弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 検察官の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例は、いずれも、
事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、すべ
て刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、原判決は刑訴法四一一条一
号、三号により破棄を免れないものと認められる。
 すなわち、原判決は、第一審で取り調べた証拠により、「本件起訴にかかる被告
人らのジグザグ行進は、大阪市a区bc丁目交差点東側から西側にいたるまでの約
二十数メートルの間になされたものであつて、右交差点では、昼夜間を通じ交通頻
繁であるけれども、ジグザグ行進したその距離は上記のごとく比較的短かく、時刻
もすでにラツシユ時をすぎるころであつたこと、横断に際しては同交差点の『進め
』の信号に従い、社青同Aら約六〇名とともに(この社青同梯団は、約三〇〇名に
よりなる集団の中央部あたりを行進)道路使用許可条件に定められた経路、通行区
分を変更することなく、四列縦隊の隊列のまま互いに腕、肩等を組み、被告人の誘
導で歩くよりは少し早い速度で掛声をかけながらジグザグ行進を行い、交差点の西
側に達するや、直進状態にもどつていること、その間、前後三回にわたりジグザグ
行進を行つたけれども、これに要した時間は約二、三分間にすぎず、ジグザグの振
幅も北側が交差点中央付近までのもので大きいものでもなかつたこと、右交差点に
おける当時の交通状況は、西から来た車両が右折(南行)するため待機していたも
のが一四、五両あつたが、通行人はさほど多くなく、ジグザグ行進によつて特に交
通秩序に著しい障害、危険等をもたらしたという程のこともなかつたこと、被告人
ら約六〇名の社青同梯団員がただ徒らに気勢をあげ、そのために集団自体の自己統
制力に弛緩を生じ、通行車両や通行人と衝突、接触するなど無秩序、又は暴行等の
越軌行動にまで発展するおそれがある状態ではなかつたことが認められる。」とし、
「被告人の本件行為は、外形的には市条例(昭和二三年大阪市条例第七七号行進及
び集団示威運動に関する条例)五条の『公安委員会が付した条件に従わなかつたも
の』に該当するものということができるけれども、本件ジグザグ行進は、その規模、
速度、隊列、振幅、気勢、当時の交差点における交通状況等を総合考察すると、比
較的穏かなものの部類に属すること、および集団示威行進そのものは、表現の自由
として憲法上保障されていることをあわせ考えると、社会の通念上、これに臨むに
敢えて刑罰を加えなければならない程の違法性を具有するものとは考えられず、い
わゆる可罰的違法性がない場合とみるのが相当であり、結局、市条例五条違反の犯
罪は成立しないものである。」としているのである。
 ところで、被告人は、大阪府公安委員会が市条例四条三項の規定により、群衆の
無秩序又は暴行から一般公衆を保護するため必要と認めて定めた「行進は平穏に秩
序正しく行い、シグザグ行進など一般公衆に対し迷惑を及ぼすような行為はしない
こと」との条件に違反して約六〇名の者とともにジグザグ行進をしたものであると
ころ、集団示威行進等の集団行動は、表現の一態様として憲法上保障されるべき要
素を有するものであるが、ジグザグ行進のような行為は、このような思想の表現の
ために不可欠のものではなく、これを禁止しても憲法上保障される表現の自由を不
当に制限することにならないのであつて(最高裁昭和四八年(あ)第九一〇号同五
〇年九月一〇日大法廷判決参照)、許可条件違反のジグザグ行進は、それ自体、実
質的違法性を欠くようなものではなく、原判決は、この点において、本条例五条、
四条三項の解釈適用を誤つたものというべきである。更に、本件記録によつて考察
すると、本件bc丁目交差点は、その位置、規模、当時における交通量等からみる
と、大阪市における有数の交通の要衝であつて、本件当時における交通状況とその
渋滞の状況も原判決の指摘する程度のものにとどまらず、また、被告人の誘導した
ジグザグ行進が同交差点を「進め」の信号で横断し、これに要した時間が約二、三
分間にとどまることをえたのは、ひとえにその際警察官によつて信号機を特に自動
信号から手動信号に切りかえる措置がなされたほか、適宜の規制がなされ、機動隊
広報車からも警告がなされたこと等によるものであつて、被告人らの梯団がその自
己統制力を保持していた結果であるとはいえないふしがあるのみならず、前記説示
の如く原判決認定の事実を前提とするにしても、これをたやすく実質的違法性を欠
くものと認めることはできず、結局、原判決には、法令の解釈適用の誤り及び審理
不尽ないしは事実誤認の疑いがあり、原判決の右違法は、判決に影響を及ぼし、か
つ、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よつて、刑訴法四一一条一号、三号により原判決を破棄し、同法四一三条本文に
従い、本件を原審である大阪高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意
見で主文のとおり判決する。裁判官Bは退官のため評議に関与しない。
 検察官 臼井滋夫公判出席
  昭和五〇年一〇月二四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    吉   田       豊

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