弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中上告人A1および上告人A2に対し金銭支払を命じた部分を破
棄し、右部分につき本件を高松高等裁判所に差し戻す。
     上告人A1のその余の上告ならびに上告人A3、上告人A4および上告
人A5の各上告を棄却する。
     前項の部分に関する上告費用は上告人A1、上告人A3、上告人A4お
よび上告人A5の負担とする。
         理    由
 上告代理人梶原守光の上告理由第一について。
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認する
ことができ、その認定判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよ
う、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであつて、採
用することができない。
 同第二について。
 原審は、その挙示の証拠によつて、本件山林は被上告人a町B1(以下、被上告
人B1という。)所有の入会地であり、昭和三六年三月一日右B1の総会において
本件山林の立木(以下、本件立木という。)を売却する旨の決議が適法に成立し、
同月二〇日本件立木の競争入札が行なわれるに至つたところ、右競争入札の当日上
告人A2が、入札現場に来集した一〇名前後の入札希望者に対し、予め上告人A1
において作成した右上告人両名を含む八名分の共有持分権の立木売買を禁ずる旨を
記載した「告示」と題する縦五五センチメートル、横四〇センチメートルの紙片を
提示して、本件山林は右上告人両名らの共有に属し被上告人B1の所有でなく、共
有者は競売には反対であつて売るわけにはいかないと大声でどなり立てたので、前
記入札希望の木材業者中相当数の者が現場から立ち去り、実際に入札した者は結局
僅か三名にすぎず、これらの者による入札の結果、被上告人有限会社B2商店が最
高額の八〇〇万円の入札をし、これは被上告人B1の見込価格一一〇〇万円を大き
く下廻つたが、被上告人B1においては諸般の事情を斟酌した結果八五五万円の価
格で被上告人有限会社B2商店に売却のやむなきに至つたこと、上告人A2および
同A1の本件立木の売却に対する反対運動は、上告人A2の前記入札現場における
妨害運動のほか、当時上告人A1も前記「告示」と題する紙片二〇枚位を居住地の
a町内はもとより隣接町村内の人目につく場所に貼りつける行動に出ていたこと、
上告人A2および同A1は、当時相互に意思を通じ、協力して本件立木の売却に対
する反対運動を行なつていたものであること等の事実を確定したうえ、右妨害行動
は、本件山林が被上告人B1の所有に属し、上告人A2および同A1らの共有に属
しない以上、権利者である被上告人B1の正当な処分行為を少くとも過失により妨
害するものであつて不法行為を構成し、被上告人B1に対し上告人A2および同A
1は、本件立木の当時の客観的な時価と前記被上告人有限会社B2商店の買受価格
との差額である一四五万円の損害を賠償すべき義務があると判断している。
 しかしながら、物の所有者がその物を他に売却しようとしている時に、第三者が、
買受希望者に対し、所有者に処分権がないなど虚偽の表示をしたため、所有者が処
分行為を中止しもしくは客観的取引価格より低い価額で処分せざるをえなくなつて
財産上の損害を被つても、第三者が、自己の権利を保全する等の目的から出た場合
であつて、その表示にかかる事実を真実と信じ、このように信ずるについて合理的
事由が存在し、かつ、その表示が社会的に相当な方法でなされたときは、右行為に
は故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しないものと解すべきである。
 ところで、原判決の引用する第一審判決の事実摘示によれば、上告人A2および
同A1は、原審において、右上告人両名が競売に反対したのは、本件山林が被上告
人B1の所有でなく、上告人A2の長男である上告人A5および同A1ら一九六名
の共有にかかるものであつて、被上告人B1に本件立木の売却処分権がないものと
信じ、上告人A1は共有持分権者本人として、また、上告人A2は共有持分権者で
ある上告人A5を代理して、右売却処分に反対したものであつて、その方法も暴言
暴挙に出たことはなく、適法な権利保全の手段にほかならない旨主張していたこと
が明らかである。
 しかるに原判決は、右主張につき前叙のような観点から何ら審理判断を加えるこ
となく、前記認定の事実から、直ちに、上告人A2および同A1に不法行為責任を
認め、第一審判決を取り消し、右上告人両名に対する被上告人B1の各請求のうち
一部を認容し、右上告人両名に対し金銭の支払を命じているが、この部分(第一審
昭和四〇年(ワ)第一七六号事件中右上告人両名の敗訴部分)は、判断遺脱、理由
不備の違法があるといわざるをえない。それゆえ、この点に関する論旨は理由があ
り、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中右金銭支払を命じた部分
は破棄を免れない。そして、右部分については、さらに審理を尽す必要があるから、
本件を原審に差し戻すのが相当である。
 しかしながら、原判決中、上告人A1のその余の部分に関する上告ならびに上告
人A3、同A4および同A5の各上告は、上告理由第一につき判示したとおり理由
がないから、これを棄却すべきものとする。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に
従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    岡   原   昌   男

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