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裁判例


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○ 主文
一 被告日本自転車振興会は原告に対し一、四七〇、四六九円および内六〇五、一
二二円に対する昭和四二年一月一日から、残八六五、三四七円に対する昭和四三年
一月一日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告日本自転車振興会に対する原告のその余の請求および同被告を除くその余
の被告らに対する原告の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、原告と被告日本自転車振興会との間においては、原告に生じた費
用の一〇分の一を同被告の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と右被告を除
くその余の被告らとの間においては、全部原告の負担とする。
○ 事実
第一 申立て
一 昭和四二年(行ウ)第一四四号事件について
(一) 原告
被告日本自転車振興会(以下、被告日自振という。)が原告に対し昭和四二年七月
二六日付でした競輪選手登録消除処分はこれを取り消す。
訴訟費用は被告日自振の負担とする。
(二) 被告日自振
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二 昭和四四年(行ウ)第二四五号について
(一) 原告
被告日自振が原告に対し昭和四四年八月二五日付でした競輪選手登録消除処分に対
する異議申立てを棄却する旨の決定はこれを取り消す。
訴訟費用は被告日自振の負担とする。
(二) 被告日自振
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
三 昭和四四年(ワ)第七、一六五号事件について
(一) 原告
被告ら八名は原告に対し連帯して左の金員を支払え。
1 四九六、三三円およびこれに対する昭和四一年一月一日から右支払ずみまで年
五分の割合による金員
2 別表(一)(年間平均賞金額一覧表)記載の各金員およびこれに対する各翌年
一月一日から右支払ずみまで年五分の割合による金員
3 昭和四八年一月一日から原告が被告日自振より競輪出場のあつせんを受けるま
で一年間あたり三、七六七、三一八円の割合による金員
訴訟費用は被告ら八名の負担とする。
仮執行の宣言
(二) 被告ら八名
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第二 主張
一 原告の請求原因
(一) 被告日自振は、自転車競技法により競輪の公正かつ円滑な実施等を目的と
して設立された特殊法人であり、その設立目的達成のために競輪審判員や競輪出場
選手の検定や登録、選手の出場のあつせん等の業務を独立して行なつているもので
ある。
(二) 原告は、被告日自振が「競輪審判員、選手および自転車登録規則」(昭和
三二年通商産業省令第三九号、以下、本件登録規則という。)にもとづき備えてい
る選手登録簿に昭和二五年四月二〇日競輪出場選手として登録され、以来全国各地
の競輪場に出場していたものである。
(三) 被告日自振は、昭和四〇年八月六日以降原告に対し競輪出場のあつせんを
保留していたが(以下、本件あつせん保留という。)、その後、昭和四二年七月二
六日付で原告に本件登録規則二一条七号の「公正かつ安全な競走を行なうに不適当
と認められる理由」があるとして競輪出場選手の登録を消除する旨の処分をし、原
告は同年八月五日その旨の通知を受領した(以下、本件登録消除処分という。)。
そこで、原告は同月九日被告日自振に対し本件登録消除処分につき異議の申立てを
したが、被告日自掲は昭和四四年八月二五日付で右異議申立てを棄却する旨の決定
をし、同月二八日原告はその旨の通知を受領した(以下、本件異議決定とい
う。)。
(四) 1 本件あつせん保留は、所定のあつせん保留理由がないのになされたも
のであつて違法である。
2 本件登録消除処分は、次に述べる点において違法である。
(1) 被告日自振は本件登録消除処分をする前に原告に対しまつたく弁明の機会
を与えなかつた。
(2) 被告日自振は本件登録消除処分をする前約二年間にわたり漫然と本件あつ
せん保留を続けた。
(3) 被告日自振は具体的事実を認定しないまま本件登録消除処分を行なつた。
(4) 被告日自振は本件登録消除処分を原告へ通知するにあたり登録消除理由に
該当する事実をまつたく告知しなかつた。
