弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
別紙訴状請求の趣旨記載のとおり。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 本案前の申立て
主文同旨
2 本案の答弁
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
別紙訴状請求の原因記載のとおり。
二 被告の本案前の申立ての理由及び請求原因に対する認否
別紙答弁書「第二 本案前の申立の理由」及び「第三 請求の原因に対する認否」
記載のとおり。
       理   由
一 甲第二、三号証及び当事者間に争いのない事実によれば、以下の事実が認めら
れる。
1 原告は、平成七年二月一四日、Aと婚姻し、妻の氏を称する旨の婚姻届をし、
Aを筆頭者とする夫婦の新戸籍が編成された(争いなし)。
2 平成七年三月二八日、右夫婦の嫡出子として長男Bが出生し、右戸籍に、父母
欄を
    父   E
    母   A
として記載された(戸籍に長男Bの記載があること及び父母欄の記載は争いな
し)。
3 平成九年一〇月三日、右夫婦の嫡出子として二男Cが出生し、右戸籍に記載さ
れた(父母欄の表記は前記長男Bの場合と同じ。戸籍に二男Cの記載のあることは
争いなし)。
4 平成一〇年一月一日、右夫婦は協議離婚し(この点争いなし)、その際、原告
は、婚姻前の氏である「D」に復し、原告について新戸籍が編成された。同月一六
日、二男Cは、父の氏を称することを届け出て、原告の戸籍に入籍した。他方、長
男Bは、従前どおり、Aを筆頭者とする戸籍に記載されている。
二 原告は、戸籍の父母欄は、戸籍筆頭者を先に記載すべきであるにもかかわら
ず、戸籍法施行規則第一条(及びこれによって定められた附録第一号様式)は、常
に父を先に記載することになっており、右規則は両性の平等を定めた憲法一四条に
反し、これにより、「原告は、戸籍筆頭者の氏を冠せられ、行政上の平等な処遇を
受けることができずに精神的苦痛を受けた」と主張して、第一に、戸籍法施行規則
第一条及び附録第一号様式の改正(父母欄は、戸籍筆頭者を先に記載する表記方法
に改正すること)を求める(以下、この部分の訴えを「本件第一の訴え」とい
う。)とともに、第二に、筆頭者Aの戸籍中の長男Bの父母欄を
    母 A
    父 D
に変更するよう求めている(以下、この部
分の訴えを「本件第二の訴え」という。)ところ、被告は右各訴えの適法性を争う
ので、以下検討する。
三1 本件第一の訴えについて
 裁判所法三条一項の規定にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象とな
るのは、当事者間に具体的な紛争が存在し、それは、権利義務関係ないし法律関係
の存否に関するものであり、かつ、法令の適用により終局的に解決できるものに限
られるところ、具体的な権利義務関係ないし法律関係を離れて、裁判所に対し抽象
的に法令が憲法に適合するかしないかの判断を求めたり、政令又は省令が法律に適
合するかしないかの判断を求めることは許されないものといわざるをえない。
 ところで、戸籍は身分関係を公証するにすぎず、原告の長男B及びその父母の戸
籍への記載によって原告に何ら権利や義務を生じさせるものではなく、また原告の
具体的権利義務に変動を与えるものではない。原告は、筆頭者Aの戸籍中の長男B
の父親欄に「E」と記載され、戸籍が重要な証明力及び証拠力をもっていることに
鑑みれば、原告が長男Bの親権者であることを証明するに際し、重大な影響を受け
るおそれがあると主張するが、父親Eが協議離婚によりDの新戸籍を編成したこと
は戸籍(甲二)自体によって証明されているし、また、父母の離婚等によりその氏
が変わった場合には、職権又は申出によって父母欄の氏を更正する扱いがされてお
り、その旨の申出をすれば、長男Bの父欄は「D」となるのであるから、右事情は
前記結論を左右するものではない。
 そして、本件第一の訴えにおいて、原告は戸籍法施行規則第一条によって定めら
れた附録第一号様式中、父母欄に係る表記部分は違憲法令であることを理由にその
改正を求めているが、前記のとおり右表記部分は原告の具体的な権利義務関係及び
法律関係に影響を与えないのであるから、本件第一の訴えは、結局は具体的な権利
義務関係ないし法律関係を離れて、抽象的に省令の第一号様式を憲法に適合するよ
うに改正を求めるものに帰することになり、前記「法律上の争訟」に当たらず、不
適法といわざるをえない。
2 本件第二の訴えについて
 原告は、本件第二の訴えにおいて、被告に対して、原告の長男Bの戸籍の父母欄
を母から始まる欄とし、母「A」、父「D」の順に変更することを求めている。原
告の右訴えは、行政庁である被告に一定の作為を求めているものであり、いわゆる
無名抗告訴訟と理解される
が、抗告訴訟においては、当該訴訟で問題とされている処分その他の公権力を行使
しうる権限を有する行政庁を被告として提起しなければならないものである(行政
事件訴訟法一一条、三八条一項)。
 ところで、戸籍法一条によれば、「戸籍に関する事務は、市町村長がこれを管掌
する。」と規定されており、戸籍簿への記載等戸籍事務を取り扱う権限は市町村長
に属しており、法務大臣である被告はその権限を有しないものと認められる。
 したがって、本件第二の訴えは、被告適格を欠く者に対する訴えとして不適法で
あるといわざるをえない。
四 結論
 よって、本件訴えは、不適法であるから却下することとし、主文のとおり判決す
る。
富山地方裁判所民事部
裁判長裁判官 徳永幸藏
裁判官 源孝治
裁判官 冨上智子

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