弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     本件附帯上告につき、原判決中第一審原告らの控訴を棄却した部分を破
棄する。
     第一審判決中第一審原告らの請求を棄却した部分を取り消す。
     附帯被上告人兼上告人は、附帯上告人兼被上告人らに対し、五四万四一
二五円に対する昭和三二年一〇月一日から完済まで、一八六万円に対する同年一〇
月六日から完済まで、一三七万六五〇〇円に対する同年一一月六日から完済まで、
四三二万四八〇〇円に対する同年一二月六日から完済まで各年一分の割合による金
員を支払え。
     本件訴訟の総費用は、上告人兼附帯被上告人の負担とする。
         理    由
 昭和三六年(オ)第一〇九五号上告代理人植松圭太の上告理由第一点について。
 訴外D工業株式会社(以下Dと略称する。)と上告銀行間の本件債権譲渡契約は、
従前の判示取立委任契約を変えて昭和三二年九月一八日に成立した旨の原判決の判
示は、挙示の証拠に照らし、肯認し得るところであり、原判決に債権譲渡契約を要
式契約と解した違法は存しない。そして、原判決が右債権譲渡契約は破産債権者を
害することになる旨および破産者並びに上告銀行がこれを知つてなしたもので、右
契約は破産法七二条一号に該当する旨各判示したことも、その挙示する証拠関係に
照らし肯認し得るところである。また、原判決の同法七二条四号に関する判断を非
難する論旨は、何ら判決に影響をおよぼさない事項に関するものである。それ故、
原判決には所論の違法は存せず、論旨は、すべて採るを得ない。
 同第二点一、二について。
 所論はまず、原判決は、一方において、本件債権譲渡契約は、昭和三二年九月六
日成立した旨認定しながら、他方において、貸付当初は取立委任契約であつたが、
後に債権譲渡に変えた旨を認定したことは、理由そごであると主張する。しかし、
原判決の確定したところによれば、Dは上告銀行から昭和三〇年頃から運転資金の
貸付をうけ、上告銀行E支店長に対しDのF工業株式会社(以下Fと略称する。)
に対する売掛代金債権の取立を継続的に委任していたが、昭和三二年九月一八日D
は上告銀行の求めにより、当時の売掛代金債権八一〇万五四二五円を上告銀行に対
する同額の借入金債務の弁済に充てるため、同銀行に譲渡したというのである。そ
して原判決の上告銀行、DおよびF間に昭和三二年九月六日判示合意が成立した旨
の認定は、後日右債権譲渡契約をなすべき予約が成立した旨認定したものと判文上
解し得ないわけではなく、原判決には所論の理由そごの違法は存しない。また、原
判決の本件債権譲渡が債権者の共同担保を失わせ債権者を害する旨の判示が肯認し
得るものであること前記第一点に対する説示に述べたとおりであり、原判決にこの
点についても所論理由そごの違法は存しない。なお、原判決は、本件債権譲渡があ
つたのは昭和三二年九月一八日であつて、右債権譲渡行為が破産法七二条一号およ
び四号によつて否認される旨を判示しているのであるから、その余の論旨は、その
前提を欠く主張であつて採るを得ない。原判決の本件取立委任契約についてなした
認定、判断も正当として是認し得る。それ故、原判決に所論の違法は存せず、論旨
は、すべて採るを得ない。
 同上告代理人米田正弌の上告理由第一、二点について。
 原判決が本件債権譲渡契約は、Dおよび上告銀行において債権者を害することを
知つてなされたものであり、破産法七二条一号に該当する旨判示したことが肯認し
得られるものであること前記上告代理人植松圭太の上告理由第一点に対する説示に
述べたとおりであり、また本件取立委任契約に関してなした判断が正当として肯認
し得ること前記上告代理人植松圭太の上告理由第二点一、二に対する説示に述べた
とおりであつて、原判決に所論の違法は存しない。所論は独自の見解に立つて原判
決を非難するか、または原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難する
ものであり、その余の論旨は、原判決の認定しない事実を前提として、原料決の破
産法七二条四号に関する判断の違法をいうものである。それ故、論旨は、すべて採
るを得ない。
 昭和三六年(オ)第一〇九六号附帯上告人D工業株式会社破産管財人B1、同B
2の上告理由について。
 所論は、附帯上告人らの附帯被上告人に対する本件原状回復請求に基づく金八一
〇万五四二五円に対する遅延損害金の利率は、年五分の民事法定利率によるべきで
はなく、年六分の商事法定利率によるべきであると主張するものである。原判決に
よれば、Dは昭和三三年三月一日破産宣告を受け、附帯上告人(被上告人)ら両名
がその破産管財人に選任されたのであるが、Dは附帯被上告銀行(上告銀行)から
昭和三〇年頃から運転資金の貸付を受け、その弁済に充てるため同銀行E支店長に
宛てて、DのFに対する売掛代金債権の取立を継続的に委任していたところ、昭和
三二年九月一八日同銀行の求めにより当時の右売掛代金債権八一〇万五四二五円を
同銀行に対する同額の借入金債務の弁済に充てるため譲渡し、同銀行は右譲受債権
のうち五四万四一二五円を同月三〇日に、一八六万円を同年一〇月五日に、一三七
万六五〇〇円を同年一一月五日に、四三二万四八〇〇円を同年一二月五日にそれぞ
れFから取立てたこと、そして原審は、右債権譲渡は破産法七二条一号および四号
によつて否認されるべきものであり、同銀行は前記の如く右譲受債権を消滅させた
から、これが原状回復として八一〇万五四二五円およびこれに対する前示各取立日
の翌日から各取立金額につき民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を附帯上
告人らに支払う義務がある旨判示していることが明らかである。ところで、破産法
上の否認権行使に因る原状回復義務者は、破産財団をして否認せられた行為がなか
つた原状に回復せしめ、よつて財団が右行為に因つて受けた損失を填補することを
目的とするものであるから、否認された行為に因つて受取つたものが金銭である場
合には、返還義務者は、破産者又は財団が否認権の目的たる行為によりこれが利用
の機会を失い、或は義務者をしてこれを無償に使用せしめざるを得なかつたため当
然蒙つたと認められるべき法廷利息を附してこれを返還することを要するものと解
するのを相当とし、附帯被上告銀行がFより同会社に対するDの売掛代金を取立て
取得した理由が、Dと附帯被上告銀行間の右債権譲渡契約による場合には、反証な
きかぎり、右取得した金銭は商行為に利用せられ得べかりしものと認め、右利率も
年六分となすのを相当とする。この点に関する従来の大審院および当裁判所の見解
は、いまなお変更の要を見ない(大審院昭和七年(オ)第二八二七号、昭和八年六
月二二日判決、民集一二巻一六二七頁、同昭和一三年(オ)第一七一四号、昭和一
四年五月一九日判決、新聞四四四八号一二頁、最高裁判所昭和三三年(オ)第四四
五号、昭和三六年一〇月六日判決、裁判集民事五五号一三頁参照)。従つて、この
点について年五分の民事法廷利率によるべき旨を判示した原判決の判断は失当であ
つて法律の解釈に誤りがあるものというべく、論旨は、理由がある。
 よつて、民訴法三九六条、三八四条一項、四〇八条一号、三八六条に則り、上告
人の上告を棄却し、原判決中第一審原告らの訴訟を棄却した部分はこれを破棄し、
第一審判決中第一審原告らの請求を棄却した部分を取り消し、主文第四項のとおり
判決することとし、訴訟費用の点につき同九五条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎

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