弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成30年10月11日判決言渡
平成29年(行ケ)第10212号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成30年8月21日
判決
原告株式会社エヌ・エル・エー
訴訟代理人弁護士永野周志
訴訟代理人弁理士森博
被告株式会社東洋新薬
訴訟代理人弁護士成川弘樹
訴訟代理人弁理士高津一也
訴訟復代理人弁理士大崎絵美
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2015-800007号事件について平成29年10月17
日にした審決中「本件審判の請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
(1)被告は,平成25年3月26日,発明の名称を「黒ショウガ成分含有組成
物」とする特許出願をし(特願2013-64545号。優先日は平成24
年9月13日,優先権主張国は日本国。),平成26年7月4日,特許権の
設定登録を受けた(特許第5569848号。請求項の数は2。以下「本件
特許」という。)。
(2)原告は,平成27年1月8日,特許庁に対し,本件特許の特許請求の範囲
請求項1及び2に記載された発明について特許無効審判を請求した。
特許庁は,これを無効2015-800007号事件として審理した上,
同年9月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(以
下「第一次審決」という。),その謄本は,同年10月5日,原告に送達さ
れた。
(3)第一次審決に不服のある原告は,その取消しを求める訴えを知的財産高等
裁判所に提起し(平成27年(行ケ)第10231号),同裁判所は,平成
29年2月22日,第一次審決を取り消す旨の判決を言い渡した(以下「前
訴判決」という。)。
(4)特許庁は,前訴判決の確定を受けて更に上記審判事件の審理を継続し,被
告は,平成29年4月6日,特許請求の範囲の記載を訂正すべく訂正請求を
行った(乙1。以下「本件訂正」という。)。
(5)特許庁は,平成29年10月17日,本件訂正を認めた上で,「本件審判
の請求は,成り立たない。」との審決をし(以下「本件審決」という。),
その謄本は,同月26日,原告に送達された。
(6)本件審決に不服のある原告は,平成29年11月22日,その取消しを求
める本件訴えを知的財産高等裁判所に提起した。
2特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,それぞれ
「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」といい,併せて「本件訂正発明」と
いう。また,本件訂正発明に係る明細書及び図面〔甲12〕を併せて「本件明
細書」という。)。
「【請求項1】
黒ショウガ成分を含有する粒子を芯材として,その表面の全部を,ナタネ
油あるいはパーム油を含むコート剤にて被覆したことを特徴とする組成物。
【請求項2】
経口用である請求項1に記載の組成物。」
なお,本件訂正は,特許請求の範囲請求項1に「その表面の一部又は全部を,」
と記載されているのを「その表面の全部を,」に訂正したものである(従属項
である請求項2についても同様である。)。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,別紙審決書の写しに記載のとおりである。
要するに,①本件訂正発明は,いずれも本件特許の優先日(平成24年9
月13日。以下「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物である,以
下の甲1ないし甲7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をする
ことができたとはいえないから,いずれも特許法29条2項の規定により,
特許を受けることができないとはいえない,②本件明細書の発明の詳細な説
明には,原告が指摘する記載上の不備はないから,本件訂正発明に係る特許
(本件特許)が特許法36条4項1号の要件(実施可能要件)を満たしてい
ないとはいえない,③本件訂正後の特許請求の範囲には,原告が指摘する記
載上の不備はないから,本件訂正発明に係る特許(本件特許)が特許法36
条6項1号の要件(サポート要件)及び同項2号の要件(明確性要件)を満
たしていないとはいえない,というものである。
甲1特開2009-67731号公報
甲2特開2011-236133号公報
甲3特開2001-316259号公報
甲4特開2009-46438号公報
甲5特開2009-1513号公報
甲6高橋誠「食品素材の『ナノサイズ』カプセル化技術の開発」オレ
オサイエンス第8巻第4号(2008年)151~157頁
甲7「食品の機能性を評価するために」JFRLニュース第3巻第9
号(2009年)1~4頁
(2)本件審決が認定した引用発明(甲3発明),本件訂正発明1と甲3発明と
の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア甲3発明
「菜種極度硬化油及びポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して加熱融
解し,ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを混合し,茶ポリフェ
ノールを加えた油性懸濁液を調製し,これをコボールミルに掛けることに
よって得られた平均粒子径1.0μmのポリフェノール微細化物を準備す
る工程,及び水を予め65~70℃に加温しておき,ホモミキサーで撹拌
しながら,デキストリン,酸カゼイン,炭酸ナトリウム,グリセリン脂肪
酸有機酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステルを順次加え,完全に溶
解し,引き続きホモミキサーで撹拌し,65~70℃を保持したまま,予
め加熱融解しておいた上記ポリフェノール微細化物を徐々に投入し乳化さ
せ,その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化する工程によって得られた,水中油滴
分散型油脂被覆ポリフェノール類製剤の粉末品」の発明
イ本件訂正発明1と甲3発明との一致点
「粒子を芯材として,その表面の全部を,ナタネ油を含むコート剤にて
被覆した組成物」である点。
ウ本件訂正発明1と甲3発明との相違点
本件訂正発明1では,芯材として「黒ショウガ成分を含有する粒子」が
用いられるのに対して,甲3発明では,芯材として茶ポリフェノール類固
体粒子が用いられる点。
4取消事由
(1)進歩性に関する判断の誤り
(2)サポート要件に関する判断の誤り
第3当事者の主張
1取消事由1(進歩性に関する判断の誤り)について
(原告の主張)
(1)本件審決は,①甲3発明の構成のうち本件訂正発明1と相違する部分(相
違点に係る甲3発明の構成)である「茶ポリフェノール粒子」を,甲2に記
載された「黒ショウガ粉末を含有するキサンチンオキシダーゼ阻害剤であっ
て,フラボノイドを有効成分とし,当該有効成分を経口摂取するもの」や,
甲1に記載された「冷え性改善用の黒ショウガの根茎加工物,抽出物,黒シ
ョウガ搾汁液及び/または黒ショウガ搾汁液の抽出物の乾燥粉末」に置換可
能であること自体は当業者が想起し得るとした上で,②その効果は,甲1な
いし7に記載も示唆もされておらず,当業者が予測し得えたものではない格
別顕著なものといえるから,本件訂正発明1は甲1ないし7に基づいて当業
者が容易に発明をすることができたとはいえず,本件訂正発明2についても
同様であると判断して,本件訂正発明の進歩性を肯定した。
しかし,上記判断のうち,上記①については誤りがないが,上記②につい
ては明らかに誤りがあるから,進歩性に関する本件審決の判断は取り消され
るべきである。
(2)相違点に係る構成の容易想到性について
ア引用発明中の示唆の存在
ポリフェノールとは,「分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基」(ベ
ンゼン環,ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基をもつ植物
成分の総称)であって,「多価フェノール」ともいう。そして,ポリフェ
ノール(多価フェノール)には,フラボノイド,フェノール酸,エラグ酸,
リグナン,クルクミン,クマリンがあり,フラボノイドには,フラバノン,
フラバン,フラボン,フラバノール,イソフラノン,アントシアニジン,
カルコン類,オーロンがある。
また,甲3の【0007】には,「本発明におけるポリフェノール類は
人体に摂取可能なものであれば特に限定するものではなく,フラボン,フ
ラボノール,フラバノン,イソフラボン,アントシアニン,フラバノール
等のフラバノイド類,その他の非フラバノイド類,これらの誘導体,重合
体等,更に前記化合物を含有する植物体及び該植物体抽出物等何れを使用
しても差し支えなく」との記載がある。
そうすると,甲3に記載されている「ポリフェノール類」とは,①多価
フェノールとしてのフラボン,フラボノール,フラバノン,イソフラボン,
アントシアニン,フラバノール等のフラボノイド類,その他の非フラボノ
