弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人加藤定蔵の上告理由第一点について。
 論旨は、要するに、原判決が、履行遅滞を理由としては、上告人の本件プラント
製作契約解除の意思表示は無効であると判断するに至つた過程には所論の違法があ
る旨主張するにある。
 しかし、本件プラントの受渡期限は、昭和三〇年一、二月頃、本件当事者双方合
意の上、当初の期限より一箇月延期され、同年四月末日と定められた旨の原審の認
定は、原判決挙示の証拠に照らし、肯認しえないことはなく、原審がこの事実を前
提として、上告人が右期限後に被上告人に対し新たに本件請負契約上の債務の履行
を催告した旨の主張立証がないから、被上告人の履行遅滞を理由としては、上告人
がした右契約解除の意思表示は無効であると判示したのは正当であり、その判断の
過程に所論の違法はない。所論は、ひつきよう原判決を正解せず、右と異なつた見
解に立つて原判決を攻撃するか、原審で主張判断のない事項或いは原判決の結論に
影響しない事項について原判決の違法をいうに帰するから、採用できない。
 同第二点について。
 所論は、原判決が、本件プラントは土地の工作物であるから、民法六三五条但書
により、注文者である上告人は本件請負契約を解除することができないとしたのは、
上告人が同条本文の規定により本件請負契約を解除できるかどうかの争点について
判断を遺脱したもので、審理不尽、理由不備であると主張するものである。
 按ずるに、同条但書にいう「土地ノ工作物」とは、社会観念上、土地に付着し、
継続的に使用されるものと認められる工作物をいうのであつて、工場内に据え付け
るべき機械は、基礎工事によつて土地に固著させられないかぎり、右法条にいう「
土地ノ工作物」にあたらないと解すべきところ、原審の確定したところによれば、
本件プラントは注文者である上告人に引渡しがなされず、従つて、工場に据付けら
れるに至らなかつたというのであるから、本件プラントは同法条にいう「土地ノ工
作物」にあたらず、従つて、原判決がこれと異なる判示をしたのは、法律の解釈を
誤つたものといわなければならない。しかし、原審の確定したところによれば、前
記のように、本件プラントは注文者である上告人に引渡しがなされなかつたもので
あるのみならず、本件プラントには、品質、性能の点で、原判示のような瑕疵があ
つたが、それらの瑕疵は、いずれも、改修または、補修が可能であつたというので
あり、結局、本件プラントには本件請負契約の目的を達しえないような瑕疵がなか
つたものといわざるをえないから、上告人は民法六三五条の規定により本件請負契
約を解除することができないものと解すべきである。従つて、この点で右と同趣旨
の判示をした原判決は、結局、正当であり、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 被上告人は昭和三〇年三月二〇日頃本件プラントの備付準備を完了した旨、竝び
に本件プラントのうち上告人の承諾のもとに仕様変更を行つた部分を除いた残余の
部分について原判示のような瑕疵があつても、その瑕疵はいずれも改修又は補修で
きないものではなく、その瑕疵があるからといつて本件請負契約の履行が不能に帰
したものとはいえない旨の原審の認定判断は、原判決の挙示する証拠に照らして相
当である。従つて、原判決に所論違法はなく、所論は、ひつきよう、原審の専権に
属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用できない。
 同第四点について。
 訴外Dは、上告人の防腐工場設置について全般的な技術指導に当ると共に上告人
から本件プラントに関し設計の変更を含む一切の代理権を授与されていた旨、Dは
本件プラントのうち注薬缶、計量槽、空気圧縮機が仕様書によれば常用12kg/
cm2であるのを10kg/cm2に設計変更することを承認した旨、およびDの
承諾を得なかつた仕様変更はいずれも改修又は補修できないものとは認めがたい旨
の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠に照らして相当である。所論は、ひつきよ
う、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに外ならないから、
採用できない。
 同第五点について。
 裁判所が所論のような事項について釈明する職責を負わないことは当然の事理で
あるから、原審の手続に所論違法は存しない。従つて、論旨は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    松   田   二   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