弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中主文第一項を除くその余の部分を左のとおり変更する。
     被控訴人と控訴人国との間において、原判決添付物件目録記載の(ニ)
の土地について昭和二十四年七月二日控訴人Aを取得者としてなされた交換及び原
判決添付物件目録記載の(ホ)の土地について同日訴外Bを取得者としてなされた
交換が無効であることを確認する。
     被控訴人の控訴人国に対するその余の請求並びにその余の控訴人らに対
する請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人と控訴人国との間に生じた分はこれ
を二分しその一を被控訴人の、その余を控訴人国の各負担とし、被控訴人とその余
の控訴人らとの間に生じた分は被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決中主文第一項を除くその余の部分を取消す、被控訴人の
請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求
めた。被控訴代理人は控訴棄却の判決を求め、なお、当審において、控訴人Cにつ
いてDとの表示を誤りとしてCと訂正したほか、請求の趣旨につき、「交換替地に
よる所有権譲渡処分」とあるのを「交換」と、控訴人Aに対する交換の日時を「昭
和二十四年七月二日」と各訂正し、無効確認を求める請求を除くその余の請求の趣
旨につき、原判決添付物件目録記載の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、
(ヘ)の各土地ないしはその各仮換地とあるのを、それぞれ別紙目録記載の
(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の(一)(二)、(ホ)、(ヘ)の各土地と変更
した。
 当事者双方の主張及び証拠関係は、次に記載するほか原判決の事実摘示と同一で
あるから、これを引用する(ただし、右事実摘示中「D」とあるのは「C」の誤り
であり、「暇庇」とあるのは「瑕疵」の、「E」とあるのは「F」の、「G」とあ
るのは「H」の各誤記と認めるから、そのように訂正する)。
 (被控訴人の主張)
 「一、原判決添付物件目録記載の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、
(ヘ)の各土地については昭和三十四年一月二十四日土地区画整理法による換地処
分が行なわれ、右各土地はそれぞれその各仮換地であつた別紙目録記載の(イ)、
(ロ)、(ハ)、(ニ)の(一)(二)、(ホ)、(へ)の各土地となつた。
 二、 自創法施行規則第七条の二の三の規定による売渡保留地域の指定は、都市
計画法第二条による都市計画区域内であり且つ自創法第三条の規定により政府の買
収した農地で、土地区画整理を施行し又はその使用目的を変更するを相当とする等
自作農創設に供しないことを相当とする場合に知事が指定するのであるから、右施
行規則の規定は自創法第五条第四号ないし第五号の規定に対応し、後者が買収前に
買収より除外すべき農地につき指定するのに対し、前者は一旦買収した農地につき
売渡を保留すべき農地として指定するのである。本件においては、買収の時期であ
る昭和二十二年七月二日と、買収令書の交付に代える公告によつて買収処分の効力
が発生した昭和二十五年二月二十八日との間である昭和二十四年三月十五日に売渡
保留地域の指定がなされたものであるが、右指定は買収処分が既に有効に発効して
いることを前提としてなされたものであり、もし知事が売渡保留地域の指定をなす
当時買収処分が未発効であることに気づいていたならば当然本件買収計画を撤回し
買収除外地域の指定をなすべかりしものである。従つて本件においては形式的には
買収除外地域の指定がなくてもその指定があつたと同様に解すべきである。そし
て、本件においては買収計画樹立当時より買収令書の交付に代わる公告が行なわれ
た時までには約三年間を経過し、この間に売渡保留地域の指定という重大な変化が
生じたのであるから、買収処分発効時をもつて買収要件の存否を判断すべきであ
る。従つてこの点からいつても本件買収処分は無効である。
 三、 被控訴人が従来「交換替地による所有権の譲渡処分」と主張してきたのは
自創法第二十三条第三項の市町村農地委員会との協議による交換である。
 四、 控訴人国と控訴人Aとの間の原判決添付物件目録記載の(ニ)の土地の交
