弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成14年8月25日午前3時45分ころ,普通乗用自動車を運転し,帰宅
するまでの道中を知人のA(当時20歳)運転の普通乗用自動車と並走しながら,
兵庫県姫路市X町a丁目b番地付近の西行き一方通行の4車線道路の第2車線を東
から西に向かい,スピードを競って走行中,第3車線を先行して進行中のAを驚か
せるため同人運転車両の直前に自車を割り込ませようと企て,A運転車両の通行を
妨害する目的で,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約80キロメート
ルを超える速度で自車を運転し,A運転車両の左前方約4.3メートルの地点でハ
ンドルを右に急転把して同車の直前に進入しようとした際,自車右後部をA運転車
両の左前部に衝突させたことにより,同車を右前方に疾走させて道路右側歩道上に
設置された信号柱に
衝突させ,よって,同人に加療約10日間を要する左肩部打撲,挫創等の傷害を負
わせたほか,同人運転車両の同乗者B(当時20歳)に左肺損傷の傷害を負わせ,
同日午前5時15分ころ,同市本町68番地所在の国立姫路病院において,同人を
同傷害に基づく大量出血により死亡させ
第2 酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.2ミリグラムのアルコールを身体に
保有する状態で,前記日時場所において,前記車両を運転し
たものである。
(証拠の標目)
 省略
(補足説明)
1 被告人は,A運転車両の進行を妨害しようと企てたことはなく,進行速度につ
いても分からない旨供述し,弁護人は,被告人には妨害目的がなく,また,本件公
訴事実は時速約100キロメートルの速度で進行したとされているところ,このよ
うな速度で進行したこともないとして業務上過失致死傷罪が成立するに過ぎないと
主張するため,以下検討する。
2 関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)被告人は,友人のA,B及びCと,犯行当日未明までスナック等で酒食を
し,銭湯に立ち寄った後,同日午前3時30分ころ,帰宅するため,被告人は普通
乗用自動車(総排気量2.98KW/l)を,AはBとCを乗せて軽四乗用自動車
(総排気量0.65KW/l)をそれぞれ運転して,一方通行道路で3ないし4車
線あるY線を西へ向かって進行していた。これまで被告人は,Aとの間で何度か高
速度でそれぞれの車線を走行し,併走するような形で抜きつ抜かれつの状況を楽し
みながら,目的地までの先着を競うという「レース」と称する競走行為を行ったこ
とがあり,今回も赤信号で停止した際,被告人がAに対してレースしようと持ち掛
けたことから,互いに競走を始めた。3車線のうち第1車線を走行する被告人は,
自車の方がA運転車両よ
りも性能が上であり,かつ,同乗者もいなかったことから,思い切り加速するとA
運転車両に圧倒的な差を付けてしまうと思い,あえて速度を時速約50キロメート
ルに調整するなどして,第2車線を走行するA運転車両の左後方を進行していた。
そのうち,A運転車両は次第に加速していき,これに対し,被告人は,A運転車両
の左後方約21.8メートルの地点から,アクセルを踏み込んで加速させ,A運転
車両との差を縮めていき,すでに時速約80キロメートルに達していたA運転車両
に並んで追い越すや否や,突然,ハンドルを右に切って,Aが走行していた車線方
向に自車を移動させようとした(この直前にY線は左側に1車線が増えて4車線と
なっており,被告人運転車両はその第2車線,A運転車両はその第3車線を走行し
ていたことになる。
)。Aは,前方のみを見て運転していたところ,突然,被告人運転車両が左側から
切り込んできたため危険を感じ,急ブレーキを踏んだが,その瞬間に自車左前部に
被告人運転車両右後部が衝突し,その衝撃で右方向に押し出され,その後バランス
を失って横滑りをし,左側部を道路脇の信号柱に激突させ,歩道上に乗り上げて止
まった。被告人運転車両は衝突後右に大きく傾いたが,バランスを立て直し,衝突
したところから約147.7メートル先で停車した。
(2)以上の事実に対し,被告人は,当公判廷で「自車とA運転車両との間隔を確
認して,相当な余裕を持って車線を変更させた」旨供述し,自車をA運転車両の前
に急に切り込ませたことを否定する。しかしながら,Aは,この事故について,
「被告人が急に進路前方に切り込んできて危険を感じてすぐにブレーキをかけた
が,その瞬間衝撃を感じた。」など,被告人運転車両の自車線への進入方法がAに
おいて安全なハンドルないしブレーキ操作ができないほどに急激であった旨を供述
しており,この点は,両車両の損傷状況等からしても,被告人運転車両の右側面の
後部角付近にA運転車両の左側面前部角付近がぶつかったものと認められ,被告人
運転車両がA運転車両の前方に切り込む途中での衝突であった様子が窺われること
から裏付けられている。そ
して,被告人自身も,捜査段階においてはA運転車両の直前に割り込んだことを認
めていて,実況見分の際にも(被告人は公判廷でもほぼ記憶どおりであることを認
めている。),被告人運転車両運転席と右後方のA運転車両運転席との距離がわず
か約4.3メートルの地点でハンドルを右に切ったなどと,決して余裕などない急