イド類,②多価フェノールの誘導体,③多価フェノールの重合体等,④上
記①,②,③の化合物(多価フェノール化合物)を含有する植物体及び⑤
上記④の植物体抽出物を意味する。
そして,甲3において,ポリフェノール類やポリフェノール類を含有す
る植物体が特に限定されないとされていることに鑑みると,甲3の請求項
1に係る発明は,ナタネ油あるいはパーム油を始め甲3の【0015】に
記載されている油脂を含むコート剤によって「多価フェノール」や「多価
フェノール化合物」を被覆する発明だけでなく,ナタネ油等の油脂を含む
コート剤によって「多価フェノール化合物」を含有する植物体を被覆する
発明をも含んでいるといえる。
また,「ナタネ油を含むコート剤により茶ポリフェノール粒子を被覆す
る発明」という観点から見ると,甲3は,「甲3発明においてナタネ油を
含む油脂で被覆される植物体である茶ポリフェノール粒子を,『多価フェ
ノール』を含有する他の植物体に置換することができる」ことを示唆して
いるということができる(引用発明中の示唆)。
そうすると,甲3においては,甲3発明の茶ポリフェノール粒子を,フ
ラボノイド等を含有する他の植物粒子に置換することが示唆されていると
いえるから,黒ショウガが多価ポリフェノールを含有するものであれば,
「甲3発明の茶ポリフェノール粒子を,フラボノイド等を含有する他の植
物粒子に置換することができる」との甲3発明中の示唆に基づき,甲3発
明において「茶ポリフェノール粒子」を「黒ショウガ成分を含有する粒子」
に置換することは当業者が容易に想到するものであるということができる。
イ黒ショウガの含有成分と呈味
黒ショウガがポリフェノール(多価フェノール)を含有することは,甲
2,甲28(ウェブページ「クラチャイダムの魅力」),甲29(ウェブ
ページ「黒生姜ちゃんねる|黒生姜の口コミと効能」)及び甲30(ウェ
ブページ「まるごと黒生姜粒-伝承美容を化学する*美的生活研究所」)
に記載されており,ポリフェノール(多価フェノール)に苦みや渋みがあ
ることは,甲3の【0002】,甲32(特開2001-309763号
公報)に記載されている。
また,黒ショウガに苦みや渋みがあることは,甲30及び甲31(ウェ
ブページ「がちゃ通信|中央クリエイト健康食品事業部」)のほか,本件
訂正発明の出願日(平成25年3月26日)よりも後に頒布された刊行物
であるが,甲34(特開2013-192513号公報)及び甲35(特
開2015-29499号公報)にも記載されている。
さらに,甲33(特開2005-58133号公報)には,ショウガ科
植物には苦みや渋みがあると記載されており,黒ショウガもショウガ科に
属する植物である(甲34)から,黒ショウガが有する苦みや渋みはショ
ウガ科植物の有するそれと同様であると考えられる。
そして,植物体がその含有する成分の味を有することは,経験則に照ら
して明らかであり,甲3の【0010】には,苦みや渋みのマスキングの
ために被覆されるべき「ポリフェノール類」として茶などのツバキ科植物
を始めとする多数の植物体が記載されているから,苦みや渋みを有するポ
リフェノール(多価フェノール)を含有する植物がポリフェノールと同様
の苦みや渋みを有することを当然の前提としているといえる。
したがって,ポリフェノール(多価フェノール)を含有する植物体は,
ポリフェノール(多価ポリフェノール)に由来する苦みや渋みを有すると
認めることができる。
ウ以上を踏まえれば,甲3発明においてナタネ油を含む油脂で被覆される
植物体である茶ポリフェノール粒子を,「多価フェノール」を含有する他
の植物体に置換することができるとの甲3の示唆(引用発明中の示唆)に
基づいて,甲3発明に甲1又は甲2に記載されている「黒ショウガ成分を
含有する粒子」を適用し,甲3発明における「茶ポリフェノール類固体粒
子」を「黒ショウガ成分を含有する粒子」に置換して甲3発明の構成を本
件訂正発明1と同一の構成にすることは,当業者が容易に想到し得るもの
であるといえる。
したがって,相違点に係る構成が容易想到であるとする本件審決の判断
は正当であり,この点において誤りがあるとはいえない。
(3)本件訂正発明の効果について
ア原告は,本件明細書における「黒ショウガ成分を含有する粒子をナタネ
油やパーム油で被覆すると,黒ショウガ成分に含まれるポリフェノールの
生体吸収性が向上する」旨の記載を検証するため,ラットを被験動物に用
いて,ナタネ油やパーム油で被覆された黒ショウガ原末を経口摂取したラ
ットの血中ポリフェノール濃度の測定実験を行った(甲23。以下「甲2
3再現実験」という。)。
甲23再現実験では,被験物質におけるコート層の被覆量の種類を,①
本件明細書においてコート層の好ましい被覆量の最大値として記載されて
いる50重量部と,②本件明細書においてコート層の好ましい被覆量の最
大値と記載されている50重量部と最小値と記載されている1重量部との
中間値である25重量部の二つとして,①ナタネ油25重量部(被験物質
2),②ナタネ油50重量部(被験物質3),③パーム油25重量部(被
験物質4)及び④パーム油50重量部(被験物質5)とした。なお,被験
物質1は,油脂で被覆されていない黒ショウガ原末である(甲21)。
イ本件明細書において,溶媒に対する溶質の濃度(単位)は「mg/mL」
で表されているが,当該単位についての説明がないため,当該単位の分子
と分母の意味が分からない。しかし,被験動物であるラットの血中層ポリ
フェノール濃度を測定するに当たり,同一量の黒ショウガ原末(ポリフェ
ノール)が経口投与されないと各被験物質によるポリフェノール吸収性増
進効果を比較することはできないから,甲23再現実験においては,「黒
ショウガ原末の重さ」をもって分子(mg)とし,「被覆又は未被覆の黒
ショウガ原末とコーン油の合計体積」をもって分母(mL)として,被験
物質1ないし5を調製した。
したがって,被験物質1ないし5における黒ショウガ粒子の量(単位は
mg),コーティング液組成,黒ショウガ粒子に対する油脂の割合,黒シ
ョウガ濃度は,下記の【表1】に記載のとおりになる。
【表1】
ウそして,再現実験の結果,被験物質2ないし5を経口摂取した各被験動
物の血中ポリフェノール濃度は,被験物質1を経口摂取した被験動物のそ
れと比較して,被験物質投与後1,4及び8時間の各時点のいずれにおい
ても有意差は認められなかった(甲23)。
すなわち,被験物質1ないし5の各被験物質を経口摂取したラットの血
中ポリフェノール濃度についての「甲23再現実験」の結果を図示すると,
次のとおりである。
これによれば,被験物質が黒ショウガ原末100重量部に対してコート
剤の被覆量が25重量部である場合における被験動物の血中ポリフェノー
ル濃度は,当該コート剤がナタネ油であるか,パーム油であるかを問わず,
黒ショウガ原末が油脂で被覆されていないもの(被験物質1)と比較して,
有意差が認められないし,被験物質が黒ショウガ原末100重量部に対し
てコート剤の被覆量が50重量部である場合における被験動物の血中ポリ
フェノール濃度も,当該コート剤がナタネ油であるか,パーム油であるか
を問わず,黒ショウガ原末が油脂で被覆されていないもの(被験物質1)
と比較して,有意差が認められない。
エ仮に,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面をナタネ油やパーム油
で被覆すると,当該油脂で被覆された黒ショウガ成分を含有する粒子を経
口摂取した場合における黒ショウガ成分に含まれるポリフェノールの生体
吸収性が高まるというのであれば,「黒ショウガ成分を含有する粒子」を
被覆するナタネ油やパーム油の被覆量に比例してポリフェノールの体内吸
収性も高まるはずであるから,コート剤の被覆量が本件明細書においてコ
ート剤の好ましい被覆量の最大値として記載されている50重量部である
被験物質3や被験物質5を経口摂取したラットの血中ポリフェノール濃度
は,油脂で被覆されていない被験物質1を経口摂取したラットの血中ポリ
フェノール濃度と比較して有意差のあるものとなるはずである。
換言すれば,被験物質のコート剤の被覆量が50重量部である場合には,
当該被覆量は本件明細書においてコート剤の好ましい被覆量の最大値とし
て記載されている被覆量であるから,当該被覆量の被験物質を経口摂取し
た被験動物の血中ポリフェノール濃度が,油脂で被覆されていない被験物
質を経口摂取した被験動物の血中ポリフェノール濃度に対して有意差のあ
る濃度であることが認められなければ,「黒ショウガ成分を含有する粒子」
の表面をナタネ油やパーム油で被覆すると,黒ショウガ成分に含まれるポ
リフェノールの生体吸収性が高まるとの命題は成り立たない。
しかし,前記ウのとおり,ナタネ油であるコート剤の被覆量が50重量
部の被験物質3についての血中ポリフェノール濃度が油脂で被覆されてい
ない被験物質1についての血中ポリフェノール濃度と比較して有意差があ
る濃度とは認められず,同様に,パーム油であるコート剤の被覆量が50
重量部である被験物質5についての血中ポリフェノール濃度も油脂で被覆
されていない被験物質1についての血中ポリフェノール濃度と比較して有
意差がある濃度とは認められない。
オなお,本件審決は,甲23再現実験においては,パーム油やナタネ油に
よる被覆が,黒ショウガ原末の一部にとどまっていた可能性があるから,
同実験は本件明細書に記載された実験の結果を否定するものとまではいえ