換の日時は昭和二十三年七月二日であるとの主張を昭和二十四年七月二日であると
訂正する。よつて右土地の交換については控訴人国と訴外Bとの間の原判決添付物
件目録記載の(ホ)の土地の交換についてと同様、その以前に売渡保留地域の指定
がなされたことを理由として、原判決事実摘示の請求原因七(3)と同一の予備的
主張をする。
 五、 原判決事実摘示の請人原因七(1)の控訴人国と控訴人Iとの間の原判決
添付物件目録記載の(ハ)の土地の交換に関する予備的主張は撤回する。」
 (控訴人らの主張)
 「一、被控訴人主張の一の事実は認める。
 二、 自創法第五条第四号の買収除外の指定は、昭和二十二年十一月二十六日付
土地区画整理施行地区に関する自創法第五条第四号の指定基準等に関する農林、内
務、戦災復興院の三次官通達に示される、同法同条同号の指定に関する関係専門委
員によつて構成される権威ある委員会の諮問を経て知事が指定するものであつて、
右指定は都市計画上の要請と自作農創設上の妥当性との調和を図る困難且つ高度の
行政的判断を経てなされるものであるから、自創法第五条第四号によつて買収から
除外さるべき農地は知事の指定する区域内にあるものに限られることは、右法条の
立法的解釈上及び文理解釈上いささかも疑を容れない(最高裁判所昭和二六年
(オ)第四〇五号昭和二八年二月二〇日判決参照)。従つてかかる指定のない土地
を、裁判所が自ら指定すべきか否かを判断して買収処分の適否を判断するのは、徒
らに行政的判断に介人するものであつて三権分立の建前から許さるべきでない。な
お売渡保留地区の扱いは、自創法第五条第四号の指定に該当しないため土地区画整
理地区の農地を買収した場合に、都市の将来の発展を考慮して前記五条四号の指定
の基準とは別の基準に基づいて、一定期間売渡を政府において保留することができ
ることとした地区であつて、右は自創法第五条第四号の買収除外地区ではない。ま
た、買収要件の存否は買収計画の公告の時点をもつて判断すべきであつて、買収処
分時をもつて買収要件の存否の判断時とすべきではない。
 三、 被控訴人主張の交換が自創法第二十三条第三項の市町村農地委員会との協
議によつたものであることは認める。
 四、 控訴人国と控訴人Aとの間の原判決添付物件目録記載の(ニ)の土地の交
換の日時が昭和二十四年七月二日であることは認める。」
 (証拠)
 被控訴代理人は、甲第十六号証の一ないし十二を提出し、当審証人F及び同Jの
各証言を援用し、乙第八ないし第十号証の各成立を認め、甲第十五号証の一ないし
六を撤回した。控訴代理人は乙第八ないし第十号証を提出し、甲第十六号証の一な
いし十二の各成立を認めた。
         理    由
 市川市ab番畑一反c畝d歩及び同所e番畑一反f畝g歩内畦畔h歩の土地につ
き、昭和十年三月十二日訴外Jから訴外Jに対する所有権移転登記がなされ、右二
筆の土地がその後昭和十五年十月十八日合筆され、次いで同月二十八日更に分筆さ
れて原判決添付物件目録記載の(イ)ないし(へ)の各土地となつたこと、千葉県
知事が昭和二十五年二月二十八日右各土地につき右Jを買収の相手方として自創法
第三条第一項第一号の不在地主の所有する小作地として昭和二十二年七月二日を買
収の時期とする買収処分をなしたこと、右各土地中原判決添付物件目録記載の
(イ)の土地については昭和二十三年七月二日控訴人Kを、同(ロ)の土地につい
ては同日控訴人Cを、同(ハ)の土地については昭和二十三年十月二日控訴人I
を、同(ニ)の土地については昭和二十四年七月二日控訴人Aを、同(ホ)の土地
については同日訴外Bを、同(ヘ)の土地については昭和二十三年十月二日控訴人
Lを、それぞれ取得者として自創法第二十三条第三項の協議による交換がなされた
ことはいずれも当事者間に争がない。
 被控訴人は右買収にかかる本件土地は、Jの所有名義となつてはいたが、被控訴
人の先代MがJから買受けて所有権を取得したものであると主張するのに対し、控
訴人らは本件土地は名義どおりJの所有であつたものであると主張するので考える
に、本件土地は被控訴人の先代MがJから買受けたものであるが、前所有者Jから
これを借受けていた小作人に対し明渡を求める都合及び課税の都合上から、当時ア
メリカに在住していたJの名義に所有権移転登記を受けたものであつて、Mの所有
に属していたことは、この点に関する認定の証拠として当審証人F及び同Jの各証
言をつけ加えるほか原判決の説示するとおりであるから、原判決の理由中この点に
関する部分はこれを引用する(ただし、「E」とあるのは「F」と訂正する)。そ