激な車線変更であった様子を指示説明していたのである(検7)。これらに反する
被告人の前記公判供述は信用することができない。
  また,衝突時の被告人運転車両の走行速度については,A運転車両の走行速
度が時速約80キロメートルであったこと及び両車両の損傷状況等に照らすと,時
速約80キロメートルを超える速度であったことを認めることができる(検1
2)。被告人が時速約100キロメートルで走行していた際に事故を起こしたこと
を捜査段階で認めていたことからすれば,その信用性はそれなりに高いものである
といえるが,一方で,被告人が自車の走行速度を確認又は意識していたような事情
は何ら窺えず,「A運転車両よりも速度が出ていないと追い越すことができないと
いわれたから,警察官と一緒に考えて,大体100キロメートルくらいかなと考え
た」などと,そもそも明確な認識がなかったとする被告人の公判供述も一概に否定
し難いから,衝突時の被
告人運転車両の走行速度が時速約100キロメートルであったと具体的な速度を認
定するには未だ合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
3 このような客観的事実に加え,車線変更させた理由に関する被告人の捜査段階
の供述をも併せ検討すると,被告人は,当初は,これまでのレースと同様に,A運
転車両の走行車線上に自車を進行させることなく,互いの車線を走行していたが,
その後,急にA運転車両の前に割り込めば,同人が驚き,よりレースが面白くなる
などと悪ふざけを思いつき,あえて必要のない車線変更をしたものと認めるのが相
当である。被告人のこのような意図は,即ち,Aに対し自由かつ安全な通行が妨げ
られることを認識させ,危険を感じさせることにほかならず,被告人にはA運転車
両の進行を妨害する目的があったというほかない(この点,被告人は,当公判廷に
おいては,Aを驚かせるつもりも,その進路を妨害するつもりもなかった旨供述す
るが,自車を急激に
A運転車両の直前に割り込ませたことを否定する供述を前提としているばかりでな
く,そもそも他方で自車を車線変更させた理由を合理的に説明できていないのであ
るから,この供述は信用できない。)。そして,前記のような本件事故の客観的状
況に照らすと,時速約80キロメートルを超える速度が重大な交通の危険を生じさ
せる速度であることはいうまでもない。
(法令の適用)
1 罰条
・判示第1 被害者ごとに刑法208条の2第2項前段
・判示第2 道路交通法117条の4第2号,65条1項,同法施行令44条の

2 科刑上一罪(判示第1)
刑法54条1項前段,10条(重い危険運転致死罪の刑で処断)
3 刑種の選択(判示第2)
懲役刑
4 併合罪
刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条た
だし書の範囲内で法定の加重)
5 未決勾留日数の算入
刑法21条
(量刑の理由)
 本件は,判示のとおりの危険運転致死傷及び酒気帯び運転の各事案である。
前記のとおり被告人は,自らAに公道における自動車レースを持ち掛け,Aととも
に,交通の危険を著しく生じさせるような速度と態様でカーチェイスをしていた
際,A運転車両の直前に自車を割り込ませて同人を驚かせようと考え,無理矢理右
に車線変更して判示第1の犯行に及んだのであって,周囲の危険や迷惑を顧みるこ
となく,公共の道路を我が物顔で走行した挙げ句に起こした自己中心的な犯行であ
り,その運転態様も無謀かつ危険なものである。この犯行によって,A運転車両に
同乗していたBを死亡させた結果は特に重大である。同人は,被告人とAとの間で
レースが行われることなど全く知らずに助手席で寝ていたところ,被告人の危険運
転によってまだ20歳という夢も希望もある人生を一瞬にして奪われたのであっ
て,その無念さは計り知
れない。遺族の受けた悲しみは大きく,その実父は,当公判廷において,厳しい処
罰感情を述べている。
 また,被告人は,これまで暴走族に加入して共同危険行為等の交通前歴を有して
いながら,抵抗感なく飲酒運転を行った上,危険運転行為により死亡事故を起こし
たものであって,交通規範を遵守する態度があまりにも希薄であるというほかな
い。
 一方で,被害者のBは,被告人と幼いころからの遊び友達であって,当夜も被告
人らと一緒に飲酒し,被告人やAが酒気帯び運転であることを承知の上でこれらの
車に同乗していた点などに一定の落ち度を認めざるを得ないこと,被告人が被害者
らを死傷させたことについては反省の態度を示していること,若年であること,前
科がないこと,対人無制限の自動車損害賠償保険に加入しており,そこから被害弁
償がなされるであろうこと,被告人の実母及び雇主が当公判廷に出廷し,今後の監
督を誓っていることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
 そこで,以上の諸事情等を総合考慮して,主文の刑を量定した。
(検察官萩原良典,私選弁護人菅尾英文各出席)
(求刑懲役6年)
平成15年2月19日
神戸地方裁判所姫路支部刑事部
裁判長裁判官   伊   東   武   是
裁判官小   倉   哲   浩
裁判官平   城   文   啓

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