弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役1年6か月及び罰金400万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算
した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。
横浜海上保安部で保管中の漁具(さんご採取用ロープ)11本(横
浜地方検察庁平成26年庁外領第122号符号1)及び漁具109
式(同領号符号10)を没収する。
被告人に対し,仮にその罰金に相当する金額を納付すべきことを命
ずる。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,中華人民共和国に国籍を有する外国人で,同国船籍漁船「A」(推定
総トン数約61トン)の船長であるが,法定の除外事由がないのに,平成26年
10月5日午後3時33分頃,東京都小笠原村a島字bc番d所在のe港f灯台
から真方位200度,距離7.7海里(領海線の9.4海里内側)付近の本邦の
水域内において,同漁船及びさんご漁具を使用して漁業を行った。
(法令の適用)
罰条平成26年法律第119号附則2条により同法
による改正前の外国人漁業の規制に関する法律
9条1項1号,3条1号
刑種の選択懲役刑及び罰金刑を選択
労役場留置刑法18条(金1万円を1日に換算)
刑の執行猶予刑法25条1項(5年間懲役刑の執行を猶予)
没収平成26年法律第119号附則2条により同法
による改正前の外国人漁業の規制に関する法律
9条2項本文(横浜海上保安部で保管中の漁具(さ
んご採取用ロープ)11本(横浜地方検察庁平成
26年庁外領第122号符号1)及び漁具109
式(同領号符号10)は犯人が所持した漁具であ
る。)
仮納付刑事訴訟法348条1項
訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
1被告人が本件犯行により採捕しようとしていた宝石さんごは,希少価値の高い
貴重な水産資源であり,我が国においては,さんご漁について厳格な規制や自主ル
ールが定められ,さんご漁関係者は,乱獲を防止して資源を保護し,持続的な採捕
を可能とするための不断の努力を積み重ねてきたものである。ところが,被告人は,
我が国のさんご漁船よりはるかに大型の漁船に乗り,さんごが生育する海底の環境
に大きなダメージを与えかねない漁具等を使用して漁業を行ったものであり,本件
犯行は,貴重なさんごの漁場に対し,上記のように我が国のさんご漁関係者が積み
重ねてきた努力を無にしかねない大きな悪影響を及ぼすものとして,我が国漁業の
正常な秩序の維持を目的とする外国人漁業の規制に関する法律(以下「外国人漁業
規制法」という。)の趣旨に明白に反する重大かつ悪質なものであって,厳しい非
難に値する。
また,被告人は,犯行前日から数回にわたって海上保安庁の巡視船による警告
を受けながら,その際に巡視船にライトを照射したり,いったん領海から出ても巡
視船が遠ざかると再度領海に侵入するなどして本件犯行に及んだのであって,強固
な犯意が窺われ,より悪質である。そして,海上保安官らがヘリコプターから被告
人の漁船に降下した際には,密漁したさんごを保管していた箱を海中に投棄したり,
海底に下ろしていたさんご採取用ロープを全て切断するよう指示を出すなどして
罪証隠滅を図っており,事後の情状も悪い。
被告人は,雇われ船長に過ぎないと認められるものの,高額の報酬を得ようと
したという利欲的な動機,経緯に酌むべき事情は認められず,現場の責任者として
相応の責任は免れない。
2平成26年9月頃から同年11月頃にかけての被告人の船舶を含む密漁船団
によるさんごの乱獲により,小笠原海域におけるさんごの漁場は著しく荒らされ,
その回復も困難となり,それにより地域のさんご漁師らの生活は大きな打撃を受け,
取り返しが付かない甚大な被害が生じているほか,観光業に対する悪影響も懸念さ
れ,密漁船乗組員の上陸等に対する島民の不安感も無視できないところである。
しかしながら,上記のうち,観光業に対する影響や島民の不安感については,
外国人漁業規制法の趣旨が上記のとおりのものであるとすると,これを量刑上過大
に重視することはできないし,また,上記の被害は,最盛期には約200隻にもの
ぼった密漁船団全体によりもたらされたものであり,被告人と密漁船団の間に共謀
や組織関係があったとは証拠上認められず,密漁船団の数は被告人の逮捕以後も増
えて約1か月半にわたり大規模な密漁が行われていたことからすれば,上記被害に
関する責任を被告人一人に負わせることはできない。
3以上によれば,本件犯情は,犯行態様の点で外国人による領海内操業という同
種事案の中でもかなり悪質といえるが,被害結果の全てを被告人に帰責することは
できないことからすれば,懲役刑については執行猶予を付すことも考えられるとこ
ろである。
4そこで,他の事情についてもみると,被告人が,反省の態度を示し,二度と違
法なことはしない旨誓約していることや,被告人には本邦での前科前歴がないこと,
被告人が約5か月間にわたり身体を拘束され,既にある程度の社会的制裁を受けて
いると認められることをも併せ考慮すれば,本件では一般予防の観点からもより重
い刑が求められるところではあるが,懲役刑については,かろうじて今回に限り執
行猶予を付する余地があるものと認めた。ただし,上記犯情に鑑み,執行猶予期間
は上限の期間とした上,罰金刑についても上限額を併科することとした。
よって,主文のとおり判決する。
(公判出席)検察官中村聖人
国選弁護人鈴木啓示
(求刑懲役1年6月及び罰金400万円並びに没収)
平成27年3月23日
横浜地方裁判所第4刑事部
裁判長裁判官成川洋司
裁判官大森直子
裁判官髙市惇史

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