して右Mが昭和二十年三月十四日死亡し被控訴人が家督相続をしたことは当事者間
に争がないから、被控訴人は本件土地の所有権を承継取得したことが明らかであ
る。
 ところで、被控訴人は前記の買収処分は無効であると主張するので、その理由に
ついて検討する。
 一、 まず被控訴人は、(1)本件買収処分はその前提となる買収計画が樹立さ
れておらず、(2)仮りに買収計画が樹立されたとしてもその公告及び縦覧の手続
がとられていないと主張するが、右各手続が履践されたことは原判決の認定すると
おりであるから、この点に関する原判決の理由はこれを引用する。
 二、 次に被控訴人は、(3)本件土地はJの所有ではなく被控訴人の所有であ
るのに千葉県知事は買収の相手方をJとして買収したものであり、しかもその点に
ついては本件土地を管理していたFが昭和二十二年始頃当時市川市農地委員会の会
長であつた控訴人Iを訪れ本件土地はJの所有名義になつてはいるが真の所有者は
被控訴人である旨申入れてあるから、市川市農地委員会は本件土地の所有者が被控
訴人であることを知つており、(4)仮りにその事実を知らなかつたとしても、右
の如き申入れがあつた以上真実の所有者が何人であるかを慎重に調査して買収計画
を樹立すべきであるにも拘らず、何らの調査もせず漫然登記簿上の所有名義人であ
るJを所有者として買収計画を樹立したのであるから、右買収計画に基づく本件買
収処分には重大且つ明白な瑕疵が存すると主張する。しかし本件土地はJ名義に所
有権取得の登記がなされていたのであるから、市川市農地委員会において登記簿上
の名義に従つて本件土地をJの所有と認め買収計画を樹立したのは一応もつともで
あつて、原審(第一回)並びに当審証人Fは、昭和二十二年二、三月頃不在地主の
所有農地が買収になることを新聞で知り、市川市の農地委員会に行つたが早朝で委
員らの出勤前であつたため、小使より農地委員会長であるときいた控訴人Iをその
自宅に訪問し、本件土地はMが買つたものであるがJの所有名義となつているので
どうしたらよいかと尋ねたところ、監物はよく調べておくと答えた旨証言するけれ
ども、右の証言内容が真実であるとしても(控訴人Iは原審における本人尋問の結
果中においてこれを否定している)、同控訴人は当時市川市農地委員会の一農地委
員であつたにすぎず(被控訴人は同控訴人は当時農地委員会長であつたと主張する
が、原審証人Nの証言及び原審における控訴人I本人の尋問の結果によれば、当時
同控訴人は単なる農地委員であつて、農地委員会長はNであつたばかりでなく、同
控訴人は農地委員会長に一度も就任したことがないことが明らかである)、Fが一
農地委員の自宅を訪ねて口頭で前記のような内容を述べたのみでは、農地委員会に
対する申出とはうけとられず単に個人的な相談ないしは依頼と解されてもやむを得
ないところであるから、市川市農地委員会の会長、監物以外の委員及びその他の職
員が、Fよりの前記の申出を当然聞知していたとは認め難く、またそれらの者に徹
底しなかつたとしても無理からぬところである。してみれば、たとい前記認定のと
おり本件土地の真実の所有者が被控訴人であつても、市川市農地委員会が本件土地
の真の所有者を探求するために十分の調査を遂げなかつたとしても著しい手落ちは
なく、登記簿の記載によつてJを所有者と認めて買収計画を樹立し、千葉県知事が
右買収計画に基づき本件買収処分を行なつたことには、処分を無効ならしめるに足
りる重大且つ明白な瑕疵が存するということはできず、この点の被控訴人の主張は
採用できない。
 三、 また被控訴人は、(5)控訴人Iは本件土地が買収後交換により自己の所
有に帰することを見越して、市川市農地委員会における買収計画樹立の決議に関与
したから、かかる重大な利害関係人が関与して樹立された買収計画に基づく本件買
収処分は無効であると主張する。しかし控訴人Iが本件土地の一部が交換により自
己の所有に帰することを見越して買収計画樹立の決議に関与したことを認めるに足
りる証拠はなく、却つて原審における控訴人I本人の尋問の結果によれば、同控訴
人は当時本件土地の一部を交換により取得することを全然予期しなかつたものと認
められるので、被控訴人の右主張は採用できない。
 四、 更に被控訴人は、(6)本件土地は都市計画法による土地区画整理施行地
区内にあるから自創法第五条第四号の買収除外地であつて、本件買収処分はこの点
において無効であると主張するので、この点について検討するに、本件土地が昭和
十三年十一月十九日都市計画法による土地区画整理施行地区に指定されたことは当
