弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件は被告人が昭和三六年八月一〇日付控訴取下申立書をもつてなした
控訴の取下によつて終了している。
         理    由
 本件申立の要旨は弁護人鷲見弘の差しだした控訴取下無効申立書及び被告人本人
の差しだした上申書に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用する
が、所論は要するに、被告人は極度に異常な精神錯乱ないしこれにちかい精神状態
において控訴の取下をしたのであるから、その取下は無効であるというのである。
 所論に鑑み記録を精査し、当審においてなした事実取調の結果を参酌するに、ま
ず被告人が昭和三六年四月二二日名古屋地方裁判所において強盗殺人被告事件につ
いて、有罪と認定せられ被告人を死刑に処する旨の判決の言渡をうけたので、これ
を不服として同年四月二八日原審弁護人がまず控訴の申立をなし、ついで同年五月
二日被告人も控訴の申立をしながら、同年八月一〇日当高等裁判所へ被告人名義の
同日付控訴取下申立書を提出したものであることは記録上明らかである。
 ところで当審証人A、同Bに対する各証人調書と名古屋拘置所長C作成の「被告
人の精神状態について」と題する書面、鑑定人D作成の鑑定書、被告人に対する当
裁判所の審尋調書を総合すると、被告人は強度の吃音者であつて、原審判決の言渡
のすこし前ごろからつよい厭世感におそわれ、死刑の判決の言渡をうけながら控訴
の申立もなさず、名古屋拘置所の看守ら担当職員の懇切な指導と熱心な勧奨にも耳
を籍そうとせず原審弁護人がなした控訴の申立にすら、むしろつよい不満の意を示
していたほどであつたが、その後ようやく翻意し、みずからも一旦前記のことく控
訴の申立をしたけれども、間もなくまた気がかわり、やはり控訴を取下げたい旨つ
ね口にするにいたり、当審の公判にも出頭することを肯せず、同年七月二二日当高
等裁判所へ宛て「一審裁判所で申したことに間違いない。また何も弁解することは
ない。一日もはやく刑に服したいから早く判決してほしい」旨の上申書を差しだ
し、ついで拘置所の看守ら担当職員の実に三日間にわたる熱心な指導と諌止にもか
かわらず、前記のような控訴取下書を提出するにいたつたのである。被告人は元来
知能水準こそ大体正常知の範囲内にあるが、病的ともみられるような短気かつ一徹
な性格の持主であつて、本件において老婆と幼児の二名までも惨殺したことに対す
るふかい悔悟と絶望の念から、熟慮のすえ取下の挙にでたものであることは疑な
く、その当時における被告人の精神状態としては、かくのごとき場合被告人のよう
な異常な性格の持主ならずとも、その心の平静を保つことの至難なことはいうまで
もないのであるから、被告人が当時その精神状態に可成りの動揺を来たしていたで
あろうことはもとよりこれを窺知するに難くはないけれども、そうかといつて所論
のように被告人が精神錯乱などにより自己の防禦上の利害を理解し、それにしたが
つて行動する能力を欠如していたものと認めるに足る証拠は存しない。なお弁護人
の所論引用の刑事訴訟法第三六〇条の二は死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処す
る判決については、上訴権の放棄を許さないものとしているけれども、その法意は
軽卒になされることのあるべき上訴権の放棄を防止しようとするにあるのであつ
て、すでになされた上訴について、この程の判決に限り、上訴の取下を一切許さな
いものとする趣旨でないことは多言を要しない。したがつてこの規定を類推又は拡
張解釈して本件控訴の取下を無効と解しすべきものではない。してみると、被告人
が本件被告事件について、昭和三六年八月一〇日付控訴取下申立書によつてなした
控訴の取下は有効であつて、本件はこれにより終了したものというべく、よつて主
文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 小林登一 裁判官 成田薫 裁判官 斎藤寿)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