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平成19年1月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成17年(ワ)第8520号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成18年10月19日
判決
原告株式会社堀場製作所
訴訟代理人弁護士伊原友己
加古尊温
訴訟代理人弁理士西村竜平
角田敦志
補佐人弁理士佐藤明子
被告株式会社小野測器
訴訟代理人弁護士小林幸夫
訴訟復代理人弁護士村西大作
坂田洋一
補佐人弁理士國分孝悦
南林薫
大須賀晃
小野亨
桂巻徹
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙物件目録記載の車両運転モード表示装置を製造し,販売し,販
売のための申出をしてはならない。
2被告は,前項記載の車両運転モード表示装置及びその半製品を廃棄せよ。
3被告は原告に対し3850万円及びこれに対する平成17年9月7日訴,,(
状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「車両運転モード表示装置」とする後記特許権を有す
る原告が,車両運転モード表示装置を製造販売する被告に対して,同特許権に
基づき同装置の製造販売等の差止め,廃棄及び特許権侵害の不法行為に基づく
損害賠償(訴状送達の日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金を含む)を請求する事案である。。
1当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争
いがない)。
()当事者1
原告は,測定機器の製造,販売等を業とする株式会社である。
被告は,電子計測機器の製造,販売等を業とする株式会社である。
()原告の特許権2
原告は,下記の特許権〔以下「本件特許権」といい,その特許を「本件,
特許と本件特許の請求項1の発明を本件特許発明とその明細書平」,「」,(
成14年法律第24号による改正前の特許法による「特許請求の範囲」を含
む明細書である)を「本件明細書」という〕の特許権者である。。。
ア特許番号第3243432号
イ出願日平成9年7月16日
ウ登録日平成13年10月19日
エ発明の名称車両運転モード表示装置
オ特許請求の範囲
「請求項1】表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示す【
るようにした車両運転モード表示装置において,前記表示画面に,汎用デ
ータをアナログおよび/またはディジタル的に表示する表示部を設け,前
,,記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示できるようにし更に
前記表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区画されると
ともに,前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目
や表示形態については,コンピュータにおけるプログラムにしたがって任
意に設定できるようにしたことを特徴とする車両運転モード表示装置」。
()本件特許発明を分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成3
要件をその符号に従いそれぞれ「構成要件A」のように表記する。。)
A表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにした車
両運転モード表示装置において,
B前記表示画面に,汎用データをアナログおよび/またはディジタル的
に表示する表示部を設け,前記表示部によって汎用データをグラフィカ
ルに表示できるようにし,
C更に,前記表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区
画されるとともに,
D前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目や表
示形態については,コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意
に設定できるようにした
Eことを特徴とする車両運転モード表示装置。
()被告の行為4
被告は,業として,平成11年頃から別紙物件目録記載の車両運転モード
表示装置(以下「被告装置」という。ただし,構成には争いがある)を製。
造販売している。
()無効審判事件等5
ア被告は,平成17年11月25日,本件特許につき,無効審判を請求し
た(無効2005−80338(乙3。))
イ原告は,平成18年2月17日,特許庁に対して,特許法134条の2
第1項の規定に基づき,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の
釈明を目的とする本件明細書の訂正請求をした(なお,同年4月27日付
け手続補正書により訂正請求の内容を補正した。甲9の1・2,乙6。)
この訂正請求の内容は,特許請求の範囲請求項1を次のとおり訂正すると
ともに,本件明細書の発明の名称を「ドライバーズエイド」と訂正するこ
とを含むものであった(訂正部分には下線を付してある。以下,訂正後の
特許請求の範囲請求項1記載の発明を「本件訂正発明」という。。)
「運転席に座ったドライバーに対し,表示画面上にモード運転の走行速
度パターンを表示するようにしたドライバーズエイドにおいて,前記表示
画面に,汎用データをアナログおよびディジタル的に表示する表示部を設
け,前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表
示できるようにし,更に,前記表示部は,様々なデータ項目について表示
できるように区画されるとともに,前記表示画面は,走行速度パターンを
表示するためのエリアと,汎用データを表示するための表示部を設けたエ
リアとからなり,それら2つのエリアの配置関係,大きさ,さらには,そ
れらにおける表示項目については,コンピュータにおけるプログラムにし
たがって任意に設定できるようにしたことを特徴とするドライバーズエイ
ド」。
ウ上記無効審判事件について,平成18年6月8日,上記訂正を認め,本
件特許を無効とする旨の審決がなされた(乙6。)
エ本件訂正発明を分説すると,次のとおりである(以下,分説した各構成
要件をその符号に従いそれぞれ「構成要件A」のように表記する。’。)
A’運転席に座ったドライバーに対し,表示画面上にモード運転の走行速
度パターンを表示するようにしたドライバーズエイドにおいて,
B’前記表示画面に,汎用データをアナログおよびディジタル的に表示す
る表示部を設け,前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグ
ラフィカルに表示できるようにし,
C’更に,前記表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区
画されるとともに,
D’前記表示画面は,走行速度パターンを表示するためのエリアと,汎用
データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり,それら2つ
のエリアの配置関係,大きさ,さらには,それらにおける表示項目につ
いては,コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定でき
るようにした
E’ことを特徴とするドライバーズエイド。
2争点
()本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものであり,特許法11
04条の3第1項により本件特許権に基づく権利行使は許されないか。
ア本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙1)に開示さ
れた技術と同一又は当業者が容易に発明できたものであるか(特許法29
条1項3号,2項(争点1))。
イ本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の2)に開
示された技術と同一又は当業者が容易に発明できたものであるか(特許法
29条1項3号,2項(争点2))。
ウ本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の3ないし
7)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるか
(特許法29条2項(争点3))。
エ本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の4ないし
8)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるか
(特許法29条2項(争点4))。
オ本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の4ないし
7・9)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであ
るか(特許法29条2項(争点5))。
カ本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の3・5な
いし7)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであ
るか(特許法29条2項(争点6))。
()被告装置は本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点7)2。
()原告の損害額(争点8)3
第3争点に関する当事者の主張
1争点1〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙1)に開
示された技術と同一又は当業者が容易に発明できたものであるか(特許法29
条1項3号,2項〕について)
【被告の主張】
()乙第1号証は,本件特許出願前に頒布された(平成6年11月8日の日1
付がある)原告作成の「自動運転システムADS−1100」のカタログ。
である(以下「引用例1」という。本件特許発明の構成要件は,すべて,。)
引用例1に開示されている。
()引用例1の3頁左上の画面(以下「左上画面」という)の右側の黒色2。
画面に折れ線が示されているものは,走行速度パターンであるから,引用例
1には構成要件Aに相当する構成が開示されている。
()左上画面の左側は,登録されたデータがアナログメーターと数字(ディ3
ジタル)によって表示されている。また,引用例1の4頁の説明5「運転
モード」には「CRT画面上に走行モード/運転パターンのほか,エンジ
ン回転数や車速をディジタルとアナログで常時表示」との記載があること
によれば,引用例1には,構成要件Bに相当する構成が開示されている。
()左上画面の左側では,登録されたデータの表示がそれぞれの領域をもっ4
てなされているから,引用例1には,構成要件Cに相当する構成が開示され
ている。
()引用例1の3頁右上の説明1「登録・試験条件の選択」には「登録され5
たデータベースからデータを選択し,自在に組み合わせて,各種車両や各種
条件の走行試験に対応できます」とあり,これと4頁の説明5(上記()。3
と同じ)によれば,引用例1には,登録されたデータを選択し,自在に組み
合わせ,これを画面上に表示できるようにする技術内容が開示されていると
いうことができるから,構成要件Dに相当する構成も開示されている。
()引用例1記載のシステムは上記の各特徴を備えた車両運転モード表示装6
置であるから,構成要件Eにあたる。
()以上によれば,本件特許発明は,引用例1に開示された発明と比較して7
新規性がない。
,(。「」()あるいは特開平7−174671号公報乙4の2以下引用例28
という)及び乙第4号証の4(入門−基礎編−)並びに乙。「」VisualBasic5.0
第5号証(マイクロソフトウィンドウズクイックユーザーズガイド)に「」
よれば,表示画面の表示項目や表示形態を任意に設定できるようにすること
は,コンピュータのオペレーティングシステムが有する一般的な機能を利用
することによって可能であることは明らかであるから,構成要件Dは,コン
,。ピュータの表示に関わる一般的な技術すなわち周知・慣用技術にすぎない
したがって,この構成要件Dについて引用例1記載の表示装置との違いを主
張してみたところで,引用例1に開示された発明からの進歩性はない。
【原告の主張】
被告は,引用例1に本件特許発明の構成要件がすべて開示されていると主張
する。
本件特許発明は,車両運転モード表示装置(すなわちドライバーズエイド。
生身の人間であるテストドライバーが,決められた運転モードどおりにシャシ
ダイナモメータ上でテスト運転することを支援する機械装置を意味する。車両
のモード運転試験をするには,予め決められたシフト操作のもと走行速度パタ
ーンに沿ったかたちでテスト走行させる必要がある。そのために,テストドラ
,,,イバーはドライバーズエイドの表示画面を見て定められたとおりに走行し
また走行できているかを随時チェックしながら運転を行う)において,各テ。
ストドライバーの好みに応じて走行速度パターン画面表示を任意に設定できる
点が特徴の一つであり,構成要件Dは,この特徴を指示する部分である。
しかし,引用例1はドライバーズエイドのカタログではなく,自動運転ロボ
ットのカタログであるから,テストドライバーにとっての画面の見やすさを考
慮する必要はない。また,引用例1記載の装置の走行速度パターンの表示画面
は,引用例1に記載された画面パターンしかなく,走行速度パターンや汎用デ
ータの表示項目や表示形態をユーザーが任意に設定(自由に表示の組合せを変
えたり,切り替えたり)することはできない。
引用例1の3頁右上の説明1「登録・試験条件の選択」欄の記載事項は,表
示画面の説明ではないから,本件特許発明には関係がない。
2争点2〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の2)
に開示された技術と同一または当業者が容易に発明できたものであるか(特許
法29条1項3号,2項〕)
【被告の主張】
引用例2(特開平7−174671号公報)も,原告が本件特許出願前に出
