弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人天方徹の上告受理申立て理由第1について
1本件は,被上告人が,貸金業を営む上告人の従業員から上告人の貸金の原資
に充てると欺罔され,当該従業員に金員を交付して損害を被ったことにつき,当該
従業員の行為が上告人の事業の執行についてされたものであると主張して,上告人
に対し,民法715条に基づき損害賠償請求をする事案である。
2原審の適法に確定した事実関係は,次のとおりである。
(1)上告人は貸金業等を目的とする株式会社である。
(2)平成16年3月ころ,上告人の従業員であったAは,真実は上告人から横
領した金員の穴埋めに充てる意図であったのに,これを秘して,被上告人に対し,
余裕資金があれば上告人に運用させてほしいと申し向けた(以下,Aの上記行為を
「本件欺罔行為」という。)。被上告人は,これに応じて,同月31日から平成1
8年3月10日にかけて,8回にわたり合計3100万円をAに交付した。
(3)Aは,被上告人から上記金員を受領する都度,自らパソコンを用いるなど
して作成した預り証8通を被上告人に交付していた。上記預り証のうち7通には,
当時の上告人の商号(株式会社B)及び代表取締役の氏名が印字されていたが,会
社印等は押捺されておらず,うち1通には,上告人の商号及び代表取締役の氏名の
記載すらなく,いずれについても,Aが個人名を自署し,押印しており,中にはA
の母の氏名及び連絡先が併記されたものもあった。
(4)被上告人は,Aから,貸金の利息名目で合計1319万円を受領した。
3原審は,次のとおり判断して,被上告人の上告人に対する請求を一部認容し
た。
上告人は貸金業を営んでいるから,貸金の原資を調達することは客観的,外形的
にみて上告人の被用者の職務に含まれる。上告人の商号が記載された預り証が授受
されていたこと,交付された金額が3000万円を超えるものであったことに照ら
せば,被上告人とAとの間の金員の授受は,単なる個人的な取引ではなく,上告人
の被用者の職務である資金調達としての外形を備えていたというべきである。した
がって,Aの本件欺罔行為は,上告人の事業の執行についてされたものであるか
ら,上告人は,民法715条に基づき,これにより被上告人が被った損害を賠償す
る責任を負う。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
上告人は貸金業を営む株式会社であって,Aを含む複数の被用者にその職務を分
掌させていたことが明らかであるから,本件欺罔行為が上告人の事業の執行につい
てされたものであるというためには,貸金の原資の調達が使用者である上告人の事
業の範囲に属するというだけでなく,これが客観的,外形的にみて,被用者である
Aが担当する職務の範囲に属するものでなければならない。ところが,原審は,貸
金の原資を調達することが上告人の事業の範囲に属するということのみから直ち
に,これが上告人の被用者の職務の範囲に属するとして,本件欺罔行為が上告人の
事業の執行についてされた行為に該当するとしたものであるから,その判断には,
民法715条の解釈適用を誤った違法がある。
5以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の
違反がある。論旨は理由があり,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして,被上告人は,Aが担当する職務の内容,上告人の資金調達に関するAの
職務権限,当該職務と本件欺罔行為との関連性等に関し,何ら主張立証をしていな
いのであって,貸金の原資の調達が客観的,外形的にみてAの担当する職務の範囲
に属するとみる余地はない。そうすると,被上告人の請求を棄却した第1審判決は
正当であるから,上記部分につき被上告人の控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官那須弘平裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官
田原睦夫裁判官近藤崇晴)

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