ないと説示するが,この点ついても前提に誤りがある。
カ以上によれば,本件訂正発明の効果が甲1ないし7に記載された発明や
技術事項の効果を上回るとは認められないから,本件訂正発明の効果が「格
別顕著な効果」であるとして,本件訂正発明の進歩性を肯定した本件審決
の判断は誤りである。
(4)したがって,進歩性に関する本件審決の判断は取り消されるべきである。
(被告の主張)
(1)本件訂正発明の容易想到性について
そもそも,甲3発明において,茶ポリフェノール粒子を,甲1及び甲2の
黒ショウガ粉末に置換する動機付けはなく,置換することが当業者にとって
容易想到とはいえない。
すなわち,本件審決が認定する甲3発明の茶ポリフェノール粒子は,ポリ
フェノール含有量が少なくとも53%という非常に高濃度のものであり,そ
の実施例で用いられているようなポリフェノール含有量の高いポリフェノー
ル製剤は,そのまま口にすることができないような風味(渋みや苦み)を有
している(乙13,14)。
これに対し,黒ショウガに含まれるポリフェノールの量はせいぜい1%程
度であり(乙5),黒ショウガにおいては,ポリフェノールに起因する苦み
はさほど大きくないことが理解できる。黒ショウガの苦みがさほど大きくな
いことは,甲1,乙6ないし9の文献からも理解できる。
ところで,甲3発明においては,まず,第1工程において,ポリフェノー
ル類の固体粒子を,多価アルコール脂肪酸エステルを含む油脂中で微細化し,
さらに,第2工程において,該微細化されたポリフェノール類を含有する油
脂を多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化するといっ
た非常に煩雑な工程を必須とするものであることから,甲3を見た当業者は,
通常は,ポリフェノール類由来の渋み,苦みを低減する必要性が極めて高い
原料に対してでなければ,このような煩雑な操作を行おうとすることはない。
特に工業的生産を行う場合には,製造効率やコストの面でこのような煩雑な
操作は大きな阻害要因となることから,大きなメリットがない限り,かかる
煩雑な操作を行おうとはしない。
すなわち,煩雑な工程でコストの高い処理を行う甲3発明においては,当
業者は,実質的にはそのまま口にすることができないような非常に高濃度の
ポリフェノールを含有するポリフェノール製剤(渋みや苦みが非常に強いも
の)しか対象としないのであって,このような甲3発明に,ポリフェノール
含有量が数%で絶対的な苦みを有するものではない甲1及び甲2の黒ショウ
ガ粉末を用いようとする動機付けはない(甲3で実質的に対象とされている
50%を超える高濃度のポリフェノール製剤と,甲1及び甲2のポリフェノ
ールを1%程度しか含まない黒ショウガ粉末との渋み,苦みの差は歴然とし
たものであり,甲1及び甲2の黒ショウガ粉末にポリフェノールが含まれて
いるからといって,当業者は,甲3発明においてこれを用いようとは考えな
い。)。
したがって,甲3発明において,茶ポリフェノール粒子を,甲1及び甲2
の黒ショウガ粉末に置換すること(本件訂正発明の構成とすること)はそも
そも容易想到とはいえない。
(2)本件訂正発明の効果について
原告は,甲23再現実験を根拠に,本件明細書の効果に関する記載が客観
的事実に裏付けられたものではないとして本件審決の誤りを指摘するが,本
件訂正発明の効果は,本件明細書の実施例において明確に示されており,誰
の目から見ても効果がある(客観的に見て効果がある)と理解できる。
すなわち,本件明細書の図1には,ナタネ油又はパーム油により被覆され
た黒ショウガ原末(実施例1,2)を摂取することにより,被覆されていな
い黒ショウガ原末(比較例)を摂取した場合と比べて,ポリフェノールの体
内への吸収性が格段に高められたことが示されている。また,その効果が,
当業者に予測できない格別な効果であることは,甲3及びその関連特許に係
る甲10(特開2001-309763号公報)の記載からも理解できる。
他方で,原告が行った甲23再現実験には,実験に用いた被験物質の調整
に不備があるなど,実施例の方法とは異なる点が多々存在することから,同
実験は,本件訂正発明の効果を否定する根拠とはならない(効果に影響する
一連の操作の一つにでも不備があれば効果が示されず,適切な実験結果が得
られないことは明らかである。)。
したがって,本件訂正発明の効果を否定する原告の主張は理由がない。
2取消事由2(サポート要件に関する判断の誤り)について
(原告の主張)
前訴判決は,本件明細書においては,実施例1の「パーム油でコートした黒
ショウガ原末」の被覆の量や程度について具体的な記載がなされておらず,実
施例2についても同様であるから,これらの実施例によってコート剤による被
覆の量や程度が不十分である場合においても本件発明の課題を解決できること
が示されているとはいえないとの事実認定に基づき,本件発明がサポート要件
に適合しないと判断した。
ところで,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の全部を僅かな量のコ
ート剤で被覆する態様もコート剤による被覆の量が不十分である場合の一態様
であることは自明であるから,たとえ前訴判決にこの態様についての記載がな
かったとしても,その態様は,発明の詳細な説明に記載されている本件発明の
課題を解決できると認識できる範囲を超えるものとの判断がなされているとい
える。
本件審決は,前訴判決の拘束力が及ぶ上記事実認定に基づかないで本件訂正
発明がサポート要件に適合すると判断しているものであるから,取り消される
べきである。
なお,仮に前訴判決の拘束力が上記事実認定に及ばないとしても,本件明細
書には,「黒ショウガ成分を含有する粒子」を「ナタネ油あるいはパーム油を
含むコート剤」で被覆したことによって黒ショウガ成分に含まれるポリフェノ
ール類の体内吸収性が高まる結果をもたらすはずである当該「コート剤」の量
が記載されていないから,本件訂正発明はサポート要件に適合していない。
(被告の主張)
原告は,「黒ショウガ成分を含有する粒子」の表面の全部を僅かな量のコー
ト剤で被覆する態様は発明の詳細な説明に記載されている本件発明(本件訂正
発明)の課題を解決できると認識できる範囲を超えると主張するが,前訴判決
で問題とされているのは,僅かな部分を被覆した状態だけであって,大部分が
被覆された場合までは問題とされておらず,ましてや,全部が被覆された場合
が問題とされているわけではない。
なお,本件訂正発明においては,粒子の表面全部を被覆することが特定され
ているのであるから,全部被覆するための最低量は自ずと決まってくるのであ
り,原告が主張する僅かな量での被覆とはならない。また,このような被覆量
は当業者であれば容易に決定できるものである。
したがって,サポート要件に関する原告の主張は理由がない。
第4当裁判所の判断
1本件訂正発明について
(1)本件明細書の記載事項
証拠(甲12)によれば,おおむね次の記載が認められる。
ア技術分野
【0001】本発明は,黒ショウガ成分を含有する組成物に関する。
イ背景技術
【0002】黒ショウガは学名をケンプフェリア・パルビフローラ(K
aempferiaparviflora)といい,黒ウコンあるいは
クラチャイダムの別名を有する。東南アジアに分布し,ショウガ科(Zi
ngiberaceae)ケンプフェリア(Kaempferia)属の
植物の一種である。タイやラオス等の伝承医学においては健康食品として
知られており,精力増進,滋養強壮等の効果があると言われている。
【0003】黒ショウガに含まれる有効成分としては,…例えば,…ポ
リフェノールがあり,…さらに,ポリフェノールの一種であるアントシア
ニンやアントシアニジンが豊富に含まれている…。
【0004】ところで,一般に,人体にとって有用な機能成分が含まれ
る飲食品等の中には,腸管透過吸収が悪く,その本来の機能が十分発揮さ
れないものも多い。…ポリフェノールを含有する素材においても,一般に
摂取されたポリフェノールの生体内に取り込まれる量は極めて少ないこと
が知られている。…
【0005】これらの吸収を促進するため,従来,例えば,…吸収促進
剤との併用が提案され…また,…生体の腸管から容易に吸収できる程度ま
でに低分子化する方法が示されている…。
ウ発明が解決しようとする課題
【0007】しかしながら,上記方法によっても,ポリフェノールの生
体内への吸収性はいまだ十分なものとは言えなかった。また,植物由来の
ポリフェノールはその植物の種類によって構造や性質が大きく異なるため,
他の植物由来のポリフェノールについて知られている吸収性の改善方法を,
そのまま黒ショウガに転用することはできない。そして,黒ショウガ成分
に含まれるポリフェノールについては,どのようなものが腸管透過吸収性
を効果的に助けるのかは知られていなかった。
【0008】本発明は,黒ショウガ成分を経口で摂取した場合において
も,含まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組
成物を提供することを目的とする。
エ課題を解決するための手段
【0009】本発明者らは,油脂を含むコート層で,上述の黒ショウガ
成分含有コアの表面の一部又は全部を被覆することにより,意外にも,経
口で摂取した場合においても,黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール
類の体内への吸収性が高まることを見出し,本発明を完成するに至った。
オ発明の効果
【0011】本発明によれば,黒ショウガ成分を経口で摂取した場合に
も,特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性を
高めると共に,摂取前の黒ショウガ成分の酸化を防止して保存安定性も高
め,摂取後の胃液等による変性を防止することができる。
カ発明を実施するための形態
【0014】本発明の組成物は,黒ショウガ成分を含有する粒子と,そ
の表面の一部又は全部を被覆した油脂を含むコート層と,を含む。本発明
の組成物は,経口で摂取した場合においても,黒ショウガ成分の体内への
吸収性が高い。…
【0015】黒ショウガ成分を含有する粒子とは,黒ショウガに由来す
る成分を含む粒子のことを言い,黒ショウガに由来する成分を含み,かつ
粉末化,粒子化,顆粒化等されていれば,黒ショウガの加工方法について
特に制限はない。例えば,黒ショウガの乾燥粉末,黒ショウガ抽出物を粉
末化したもの,黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したも
の等が該当する。また,この粒子は固体である必要は無く,リポソームや
マイクロカプセル等液体でも良い。
【0016】上記黒ショウガの乾燥粉末としては,例えば,洗浄後,ス
ライスした黒ショウガを天日,あるいは乾燥機を用いて乾燥後,そのまま
あるいは適当な形状又は大きさに裁断して得た加工品を,粉砕装置を用い
て粉砕することで得ることができる。…
【0017】上記黒ショウガ抽出物を粉末化したものとしては,例えば,
黒ショウガの抽出物をそのままあるいは濃縮して,液状物,濃縮物,ペー
スト状で,あるいは,さらにこれらを乾燥した乾燥物の形状で用いること
ができる。…
【0018】上記黒ショウガの抽出物は,黒ショウガ又はその加工物を
適切な溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒とし
ては,エタノール,…等の低級アルコール,酢酸エチル,…等の低級エス
テル,アセトン,及びこれらと水との混合物が挙げられる。中でも,本発
明の組成物はヒトが摂取することを想定しているものであることから,エ
タノール単独又は水との混合物(いわゆる含水エタノール),あるいは熱
水を使用するのが好ましい。
【0019】溶媒として混合物を使用する場合は,例えば,…,エタノ
ール/水(2/8~8/2,体積比)混合物等を用いることができる。エ
タノール/水の場合,黒ショウガの根茎に対して,その質量の2~20倍
質量の溶媒を加え,室温又は加熱下で10分~48時間程度抽出するのが
好ましい。
【0020】また,黒ショウガを細切りしたものを95~100℃の温
度で熱水抽出し,最高濃度に達した抽出液を濾過した後,噴霧乾燥する等
の方法で抽出物を得ることも可能である。
【0021】これら用いる抽出方法に特に制限はないが,安全性及び利
便性の観点から,できるだけ緩やかな条件で行うことが好ましい。…抽出
作業後,濾過,遠心分離等の分離操作を行い,不溶物を除去する。これに,
必要に応じて希釈,濃縮操作を行うことにより,抽出液を得る。…これら
の抽出物は,当業者が通常用いる精製方法により,さらに精製して使用し
てもよい。
【0022】また,黒ショウガ成分を含有する粒子としては,上記の黒
ショウガの乾燥粉末,黒ショウガ抽出物を粉末化したもの,黒ショウガ中
の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等をそのまま使用しても良
いし,適切な結合剤や賦形剤等を添加の上,公知の湿式,乾式等の顆粒造
粒法によって顆粒に成形したものを用いても良い。
【0024】黒ショウガ成分を含有する粒子の粒子径としては,特に制
限されるものではなく,目的に応じて粉末,粒子,顆粒等を適宜選択する
ことができる。また,黒ショウガ成分を含有する粒子の粒度としては,特
に制限されるものではなく,目的に応じて粉末,粒子,顆粒等を適宜選択
することができる。
【0025】上記した黒ショウガ成分を含有する粒子を得るための黒シ
ョウガの使用部位は樹皮,根,葉,又は枝等が使用し得る。なかでも,好
ましいのは,根茎である。
【0026】上記黒ショウガ成分を含有する粒子表面の一部又は全部を,
油脂を含むコート剤にて被覆することにより,経口で摂取した場合におい
ても,特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性
が高まる。
【0027】さらに,上記油脂コートを行うことにより,ポリフェノー
ル類を含め黒ショウガ成分の酸化を防止し,製品の保存安定性を高めるこ
とができる。また,黒ショウガの成分は有機溶剤による抽出にも耐えられ
るほど丈夫で,胃液等への暴露によっても変性しにくいものであるが,油
脂を用いてコートすることによって,より変性防止効果を得ることができ
る。
【0028】油脂の具体例を以下に示すが,これらに限定するものでは
ない。例えば,大豆,米,ナタネ,カカオ,椰子,ごま,べにばな,パー
ム,棉,落花生,アボガド,カポック,ケシ,ごぼう,小麦,月見草,つ
ばき,とうもろこし,ひまわり等から得られる一般的な植物性油脂及びこ
れらの硬化物及び牛,乳,豚,いわし,さば,さめ,さんま,たら等から
得られる動物性油脂及びこれらの硬化物等が挙げられ,これらの油脂は1
種又は2種以上の混合物が使用できる。なかでも,ナタネ油及びパーム油
が好ましく使用できる。
【0029】コート剤には,リン脂質,ステロール類,ワックス類等が
共存しても一向に差し支えない。コート剤の被膜性能向上のために,その
他の可塑剤を用いることも望ましい。…
【0031】また,コート剤には,賦形剤が共存しても一向に差し支え
ない。賦形剤の使用量に特に制限はなく,使用する油脂や芯材となる黒シ
ョウガ成分を含有する粒子に応じて,適宜調整することができる。
【0032】コート剤による被覆は,特に限定されることなく公知の方
法を適用することが可能である。例えば,油脂単独で,あるいは,…水難
溶性を示す物質と油脂を混合後に,…適切な溶媒に撹拌して溶解させてコ
ーティング液を作成し,このコーティング液を黒ショウガ成分含有コアに
ノズル又はアトマイザー等の公知の噴霧器により吹き付けて行うことがで
きる。このときの溶媒として,アルコール溶液,酢酸等の酸性溶液等が例
示される。使用量は,油脂あるいは水難溶性を示す物質が溶解すればよく,
特に限定されないが,通常,これらの物質が5~50重量%となるように
調製したコーティング液を用いることができる。
【0033】コート剤の被覆量は,油脂の含有量に応じて適宜調整する
ことができ,特に制限されることはないが,黒ショウガ成分を含有する粒
子100重量部に対し,1~50重量部とすることが好ましい。
【0035】本発明の組成物は,主に経口用として用いるが,その形態
としては,飲食品,製剤等を適宜選択することができる。前記飲食品とし
ては,前記組成物をそのまま使用してもよく,単に水(精製水等)で溶解
乃至分散して用いてもよい。
【0038】本発明の飲食品に含まれる前記組成物の含有量としては,
特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】本発明の組成物は,黒ショウガに含有される有効成分の奏
する効果を利用した用途であれば,特に限定無く適用することができる。
例えば,本発明の組成物を,主に経口で使用される食品,薬剤等であって,
抗酸化作用,冷え症改善作用,体重増加軽減作用,内臓脂肪及び皮下脂肪
重量低減作用等の効用を目的に使用することが可能である。
キ実施例
【0044】(ポリフェノール吸収性増進効果)
被験物質の調製は以下のようにして行った。
【0045】<実施例1>
パーム油でコートした黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)
をコーン油と混合して150mg/mLに調製し,ボルテックスを用いて
懸濁した。
【0046】<実施例2>
黒ショウガ原末をナタネ油でコートした以外は,実施例1と同様にして
被験物質を得た。
【0047】<比較例1>
黒ショウガ原末をコーン油と混合して150mg/mLに調製し,ボル
テックスを用いて懸濁した。
【0048】上記被験物質を用いて,下記の要領にて経口で黒ショウガ
を摂取した際の投与1,4,8時間後(コントロールはブランクとして投
与1時間後のみ)に採血して,血中の総ポリフェノール量を測定した。そ
の結果を図1に示す。
【0049】(1)実験動物及び飼育方法
6週齢のSD雄性ラットを用意し,5日以上の馴化期間をおいた後,実
験に使用した。群分けは,試験直前にランダムに行った。馴化期間の飼料
は,市販のMF固形飼料を自由摂取させた。また,試験当日は試験終了ま
で絶食のままとした。
【0050】(2)被験物質の投与方法
16時間以上絶食した後,被験物質溶液を10mL/kgとなるように,
ゾンデで強制経口投与した。表1に,採血時間,被験物質及びこれを投与
した各群の個体数を示す。
【0051】
【表1】
【0052】(血清前処理方法)
Waters社製の固相抽出カートリッジHLB(60mg)にメタノ
ール(5mL),水(5mL),0.1moL/L塩酸(1mL)を順次
