弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、金三二〇万円およびこれに対する昭和三九年三月二七日から
完済まで年六分の割合による金員の支払を命じた部分を破棄し、右部分について本
件を大阪高等裁判所に差し戻す。
     その余の請求に関する部分の上告を棄却する。
     前項の上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松田光治の上告理由(一)について。
 原判決が破産法七八条一項についてした法律解釈は、正当であつて、否認により
破産財団において利得する結果とならない本件の場合においては、同条項を類推適
用しえないとした原判決の判断は、相当である。
 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、独自の見解に立つて、原判決を
非難するものであり、採るを得ない。
 同(二)について。
 原判決が、本件否認権の行使をもつて信義則違反ないし権利の濫用と認められな
いとした判断は、その事実関係のもとにおいては、正当として是認することができ
る。
 原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。
 同(三)について。
 原判決によると、上告人は、昭和三九年三月二六日破産者D工業株式会社(以下
破産会社という)に対し、第三者であるE工業株式会社(以下訴外会社という)振
出にかかる約束手形三通(金額一五〇万円一通、一二〇万円一通、五〇万円一通)
額面金額合計三二〇万円について満期前に買戻請求権を行使し、前記三二〇万円の
代金の支払を受けたが、これは債務の弁済ではなく手形の買戻であり、右買戻行為
を否認することは破産法七三条一項の類推適用によつて許されないのみならず、破
産会社はFを介して本件手形三通の手形金の支払を受けているから、結局、否認権
を行使することは許されない旨を主張したのに対し、原判決は、その確定した事実
のもとにおいては、原判示の弁済は、上告人の行使した買戻請求権に基づく手形買
戻代金の支払に該当するものであり、これに破産法七三条一項を類推適用する余地
はなく、本件手形代金の弁済も同法七二条の原則に従い、否認さるべきものである
旨を説示して、上告人の前記主張を排斥し、結局、被上告人の本訴請求をすべて認
容している。
 しかしながら、約束手形の裏書人たる破産会社が被裏書人から、その手形を買い
戻してその代金を支払つたにとどまるときには、破産法七二条の否認権の行使を免
れないことはもとよりであるが、買い戻した手形について、その手形金額が破産会
社に対し現実に支払われた場合には、その買戻のため要した代金とその手形金の支
払を受けたことによる入金とを差引計算し、破産財団に属する財産について価値の
減少を来さない限り、右手形金の買戻代金の支払については、破産法七二条による
否認権の行使は許されないと解するのが相当である。けだし、手形買戻のさいの代
金の弁済とその手形金の弁済受領とを各別に考察せずして、これを破産財団に属す
る財産の価値の変動の点より総合的に考察するのが妥当だからである。
 しかるに、原判決は、単に本件手形の買戻のさいにおける破産会社の代金支払の
みを考察するにとどまり、その手形金が破産会社に対し支払われたとの主張がある
にかかわらず、何等かかる事実関係について考慮を払わなかつたのは、審理不尽の
違法をおかしたものというべく、この点の違法をつく論旨は理由がある。
 よつて、原判決中、右手形に関する否認権の行使を許容した限度すなわち金三二
〇万円およびこれに対する昭和三九年三月二七日からその完済まで年六分の割合に
よる遅延損害金の支払を命じた部分を破棄しこの部分を原審に差し戻すこととし、
その余の請求に関する部分の上告は失当としてこれを棄却し、民訴法四〇七条、三
九六条、三八四条、九五条、八九条に則り、裁判官全員の一致で主文のとおり判決
する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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