弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人薬師寺志光の上告趣意及び被告人本人の上告趣意第四(上申書と題する書
面記載の上告趣意の補充を含む)について。
 所論はいずれも単なる訴訟法違反の主張であつて、(原審のこの点に対する判断
は相当である)適法な上告理由に当らない。
 被告人本人の上告趣意第一(同上補充を含む)第三、第五及び第六について。
 所論はいずれも事実誤認、訴訟法違反の主張を出でないものであつて適法な上告
理由に当らない。
 同第二について。
 所論は違憲をいう点もあるけれどもその実質は事実誤認、訴訟法違反の主張に帰
するものであつて適法な上告理由に当らない。なお、記録によれば、所論証人B、
同女中IことC、同D(E)、同F及び同Gは、いずれも原審第二回公判期日にお
いて弁護人の申請により採用された証人であり、その採用決定の際、その尋問の日
時場所をいずれも昭和三二年三月二五日午前一〇時、京都地方裁判所と指定告知さ
れたものであること、同公判期日には被告人も出頭していたこと、その後原審は検
察官及び弁護人双方の意見をきいた上、同年同月二〇日附で先に採用された証人の
うち、B及びCについて、その尋問の日時場所を、同年同月二五日午前一一時三〇
分京都市a区b町cB方に、H及びFについて、その尋問の日時場所を同日午后二
時、同市d区e町f番地にそれぞれ変更すべき旨、並びに、職権で証人Aを同日午
前一一時三〇分前記B方において尋問すべき旨の決定(記録第四七八丁)をなし、
右決定の謄本は同年同月二三日被告人に適式に送達された(同第四八〇丁)こと、
かくて右決定のとおり(証人Gについては前記公判期日において決定されたとおり)
の日時場所において、いずれも弁護人立会の上、各証人の尋問が行われたこと、原
審第三回公判期日に右各証人尋問調書の取調が行われ、同公判期日には被告人も弁
護人とともに出頭していたが右証拠調に関し何らの異議も述べなかつたこと明らか
である。そして公判期日外の証人尋問の際の尋問事項は、裁判所が職権で証人を尋
問する場合には裁判所が両当事者にこれを知らせるべく(刑訴規則一〇九条)、又、
一方の当事者の申請による証人を尋問する場合には、その申請をした当事者がその
相手方にこれを知らせるべきもの(同一〇八条)であるから、本件において、前記
各証人の公判期日外における尋問につき各尋問事項書が被告人に送達された形跡は
記録上存しないけれども、証人A以外の右証人はいずれも被告人側の申請にかかる
ものであること上述のとおりである以上被告人がその不送達の瑕疵を問題とし得る
のは右証人Aの尋問についてのみであるが、同証人の尋問には弁護人が立会つてお
り、その供述調書の証拠調に当つても何ら異議が述べられなかつたのであるから、
かかる場合においては尋問事項書不送達の瑕疵を違法として上訴することはできな
いものと解するを相当とする(昭和二九年(あ)第二一三五号、同年九月二四日第
二小法廷判決、集八巻九号一五三四頁参照)従つて所論違憲の主張も亦その前提を
欠くものといわなければならない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により裁判官全員一致
の意見で主文のとおり決定する。
  昭和三二年九月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

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