願した特許発明に関する刊行物である。
引用例2には,その図4ないし図10及びそれらに関する発明の詳細な説明
の記載に示されるように,表示画面上にモード運転の走行速度パターン(目標
速度パターンA,B,C,D)を表示するに際し,前記表示画面に,汎用デー
タ(速度や時間等)をアナログ及び/またはディジタル的に表示する表示部を
設け,前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示し,さらに,前記
表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区画されるとともに,
前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目や表示形態に
ついては,コンピュータ1におけるプログラムに従って任意に設定できるよう
にした車両運転モード表示装置が開示されている。本件特許発明は,引用例2
に記載された発明と実質的に同一の発明であるから,特許法29条1項3号又
は2項の規定により特許を受けることができない。
【原告の主張】
引用例2記載の発明は,自動車の自動運転ロボットに関する発明で,特に自
。,動運転プログラムの作成方法に関するものであるこの自動運転プログラムは
コントローラ(コンピュータ1)のCRT3上でグラフィカルに作成できるも
のである。引用例2記載の発明における表示画面は,車両に搭載したロボット
を制御するためのコントローラの制御画面であり,ドライバーズエイド(構成
要件A及びEの「車両運転モード表示装置)である本件特許発明とは相違す」
る。また,引用例2記載の発明では,表示画面には,走行データ設定のための
ディジタル入力欄を表示した領域はあるものの,本件特許発明のように試験中
に測定される種々の自動車関連データや試験条件データである「汎用データ」
を表示する表示部が設けられていない点で構成要件B及び構成要件Cと相違す
る。なお「アナログおよびディジタル的に表示する表示部分」がない点で,,
本件訂正発明の構成要件B’と相違する。さらに,引用例2記載の発明の表示
画面における所望の走行速度パターンを描画するための領域と,走行モード設
定のための種々のデータのディジタル入力欄を表示した領域とが形成されてい
るが,それらエリアの配置関係や大きさ,さらにはそれらにおける表示項目に
ついては予め定められた固定のものであり,任意に表示形態を設定できる本件
特許発明とは相違する。
以上の相違点及びその相違点に基づいて奏し得る本件特許発明の格別の効果
にかんがみれば,本件特許発明は,引用例2記載の発明と実質的に同一の発明
ではなく,かつ引用例2記載の発明に周知・慣用技術を付加しても当業者が容
易に想到し得るものではない。
3争点3〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の3な
いし7)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるか
(特許法29条2項〕について)
【被告の主張】
特開昭62−276435号公報(乙4の3。以下「引用例3」という)。
には,その第3図に示すように,表示画面上にモード運転の走行速度パターン
(),,(,テストモード35を表示するに際し前記表示画面に汎用データ速度
トルク等)をアナログおよび/またはディジタル的に表示する表示部を設け,
前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示し,さらに,前記表示部
は,様々なデータ項目について表示できるように区画した車両運転モード表示
装置が記載されており,本件特許発明の構成要件A,B,C,Eが開示されて
いる。
そして,引用例3に開示のない事項(構成要件D)は,乙第4号証の4ない
し7に開示されている。すなわち,これらの文献によれば,表示画面の表示項
目や表示形態を任意に設定できるようにすることはコンピュータのオペレーテ
ィングシステムが有する一般的な機能を利用する周知・慣用技術であることは
明らかであるから,構成要件Dは,コンピュータの表示に関わる周知・慣用技
術にすぎない。したがって,本件特許発明は,引用例3に記載された発明に,
乙第4号証の4ないし7に開示された周知・慣用技術に基づき容易に発明する
ことができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とのできないものである。
【原告の主張】
引用例3には,制御ボックスのパネルに,速度に応じて横方向に移動する指
標を配置した表示部が設けられるとともに,その表示部に走行速度パターンを
記録したフィルムを臨ませてこれを一定速度で時間軸方向(上下方向)にスク
ロールさせるようにした自動二輪車用のドライバーズエイドが記載されてい
る。引用例3記載の発明は,ドライバーズエイドという点でこそ,本件特許発
明と一致するものの,走行速度パターン(フィルム)の表示エリアの周りに,
固定されたディジタルメータが配置されているにすぎないものであるし,乙第
4号証の4ないし7記載の技術は,ドライバーズエイドとは異なる装置におい
て,単に画面表示に自由度をもたせたものにすぎない。また,本件訂正発明と
対比すると,表示画面を2つのエリアに分け,それら2つのエリアの配置関係
等を任意に設定できるとの構成は,乙第4号証の4ないし7には記載されてい
ない。
上記の構成の相違点により,本件特許発明は,引用例3及び乙第4号証の4
ないし7記載の技術内容からは得られない格別の効果を奏し得る。すなわち,
ドライバーズエイドでは,試験ごとに最低限必要な汎用データの項目や数が異
なるところ,その都度,汎用データの項目や数を変更するとともに,表示部を
それに合わせた最低限の大きさに動的に変更することにより,最も重要な走行
速度パターンの表示エリアの面積を最大限確保できる。また,テストドライバ
ーが代わった場合でも,そのテストドライバー固有の見やすいあるいは好みの
表示画面態様にその都度設定できるという効果も得られる。
したがって,引用例3記載の発明及び乙第4号証の4ないし7記載の技術内
容から,当業者が本件特許発明を容易に想到し得るものではなく被告の主張は
失当である。
4争点4〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の4な
いし8)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるか
(特許法29条2項〕について)
【被告の主張】
特開平8−189880号公報(乙4の8。以下「引用例4」という)に。
は,その図4に示すように,表示画面上にモード運転の走行速度パターン(運
),()転モードSを表示するに際し前記表示画面に汎用データ登降坂データP
をアナログおよび/またはディジタル的に表示する表示部を設け,前記表示部
によって汎用データをグラフィカルに表示するようにした車両運転モード表示
,,,。装置が開示されており本件特許発明の構成要件ABEが開示されている
そして,第4号証の4には本件特許発明の構成要件C,Dに相当する構成が
開示されている。さらに,乙第4号証の5ないし7には,本件特許発明の構成
要件C,D(及び構成要件B)に相当する構成が開示されている。
