弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 一 上告代理人大浦浩の上告理由一について
 職業の許可制は、職業選択の自由そのものに制約を課する強力な制限であるから、
その憲法二二条一項適合性を肯定するためには、原則として、重要な公共の利益の
ために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである(最高裁昭
和四三年(行ツ)第一二〇号同五〇年四月三〇日大法廷判決・民集二九巻四号五七
二頁参照)。他方、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国
民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断
にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得な
い(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五号同六〇年三月二七日大法廷判決・民集三九
巻二号二四七頁参照)。そうすると、酒税法における酒類販売業の免許制について
は、公共の利益の観点からこれを必要かつ合理的であるとする立法府の判断が、右
の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理なものでない限り、
これを憲法二二条一項の規定に違反するものとはいえない。
 酒税法は、酒税の賦課徴収につき、酒類製造者を納税義務者とし、酒類製造者が
酒類販売業者を介して酒類の販売代金を回収することによって、酒税の負担を消費
者に転嫁するという仕組みによることとしており、同法が、酒類販売業につき免許
制を採用したのは、酒類製造者に酒類の販売代金を確実に回収させ、最終的な担税
者である消費者への税負担の転嫁を円滑ならしめるため、これを阻害するおそれの
ある酒類販売業者を酒類の流通過程から排除し、酒税の適正かつ確実な徴収を図ろ
うとしたものと解される。このような仕組みによる酒類販売業免許制は、これが採
用された昭和一三年当時、酒税の国税収入全体に占める割合が高く、酒類の販売代
金に占める酒税比率も高率であったこと等に照らすと、酒税の適正かつ確実な賦課
徴収という重要な公共の利益に資するものであって、その必要性と合理性があった
というべきである。
 その後、社会経済の状況や税制度の変化に伴い、酒税の国税収入全体に占める割
合等が相対的に低下するに至っており、本件処分当時(平成元年四月六日)におい
て、酒税の徴収のため酒類販売業につき免許制を存置しておくことの必要性及び合
理性については、議論の余地があるところといわざるを得ない。しかしながら、本
件処分当時においても、酒税の収入総額が多額であって、販売代金に占める酒税比
率もなお高率であること、税負担を適正、円滑に転嫁するという酒税の賦課徴収に
関する前記の仕組み自体はその合理性を失うに至っているとはいえないことなどか
らすると、本件処分当時においてなお酒類販売業免許制を存置させていたことが、
前記のような立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理
であるとまでは断定し難い。
 また、本件処分の理由とされた酒税法一〇条一〇号は、免許の申請者が破産者で
復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合に、酒
類販売業の免許を与えないことができる旨を定めるものであって、酒類製造者にお
いて酒類販売代金の回収に困難を来すおそれのある者を酒類の流通過程から排除す
る規定と解することができ、前記の立法目的からして合理的なものということがで
きる。
 そうすると、酒税法九条一項、一〇条一〇号の規定が、憲法二二条一項に違反す
るものということはできない。
 以上は、当裁判所大法廷判決(前記最高裁昭和五〇年四月三〇日判決、前記最高
裁昭和六〇年三月二七日判決)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和六三年(
行ツ)第五六号平成四年一二月一五日第三小法廷判決・民集四六巻九号二八二九頁
参照)。
 以上によれば、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、論
旨は採用することができない。
 二 同二について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含
め、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうか、又
は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採用するこ
とができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    藤   井   正   雄
            裁判官    大   出   峻   郎

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