弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
    原判決を破棄する。
    本件を名古屋高等裁判所金沢支部に差し戻す。
         理    由
 上告代理人金井和夫の上告理由について
 原審の適法に確定した事実によれば、
 (一) 福井地方裁判所は、抵当権者Dの申立により、債務者E、同Fの各所有に
かかる本件不動産につき競売手続を開始し、被上告人は昭和三八年一二月一二日代
金一〇七〇万円でこれを競落したところ、競落代金の支払をしなかつたので再競売
に付せられたが、再競売期日の三日前までに買入代金、代金支払期日より代金支払
日までの利息及び手続の費用合計四万四三二三円を支払つたので、昭和三九年三月
九日再競売手続は取消となつた。
 (二) 上告人は、右競売手続において配当要求をしたが、上告人が本件不動産に
ついて有する根抵当権及び右根抵当権によつて担保される債権として届け出たもの
は、次のとおりである。
 (イ) 訴外株式会社G相互銀行は、昭和三三年一二月一八日債務者F及び連帯
保証人Eとの間に、F振出、裏書、引受若しくは保証にかかる手形債務につき、手
形が要件の欠缺により無効となつた場合、権利保全手続の欠缺により手形上の権利
が消滅した場合及び偽造、変造、滅失した場合でも手形金額と同額の債務を負担し、
損害金とともに弁済する旨の特約を付した手形取引契約を締結し、右契約上現在取
得し及び将来取得することあるべき債権を担保するため本件不動産につき、元本極
度額三〇〇万円、遅延損害金日歩五銭の約の根抵当権設定契約を締結し、同日その
登記を経由し、上告人は、昭和三七年一〇月二九日右訴外銀行、F、Eとの間にお
いて、前記手形取引契約を、現存債権をも含め根抵当権つきのまま承継することを
約し、その旨の根抵当権移転の登記を経由し、F及びEは、自己に対する同銀行の
現存債権はもちろん、上告人が現に取得し又は将来取得することあるべき債権もす
べて右根抵当権の被担保債権となることを確認した。
 (ロ) 訴外Hは、昭和三四年一一月一二日債務者E、連帯保証人Fとの間に、
Eの現在若しくは将来の借受金及び裏書又は保証した約束手形並びに為替手形上の
債務その他債務一切を担保するため、本件不動産につき元本極度額二〇〇万円、遅
延損害金年三割、手形が法律上の要件を欠き又は手続の欠陥により債務者が支払又
は償還を免るべき場合においても免責を主張せず、独立した民事の債務を負担した
ものとしてその元利金を弁済する旨の特約を付した根抵当権設定契約を締結し、同
月一三日その登記を経由し、上告人は、昭和三五年四月一四日E、Fの承諾のもと
にHより右根抵当権をその基本契約とともに譲り受け、その旨根抵当権移転の登記
を経由した。
 (ハ) 上告人は、右(イ)の根抵当権によつて担保される債権として、
 (1) 金額二一万〇三三五円、満期昭和三五年四月一〇日、振出地・支払地福井
市、支払場所株式会社I銀行J支店、振出人上告人、受取人F、支払人・引受人K
商事株式会社、第一裏書人F、第二裏書人Eとの記載がある為替手形、
 (2) 金額六七万四九〇五円、満期昭和三五年四月二〇日、その他の記載(1)と
同じ為替手形、
 (3) 金額七三万一四八五円、満期昭和三五年四月二五日、その他の記載(1)と
同じ為替手形、
 (4) 金額三〇〇万円、満期昭和三六年一〇月二一日、振出日昭和三六年九月二
九日、振出地・支払地福井市、支払場所株式会社G相互銀行J支店、振出人F、受
取人・第一裏書人株式会社G相互銀行との記載がある約束手形金の残額一三五万円
による債権を届け出で、
  前記(ロ)の根抵当権によつて担保される債権として、
 (5) 金額四〇万一七六〇円、満期昭和三五年三月一三日、その他の記載(1)と
同じ為替手形、
 (6) 金額四〇万三二六〇円、満期昭和三五年三月三一日、支払人・引受人L産
業株式会社、その他の記載(1)と同じ為替手形、
 (7) 金額二六万八八四〇円、満期昭和三五年四月一日、支払人・引受人L産業
株式会社、その他の記載(1)と同じ為替手形、
 (8) 金額六五万〇五七四円、満期昭和三五年四月三〇日、その他の記載(1)と
同じ為替手形、
 (9) 金額三五万円、満期昭和三五年九月二五日、振出日昭和三五年七月二六日、
振出地・支払地a村、支払場所a村M協同組合、振出人N、受取人・第一裏書人O、