よって,引用例4記載の発明に,乙第4号証の4ないし7に記載されたコン
ピュータの一般的な表示技術ないしは周知・慣用技術を組み合わせれば,本件
特許発明の構成要件すべてが得られる。
よって,本件特許発明は,引用例4に記載された発明及び乙第4号証の4な
いし7に記載された周知・慣用技術に基づいて容易に発明することができたも
のであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないもので
ある。
【原告の主張】
,()引用例4には表示画面上にモード運転の走行速度パターン運転モードS
を表示するようにしたドライバーズエイドに関する発明が記載されており,そ
の走行速度パターン表示エリアには,補助的に登降坂データPを表示して車両
にかかる負荷の方向がテストドライバーに事前に分かるように構成されてい
る。
しかしながら,引用例4には,試験中に測定される種々の自動車関連データ
や試験条件データである汎用データを表示する部分に関しては記載されていな
いし,ましてや,その走行速度パターンの表示エリアを動的に変更するような
旨は開示されていない。乙第4号証の4ないし7については,前記3において
主張したとおりである。
よって,これらの発明及び技術内容によって本件特許発明の進歩性を否定す
ることはできない。
5争点5〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の4な
いし7・9)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであ
るか(特許法29条2項〕について)
【被告の主張】
特開平8−170938号公報(乙4の9。以下「引用例5」という)に。
は,その図4に示すように,表示画面上にモード運転の走行速度パターン(車
速指定パターン)を表示するに際し,前記表示画面に汎用データ(路上勾配パ
ターン等)をアナログおよび/またはディジタル的に表示する表示部を設け,
前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示するようにした車両運転
モード表示装置が開示されており,本件特許発明の構成要件A,B,Eに相当
する構成が開示されている。
そして,乙第4号証の4には本件特許発明の構成要件C,Dに相当する構成
が開示されている。さらに,乙第4号証の5ないし7には,本件特許発明の構
成要件C,D(及び構成要件B)に相当する構成が開示されている。
よって,引用例5に,コンピュータの一般的な表示技術ないしは乙第4号証
の4ないし7に開示された構成要件C,Dに相当する周知・慣用技術を組み合
わせれば,本件特許発明の構成要件すべてが得られる。
よって,本件特許発明は,引用例5に記載された発明及び乙第4号証の4な
いし7等の周知・慣用技術に基づき容易に発明することができたものであるか
ら,特許法29条2項により特許を受けることができないものである。
【原告の主張】
引用例5に記載された発明は,ドライバーズエイドであるという点では,本
件特許発明と一致するが,走行速度パターンの表示エリアのみがあって,汎用
,,データの表示領域は存在しないし乙第4号証の4ないし7記載の技術内容は
ドライバーズエイドとは全く異なる装置において単に画面表示に自由度をもた
せたものにすぎない。
さらに,以上のような構成上の相違により,本件特許発明においては,試験
ごとに汎用データの項目や数を変更するとともに,表示部をそれに合わせた最
低限の大きさに動的に変更することにより,もっとも重要な走行速度パターン
の表示エリアの面積を最大限確保することが可能となり,また,テストドライ
バーが代わった場合でも,そのテストドライバー固有の見やすいあるいは好み
の表示画面態様にその都度設定できるという格別の効果を奏し得る。
したがって,以上の構成上の相違点及びその相違点に基づいて奏し得る本件
特許発明の格別の効果にかんがみれば,引用例5記載の発明及び乙第4号証の
4ないし7記載の技術内容から当業者が本件特許発明を容易に想到するはずは
なく,被告の主張は失当である。
6争点6〔本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物(乙4の3・
5ないし7)に開示された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであ
るか(特許法29条2項〕について)
【被告の主張】
引用例3記載の発明は,本件特許発明と「運転席に座ったドライバーに対
し,表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにしたドラ
イバーズエイドにおいて,表示画面に,走行速度パターンを表示する表示部
と複数の汎用データを表示する表示部とを設けたドライバーズエイド」であ。
る点で一致し,①本件特許発明においては,表示画面における走行速度パタ
ーンや汎用データの表示項目や表示形態はコンピュータにおけるプログラム
に従って任意に設定できるようにしてあるのに対して,引用例3記載の発明
では,走行速度パターンを表示する表示部と汎用データを表示する表示部と
は別々の表示部であって,このような構成を有していない点(相違点1,②)
汎用データを表示する表示部が,本件特許発明においては,汎用データをア
ナログおよび/またはディジタル的に表示するものであり,必要な汎用デー
タを選択的かつグラフィカルに表示できるものであり,さらに,様々なデー
タ項目について表示できるように区画されているのに対し,引用例3には,
複数の汎用データをディジタル的に表示することが記載されているのみであ
って,このような構成は記載されていない点(相違点2)で相違する。
しかし,相違点1については,複数の情報を表示する際に,1つの表示器
の表示画面上にそれぞれの情報の表示エリアを設け,各情報の表示エリアの
配置関係,大きさ,それらにおける表示項目をコンピュータにおけるプログ
ラムに従って任意にできるようにすることは,乙第4号証の6や乙第4号証
の7の記載にみられるように周知の技術であり,乙第4号証の6には車両用
の情報表示装置においてこのような周知技術が用いられることも示唆されて
いる。
したがって,走行速度パターンを表示する表示部と複数の汎用データを表
示する表示部とを設けた引用例3記載の表示装置において,この周知技術を
用いて,表示画面を1つの表示器の表示装置とし,走行速度パターンを表示
するためのエリアと,汎用データを表示するための表示部を設けたエリアと
からなり,それら2つのエリアの配置関係,大きさ,さらには,それらにお
ける表示項目を任意に設定できるように構成することは,当業者ならば容易
に想到し得たものと認められる。
また,相違点2についても,複数のデータを表示する際に,表示の必要性
や見やすさなどを考慮して,アナログおよびディジタル的に表示すること,
必要なデータを選択的かつグラフィカルに表示することは,乙第4号証の5
ないし7の記載にみられるように周知の技術であり,この周知技術を引用例
3記載の複数の汎用データの表示に用いることは当業者が適宜採用する事項
である。
そして,本件特許発明の作用効果も,引用例3記載の発明及び上記周知技
術から当業者であれば予測できる範囲のものである。
