目の中でP7代議員の非組合員扱いの問題を提案され、召集時間は十
二時十分~十三時までということであつたが、十二時五十五分から十三時五十分ま
で討議され、本件に関しては事前に連絡もなく、新代議員も多く、内容が全くわか
らない中で、次回支部代議員会に於て再度検討すべきだという意見にもかかわらず
強行採決され、代議員数十八名中出席者十三名(新代議員六名)で採決され七対六
の微差で執行部の提案が可決されました。
 しかしこの事件の中には大きな問題点が含まれています。第一に現代議員を非組
合員にするという会社の提案を現執行部は進んで承認したという事実である。会社
の提案理由は君の仕事の中で会社の機密に関するものをこれから扱つてもらう為と
いう理由ではあつたが現在でも仕事の内容は全くそれらに関係なく以前にも同じ仕
事をしていた人が支部代議員をやつており組合の姿勢として逆行している。
 第二に一般組合員にこの問題を知らさず又考える余裕を与えず執行部が抜き打ち
的に支部代議員会で決議した事である。
 第三に本人の意志を無視して組合幹部と会社側で事前に話合いを済ませており形
式的に代議員会で決議したということは今後の組合員の身分保証は危険にさらされ
る可能性を多分に含んでいることを意味しています。
 ここに良識ある組合員の皆様に訴え充分なるご批判を賜りたいと思う次第であり
ます。
組合員有志
(別紙第二)
“公平な組合員の皆様に御協力をお願いします”
 過般来より私の問題で組合員の皆様には大変迷惑をおかけしておりますがこの問
題については私事でかたずけることは出来ないと判断し、皆様の御協力をお願いす
る次第になりましたのでよろしくお願い申上げます。
 この問題の発端は組合執行部の独断的な取扱いによるものであり私の為に組合員
七名の方が懲罰を言渡され非常に遺憾に思つておりますがビラの内容については何
ら間違つておらず、いずれこの問題の白黒が判明され七名の方の無実が証明される
でしよう。
 私が非組合員になることについては終始一貫して反対しており職制においてもい
ろいろ強制もされて来ました。しかしそれにも耐えしのび、組合を通じて何とか組
合員(中央代議員)で残れるように身分保障の申入れを何回もしましたが職務の内
容が会社の機密に関する仕事をやつてもらうからという会社の提案であつたのでそ
の時点で職場の配置転換を希望しました。しかし委員長は取上げる事は出来ないと
却下してしまい最終的には代議員会で強行採決され十二日後正式に職制より非組合
員になるよう言渡されました。
 このような重要な問題について組合員に一言も知らせず代議員会(議題はその他
の項で扱い)だけで強行採決されることは労働組合運動からはずれており、又会社
側の一方的な行為に対しては「大阪地方労働委員会」へ不当労働行為について二月
十五日に申立を行ないました。今一度労働組合運動の民主的な運営に戻す為に頑張
つております。
 最後に、68春闘の大切な時期ではありますが皆様の暖かいお力添えにより一日
も早くこの問題を解決したく努力しておりますので何分にもよろしくお願い申上げ
ます。
前中央代議員 P7

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