通液し,プレコンディショニングとした。つづいて,マウス血清1mLに
水(1mL),0.1moL/L塩酸(1mL)を加え混合し,前述のカ
ートリッジへ通液し非吸着画分を廃棄した。さらに1.5moL/Lのギ
酸水溶液(2mL),メタノール水溶液(5体積%)(2mL)を通液し
洗浄した。その後0.1%ギ酸メタノール(3mL)を通液し,溶出した
画分を15mLの遠沈管に回収した。得られた画分を,遠心エバポレータ
ー(加熱無し)で一晩減圧濃縮して完全に乾固し,そこに水(200μL)
を加え超音波で溶解した。遠心分離後(15,000rpm,5分),上
澄を1.5mLエッペンに回収し,総ポリフェノール量測定の検体とした。
【0053】(総ポリフェノール測定方法)
各検体100μLを1.5mLエッペンチューブに測り取り,10%(w
/w)炭酸ナトリウム(100μL)を加えて10分放置した。さらにF
olin-Ciocalteu試薬(100μL)を加え,1時間室温で
発色させた。発色したサンプルを遠心分離(15,000rpm,5分)
後,上清(200μL)を96-weLLマイクロプレートに移し,730
nmの吸光度を測定した。定量用標準には,カテキン一水和物を用いた。
250μg/mLの水溶液を調製し,それを適宜希釈して125,100,
75,50,25,12.5μg/mLの標準溶液を調製した。これらを
各検体と同様に処理し,測定結果から検量線を作成した。その結果を血清
サンプルのデータに適用し,定量結果とした。
【0054】図1から明らかなように,実施例1,2の油脂コートを行
った黒ショウガ原末を摂取した群の血中ポリフェノール量は,いずれも黒
ショウガ原末を摂取させたものに比べて高い値を示している。特に,ナタ
ネ油でコートを行った実施例2は,血中にとりこまれるポリフェノール量
が多く,また,それが長時間にわたり持続することが分かった。
【図1】
(2)本件訂正発明の技術的意義
上記記載によれば,本件訂正発明の技術的意義は,次のとおりであると認
められる。
すなわち,黒ショウガは健康食品として知られており,その有効成分はポ
リフェノールであるものの,一般に飲食品等を通じて摂取されたポリフェノ
ールは腸管透過吸収性が悪く,生体内に取り込まれる量が極めて少ないため,
従来は,吸収促進剤との併用等が提案されていた(【0002】~【000
5】)。
しかし,植物由来のポリフェノールは,植物の種類によって構造や性質が
大きく異なるため,他の植物由来のポリフェノールについて知られている吸
収性の改善方法を,そのまま黒ショウガに転用することはできず,また,黒
ショウガ成分に含まれるポリフェノールについても,どのようなものが腸管
透過吸収性を効果的に助けるのかは知られていなかった(【0007】)。
本件訂正発明は,「黒ショウガ成分を経口で摂取した場合においても,含
まれるポリフェノール類を効果的に体内に吸収することができる組成物を提
供すること」を課題とするものであり,本件明細書には,当該課題を解決す
る技術手段として,油脂を含むコート層で,黒ショウガ成分含有コア(黒シ
ョウガ成分を含有する粒子)の表面の全部を被覆することが記載されている
(【0008】,【0009】,【0014】)。
本件訂正発明は,この技術手段を備えることで,黒ショウガ成分を経口で
摂取した場合の黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収
性を改善できることが,パーム油(実施例1)又はナタネ油(実施例2)で
油脂コートを行った黒ショウガ原末と油脂コートを行っていない黒ショウガ
原末(比較例1)をラットに摂取させた比較実験の結果により示されている
(【0054】,【図1】)。
2引用文献(甲3)の記載事項
(1)証拠(甲3)によれば,おおむね次の記載が認められる。
ア特許請求の範囲
【請求項1】ポリフェノール類を,多価アルコール脂肪酸エステルを含
有する油脂中で微細化する第1工程と,第1工程で得られた該微細化され
たポリフェノール類を含有する油脂を,多価アルコール脂肪酸エステルの
存在下で水中油滴型に乳化する第2工程により得られるポリフェノール類
製剤。
イ従来の技術
【0002】ポリフェノール類は特異な生理作用により食品の生理機能
付加・増強又は酸化防止剤等に利用される他,医薬品,化粧品,飼料等広
範な分野での応用が期待されている。…しかしながら,ポリフェノール類
は特異な苦味・渋味を有するため食品用途での利用に制限を受けること及
び酸化,熱,光に対して変色しやすく不安定であるという欠点を有する。
ウ発明が解決しようとする課題
【0004】本発明の目的は,ポリフェノール類を長期間安定に保ち,
且つ呈味性,生体吸収性の優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤を
提供する事にある。
エ課題を解決するための手段
【0005】本発明者らは,前記の目的を達成するために鋭意検討を行
った結果,ポリフェノール類の固体粒子を多価アルコール脂肪酸エステル
を含有する油脂中で微細化する第1工程と,第1工程で得られた該微細化
されたポリフェノール類を含有する油脂を多価アルコール脂肪酸エステル
の存在下で水中油滴型に乳化する第2工程の処理より,ポリフェノール類
特有の渋味・苦味がマスキングされ,且つ優れた安定性が付与されると同
時に,従来にない優れた生体吸収性及び生体利用性を有すること,更には
本発明ポリフェノール類製剤を含有する食品についても改善がされること
を発見し,本発明を完成するに至った。
オ発明の実施の形態
【0007】本発明におけるポリフェノール類は人体に摂取可能なもの
であれば特に限定するものではく,フラボン…等のフラボノイド類,その
他の非フラボノイド類,及びこれらの誘導体,重合体等,更に前記化合物
を含有する植物体及び該植物体抽出物等何れを使用しても差し支えないが,
好ましくは油脂に不溶の固体で且つ物理的破砕によってレーザー回折型粒
度分布測定機による平均粒径が3μm以下の微粒子とすることができる性
質のものが良い。…
【0008】ポリフェノール類の具体例として,カテキン,…エピガロ
カテキンガレート,…アントシアニン,プロアントシアニジン,…及びこ
れらの誘導体,重合体,立体異性体から選ばれる少なくとも1種又は2種
以上の混合物が挙げられる。
【0009】本発明におけるポリフェノール類を含有する植物体は,特
に限定するものではない。即ち,光合成を行う植物はおよそポリフェノー
ル類を含有するものであり,ポリフェノール類を抽出し得るもの,且つ該
抽出物が人体に摂取可能なものであれば良い。植物の具体例を以下に示す
がこれらに限定するものではない。
【0010】植物の具体例として,茶等のツバキ科植物,ブドウ等のブ
ドウ科植物,コーヒー等のアカネ科植物,カカオ等のアオギリ科植物,ソ
バ等のタデ科植物,グーズベリー,…等のユキノシタ科植物,ブルーベリ
ー,…等のツツジ科植物,赤米,…等のイネ科植物,マルベリー等のクワ
科植物,エルダーベリー,…等のスイカズラ科植物,プラム,…等のバラ
科植物,エンジュ,…等のマメ科植物,紫ヤマイモ等のヤマイモ科植物,
カキ等のカキ科植物,ヨモギ,…等のキク科植物,バナナ等のバショウ科
植物,ヤマカワラムラサキイモ等のヒルガオ科植物,ローゼル等のアオイ
科植物,赤シソ等のシソ科植物,赤キャベツ等のアブラナ科植物等が挙げ
られ,これらの植物に応じて果実,果皮,花,葉,茎,樹皮,根,塊根,
種子,種皮,等の部位が任意に選ばれる。また,該植物体から得られる抽
出物の形態としては,固体であり,好ましくは油脂に不溶で且つ物理的破
砕によってレーザー回折型粒度分布測定機による平均粒径が3μm以下の
微粒子とすることができる性質を有するものが良い。
【0012】本発明のポリフェノール類の含有量は特に限定するもので
はないが,該微細化物中1~70重量%である事が好ましく,より好まし
くは5~50重量%であり,更に好ましくは10~40重量%である。ポ
リフェノール類の含有量が1重量%より少ない場合は,主剤であるポリフ
ェノール類が微量となりポリフェノール類製剤としての用をなさない。ま
た,ポリフェノール類の含有量が70重量%より多い場合には,該微細化
物の構造粘度が極度に高まり流動性を失ってしまうために後の加工特性を
著しく狭める事となる。
【0015】本発明第1工程に用いる油脂は特に限定するものではない
が,常温で液体状態である油脂を用いると,本発明ポリフェノール類製剤
の水系分散状態において,固/液分散を維持できず液/液乳化状態となり
安定性が低下するため,好ましくは常温で固体を形成するものが良く,通
常融点が30℃以上のものを用いる。ポリフェノール類の渋味・苦味のマ
スキング効果及び本発明ポリフェノール類製剤の水系分散時における物理
的応力に対する安定性の面から,より好ましくは融点が35℃以上,更に
好ましくは融点が40℃以上,最も好ましくは融点が50℃以上が良い。
油脂の具体例を以下に示すがこれらに限定するものではない。油脂の具体
例として,…菜種,…パーム,…とうもろこし,…等から得られる一般的
な植物性油脂及びこれらの硬化物…等が挙げられ,これらの油脂は1種ま
たは2種以上の混合物が使用できる。また,これらに本来含まれているリ
ン脂質,ステロール類,ワックス類等が共存しても一向に差し支えない。
【0016】本発明第1工程では,微細化されたポリフェノール類固体