以上のとおり,本件特許発明は,引用例3記載の発明及び周知技術に基づ
いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明
は特許法29条2項に違反して特許されたものである。また,本件訂正発明
も同様に進歩性を欠くものである。
【原告の主張】
争う。
7争点7(被告装置は本件特許発明の技術的範囲に属するか)について。
【原告の主張】
()被告装置の構成1
被告装置の構成は次のとおりである。
ア被告装置は,横長矩形状の表示画面を有し,運転席に座ったドライバー
に対し,その表示画面の中央部や左側にモード運転の走行速度パターンを
大きく表示するようにしたドライバーズエイドである。
イ前記表示画面の右側には,アナログ入力データから選択した汎用データ
をアナログメータ等の形状にアナログ表示ができ,またアナログ入力デー
タから選択した汎用データをディジタル表示することができる表示部が設
けられており,必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できる
ようになっている。
ウさらに,前記表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区
画されている。
エ前記表示画面は,画面中央部から左側が走行速度パターンを表示するた
めのエリアとし,画面右側に汎用データを表示するための表示部を設けた
エリアとすることができ,これら2つのエリアの配置関係や大きさ(面
積,さらには,それらにおける表示項目(内容)については,コンピュ)
ータにおけるプログラムに従って任意に設定できるようになっている。
オ被告装置は,以上のことを特徴とするドライバーズエイドである。
()構成要件充足性2
そして,上記の被告装置の構成は,本件特許発明の構成要件AからE(あ
るいは本件訂正発明の構成要件A’からE)を充足する。’
【被告の主張】
()被告装置の構成1
被告装置が原告の主張するイ及びウの構成を備えることは認めるが,その
余については否認する。
被告装置においては,表示画面の視認を行う者が運転席に座ったドライバ
ーに限定されていない。すなわち,被告装置においては,ロボットが自動運
転を行う場合には,運転席に座っていない人間が表示画面を視認するのであ
り,これは原告の特定にかかる「運転席に座ったドライバー」とはいえない
ことは明らかである。
また,原告が定義する「ドライバーズエイド」は「ドライバー」を運転席
に座った人間に限定するものであるが,被告装置において「ドライバー」と
は上記のとおりロボットも含めた概念であるから,被告装置は原告の特定に
かかる「ドライバーズエイド」には該当しないものである。よって,被告装
置は,原告の主張するアの構成を備えない。
被告装置においては,走行速度パターンを表示するためのエリアと汎用デ
ータを表示するための表示部を設けたエリアの配置関係は固定されており,
,。それらの配置関係は変更できないから原告の主張するエの構成を備えない
被告装置の商品名が「ドライバーズエイド」であることは認めるが,それ
は原告の定義づけている「ドライバーズエイド」とは異なる。また,被告装
置は,前記ア及びエの構成を備えないから「ことを特徴とする」ものでは,
ない。
被告装置は,以下のとおり特定されるべきである。
ア’被告装置は,横長矩形状の表示画面を有し,その表示画面の中央部や左
側にモード運転の走行速度パターンを大きく表示するようにした車両運転
モード表示装置である。
イ’前記表示画面の右側には,アナログ入力データから選択した汎用データ
をアナログメータ等の形状にアナログ表示ができ,また,アナログ入力デ
ータから選択した汎用データをディジタル表示することができる表示部が
設けられており,必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示でき
るようになっている。
ウ’さらに,前記表示部は,様々なデータ項目について表示できるように区
画されている。
エ’前記表示画面は,画面中央部から左側が走行速度パターンを表示するた
めのエリアとし,画面右側に汎用データを表示するための表示部を設けた
エリアとなっている。
オ’被告装置は,以上のことを特徴とする車両運転モード表示装置である。
()構成要件充足性2
被告装置の構成ア’ないしウ’が,本件訂正発明の構成要件A’ないしC
’を充足することは認めるが,被告装置の構成エ’及びオ’が,構成要件D
’及びE’を充足することは否認する。
8争点8(原告の損害額)について
【原告の主張】
被告の本件特許権侵害行為によって原告が被った損害は次のとおりである。
被告装置の平均単価は350万円であり,被告装置の販売台数は,平成13
。,年11月1日から平成17年7月31日までの間で20台であるしたがって
被告による被告装置の総売上額は7000万円となる。被告装置の利益率は5
0%であるから,被告が得た利益額は3500万円であり,この額が原告の損
害額と推定される(特許法102条2項。)
また,本件特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士・弁理士費用相当の
損害額は350万円である。
よって,損害額は合計3850万円である。
【被告の主張】
争う。
第4本件特許の無効理由の存否に関する当裁判所の判断
本件において被告は,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきもの
であるから,本件特許権に基づく権利行使はできないと主張し(特許法104
条の3第1項,その無効理由の一つとして,本件特許発明が,その出願前に)
頒布された刊行物である引用例3に記載された発明及び周知・慣用技術に基づ
いて容易に発明することができたものであって(同法29条2項,同法12)
3条1項2号の無効理由があると主張する(争点6)ので,まずこの点につい
て判断する。
1本件特許出願前に頒布された刊行物
()引用例3の内容1
ア本件特許出願前に頒布された刊行物である特開昭62−276435号
公報(引用例3。乙4の3)には,発明の名称を「完成車検査ステーショ
ンにおける表示装置」とする発明について,次のとおりの記載がある。
(ア)「産業上の利用分野)本発明は,組立工程を終えた自動2輪車(
その他の車両のスピードメータ,ヘッドライトの光軸,ウインカーラン
プ,ホーン,スピード警報ランプ,変速機の操作性等を検査する検査ス
テーションにおける表示装置に関する(1頁左下欄15行ないし2。」
0行)
(イ)「問題点を解決するための手段)本発明は,……検査ステーシ(
ョンに備える表示装置であって,時間軸と速度軸とから成る直交座標に
テストモードを記録したフィルムを臨ませる表示部を備え,該フイルム
を一定速度で時間軸方向に移動自在とすると共に,車両の駆動輪に連動
して回転する該検査ステーションに配置したドラムに応動して速度軸方
向に移動自在の指標を該表示部に設けたことを特徴とする(1頁右。」
下欄13行ないし2頁左上欄2行)
(ウ)「作用)作業者が表示部を見ながらフイルムに記録したテスト(
モードに指標が合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を
