弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役壱年に処する。
     但し原審における未決勾留日数中六拾日を右本刑に算入する。
     訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 谷村区検察庁検察官事務取扱検事磯山利雄の控訴趣意は別紙本判決書末尾添付の
控訴趣意書記載のとおりでありまたこれに対する弁護人中川兼雄の答弁は同末尾添
付の答弁書記載のとむりであるから当裁判所はこれ等に対する判断を次のように説
示する。
 控訴趣意第一点について
 <要旨>原審において取り調べた本件被害者Aに対する司法警察員作成の告訴調書
並びに当審において事実取り調べの結果就中当審受命判事の検証調書、同証
人B及び同Aに対する各尋問調書を綜合すると右被害者Aは所論のように被告人と
従兄弟の関係にあたる親族ではあるが当時山梨県南都留郡a町bc番地所在の被告
人方の一室を間代一ケ月金二百円にて借受け特に被告人方と区劃を為し諸物資の受
配、炊事、起居等全く別個に生活をしてい九ことを明認することができるから右が
同一家屋内において居住していたからというてこれをもつて刑法第二百四十四条第
一項前段に該当する所謂同居の親族と為すことはできたい。従つてこの点に関する
弁護人の所謂同居の親族についての主張は到底採用することはできない。然らば原
審が本件公訴事実全部を認容しながら被告人と右被害者とは同居の親族であると速
断し前記法条を適用して斯く刑の免除の言渡をしたのは検察官所論のように明らか
に判決に影響を及ぼすべき法令の適用を誤まつた違法があると為さざるを得ないか
ら爾余の控訴趣意について判断を侯つまでもなく既にこの点において刑事訴訟法第
三百九十七条第三百八十条に則り原判決を破棄するを相当とすべく該論旨は理由が
ある。但し当裁判所は同法第四百条但し書に該当する場合と認めるので直ちに更め
て本件被告事件について判決をする。よつて按ずるに
 被告人は
 第一、 昭和二十五年九月二十九日頃当時山梨県南都留郡a町bc番地A方にお
いて同人所有の現金百円を窃取し
 第二、 同年同月十七日頃右同所において同人所有の黒地オーバーコート冬背広
上衣、同チョツキ各一着を窃取し
 第三、 同年同月十七日頃右同所において同人所有の精米約一升を窃取したもの
である。
 以上の事実は
 一、 Aに対する司法警察員作成の告訴調書
 一、 Cに対する司法警察員作成の第一回供述調書
 一、 当審受命判事の検証調書
 一、 当審受命判事の証人Bに対する尋問調書
 一、 当審受命判事の証人Aに対する尋問調書
 一、 被告人の原審公廷における供述
 を綜合考覈してこれを認定する。
 なお被告人は昭和二十一年二月八日東京区裁判所において窃盗罪により懲役弍年
六月に処せられ該刑は当時その執行を受け終つたものでこの事実は被告人に対する
司法警察員作成の第一回供述調書によつてこれを認める。
 法律に照すと被告人の各窃盗の所為に刑法第二百三十五条に各該当するところ前
示前科があるので同法第五十六条第一項第五十七条を適用して累犯の加重を為しな
お右は同法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条を適用して犯
情の重い右第二の窃盗罪の刑に併合罪の加重した刑期範囲内において被告人を懲役
壱年に処すべく但し同法第二十一条に則り原審における未決勾留日数中六拾日を右
本刑に算入し訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項に則り全部被告人をして負
担せしむべきものとする。
 よつて主文のように判決をする。
 (裁判長判事 小中公毅 判事 細谷啓次郎 判事 河原徳治)

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