弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人八十島幹二の上告理由について
 一 本件は、福井県吉田郡a町の住民である上告人らが、町長である訴え取下げ
前の第一審被告Dは、控訴取下げ前の原審控訴人Eとの間で、昭和六一年五月六日
に、町の所有していた第一審判決物件目録記載一の土地(以下「本件土地」という。)
とEの所有していた同目録記載二の土地とを交換する契約(以下「本件契約」とい
う。)を締結したが、これは、町議会の議決を欠く違法な契約の締結に当たるとし
て、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、本件土地についての同月一三日
受付所有権一部移転仮登記(以下「本件第二登記」という。)の権利者である被上
告人B1及び本件土地についての同年八月二一日受付抵当権設定登記(以下「本件
第三登記」という。)の権利者である被上告人B2信用金庫を相手に、右各登記の
抹消登記手続を請求する住民訴訟である。
 第一審は、本案につき判断をして、請求を認容したのに対し、原審は、職権で監
査請求前置の要件を判断し、(一)本件監査請求書の請求の趣旨には、本件契約の
違法不当を理由として、(1)本件土地につきEを権利者とする昭和六一年五月七
日受付所有権移転登記(以下「本件第一登記」という。)の抹消登記手続を求め、
本件土地の返還をさせ、(2)本件土地を取り戻すことができないときは、損害賠
償金一五〇〇万円をD及びEに連帯して支払わせる措置を請求する旨が記載されて
いる、(二)本件監査請求が被上告人B1に対する本件第二登記及び被上告人B2
信用金庫に対する本件第三登記を直接その対象としている事実は認められず、右監
査請求と本件訴えにおける被上告人らに対する請求は、あくまでも別個のものであ
って、実質的にみても同一性のあるものとは解されないから、本件訴えは、監査請
求を経ておらず、不適法である、として訴えを却下した。
 二 しかし、原審の右(二)の判断は、是認することができない。その理由は次
のとおりである。
 住民訴訟につき、監査請求の前置を要することを定めている地方自治法二四二条
の二第一項は、住民訴訟は監査請求の対象とした同法二四二条一項所定の財務会計
上の行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものと定めているが、同項には、
住民が、監査請求において求めた具体的措置の相手方と同一の者を相手方として右
措置と同一の請求内容による住民訴訟を提起しなければならないとする規定は存在
しない。また、住民は、監査請求をする際、監査の対象である財務会計上の行為又
は怠る事実を特定して、必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、措置の内容
及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく、仮に、執るべき措置内容等が
具体的に明示されている場合でも、監査委員は、監査請求に理由があると認めると
きは、明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができると解さ
れるから、監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された具体的な
措置の内容及び相手方を吟味する必要はないといわなければならない。そうすると、
住民訴訟においては、その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について監査
請求を経ていると認められる限り、監査請求において求められた具体的措置の相手
方とは異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも、許される
と解すべきである。
 これを本件についてみると、原審の確定した事実関係によれば、本件監査請求に
おいては財務会計上の行為としてDによる本件契約の締結が明示されており、本件
訴えにおいてもその点に何ら変わりはないのであるから、請求の内容及びその相手
方が監査請求におけるものと異なるからといって、本件訴えが監査請求前置の要件
に欠けるということはできず、本件訴えは適法というべきである。
 三 したがって、これと異なる見解に立って本件訴えを却下した原審の判断は、
法令の解釈適用を誤ったものであり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らか
であるから、論旨はこの趣旨をいう限度で理由があり、原判決は破棄を免れない。
そして、町議会の議決の要否、有無など本案について更に審理を尽くさせるため、
本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    福   田       博

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