行なうことができ,従って被検査車両の運転状態のばらつきが防止され
検査条件が統一される(2頁左上欄3行ないし8行)。」
(エ)「上記検査ステーション(1)に配置した制御ボックス(19)の
パネル(19a)に,第3図に示す如く,前記速度検出器(9)からの
測定値を表示する速度計(20)と,前記回転速度計(11)とダイナ
モメータ(12)とに接続される変換器(21)からの動力測定値を表
示する動力計(22)とトルク計(23)と,前輪ブレーキ検査ドラム
(6(判決注(5)の明らかな誤記であると認められる)に接続し),。
た前記トルク検出器(15)からの測定値を表示する前輪制動力計(2
4)と,更に後輪ブレーキ検査ドラム(7)に接続した前記トルク検出
器(18)からの測定値を表示する後輪制動力計(25)とを設けた。
……
又,上記制御ボックス(19)のパネル(19a)に,時間軸と速度
軸とから成る直交座標に第4図に明示するようなテストモード(35)
を記録したフイルム(36)を臨ませる表示部(19b)を設け,該表
示部(19b)に該フイルム(36)を一定速度で時間軸方向(第3図
で上下方向)に移動自在に設けると共に,前記速度検査ドラム(4)に
応動して速度軸(同図で横方向)に移動自在の指標(37)を該表示部
(19b)に設けた(2頁右上欄16行ないし右下欄7行)。」
(オ)第3図は制御ボックスの正面図であり制御ボックスのパネル1,,(
9a)にはテストモードを記録したフィルム(36)及び移動自在の指
標(37)から成る表示部(19b)を中央に設けるとともに,その周
(),(),辺に測定値をディジタル的に表示する速度計20トルク計23
動力計(22,前輪制動力計(24)及び後輪制動力計(25)を設)
ける制御ボックスの構成が記載されている。
イこれらの記載によれば,引用例3には次の構成を備える発明(以下「引
用発明」という)が記載されているということができる。。
「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに指標が
合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うための完成車
検査ステーションにおける表示装置において,制御ボックス(19)のパ
ネル(19a)に,テストモード(35)を記録したフィルム(36)及
び移動自在の指標(37)から成る表示部(19b)を設けると共に,測
定値をディジタル的に表示する速度計(20,動力計(22,トルク))
計(23,前輪制動力計(24)及び後輪制動力計(25)を設けた完)
成車検査ステーションにおける表示装置」。
()本件特許出願前に頒布された刊行物である特開昭58−67536号公2
報。乙4の5)には,発明の名称を「車両用表示装置」とする発明に関して
次の記載がある。
ア「本発明は車両の特定の表示対象項目の状態を表示するようにした車両
用表示装置に関するものである。従来,……上記表示装置に表示される項
目の表示形態(数字表示,バーグラフ表示,指針表示などの表示するもの
の形態を意味し,色変化,拡大などそのもの自体にて表示方法が変化する
ものは含まない)は予め設定されたものであるため,使用者の好みに応じ
て自由に表示形態を代えることができなかった。
本発明は,上記問題に鑑みたもので,車両の特定の表示対象項目の状態
を少なくとも2つの表示形態にて切替表示可能とする表示面を有する表示
手段を用い,この表示手段にて表示する車両の特定の表示対象項目の表示
形態を指示手段に設定された外部操作による指示に従って可変とするよう
にすることによって,車両の特定表示対象項目の状態の表示形態を使用者
の好みに応じて自由に変化させることができる車両用表示装置を提供する
ことを目的とするものである(1頁右下欄5行ないし2頁左上欄9行)。」
イ「4は予め定めた制御プログラムに従ってソフトウェアによるディジタ
ル演算処理を実行するマイクロコンピュータで,……上記各構成要素から
の信号を受けて車速表示などのための演算処理(センサを図示していない
が,エンジン回転数,燃料残量,水温などを表示させるための演算処理を
含む)を実行し,車速を表示させるための表示指令信号を含む各種表示指
令信号を発生するものである(2頁左上欄18行ないし右上欄8行)。」
ウ「7は表示手段としてのCRT表示装置で,CRTコントローラ6より
の映像信号と同期信号によって各種表示項目を部分的に表示するものであ
る。なお,車速の表示領域においては,車速を第2図(a)或いは(b)
に示す表示形態にて表示している(2頁右上欄19行ないし左下欄3。」
行)
エ「車速表示についてその表示形態を変化させるものを示したが,エンジ
ン回転数,燃料残量,エンジン冷却水温などの表示についてもその表示形
態を外部操作に応じて自由に変更させるようにしてもよい(3頁右下。」
欄8行ないし12行)
オ第2図(a)には,車速をディジタル的な表示形態で表示することが,
第2図(b)には,車速をアナログ的な表示形態で表示することが示され
ている。
()本件特許出願前に頒布された刊行物である特開平4−273016号公3
報(乙4の6)には,発明の名称を「車両用情報表示装置」とする発明につ
いて,次の記載がある。
ア「発明が解決しようとする課題】しかし,従来の車両用情報表示装置【
に於いては,表示項目,表示位置,表示像の大きさ,およびその変更具合
いは全てメーカにて規定され,ユーザ(運転者)が好みに応じてこれらを
変更,設定できるようにはなっていない。……本発明は,……各種車両情
報の表示項目,表示位置,表示像の大きさ,およびその変更具合いを各ユ
ーザにて自由に設定,変更可能な車両用情報表示装置を提供することを目
的としている(2頁左欄36行ないし49行)。」
イ「課題を解決するための手段】上述の如き目的は,本発明によれば,【
車速,機関回転数,燃料残量等の車両情報をCRT,LCDの如き表示器
の画面にディジタル画像にて複合表示する車両用情報表示装置に於いて,
各種車両情報の表示画像のデータを格納した表示画像データ記憶手段と,
外部信号により変更可能に設定された表示画像の画面表示位置に関するデ
ータを記憶する画面表示位置記憶手段と,前記表示画像データ記憶手段に
格納された表示画像のデータと前記画面表示位置記憶手段に記憶された表
示画像の画面表示位置に関するデータとに応じて表示器に表示する画像を
制御する画像表示制御手段と,前記画面表示位置記憶手段が記憶する表示
画像の画面表示位置および表示画像の大きさの少なくとも何れか一方に関
するデータの入力を行うタッチパネル,キーボードの如き手操作入力手段
とを有することを特徴とする車両用情報表示装置によって達成される」。
(2頁右欄1ないし16行)
ウ「図1は本発明による車両用情報表示装置の一実施例を示している。車
両用情報表示装置は,自動車等の車両のインストルメントパネル等に取り
付けられて車速,機関回転数,燃料残量等の車両情報の画面表示内容を運
転者より視認される表示器1を有している。表示器1は,CRT,LCD
の如きディジタル画像表示式の表示器により構成され,これの車速,機関
回転数,燃料残量等の車両情報の画面表示はディスプレイ用コンピュータ
2により制御されるようになっている(2頁右欄27行ないし35行)。」
エ「CPU3は,システムメモリ4に格納されたシステムプログラムを実