(5) 原告には本件登録規則二一条七号に該当する事実は存在しない。
3 本件異議決定は、次に述べる点において違法である。
(1) 原告は、本件登録消除処分に対する異議申立てにおいてもと競輪選手であ
り競輪に詳しい訴外aを代理人に選任し、その旨書面で証明したにもかかわらず、
被告日自振はaが右異議申立事件に関与することを認めなかつた。すなわち、原告
およびその代理人高木義明が「aに申立人(原告)の代理人として口頭で意見を述
べる機会を与えられたい」旨および「申立人(原告)が口頭で意見を述べる際aを
立会わせてもらいたい」旨申し立てたけにもかかわらず、被告日自振はこれをまつ
たく許さなかつた。これは行政不服審査法一二条に違反する。
(2) 被告日自振は、本件登録消除処分を原告に告知するにあたり、その処分理
由を告知していなかつたのであるから、同処分に対する異議申立てについて被告日
自振が適正かつ十分な審理を遂げるためには、遅くとも審理の際には処分理由を告
知しこれについて原告の主張立証活動をさせるべきであつたにもかかわらず、被告
日自振は原告の要求を無視して処分理由の告知を拒否した。
(3) 被告日自振は、本件登録消除処分に対する異議申立てを審理するにあたり
b、c、d、e、f、g、hを取り調べたが、その際原告およびその代理人を立ち
会わせて反対尋問の機会を与えなかつたのみならず、原告およびその代理人にその
取調べの結果(右bらの供述内容)を知る機会を与えず、したがつて、また、これ
について意見(弁明ないし反論)を述べる機会を与えなかつたものである。
(4) 原告は本件登録消除処分に対する異議申立ての審理を受けるにあたり被告
日自振に対し証拠書類の閲覧謄写を請求したが、被告日自振は近畿自転車競技会大
阪府支部作成の昭和三八年五月二六日付事故競走報告書および同月一九日ないし二
一日付競輪報告書ならびに同月二五日付あつせん辞退選手名簿、中部自転車競技会
富山県支部作成の昭和三九年六月二七日付「事故競走報告書送付の件」と題する書
面ならびに同年五月三〇日および同月三一日付競輪報告書の閲覧謄写を許したのみ
で、それ以外の書類の閲覧謄写を拒否した。これは行政不服審査法四八条、三三条
に違反する。
(五) 被告日自振が違法に本件あつせん保留および本件登録消除処分をしたた
め、原告は、競輪に出場できなくなり、そのため少なくとも次のような損害(逸失
利益)を受け、あるいは受けつつある。
1 昭和四〇年度の逸失利益  四九六、九三二円
原告は昭和四〇年一月一日から同年八月五日までの間に一五回競輪に出場し、合計
九一二、三〇〇円の賞金を得たので、その一か月平均賞金額は次式のとおり一二
七、二九七円となる。(912、300円÷5/30月=127、297円
ところで、昭和四〇年度に競輪選手が取得した賞金の平均額は別表四記載のとおり
一、四九〇、八〇二円であるから、その一か月平均の賞金額は一二四、二三三円と
なる。
原告が取得した賞金の一か月平均額よりも競輪選手一般の一か月平均賞金額が低い
ので、原告は、昭和四〇年度中(本件あつせん保留をした日の翌日である同年八月
六日から同年一二月三一日まで)に少なくとも右競輪選手一般の一か月平均賞金額
一二四、二三三円の四か月分である四九六、九三三円の賞金を取得しえたはずであ
るところ、本件あつせん保留により競輪に出場できなかつたためこれを取得しえな
かつたのであるから、同額の損害を受けたものである。
2 昭和四一年度ないし昭和四七年度の逸失利益
昭和四一年度ないし昭和四七年度における競輪選手一般の年間平均賞金額は別表
(一)記載のとおりであるから、原告は、右年度中に少なくとも右記載の賞金を取
得しえたはずであるところ、本件あつせん保留や本件登録消除処分により競輪に出
場できなかつたためこれを取得しえなかつたのであるから、同額の損害を受けたも
のである。
3 昭和四八年一月一日以降の逸失利益
昭和四七年度における競輪選手一般の年間平均賞金額が別表(一)記載のとおりで
あることは前記のとおりであるから、原告は、昭和四八年一月一日以降少なくとも
右記載のとおり年間三、七六七、三一八円の賞金を取得しえたかあるいは取得しう
るはずであるところ、本件登録消除処分により被告日自振が再び競輪出場のあつせ
んをするようになるまでの間これを取得しえないのであるから、同額の損害を受け
あるいは受けつつあるものである。
(六) 被告日自振を除くその余の被告らは、いずれも被告日自振の会長、副会長
もしくは理事として被告日自振の業務、なかんずく競輪選手の登録業務と競輪選手
の出場あつせん業務の執行の最終決定に関与しているものである。
2 被告日自振が違法な本件あつせん保留や本件登録消除処分をしたのは、その業
