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判決 平成15年2月10日 神戸地方裁判所 平成14年(レ)第68号 貸金請
求控訴事件
主文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
主文同旨
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 被控訴人は,平成12年3月31日,控訴人に対し56万円を,以下の約
定で貸し渡した(以下「本件貸付」という。)。
ア 利息
年40.004パーセント
イ 遅延損害金
年40.004パーセント
(2) 控訴人は,平成12年5月9日から平成13年8月9日まで,別紙計算書
記載のとおり20回にわたって合計31万9860円を支払ったので,被控訴人
は,これを同計算書記載のとおり,利息制限法所定の制限利率に従って,元利金に
充当した。
(3) 控訴人は,同年9月1日以降返済をせず,同日をもって期限の利益を喪失
した。
(4) よって,被控訴人は,控訴人に対し,貸金残元金35万3688円並びに
これに対する平成8年8月10日から同年9月1日まで利息制限法所定の制限利率
の範囲内の年1割8分の割合による約定利息4011円及び平成13年9月2日か
ら完済まで同法所定の制限内の年3割6分の割合による約定遅延損害金の支払を求
める。
2 請求原因に対する控訴人の認否
請求原因(1)及び(2)の事実は認める。
3 抗弁
(1) 控訴人は,本件貸付以前の平成8年1月12日,被控訴人から,最終弁済
期を1年後,利息を年利40.004パーセントという約定で金45万円を借り入
れ,その後,これを別表記載のとおり,平成12年3月31日の本件貸付まで,最
終弁済期の到来ごとに同様の約定で同額の45万円(ただし,平成12年3月31
日の本件貸付は借入額を56万円に増額変更して借り換えた。)の借り換えを受け
ることにより,継続して被控訴人から金員を借り受けてきた。
(2) 控訴人は,上記借入れにつき,別表記載のとおり,平成8年2月13日に
5万円を支払ったほか,同年3月以降平成12年3月31日の本件貸付までは毎月
8日ないし10日までに年利40.004パーセントによって計算した1か月の利
息(1万4800円)を支払い,さらに本件貸付以降も別表記載のとおりに被控訴
人に支払ってきた。
(3) 上記各支払い分について,利息制限法の制限を超える利息を元本に充当す
ると,別表記載のとおり,平成13年8月9日時点において既に33万6019円
の過払いとなっている。
(4) よって,本件貸付については既に支払済みであるから,被控訴人の請求は
理由がない。
4 抗弁に対する被控訴人の認否
抗弁(1)ないし(3)の事実はいずれも否認する。ただし抗弁(2)の事実のうち,
控訴人が本件貸付につき別紙計算書記載のとおり20回にわたって合計31万98
60円を支払ったことは請求原因(2)で主張したとおりである。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因(1)及び(2)の事実は当事者間に争いがない。
2 そこで,控訴人の抗弁につき,以下検討する。
(1) 前記争いのない請求原因(1),(2)の事実,証拠(乙1,2,6,控訴人本
人)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,平成元年ころから,金を借りては1年
後に新たに借り換えをするという形態で被控訴人から継続的に金員の借り入れをし
ていたこと,控訴人は,そのような一連の取引の一環として,別表記載のとおり,
平成8年1月12日,被控訴人から,45万円を,年利40.004パーセント,
利息の支払日毎月10日,1年後の同日までに完済するという約定で借り入れ,同
借入後,同年2月13日に5万円を返済したほかは,平成12年3月31日の本件
貸付までの間,毎月10日ころまでに約定の1か月分(30日分)の利息1万48
00円を支払い,1年後の弁済期に同額の新たな借り換えを行って従前の借受金の
弁済をするという取引を繰り返してきたこと,平成12年3月31日には従前の借
受額45万円を56万円に増額して借り換えることとして本件貸付を受け,これに
つき,別表記載のとおりの返済をしてきたことが認められる。
(2) もっとも,上記認定の平成8年1月12日から平成12年3月31日の本
件貸付に至るまでの間の取引状況については,これを具体的に裏付ける資料は,平
成8年1月12日の45万円の借り入れの借用証書(乙1)及び同年2月13日の
5万円の弁済の領収書(乙2)しかなく,また,その取引状況に関する控訴人の陳
述書(乙6)及び控訴人本人尋問の結果には,ややあいまいな部分がないでもな
い。
しかし,控訴人は,平成13年9月分の返済が滞るや否や,同月11日,
神戸簡易裁判所に対して直ちに支払督促を申し立てていること(当裁判所に顕著な
事実)にも鑑みると,控訴人は,平成8年1月12日から平成12年3月31日の
本件貸付に至るまでの間,利息金については,約定の利息金を毎月10日ころまで
に支払ってきたものと推認できるというべきであり,また,本件訴訟において平成
8年1月12日から平成12年3月31日の本件貸付に至るまでの取引状況を裏付
ける資料が不十分な点については,被控訴人には,貸金業者として,貸金業の規制
等に関する法律施行規則17条により,同法19条に定める帳簿について約定の最
終弁済期または完済時から少なくとも3年間の保存義務が課せられているにもかか
わらず,原審の第5回弁論期日(平成14年3月4日)においてなされた文書提出
命令(神戸簡易裁判所平成14年(サ)100号)に対して,提出を命ぜられた帳簿
は廃棄したとして,被控訴人がこれを提出しなかったことにも大きな原因があると
ころ,被控訴人による帳簿の廃棄は,上記法令に違反するものと解され(本件で
は,平成8,9年の取引については,文書提出命令が発せられた時点で既に最終弁
済期または完済から3年を経過しているようにみえなくもないが,控訴人は借り換
えによって取引を継続してきたのであるから,一連の取引が継続してきたものとみ
るべきであり,個別に最終弁済期の到来または完済があったものと評価すべきでは
なく,被控訴人は法令上の帳簿保存義務を免れないというべきである。),証明妨
害とも評価しうるものであることからすれば,その廃棄によって提出がなされなか
った不利益を控訴人に負わせるのは相当でなく,むしろ,その不利益は被控訴人に
これを甘受させるのが相当であることに照らしても,前記のとおり認定できるとい
うべきである。
(3) 上記認定したところによれば,抗弁(1)及び(2)の事実が認められるとこ
ろ,本件貸付は,平成8年1月12日以降1年ごとの借り換えによって継続されて
きた一連の貸付取引と認められるから,利息制限法の制限を超える利息の支払があ
った場合には,その部分は当然に元本に充当されるものというべく,これを充当計
算すると別表記載のとおりとなり,平成13年8月9日時点で既に過払いとなって
いることが認められる。
したがって,本件貸付につき,弁済済みであることを主張する控訴人の抗
弁は理由がある。
3 以上の事実によれば,被控訴人の請求は,その余について判断するまでもな
く理由がないから,被控訴人の請求はこれを棄却すべきである。
よって,上記と異なって被控訴人の請求を認容した原判決を取り消し,被控
訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第4民事部
裁判長裁判官  上  田  昭  典
裁判官  太  田  敬  司
裁判官  北  岡  裕  章

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