粒子が多価アルコール脂肪酸エステルを含有する油脂中に均一に分散して
いる状態のもの(以下,微細化物と称す)が得られ,本発明第2工程は,
更に多価アルコール脂肪酸エステルを用いて該微細化物を安定に水系分散
できる系を構築するものとなる。具体的には,本発明第2工程は該微細化
物を該微細化物に含まれる油脂の融点以上の温度で加温することにより液
状化し,多価アルコール脂肪酸エステルを用いて水系で乳化後,室温に冷
却する。
カ実施例
【0021】<第1工程>
実施例1<ポリフェノール微細化物>
菜種極度硬化油(融点65℃)52.5重量部及びポリグリセリン脂肪
酸エステル…12.5重量部を混合して加熱融解し,ポリグリセリン縮合
リシノレイン酸エステル5.0重量部…を混合し,湯煎にて温度を65℃
~70℃に保ちながら,茶ポリフェノール30重量部(サンフェノンDC
F-1,太陽化学株式会社製)を加えた油性懸濁液を調製し,これをコボ
ールミル…に掛け,レーザー回折型粒度分布測定により茶ポリフェノール
の平均粒子径が1.0μmとなったポリフェノール微細化物を得た。
【0024】<第2工程>
実施例4<ポリフェノール類製剤>
水200重量部を予め65~70℃に加温しておき,ホモミキサーで撹
拌しながら,デキストリン52.7重量部…,酸カゼイン15重量部…,
炭酸ナトリウム1重量部,グリセリン脂肪酸有機酸エステル0.6重量部
…,ポリグリセリン脂肪酸エステル0.7重量部…を順次加え,完全に溶
解し,引き続きホモミキサーで撹拌,65~70℃を保持したまま,予め
加熱融解しておいた実施例1のポリフェノール微細化物30重量部を除々
に投入し乳化させ,その後噴霧乾燥にて乾燥粉末化し,水中油滴分散型油
脂被覆ポリフェノール類製剤の粉末品を得た。
【0029】試験例1<ポリフェノール類製剤の水系分散性>
実施例4記載の本発明ポリフェノール類製剤0.5gを20℃の水10
0mLに添加後軽く撹拌し,撹拌直後及び室温にて1日経過後の水中での
分散状態を確認した。対照として以下に示す比較品1及び実施例1で用い
た茶ポリフェノールをそれぞれ茶ポリフェノール含量が同量となる様に用
いた。その結果を表1に示す。
<比較品1>菜種極度硬化油(融点65℃)50重量部,ポリグリセリン
縮合リシノレイン酸エステル10重量部…を加熱溶解する。実施例1で用
いた茶ポリフェノールを40重量部添加し混合後,ノズル式噴霧装置にて
20℃に保った室内へ噴霧し,粒子径200μm~500μmの油脂被覆
ポリフェノール粒子を得た。
【0030】
【表1】
【0031】表1より,比較品1では,水の着色も全くないことから,
水中でのポリフェノール溶出は見られず安定であることが確認できたが,
全く水に分散しなかった。しかし,実施例4のポリフェノール類製剤は,
比較品1と同様に茶ポリフェノールが椰子硬化油脂に被覆されているにも
かかわらず,極めて良好な水分散性を示し,かつ良好な安定性を示した。
【0034】試験例3<ポリフェノール類製剤を用いた渋味の低減効果>
実施例4及び実施例5で得られたポリフェノール類製剤の渋味の強さを
20人のパネラーを使って,渋味官能評価を行なった。官能評価試験は,
実施例4及び実施例5のポリフェノール類製剤の水分散液5mLを口腔内
に10秒間含んだ後,嚥下して渋味の評価を行なった。尚,実施例4の比
較対照として実施例1で用いた茶ポリフェノール(比較品2)を,実施例
5の比較対照として実施例2で用いたブドウ種子ポリフェノール(比較品
3)をそれぞれ用いて官能評価した。その結果を表2,図2,表3及び図
3に示す。数値は評価点の平均を示す。尚,渋味の評価点は次のように定
めた。{0点;渋味を全く感じない,1点;殆ど渋味を感じない,2点;
やや渋味を感じる,3点;強く渋味を感じる,4点;非常に強く渋味を感
じる。}
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】表2,図2,表3及び図3より,比較品2及び3では,0.
2%の濃度で既に官能評価平均点が2点(やや渋味を感じる点数)以上で
あるのに対し,実施例4及び実施例5のポリフェノール類製剤をその10
倍濃度(茶ポリフェノール含有量及びブドウ種子ポリフェノール含有量と
して2%)で試験した場合であっても,95%のパネラーが官能評価点を
0点(渋味を全く感じない)とした。尚,実施例4及び実施例5のポリフ
ェノール類製剤をそれぞれ水に分散せずそのまま服用した場合であっても,
官能評価平均点はそれぞれ1.35点,1.20点であった。したがって,
本発明ポリフェノール類製剤が完全に水に分散出来るにもかかわらず,渋
味を感じさせない製剤であることは明らかである。
【図2】
【図3】
【0038】試験例4<ポリフェノール類製剤の人工消化試験>
実施例4のポリフェノール類製剤を用いて第10改正日本薬局方,溶出
試験法の試験液第1液の人工胃液及び第2液の人工腸液を用いて人工消化
試験を行なった。人工消化液中に遊離したエピガロカテキンガレート含量
を測定し,人工消化液中でのポリフェノール遊離率を算出した。その結果,
人工胃液中では2.3%の遊離率であったのに対し,人口胃液(判決注:
人工腸液の誤記であると認められる。)中では89.8%の遊離率を示し
た。これはポリフェノール微細粒子の全周囲表面上に均一に被覆された油
脂被覆剤層によるマイクロカプセルが,腸管に達するまで極めて安定に存
在することを示すものであり,腸管に達した後ポリフェノール類を放出す
る性質を有することを裏付けるものである。
【0039】試験例5<ポリフェノール類製剤の生体吸収性及び生体利用
性>
本発明ポリフェノール類製剤は,ポリフェノール類微細粒子の全周囲表
面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するため,
安定性及び渋味マスキング効果に優れた製剤となっている。それ故,実際
に生体に経口投与した場合の生体吸収性及び生体利用性について改めて確
認する必要がある。生体吸収性及び生体利用性の試験は,Nakagaw
aらの方法…に準じて行った。即ち,健常な男性(23~48歳の非喫煙
者)30人を対象とし,ポリフェノール類製剤投与前12時間は茶及び茶
由来成分を含有する飲食を断ち,半数の15人に対し実施例4の茶ポリフ
ェノールを含有するポリフェノール類製剤を,残り半数の15人に対して
は対照品として実施例1で用いた茶ポリフェノールを,それぞれ総カテキ
ン含量254mg(エピガロカテキンガレート含量82mg)となるよう
に経口摂取した。経口摂取直前及び摂取後1時間経過時の血液を採取し,
血清を分離後血清中のエピガロカテキンガレート含量及び過酸化リン脂質
含量を測定した。血清中のエピガロカテキンガレート含量を表4及び図4
に,血清中の過酸化リン脂質含量を表5及び図5に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表4及び図4より,実施例4の本発明ポリフェノール類製剤は,対照品
と比較して同等の生体吸収性があることを確認した。更に表5及び図5よ
り,血清中の過酸化リン脂質の減少が確認された。これは,本発明ポリフ
ェノール類製剤が,ポリフェノール類微細粒子の全周囲表面上に均質な油
脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造を有するにもかかわらず,ポ
リフェノールの生体吸収性及び生体利用性に対し,本発明にかかるマイク
ロカプセルが何らの障害にもなっていないことを裏付けるものである。
【図4】
【図5】
キ発明の効果
【0043】本発明ポリフェノール類製剤は,ポリフェノール類微細粒
子の全周囲表面上に均質な油脂被覆剤層を形成したマイクロカプセル構造
を有すると同時に優れた水系分散性を発揮するもので,従来にはない極め
て安定でかつ渋味・苦味のない水系分散製剤を提供することを可能とする
ものである。更に,本発明ポリフェノール類製剤は,ポリフェノール類を
食品加工から経口摂取,生体吸収及び生体に利用されるまで安定にデリバ
リーするシステムを構築するものであり,産業上の意義は非常に大きい。
(2)以上によれば,引用文献(甲3)には,次の技術的事項が記載されている
ものと認められる。
すなわち,甲3には,ポリフェノール類の有する欠点として,特異な苦み
や渋みを有するため食品用途での利用に制限を受けること,酸化,熱,光に
対して変色しやすく不安定であることが挙げられており(【0002】),
また,ポリフェノール類の固体粒子を,多価アルコール脂肪酸エステルを含
有する油脂中で微細化する第1工程と,該微細化されたポリフェノール類を
含有する油脂を多価アルコール脂肪酸エステルの存在下で水中油滴型に乳化
する第2工程の処理により,長期間安定に保ち,かつ呈味性,生体吸収性に
優れた水系分散可能なポリフェノール類製剤が得られること(【0004】,
【0005】,【0043】),更に第1工程の油脂として菜種極度硬化油
(融点65℃)を用いること(【0021】)が記載されている。
また,ポリフェノール類としては,フラボノイド類,非フラボノイド類等
に加え,それらを含有する植物体や植物体抽出物が使用できる旨の記載があ
り(【0007】,【0008】),茶等のツバキ科植物,ブドウ等のブド
ウ科植物,コーヒー等のアカネ科植物を始めとする多数の植物体が例示され
(【0009】,【0010】),ポリフェノール類の含有量が1重量%よ