行し,車両情報表示モードに於いては,表示画像データメモリ5に格納さ
れた表示画像のデータと画面表示データメモリ6に記憶された表示画像の
画面表示位置,表示倍率に関するデータとに応じて表示器1に表示する画
像を制御し,制御信号をディスプレイコントローラ8へ出力し,表示画面
ユーザ設定モードに於いては,タッチパネル10より表示画像の表示器1
に於ける画面表示位置,表示画像の表示器1に於ける表示倍率に関するパ
ラメータを取り込み,これらを画面表示データメモリ6に書き込むように
なっている(3頁左欄11行ないし25行)。」
オ「表示画面のユーザ設定に際しては,先ずタッチパネル10の押圧によ
り表示メータ名を選択する。すると,選択された表示メータ名に対応する
車速計,機関回転数計,燃料計,トリップメータ等の表示画像がレイアウ
ト表示画面に表示されるようになる。この状態にてタッチパネル10の押
圧により位置設定キーが選択されると,タッチパネル10の押圧による上
下左右のスクロールキーの操作によりレイアウト表示画面に於ける設定対
象の表示画像が上下左右に移動してその表示位置が変化し,またこの状態
にてタッチパネル10の押圧により倍率設定キーが選択されると,タッチ
パネル10の押圧による上下のスクロールキーの操作によりレイアウト表
示画面に於ける設定対象の表示画像の倍率が変化する。設定対象の表示画
像の位置,倍率,即ち大きさがユーザの好みのものに決まったならば,タ
ッチパネル10の押圧により実行キーが操作されればよく,これにより設
定対象の表示画像の位置,倍率が決定され,これのパラメータを画面表示
データメモリ6に書き込むことが行われる(3頁左欄46行ないし右。」
欄14行)
カ図4は,通常表示モードにおける画面表示であり,車速計及びトリップ
メータをディジタル的な表示形態で表示し,機関回転数計及び燃料計をア
ナログ的な表示形態で表示することが示されている
()特開平9−166535号公報(乙4の7)には,発明の名称を「材料4
試験機の測定値表示方法と表示装置」に関する発明について,次の記載があ
る。
ア「測定値表示装置は,表示器,制御回路及び設定操作器を有している。
この表示器は指針表示とグラフ表示の両表示をするための表示域を有して
いる。この表示面は液晶やブラウン管等のディスプレイが採用される。該
制御回路は該表示器の該両表示の相対的な位置及び大きさを制御するため
のもので該表示器に導結される。この制御回路は,表示面上で特定画面の
拡大と縮小や,移動を行うためのもので,一般的に知られている構成であ
る。そして,該設定操作器は該制御回路に導結され,その操作により該制
御回路を介し該表示器の上記の表示を制御するようになっている(2。」
頁右欄37行ないし47行)
イ「図3,図4及び図5はこの測定表示装置2の正面概略図で,単一の表
示器3と設定操作器4を有している。この表示器3は表示域5を備えてい
る。図3はこの表示域5に指針表示6が強調されている状態,図4はグラ
フ表示7が強調されている状態,図5はグラフ表示が指針表示6内に重複
してかつ両者共に強調されている状態の,各一例である(3頁左欄8。」
行ないし14行)
ウ「なお,図3の18は荷重測定値のデジタル表示部で,このような指針
表示6とグラフ表示7以外で,測定に関連する数値や文字も同一表示内に
表示される場合もある(3頁右欄1ないし4行)。」
エ「制御回路8は設定操作器4からの設定入力に基づいてその入力に相当
する表示を表示器3に与えるための制御を行う他,材料試験に伴う荷重値
や変位計測値等を取り組み,先の設定した表示へ,測定値を表示する制御
も含まれている。これらを実行するため,制御回路8はマイクロコンピュ
ーター(CPU)及びインターフェース回路及びメモリー回路等の電子回
路を中心に構成される(3頁右欄7ないし14行)。」
オ図3,図4及び図5には,表示器において,荷重測定値をディジタル表
示部においてディジタル的な表示形態で表示するとともに,指針表示及び
グラフ表示によって,アナログ的な表示形態で表示することが示されてい
る。
2本件特許発明と引用発明との対比
本件特許発明と引用発明とを比較すると,引用発明の「フィルムに記録した
テストモード」は本件特許発明の「モード運転の走行速度パターン」に,引用
発明の「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに指標が
合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うための完成車検査
ステーションにおける表示装置」は本件特許発明の「表示画面上にモード運転
の走行速度パターンを表示するようにした車両運転モード表示装置」にそれぞ
れ相当することが明らかである。
また,本件明細書には「汎用データ」に関して「自動車4における速度,,
エンジン回転数,走行距離,エンジンブースト圧(マニホールド負圧)などの
自動車に関するデータや,試験時における大気圧,周囲温度,湿度などの試験
条件に関するデータなど所謂汎用データについては(段落【0004)と,」】
記載されているから引用発明の測定値をディジタル的に表示する速度計2,「(
0,動力計(22,トルク計(23,前輪制動力計(24)及び後輪制動)))
力計(25」は本件特許発明の「汎用データを表示する表示部」に相当する)
ものと認められる。
したがって,両者は「表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示,
,」する表示部と汎用データを表示する表示部を設けた車両運転モード表示装置
である点で一致し,次の点で相違すると認められる。
①本件特許発明においては,表示画面に,モード運転の走行速度パターンを
表示する部分と,汎用データを様々なデータ項目について表示できるように
区画して表示する部分とがあり,それらの表示項目や表示形態は,コンピュ
ータにおけるプログラムに従って任意に設定できるようにしてあるのに対し
て,引用発明では,走行パターンを表示する表示部と汎用データを表示する
表示部とは別々の表示部であって,本件特許発明のような上記構成を有して
いない点(以下「相違点1」という。。)
②汎用データを表示する表示部が,本件特許発明においては,汎用データを
アナログおよび/またはディジタル的に表示するものであり,汎用データを
グラフィカルに表示できるようにしてあるのに対して,引用発明には,複数
の汎用データをディジタル的に表示できるとされているのみであって,本件
特許発明のような上記構成を有していない点(以下「相違点2」という。。)
3本件特許発明の容易想到性
そこで,上記相違点を当業者が容易に想到できたものであるかを検討する。
()相違点1についての検討1
複数の情報を表示する際に,1つの表示器の表示画面上にそれぞれの情報
の表示エリアを区画して設け,各情報の表示項目や表示形態をコンピュータ
におけるプログラムに従って任意に設定できるようにすることは上記1(),2
ないし()の各公報において既に昭和58年から平成9年にかけて繰り返し4
開示されている技術内容であること等に照らし,遅くとも本件特許出願当時
には当業者に周知の技術であったというべきものであるさらに上記1()。,3
の公報にはこのような周知の技術が車両用の情報表示装置において用いられ