第二裏書人E、第三裏書人Fとの記載がある約束手形の内金二七万五五六六円
による債権を届け出た。
 (三) ところで、右(1)ないし(3)及び(5)ないし(8)の為替手形は、いずれも
振出日の記載がなく、また、支払呈示期間内に支払のため支払場所に呈示されてお
らず、かつ、これになされたF及びEの裏書は期限後裏書であり、また、(9)の約
束手形は、支払呈示期間内に支払のため支払場所に呈示されておらず、しかもこれ
になされたFの裏書は期限後裏書であつて、右各手形の所持人である上告人は、そ
の裏書人であるF及びEに対し遡求権を行使しえないから、なんら手形上の債権を
有しない。
 (四) 福井地方裁判所は、昭和三九年三月一八日の配当期日に原判決添付別紙甲
号目録記載のとおり売得金交付明細表を作成したところ、被上告人は右配当期日に
おいて上告人に対する配当金七〇九万七三八四円の全部について異議を申し立て、
上告人がこれを承諾しなかつたので、右異議は未完結に終つた。
というのである。
 原審は、右事実に基づき、F及びEは、右各根抵当権を設定する際上告人に対し
手形要件又は権利保全手続の欠缺等により手形上の権利が消滅した場合においても
手形金額と同額の債務を負担する旨特約しているから右特約による金額の支払義務
を免れないけれども、右各根抵当権の被担保債権は登記簿上手形取引若しくは手形
割引契約に基づく債権と表示されているので、第三者に対する関係では手形上の債
権のみが被担保債権となり、特約による債権は被担保債権となりえず、したがつて、
上告人の本件配当要求にかかる債権のうち被上告人において異議のない(4)の手形
の残元金一三五万円とその利息三四万一五五〇円の合計一六九万一五五〇円を除く
その余の債権はいずれも優先権がなく、排斥を免れない、よつて前記甲号目録売得
金交付明細表は乙号目録のとおり変更すべきところ、Dは甲号目録に異議を述べて
いないので、被上告人の異議によつて配当額に影響を受けないものと解すべく、上
告人に優先配当できない部分は被上告人の債権額の限度で被上告人に配当し、残額
は一般債権に対し比例分配法により配当すべく、その明細は原判決添付別紙丙号目
録売得金交付明細表のとおりになるとして、被上告人の配当異議の請求を棄却した
第一審判決を取り消し、福井地方裁判所が作成した甲号目録売得金交付明細表を右
丙号目録のとおり変更している。
 しかし、根抵当権の登記に登記原因として当事者の氏名の外特定の継続的取引契
約及び根抵当権設定契約の各日付及び名称の記載があるときは、これらの登記簿上
の記載から特定される契約において当該根抵当権により担保せらるべきものとして
当事者間に合意された債権は、原則としてすべて当該根抵当権の被担保債権の範囲
に属することを根抵当権者において第三者に対し主張することができるものと解す
べきであり、右登記簿記載の名称がたまたま「手形取引契約」又は「手形割引契約」
であるからといつて、第三者に対し主張することができる被担保債権の範囲を手形
上の債権のみに限定すべきではない。そして、不動産競売手続において根抵当権者
が配当要求をして債権を届け出た場合は、特段の事情のないかぎり根抵当権によつ
て担保される有効な債権を届け出た趣旨であると解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、前記原審の認定した事実によれば、上告人は前記特
約による債権を届け出たものとみる余地があり、そうすると、上告人はその届出に
かかる特約による債権が上告人の有する根抵当権の被担保債権の範囲に属するもの
として被上告人に対し優先弁済を主張することができるものというべきである。こ
れと異なる見解に立ち被上告人の配当異議を肯認した原判決には、法令解釈の誤り
があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。それゆえ、
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないところ、本件はなお審理の必要がある
ので、これを原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    団   藤   重   光

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