弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          決        定
          主        文
       原決定を取り消す。
       本件の本案事件を神戸地方裁判所に移送する。
          事 実 及 び 理 由
第1 抗告の趣旨
   主文同旨
第2 当裁判所の判断
 1 本件抗告の理由は,破産管財人弁護士と弁護士本人である抗告人ら(被告
ら)の現住所は神戸市であり,東京地方裁判所まで交通費をかけて出頭すること
は,多額の費用を要し,その費用については,抗告人らが勝訴しても,訴訟費用
では賄えないし,破産管財人の報酬に加算されることもありえず,これにより抗告
人らの被る損害は回復できないものであること,また,本案事件の審理に当たり
電話会議やテレビ会議を活用するといっても口頭弁論ではこのような便法を用い
ることができないこと,さらに,原決定は,本件が,破産管財人が職務上処理する
公的事件であることを考慮しておらず,不当であるなどというものである。
 2 そこで検討するに,本件は,破産会社が,相手方(原告)との間において,破
産会社の敷地内に保有している清酒について流動集合動産譲渡担保契約(本件
契約)を締結していたところ,破産会社の破産宣告により目的物たる清酒は固定
化され,相手方は同清酒に関し,動産譲渡担保権者としての地位を得たが,抗告
人破産管財人がこれを相手方に無断で売却したとして,相手方が抗告人らに対
し,損害賠償を求めた事案である。
 原審裁判所は,本件が不法行為訴訟であり,不法行為の義務履行地は債権者
住所地であるとして,本件について東京地方裁判所の管轄を認めたようである。
しかし,本件は,契約当事者間における不法行為が問題となっているのである。
そのような場合の義務履行地は,契約上の義務履行地にあるのが通常である。
単純に不法行為訴訟であるから,不法行為債権の債権者住所地に管轄があると
いうことにはならない。そして,本件について,契約上の義務履行地がどこかは,
必ずしも明らかではないが,譲渡担保契約であることからして,担保物の所在地
である兵庫県である可能性がある。
 そしてまた,不法行為訴訟において,債権者住所地を義務履行地として,そこに
最終的に管轄を認めるべきかどうかは,被害者である原告の救済の必要性の程
度と,訴えられる被告について訴訟法上認められる保護を剥奪してよいかどう
か,更に,争点に関連する証人,本人の住所地等の審理上の必要を総合して,決
すべきである。
 本件について,これをみると,被害者である原告の救済の必要性は,本件の被
害が人身の損害ではなく,取引上の損害であることからすると,必ずしもこれを絶
対視すべきものではない。
 次に,訴えられる被告について,訴訟法がその住所地に普通裁判籍を認めて保
護している趣旨からすると,本件の場合も,被告となる破産管財人(その実質は
破産財団である。)及び破産管財人に就任している個人が法廷に容易に出頭で
き,十分に攻撃防御する機会が与えられるべきであるとの立場を軽視すべきもの
ではない。抗告人らの主張によれば,抗告人らが勝訴したとしても,口頭弁論に
出頭するための高額の経費等が,事実上抗告人らの負担となるというのであり,
この点も無視しえない点である。
 上記の当事者双方の立場を比較衡量をするならば,本件において,原告住所
地に管轄を認めるのは,訴訟法の観点からみて,均衡を保った考え方であるとは
いい切れない。
 そして,本件において予想される争点は,本件契約の有効性(特に目的物の特
定性の有無),抗告人破産管財人が上記担保物を処分するに至った経緯及びそ
の処分の有効性,相手方の被った損害額並びに破産管財人としての職務行為に
ついて,その任にある個人について賠償責任を問うべき事実関係の存否である。
そして,一件記録によれば,抗告人破産管財人や破産会社の社員ら本件契約の
締結及び上記担保物の処分に関わった関係者はいずれも兵庫県に在住すること
が認められる。
 そして,本件契約の有効性については契約書(甲第3号証)の解釈問題という面
があり,また,損害額についても相当程度書証による立証が可能であるとはい
え,目的物の特定の点や,上記担保物処分の経緯等については,抗告人破産管
財人や破産会社の関係者等を人証として調べる必要性があることは否定できな
い。電話会議やテレビ会議システムの利用による争点整理や証人尋問も可能で
あるとはいえ,本件のような複雑な事案において,直接面談のうえ審理することの
意義を軽視すべきものとは思われない。そうすると,本件の審理上の必要からす
ると,被告の二人と証人等の住所地である神戸地方裁判所の方が圧倒的に審理
の場として東京地方裁判所よりも優れているといわざるを得ないのである。
 以上検討の結果によれば,東京地方裁判所には,本件について管轄権を肯定
すべきではないか,仮に形式的には肯定されるとしても,本件については,当事
者間の衡平を図るため,本案事件を上記関係者の住所を管轄する神戸地方裁判
所に移送する必要があると認められる。
 3 したがって,本件移送申立てを却下した原決定は失当であるから,これを取
り消し,本件の本案事件を神戸地方裁判所に移送することとする。
   平成15年3月26日
     東京高等裁判所第19民事部
          裁判長裁判官    淺   生   重   機
               裁判官    及   川   憲   夫
 
               裁判官    原       敏   雄

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