弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aに対する原判決及び第一審判決並びに被告人B同Cに対する原
判決を破棄する。
     各被告人を免訴する。
         理    由
 被告人Aの弁護人隈部種樹の上告趣意、被告人B、同C両名の弁護人大田政作の
上告趣意は末尾添付のとおりである。
 職権により調査すると、本件公訴事実は、
 一、被告人AはD、Eと共謀の上aに密輸出入の目的で、(一)昭和二八年九月
初旬頃税関の免許を受けないで本渡市b港c突堤においてa向の漁船Fに硫安三〇
俵(原価二三〇〇〇円相当)を積込みもつて密輸出し、(二)同年九月中旬頃aに
おいて右Fに込真鍮等スクラツプ一三一八斤(原価一三万三〇〇円相当)を積載輸
送し、税関の免許を受けないでb港突堤にこれを陸揚げ輸入して関税六一二五円を
逋脱し、
 二、被告人三名はDと共謀の上、aに密輸出入の目的で、(一)昭和二八年九月
下旬頃税関の免許を受けることなく長崎市d港においてa向け前記Fに塩鯖三〇〇
貫、リンゴ一〇箱(原価計七四四〇〇円相当)を積込みもつて密輸出し、(二)同
年一〇月初旬頃aにおいて右Fに砲金等スクラツプ八六七斤(原価八二〇〇〇円相
当)を積載輸送し、税関の免許を受けないでb港突堤にこれを陸揚げ輸入して関税
四一〇〇円を逋脱し、(三)同月下旬頃aにおいて右Fに真鍮棒三二本(三、二〇
〇斤、原価三〇万八四〇〇円相当)を積載、輸送し、税関の免許を受けないでb港
突堤においてこれを陸揚げ輸入して関税一五四二〇円を逋脱し、(四)同年一一月
初旬頃税関の免許を受けないでb港突堤においてa向け右Fに小麦粉二〇〇袋(原
価一七万円相当)を積込みもつて密輸出し、(五)同年一二月中旬頃aにおいて右
Fに込真鍮等スクラツプ四五九五斤(原価三五万一九七〇円相当)を積載、輸送し、
税関の免許を受けないでb港突堤においてこれを陸揚げ輸入して関税一六七二五円
を逋脱し、
 三、被告人Cは日本人であるが、出国の手続を受けることなく密貿易の目的で昭
和二八年九月初旬頃から同年一一月初旬頃までの間出入国港でない天草郡e町f港
等からaに向け右Fに乗船して出港しもつて不法に本邦より出国した、というので
ある。
 しかるところaは右犯行当時においては、関税法及び出入国管理令の適用につい
てともに外国とみなされていたのであるが、昭和二八年一二月二四日政令四〇七号
及び同年同月同日法務省令八九号により、同月二五日以降は、ともに外国とみなさ
れなくなり、本邦の地域とせられることとなつた。従つて同日以降は、本件の各行
為は何ら犯罪を構成せず、行為の可罰性は失われたものであつて、刑訴三三七条二
号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に当るものと解すべきことは、
昭和二五年(あ)第二七七八号同三二年一〇月九日大法廷判決の示すとおりである。
 よつて刑訴四一一条五号により被告人Aについては原判決及び第一審判決を、被
告人B同Cについては原判決をいずれも破棄し、同四一三条、四一四条、四〇四条、
三三七条二号により各被告人を免訴すべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文
のとおり判決する。
 検察官 山内繁雄出席
  昭和三二年一二月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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