事者間に争がないけれども、自創法第五条第四号は「都市計画法第十二条第一項の
規定による土地区画整理を施行する土地(中略)の境域内にある農地で都道府県知
事の指定する区域内にあるもの」と規定しているのであつて、都道府県知事が右の
指定を行なうか否かは自由裁量に属すると解せられるから、土地区画整理施行地区
内の農地であつても、都道府県知事の買収除外の指定のない以上は買収の対象とな
り得ること多言を要しない(昭和二八年二月二〇日最高裁判所第二小法廷判決、最
高裁判所民事判例集第七巻第二号一八〇頁参照)。
 <要旨>もつとも、被控訴人は、本件土地は昭和二十四年三月十五日千葉県告示第
一五五号及び第一五七号により自創法施行規則第七条の二の三の規定による
売渡保留地域に指定されたが、右規定は自創法第五条第四号及び第五号の規定に対
応するものであつて、右の売渡保留地域の指定は買収処分が有効に発効している前
提の下になされたものであり、もしも知事が当時本件買収処分が未発効であること
に気づいていたならば当然買収計画を撤回して買収除外の指定をなすべかりしもの
であるから、右売渡保留地域の指定後になされた買収令書の公告による本件買収処
分は無効であると主張し、本件土地が被控訴人主張の如く売渡保留地域に指定され
たことは当事者間に争がないので、右の被控訴人の法律上の主張について考えてみ
るに、なるほど自創法施行規則第七条の二の三の規定による売渡保留の指定と自創
法第五条第四号の規定による買収除外の指定とは指定の要件が酷似するけれども、
もしも両者が全く同一の目的から規定されたものであつて、一が買収処分前に行な
われ他が買収処分後に行なわれる点のみが異なるにすぎないものとするならば、売
渡保留地域内の買収農地は買収前の所有者に売戻すべきものとするのが当然である
にも拘らず、何らそのような規定が存しない(もつとも、後に成立した農地法第八
十条により、国が売渡保留となつた買収農地等を買収前の所有者等に売り払うこと
ができることとなつたが、この場合も一定の要件の下に売り払われるのであつて、
当然売り払うべきものでないことは右規定によつて明らかである)ばかりでなく、
右自創法施行規則第七条の二の三第二項以下の規定によれば、売渡保留の期間は五
年とされ、五年の経過後、農地としての使用目的の変更の可否が不明のときは都道
府県知事は売渡保留の期間を延長することができるが、使用目的の変更を不相当と
認めるときは、政府は自創法第十六条の規定による売渡をなすのであるから、右売
渡保留の指定は自創法第五条第四号の買収除外の指定とは全く目的を同一にするも
のではなく、両者の指定の基準は売渡保留の指定のほうがより広汎であつて差支な
く、いいかえれば、買収除外の指定と売渡保留の指定とは、等しく自由裁量によつ
てなされるとはいつても、買収除外の指定のほうが宅地化の傾向が著しい場合にな
され、売渡保留の指定は宅地化の傾向が買収除外の指定をなす程度に至らない場合
になされるものと解することができる。
 また右売渡保留地域の指定と自創法第五条第五号の買収除外の指定とを比べてみ
ても同様の見地から売渡保留の指定のほうがより広汎な基準によつてなされ得るも
のと考えられる。従つて、被控訴人が主張するように本件土地について買収処分前
に売渡保留の指定がなされたからといつて、これを自創法第五条第四号又は第五号
の買収除外の持定があつた場合と同視すべきものと解することはできない。
 従つてこの点から本件買収処分が無効であるとの被控訴人の主張も亦採用できな
い。
 よつて本件買収処分が無効であるとする被控訴人の主張はすべて理由がない。
 ところで、被控訴人は更に、本件買収処分が無効でないとしても、原判決添付目
録記載の(ニ)の土地についてなされた控訴人Aを取得者とする交換、及び同
(ホ)の土地についてなされた訴外Bを取得者とする交換は無効であると主張する
のでその理由について検討する。
 一、 まず被控訴人は、原判決添付目録記載の(ホ)の土地についてなされた訴
外Bを取得者とする交換に関して、Bは既に昭和十八年八月二十日死亡しているの
で、右交換は虚無人を相手方とするもので無効であると主張するが、Bが昭和十八
年八月二十日死亡したことは当事者間に争がないけれども、市川市農地委員会が登
記簿の記載に従つてB宛名義で交換の指示書を作成したけれども実際にはBの相続
人であるOに対して交換の指示をしたところ同人がこれに応じたものであることは
被控訴人の明らかに争わないところであるから、被控訴人の右主張は理由がない。