ることも示唆されている。
したがって,本件特許出願当時,走行速度パターンを表示する部分と,複
数の汎用データを表示する部分とを別の画面として設けた引用発明に,これ
らの周知技術を用いて,表示画面を1つの表示画面とし,走行速度パターン
を表示する部分と汎用データを様々なデータ項目について表示できるように
区画して表示する部分と様々なデータ項目を表示できる部分とを設け,それ
らの表示項目や表示形態をコンピュータのプログラムに従って任意に設定で
きるように構成することは,当業者であれば容易に想到し得たものと認めら
れる。
()相違点2についての検討2
複数のデータを表示する際に,表示の必要性や見やすさなどを考慮して,
アナログおよび/またはディジタル的に表示すること,データをグラフィカ
ルに表示することは,上記1()の公報(アナログ表示とディジタル表示の2
選択・同()の公報(データ項目に応じてディジタル表示とアナログ表示)3
を選択・同()の公報(アナログ及びディジタル表示)において昭和58)4
年から平成9年にかけて繰り返し開示された技術内容であり,上記()と同1
様に周知の技術というべきものである。そして,この周知技術を引用発明に
適用することは当業者が適宜採用できる事項というべきである。
また,本件特許発明の作用効果は,同一画面内に走行速度パターンと汎用
データとを並列的に同時に表示することによって必要な汎用データを合理的
かつ見やすく表示することができるとともに,表示のためのハードウェアコ
ストを低減することができ,テストドライバーにとって必要なデータが見や
すくなり,その疲れも低減できる,という点にある(本件明細書段落【00
16。しかし,かかる効果は,同一画面内にテストドライバーにとって】)
必要なデータ項目を並列的に表示するという構成自体によってもたらされる
ものであるから,引用発明及び上記周知技術から,当業者であれば予測でき
る範囲のものである。
()以上によれば,本件特許発明は,本件特許出願当時,引用発明及び上記3
各周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから,進歩性に
欠け,特許法29条2項に違反して特許されたものというべきである。
4本件訂正発明の容易想到性について
なお,原告は,前記第2,1()イのとおり,本件特許の無効審判事件にお5
いて本件特許発明に係る特許請求の範囲を訂正する旨の訂正の請求をしたが,
同訂正を認める旨の審決が確定したとしても,本件訂正発明は,次のとおり,
引用発明に基づき,前記各周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易
に発明できたものというべきである。
()本件訂正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「フィルムに記録し1
たテストモード」が本件訂正発明の「モード運転の走行速度パターン」に,
引用発明の「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに
指標が合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うための完
成車検査ステーションにおける表示装置」が本件訂正発明の「運転席に座っ
たドライバーに対し,表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示す
るようにしたドライバーズエイド」に,引用発明の「測定値をディジタル的
に表示する速度計(20,動力計(22,トルク計(23,前輪制動力)))
計(24)及び後輪制動力計(25」は本件訂正発明の「汎用データを表)
示する表示部」にそれぞれ相当すると認められる。
したがって,引用発明と本件訂正発明は「運転席に座ったドライバーに対
し,表示画面上にモード運転のための走行速度パターンを表示するようにし
たドライバーズエイドにおいて,表示画面上に,走行速度パターンを表示す
る表示部と複数の汎用データを表示する表示部とを設けたドライバーズエイ
ド」である点で一致し,次の2点で相違する。。
①本件訂正発明においては,表示画面が,走行速度パターンを表示するた
めのエリアと,汎用データを様々なデータ項目について表示できるように
区画して表示するための表示部を設けたエリアとからなり,それら2つの
エリアの配置関係,大きさ,さらには,それらにおける表示項目について
は,コンピュータにおけるプログラムに従って任意に設定できるようにし
てあるのに対して,引用発明では,走行速度パターンを表示する表示部と
汎用データを表示する表示部とは別々の表示部であって,本件訂正発明の
ような構成を有していない点(以下「相違点1」という。’。)
②汎用データを表示する表示部が,本件訂正発明においては,汎用データ
をアナログおよびディジタル的に表示するものであり,必要な汎用データ
を選択的かつグラフィカルに表示できるものであるのに対して,引用発明
には,複数の汎用データをディジタル的に表示することが記載されている
のみであって本件訂正発明のような構成は記載されていない点以下相,(「
違点2」という。’。)
()相違点1’は,相違点1と実質的に同一であり,上記3()で説示したと21
ころと同一の理由により,引用発明に周知技術を適用することにより当業者
であれば容易に想到し得たものであると認められる。また,相違点2’も,
相違点2と実質的に同一であり,上記3()で説示したところと同様の理由2
により,引用発明に周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得
たものと認められる。そして,引用発明に上記各周知技術を組み合わせた構
成が奏する作用効果が,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別のもの
といえないことも上記3()で説示したとおりである。したがって,本件訂2
正発明は,引用発明に上記各周知技術を組み合わせることにより,当業者が
容易に発明をすることができたものというべきである。
5結論
以上のとおり,本件特許発明(及び本件訂正発明)は,引用発明に前記周知
技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたもの
であり,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであ
る。したがって,本件特許は,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無
効審判により無効にされるべきものである。
したがって,原告は,同法104条の3第1項の規定により,被告に対し,
本件特許権に基づく権利を行使することができない。
,,,第5以上によれば原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく
理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官田中俊次
裁判官西理香
裁判官西森みゆき

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