弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人高林茂男名義の控訴趣意書に記載されたとおりである
からこれを引用し、これに対し次のとおり判断する。
 一、 控訴趣意第一点について。
 論旨は、被告人は初めから刃物を用いてA運転手に暴行脅迫を加えて乗車料金の
支払を免れようと考えたこともなければ、自動車料金の支払を免れる目的で同人を
殺害しようと考えたこともない、また金銭強奪の目的でA運転手を刺したものでも
ない。従つて被告人の本件所為は刑法第二四六条第二項の詐欺の既遂、同法第二〇
五条第一項の傷害致死及び同法第二三五条の窃盗の三つの罪の併合罪に当るもので
あるから、被告人としてはこれら三罪の刑事責任を負うは格別、強盗殺人の罪によ
つて処断されるいわれはない。然るに原判決が被告人の本件所為を強盗殺人である
として刑法第二四〇条を適用したのは理由不備に該当するか、若しくは事実を誤認
したもので、その誤認は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、いずれにして
も原判決は破棄を免れないというのである。
 <要旨>しかしながら、原判決挙示の証拠によると、被告人は本件犯行当夜、横浜
市a区b町所在の刃物店「B」で尖鋭な骨すき庖丁ようの刃物(東京高裁昭
三九年押八五七号の四の骨すき庖丁に類似した刃物)を盗み出し、これを隠し持つ
てA運転手のタクシーに乗車していること、当夜の被告人の所持金は僅か三、四百
円位で到底cとd基地間の乗車料金(約一、一〇〇円)を支払うに足りないのに、
被告人はそのことを十分承知のうえであえて前記タクシーに乗車していること、被
告人が停車を命じた地点は基地附近の神奈川県高座郡e町大字f字gh番のi附近
で、通行人や通行車輌も少なく、附近の人家もまばらな暗がりの路上であること、
停車を命じ後部座席左扉を開け逃げ出そうとしたが、扉が開かないとみるや直に前
記刃物でA運転手の背後よりいきなりその左胸部を刺していること、更に車外に転
げ落ちた同人の肩、胸、腹部等を突き刺し、続いて同人を道ばたの溝に引きずり込
んでその胸部にいわゆる最後のとどめまで刺しておること、その刺切創は二〇ケ所
に及び、左肩胛下部より肺動脈を切截し心臓左心房に至る刺創をはじめ、身体の危
険な部位に極めて重大な傷害を与えており、結局同人をほどなく死亡させるに至つ
ていること等の各事実を認定することができる。そしてこれ等の事実を綜合する
と、原判示のとおり、被告人はA運転手のタクシーに乗車した当初から、基地附近
でいきなり扉を開けて逃げ出すか或いは刃物を用いてでも乗り逃げしようと考えて
いて、基地附近の路上に停車を命じ逃げ出そうとしたところ扉が開かなかつたので
狼狽し、とつさに、A運転手を殺害し乗車料金の支払を免れようと決意し前記兇行
に及んだものと認めるに十分である。
 もつとも、原判示現金強取の点につき考えてみるのに、被告人が原判示の現金奪
取を企図するようになつたのは、原判示のとおり被告人が車外に転げ落ちたA運転
手を突き刺したうえ車に戻り、ハンドルや扉についた自己の指紋を拭き消していた
際に、車内に金入袋があるのを認めたそのときであると認められるのである。
 この点は正に所論の指摘するとおりであるけれども、被告人は既に前記のよう
に、A運転手から自動車料金の支払を免れる目的でその胸部を突き刺す等の暴行に
及び、結局その支払を免れて財産上不法の利益を得ておるのであり、前記金員奪取
も、右兇行の直後これに引続いて、その機会にその場所で敢行されたものであるか
ら、これら現金奪取の点も前記不法利得と包括してこれを考慮するのが相当であ
る。結局被告人の本件所為は刑法第二四〇条後段の強盗殺人の包括一罪に当るもの
であるから原判決には所論の如き理由不備も事実誤認も存しない。論旨は理由がな
い。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 新関勝芳 判事 中野次雄 判事 伊東正七郎)

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