り少ない場合は,主剤であるポリフェノール類が微量となりポリフェノール
類製剤として用をなさないこと(【0012】)が記載されている。
さらに,【0005】及び【0043】に記載される効果を裏付けるもの
として,試験例1<ポリフェノール類製剤の水系分散性>において,実施例
4のポリフェノール類製剤が,1日経過後も変色せず,良好な安定性を示す
こと(【0029】~【0031】),試験例3<ポリフェノール類製剤を
用いた渋味の低減効果>において,ポリフェノール類製剤が,渋みを感じさ
せないこと(【0034】~【0037】,図2,図3),試験例4<ポリ
フェノール類製剤の人工消化試験>において,ポリフェノール類製剤が腸管
に達するまで極めて安定に存在すること(【0038】),換言すると,生
体吸収及び生体に利用されるまで安定にポリフェノールをデリバリーできる
こと,試験例5<ポリフェノール類製剤の生体吸収性及び生体利用性>にお
いて,油脂による被覆が生体吸収性及び生体利用性の障害になっていないこ
と(【0039】~【0042】,図4,図5)がそれぞれ記載されている。
(3)他方で,引用文献(甲3)には,ポリフェノール類を含有する植物体の具
体例として,「黒ショウガ」はもちろん,「ショウガ」や「ウコン」も明示
されておらず,また,実施例で使用されているポリフェノールは,茶ポリフ
ェノール(実施例1),ブドウ種子ポリフェノール(実施例2),エピガロ
カテキンガレート(実施例3)といった,いずれもポリフェノール含量の高
い市販のポリフェノール製剤であることが認められる(各製剤のポリフェノ
ール含量については,甲3の【0023】のほか,乙11の14頁,乙12
の【0026】参照)。
3取消事由1(進歩性に関する判断の誤り)について
(1)本件審決は,①相違点に係る構成自体は推考容易である(置換可能である
こと自体は当業者が想起し得る)とした上で,②本件訂正発明の効果は当業
者が予測し得ない格別顕著なものであるという理由で,本件訂正発明の進歩
性を肯定した。しかし,仮に上記①の容易推考性が認められなければ,上記
②の効果の顕著性について判断するまでもなく,そもそも本件訂正発明につ
いて進歩性が認められるべき筋合いのものということになるから,まず,上
記①の点の判断,すなわち,相違点に係る構成自体は推考容易であるとの判
断の是非について検討する。
(2)呈味に関する技術課題からの検討
ア本件審決は,構成が推考容易であることの理由中で,「黒ショウガには
ポリフェノールが含まれ,このポリフェノールは一般的には一定程度の苦
味を有する」との原告主張を前提とする限り,と説示しており,上記①の
判断がかかる原告の主張を前提としていることは明らかである。
したがって,本件優先日における技術常識として,原告主張の前提事実
が認められるかどうか,すなわち,本件優先日において,黒ショウガがポ
リフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来する)渋みや苦みを有す
ることを当業者が認識していたといえるか否かが問題になる。
イこの点,甲1(特開2009-67731号公報)には,「黒生姜根茎
加工物」を含む冷え性改善用組成物が記載され,当該組成物が飲食品,医
薬部外品,医薬品として経口投与されることや,黒ショウガが長期にわた
り人間に摂取されてきた実績があり,風味に関して難点が少ないことが記
載されているが(請求項1~7,【0013】,【0041】等),黒シ
ョウガがポリフェノール類を含むことは記載されていない。
甲2(特開2011-236133号公報)には,黒ウコンの抽出物及
び/又は乾燥粉末が記載されており,黒ウコンが別名で黒ショウガと呼ば
れることや,黒ウコンにはポリフェノールが含まれていることも記載され
ている(請求項1及び4,【0002】,【0024】,【0025】等)。
もっとも,乙5(報告書)によれば,黒ショウガ粉末に含まれる総ポリフ
ェノール量は1%未満とされており(この点について原告の明確な反論は
ない。),また,黒ウコン(黒ショウガ)が渋みや苦みを有するとの記載
は甲2には存在しない。
甲7(「食品の機能性を評価するために」JFRLニュース第3巻第9
号〔2009年〕1~4頁)には,黒ウコンが,古くから長寿・強壮を謳
う民間伝統薬として用いられてきたこと,その根茎の切口は濃い紫色で,
アントシアニンなどのフラボノイド類を豊富に含むことが記載されている
(4頁1~10行目)。
ほかに本件審決が引用する,甲4(特開2009-46438号公報),
甲5(特開2009-1513号公報)及び甲6(高橋誠「食品素材の『ナ
ノサイズ』カプセル化技術の開発」オレオサイエンス第8巻第4号〔20
08年〕151~157頁)には,そもそも黒ショウガに関する記載自体
が存在しない(甲6には,「ウコン」「秋ウコン」に関する記述はあるが,
呈味に関する問題は指摘されていない。)。
ウ甲28ないし31(いずれもウェブページの写し)には,「黒生姜,黒
ウコンという名前を聞くこともあるかもしれませんが,それはクラチャイ
ダムのことです。」(甲28・1頁),「クラチャイダムにはポリフェノ
ールがたくさん含有している」(甲28・2頁),「黒生姜には,ポリフ
ェノール…といった命の源となる栄養素が含まれています」(甲29・2
頁),「独特の苦味がありますので,かまずにお召し上がりください。」
(甲30・4頁),「黒ショウガの苦味と渋みがはちみつでマイルドにな
ったかな?」(甲31・1頁)などといった記載が存在する。
また,甲32(特開2001-309763号公報)には,「ポリフェ
ノール類は特異な苦味・渋味を有するため食品用途での利用に制限を受け
る」(【0002】)等の記載が,甲33(特開2005-58133号
公報)には,「ウコギ科パナックス属植物である高麗人参…ショウガ科の
ウコン等…ヤマイモなどの植物体の根茎は…食品原料として広く使用され
ている」(【0002】)や,「根茎特有の渋みや苦味等」(【0003】)
等の記載が,甲34(特開2013-192513号公報)には,「ブラ
ックジンジャー抽出物の有する特有の匂い,苦味,渋味等の不快な呈味を,
糖,糖アルコール,可食性酸類,及び人工甘味量の少なくともいずれかで
ある化合物を配合することにより,効果的に抑える」(【0008】)等
の記載が,甲35(特開2015-29499号公報)には,「人体によ
い効果をもたらすと期待されている黒ショウガであるが,効果的に摂取で
きる経口摂取の上では,独特の刺激的な味や臭いから人によっては経口摂
取に抵抗があった」(【0003】)等の記載が存在する。
しかしながら,甲28ないし31については,各ウェブページの作成日
や公開日が明記されておらず,各記載が本件優先日より前からウェブサイ
ト上で公開されていたこと,すなわち,各記載内容が本件優先日より前か
ら公知であったことを裏付ける的確な証拠がないから,本件優先日当時の
技術常識を示すものとは認められない(もっとも,甲31については,「2
010年」や「2011年」に関する記述があることから,本件優先日よ
り前の平成22年や平成23年には公開されていたとみる余地はあるが,
その証拠価値が乏しいものであることについては,後記のとおりである。)。
また,甲34の公開日は平成25年9月30日,甲35の公開日は平成
27年2月16日であり,いずれも本件優先日より後に公開されたもので
あるから,これらの証拠も本件優先日当時の技術常識を示すものとは認め
られない。
エ以上からすると,本件優先日当時,黒ショウガにポリフェノールが含ま
れること(甲2)や,ポリフェノールそれ自体は特異な苦みや渋みを有す
る物質であること(甲32)は公知であり,また,植物体の根茎が根茎特
有の渋みや苦みを有すること(甲33)も公知であって,ウコンと同様に,
植物体の根茎の一つである黒ショウガも根茎特有の渋みや苦みを有するこ
とは当業者が認識していたと認められる(なお,甲30,31,34,3
5等が示す黒ショウガの苦みや渋みも,甲33と同様に根茎特有のそれを
示していると認められる。したがって,これらの証拠は,仮に参酌すると
しても,技術常識として黒ショウガがポリフェノール類特有の渋みや苦み
を有するということまで認められることの根拠にはならない。)。
しかしながら,他方で,前記のとおり,黒ショウガに含まれるポリフェ
ノールの量は1%にも満たないとされていることや(乙5),黒ショウガ
が長期にわたり人間に摂取され,風味に関して難点が少ないと評価されて
いたこと(甲1)からすると,黒ショウガが,甲3及び甲32に示される
ような食品用途での利用に制限を受けるほどの量でポリフェノール類を含
んでいるとは認められず,そうだとすれば,本件優先日当時,当業者が,
黒ショウガに関し,ポリフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来す
る)特異な苦みや渋みを有するものとまで認識していたとは認められない。
そして,このことは,甲3において,ポリフェノール類を含有する植物
体として黒ショウガはもちろん,ショウガやウコンすら例示されていない
ことや,実施例1及び2において,市販のポリフェノール製剤の原料とな
っているのは,いずれも黒ショウガ(1%未満)と比べてポリフェノール
含有量が格段に高い,茶やブドウ種子である(乙28及び29によれば,
茶のポリフェノール含有量は10~18%程度,ブドウ種子のポリフェノ
ール含有量は5%程度であると認められる。)ことからも裏付けられる。