 二、 次に被控訴人は、本件土地は昭和二十四年三月十五日売渡保留地域に指定
されているから、その後である同年七月二日になされた原判決添付目録記載の
(ニ)の土地に対する控訴人Aを取得者とする交換及び同(ホ)の土地に対するB
(実質的には前記のとおりO)を取得者とする交換はいずれも無効であると主張す
るので考えてみるに、右売渡保留地域の指定がなされたことは当事者間に争がない
ところ、売渡保留の期間は自創法施行規則第七条の二の三第二項により五年と法定
されているのであり、同条第三項が、右五年の期間経過後において、都道府県知事
が売渡保留の指定を受けた農地の使用目的の変更を不相当と認めるときは、政府は
これを自創法第十六条の規定により売渡す旨定めているところからすれば、売渡保
留の指定があつた後五年の期間を経過する以前に売渡保留を指定した農地を右自創
法第十六条の規定によつて売渡したり、右売渡に準ずると考えられる同法第二十三
条の交換を行なつたりすることは絶対に許されないものと考えられる。してみれ
は、前記売渡保留の指定後五年内になされた原判決添付目録記載の(ニ)の土地に
ついて控訴人Aを取得者としてなされた交換及び同(ホ)の土地について訴外Bを
取得者としてなされた交換(但し実質上はOに対してなされたものであることは前
記のとおりである)は無効といわなければならない。
 そして、被控訴人は右(ニ)及び(ホ)の土地についてその買収前の所有者とし
て、農地としての使用目的の変更が相当であると認められるに至つた場合には、農
地法第八十条の規定により優先的に売払を受け得る立場にあり、もともと売渡保留
の指定は買収農地について宅地化の傾向のある場合になされるのであるから、五年
の経過後には使用目的の変更を相当とするものと判定される可能性のあることは、
右指定のなされたこと自体によつて十分であり、従つて被控訴人は右(ニ)及び
(ホ)の土地の売払を受ける期待権を有し、右各土地についてなされた交換の無効
確認を求める法律上の利益を有するものということができる。
 以上判断のとおりであるから、被控訴人の控訴人国との関係において、予備的
に、昭和二十四年七月二日原判決添付目録記載の(ニ)及び(ホ)の土地(その後
昭和三十四年一月二十四日土地区画整理法による換地処分の結果それぞれ別紙目録
記載の(ニ)の(一)(二)及び(ホ)の土地となつたことは当事者間に争がな
い)につきなされた交換の無効であることの確認を求める請求は理由があるが、第
一次の請求である本件買収処分の無効確認を求める請求並びに右買収処分が無効で
あることを前提とする各登記抹消並びに本件各土地の明渡を求める請求はすべて失
当であり、また予備的請求についても、控訴人Aに対し交換による所有権取得登記
の抹消を求める請求及び控訴人Pに対し、Bのためなされた交換による所有権取得
登記、Oのためなされた家督相続による所有権取得登記、同控訴人のためなされた
相続による所有権取得登記の各抹消を求める請求については、前記の認定よりすれ
ば右登記はいずれも登記原因を欠くものであるけれども、本件買収処分は有効であ
るから、被控訴人は本件土地の所有権を有せず、他にも被控訴人が右各登記の抹消
を求める資格を有する根拠を見出し得ないから、右請求も又失当たるを免れない。
 よつて、原判決中被控訴人の第一次の請求を認容した部分は不当であるから、本
件控訴は理由があり、被控訴人の本訴請求は、控訴人国に対する関係においては予
備的請求につき主文第二項の限度においてこれを認容すべく、控訴人国に対するそ
の余の請求並びにその余の控訴人らに対する請求は棄却すべきであるから、これと
異なる原判決(ただし、訴却下にかかる主文第一項を除く)は主文第二、三項のと
おり変更すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九十六条第八十九
条第九十二条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 牛山要 裁判官 福島逸雄 裁判官 今村三郎)
      目  録
(イ)市川市i町j丁目k番のl
 一、畑  m畝n歩
(ロ)同所o番のp
 一、畑  q畝r歩
(ハ)同所o番のs
 一、畑   畝n歩
(ニ)の(一) 同所o番のt
 一、畑  u畝v歩
(ニ)の(二)同所o番のw
 一、畑  u畝x歩
(ホ)同所y番のw
 一、畑  m畝h歩
(ヘ)同所o番のz
 一、畑  f畝二歩

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