オ以上によれば,本件優先日当時,黒ショウガが,甲3発明の技術課題に
あるようなポリフェノール類特有の(ポリフェノール類に由来する)渋み
や苦みを有する植物体に該当すると当業者に認識されていたとは認められ
ないから,この点をもって技術課題が共通であるとか,引用発明中の示唆
があるということはできない。
(3)呈味以外の技術課題からの検討
次に,甲3には,呈味以外の技術課題(安定性,生体吸収性)に関する記
載もあることから,この点について検討する。
ア安定性に関する技術課題に関し
甲3には,従来技術が有する課題として,「ポリフェノール類は…酸化,
熱,光に対して変色しやすく不安定であるという欠点を有する」こと(【0
002】)が記載されている。
ところで,前記のとおり,黒ショウガはポリフェノールを含むものであ
るが,その含有量は1%に満たないものである。そして,黒ショウガに関
する本件優先日前の刊行物である甲1,甲2及び甲7を参照しても,黒シ
ョウガに含まれるポリフェノールが,酸化,熱,光に対して変色しやすく
不安定であることや,腸管に達するまで安定にデリバリーできない等の技
術課題を有していることは記載されていない。
そうすると,黒ショウガに含まれるポリフェノールについて,甲3に記
載された安定性に係る技術課題が認識されていたとは認められない。
イ生体吸収性に関する技術課題に関し
甲3には,「発明の目的は,…生体吸収性の優れた水系分散可能なポリ
フェノール類製剤を提供する」こと(【0004】),「従来にない優れ
た生体吸収性及び生体利用性を有すること,更には本発明ポリフェノール
類製剤を含有する食品についても改善がされることを発見し,本発明を完
成するに至った」こと(【0005】)が記載されている。
しかしながら,試験例5(ポリフェノール類製剤の生体吸収性及び生体
利用性)が示す実験結果は,経口摂取直前及び摂取後1時間経過時の血清
中のエピガロカテキンガレート含量の比較結果から,ポリフェノール類製
剤が,対照品(茶ポリフェノール)と比較して同等の生体吸収性を有する
というものであり(【0039】~【0042】,図4,図5),上記各
記載は,甲3に記載される技術的手段,すなわちナタネ油を含むコート剤
の被覆により,当該コート剤の被覆がない場合と比べて,生体吸収性を向
上させることを意図したものではない。
したがって,甲3に記載される技術的手段(ナタネ油を含むコート剤の
被覆)により,本件明細書に記載されるようなポリフェノール類が効果的
に体内に吸収できるという効果を奏することが,甲3に記載されていると
は認められない。
(4)以上のとおり,本件優先日当時,黒ショウガが,ポリフェノール類特有の
渋みや苦みを有し,食品用途での利用に制限を受けるような植物体に該当す
ると認識されていたとの前提自体が採用できず(したがって,かかる前提に
基づく原告の主張も採用できない。),また,黒ショウガに含まれるポリフ
ェノールについて安定性に係る技術課題が存在したとも認められない。さら
に,甲3には,ナタネ油を含むコート剤の被覆という技術的手段により,当
該コート剤の被覆がない場合と比較して,ポリフェノール類を効果的に体内
に吸収できるという効果を奏することも記載されていない。
加えて,前記のとおり,黒ショウガに含まれるポリフェノールの量は1%
未満であるから,黒ショウガを甲3発明に適用すると,油脂や多価アルコー
ル脂肪酸エステル等が配合される結果,ポリフェノール類製剤に含まれるポ
リフェノール類は微量となり,甲3発明にいうポリフェノール類製剤として
の用をなさない可能性も考えられる(甲3【0012】参照)。
そうすると,甲3発明の「茶ポリフェノール粒子」に代えて,甲2に記載
された「黒ショウガ粉末を含有するキサンチンオキシダーゼ阻害剤であって,
フラボノイドを有効成分とし,当該有効成分を経口摂取するもの」や,甲1
に記載された「冷え性改善用の黒ショウガの根茎加工物,抽出物,黒ショウ
ガ搾汁液及び/または黒ショウガ搾汁液の抽出物の乾燥粉末」を適用する動
機付けがあるとはいえず,本件訂正発明1の構成を,甲3発明及び甲1ない
し7に記載された技術的事項並びに本件優先日の技術常識に基づき,当業者
が容易に想到し得たということはできない(本件訂正発明1の発明特定事項
の全てを含む本件訂正発明2についても同様である。)。
したがって,本件訂正発明は,甲3発明との対比の観点からは,そもそも
効果の顕著性について検討するまでもなく進歩性が認められるべき筋合いの
ものであったといえる。
(5)以上によれば,本件訂正発明について,甲3発明との相違点に係る構成自
体は推考容易であるとした上で,顕著な効果が認められることを理由に進歩
性を認めた本件審決の判断は,その論理構成に誤りがあるものの,結論にお
いては誤りがないというべきであるから,その余の点(効果の点)について
検討するまでもなく,原告主張の取消事由1は理由がない。
4取消事由2(サポート要件に関する判断の誤り)について
原告は,①前訴判決は,コート剤による被覆の量や程度が不十分である場合
においても本件発明の課題を解決できることが示されているとはいえないとし
て,本件発明がサポート要件に適合しないと判断しているところ,「黒ショウ
ガ成分を含有する粒子」の表面の全部を僅かな量のコート剤で被覆する態様も
コート剤による被覆の量が不十分である場合の一態様であることは自明である
から,たとえ前訴判決にこの態様についての記載がなかったとしても,サポー
ト要件違反を認めた前訴判決の拘束力が及ぶ,②仮に前訴判決の拘束力が及ば
ないとしても,本件明細書には,「黒ショウガ成分を含有する粒子」を「ナタ
ネ油あるいはパーム油を含むコート剤」で被覆したことによって黒ショウガ成
分に含まれるポリフェノール類の体内吸収性が高まる結果をもたらすはずであ
る当該「コート剤」の量が記載されていないから,本件訂正発明はサポート要
件に適合していない,などと主張する。
しかしながら,上記①の点について,黒ショウガ成分を含有する粒子が,そ
の表面の全部についてコート剤で被覆されている場合は,表面の一部がコート
剤で被覆されている場合と異なり,相当程度の被覆量でコート剤が用いられる
ことは当業者が理解するところである(例えば,乙35の別紙1,2で示され
る油脂でコーティングされた健康食品では,全体量の17~22%,別紙8の
健康食品では7~13%で油脂が用いられている。)から,そもそも,表面の
全部をコート剤で被覆する態様は,コート剤の被覆の量や程度が不十分である
場合には該当しない。したがって,「表面の全部を僅かな量のコート剤で被覆
する態様」なるものを想定して,本件訂正発明にも前訴判決の拘束力が及ぶと
する原告の主張は,その前提自体が失当である。
上記②の点についても,表面の全部がコート剤で被覆された黒ショウガ粒子
が,本件発明(本件訂正発明)の課題を解決できることは,実施例1及び2,
比較例1の結果から明らかであるといえる。
すなわち,本件明細書の実施例(【0044】~【0054】,表1及び図
1)には,実施例1として,パーム油でコートした黒ショウガの根茎の乾燥粉
末(黒ショウガ原末)をコーン油と混合して150mg/mLとし,懸濁する
ことにより調製した被験物質(実施例1被験物質),実施例2として,黒ショ
ウガ原末をナタネ油でコートした以外は,実施例1と同様にして調製した被験
物質(実施例2被験物質),及び比較例1として,黒ショウガ原末をコートす
ることなくコーン油と混合して150mg/mLとし,懸濁することにより調
製した被験物質(比較例1被験物質)を,それぞれ,6週齢のSD雄性ラット
に,10mL/kgとなるように,ゾンデで強制経口投与し,投与の1,4,
8時間後(コントロールはブランクとして投与1時間後のみ)に採血して,血
中の総ポリフェノール量を測定したところ,実施例1被験物質及び実施例2被
験物質を摂取した群の血中ポリフェノール量は,いずれも比較例1被験物質を
摂取させたものに比べて高い値を示したことが記載されている。
コート剤の被覆量についても,油脂の含有量に応じて適宜調整することがで
き,特に制限されることはないが,黒ショウガ成分を含有する粒子100重量
部に対し,1~50重量部とすることが好ましい旨が,本件明細書に記載され
ている(【0033】)。そして,粒子の表面の全部がコート剤で被覆されて
いる場合は,表面の一部がコート剤で被覆されている場合と異なり,相当程度
の被覆量でコート剤が用いられることは前記のとおりであり,この点は技術常
識であるといえる。
これらの本件明細書の記載や技術常識を踏まえると,当業者は,たとえ本件
明細書に具体的な「コート剤」の量が記載されていなかったとしても,本件訂
正発明はその課題が解決できると認識するものと認められる。
以上によれば,サポート要件違反の無効理由を認めなかった本件審決の判断
に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。
5結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審
決に取り消されるべき違法はない。
よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
鶴岡稔彦
裁判官
寺田利彦
裁判官
間明宏充

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