務執行にたずさわる被告日自振を除くその余の被告らの故意または過失によるもの
である。
3 したがつて、被告日自振を除くその余の被告らは、民法七〇九条、六一九条一
項にもとづき、原告に対し前記(五)の損害を連帯して賠償する義務がある。
4 前記(五)の損害は、被告日自振を除くその余の被告らが被告日自振の業務を
執行するについて与えたものであるから、被告日自振も、自転車競技法一二条の
六、民法四四条一項にもとづき、これを連帯して賠償する義務がある。
5 なお、被告日自振には自転車競技法一二条の六により民法四四条が準用される
結果、国家賠償法五条により同法一条は適用されず、被告日自振の理事である同被
告を除くその余の被告らも個人として不法行為にもとづく損害賠償責任を負うもの
である。
もともと、被告日自振は民法三四条にもとづき設立された私法人であり、理事個人
も不法行為による損害賠償責任を負うのは当然とされていたが、昭和三二年に国の
被告日自振に対する監督権強化の必要にもとづき法改正がなされ、被告日自振が公
法人となつたのちも、自転車競技法一二条の六により被告日自振には民法四四条が
準用されることになり、理事個人の不法行為による損害賠償責任は残されることに
なつたのである。
(七) よつて、被告日自振のした違法な本件登録消除処分および本件異議決定の
取消しを求めるとともに、被告らに対し連帯して前記(五)の損害の賠償(なお、
前記(五)の1の損害については昭和四一年一月一日から、前記(五)の2の損害
についてに別表(一)記載の各年度の翌年一月一日から、いずれも各支払ずみまで
民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いも合わせて)を求める。
二 請求原因に対する被告らの答弁
請求原因(一)ないし(三)の事実は認める。同(四)の1の主張は争う。同
(四)の2の主張および事実も争う。もつとも、同(四)の2の(2)のうち、被
告日自振が本件登録消除処分をする前に約二年間本件あつせん保留を続けたことお
よび同(四)の2の(4)の事実は認める。約二年間本件あつせん保留を続けたの
は、原告には登録消除理由に該当する疑いのある事実等が多く、調査に多くの日時
を要したこと、被告日自振の業務の指針である「競輪に関する業務の方法に関する
規程」(ただし、昭和四二年一二月一八日の改正前のもの。以下、本件業務規程と
いう。)によれば調査期間中はあつせんを保留すべきものとされていたこと、原告
において自発的に登録消除を申請するやの連絡が所属選手会を通してなされたので
これを待ち時日を空費したことなどによるものである。また、被告日自振は、本件
登録消除処分をする前に原告を数回招致して登録消除理由に該当する事実を告げ、
かつ、原告の弁明を聴取したこと、本件業務規程上登録消除処分の通知書に登録消
除理由に該当する事実を記載すべき旨の規定がなかつたことなどにより、右通知書
にこれを記載しなかつたのである。請求原因(四)の3の主張は争う。もつとも、
同四の3の(1)のうち、原告が本件登録消除処分に対する異議申立事件において
もと競輪選手であつたaを代理人に選任する旨書面で証明したこと、右異議申立事
件の審理中被告日自振が原告に口頭で意見を述べる機会を与えた際、原告よりaを
代理人として手続に関与せしめたい旨の申出があつたことならびに同一の3の
(3)および(4)の事実は認める。同(六)の1の事実のうち、被告iが被告日
自振の会長、被告jが副会長、被告k、被告l、被告m、被告nおよび被告oがい
ずれも理事であつたこと(ただし、被告j、被告lおよび被告mは昭和四四年九月
三〇日退任)、被告iが被告日自振業務の執行の最終決定に関与していることは認
めるが、その余は否認する。同(六)の2ないし5は争う。
三 本件あつせん保留および本件登録消除処分の適法性に関する被告らの主張
本件あつせん保留は本件業務規程一二六条一項三号にもとづき、本件登録消除処分
は本件登録規則二一条七号にもとづきなされた適法なものであるが、その具体的理
由を述べるに先立ち、競輪の性格、競輪関係諸規定、被告日自振の性格、競輪選手
の登録とその消除の意義・性質、競輪への参加、異常売上および異常投票について
述べる。
(一) 競輪の性格
自転車競技法によつて創設された競輪は、卒直に言つてプロスポーツであると同時
に賭博(純粋な賭事ではなく、結果が参加者の技能によつて主として決せられる
が、偶然性の存在が混入するため賭博と考えられる。)である。したがつて、本来
ならば刑事罰の対象となるべきところ、国家によつて認められたより一層重要な目
的のため、すなわち、自転車その他の機械の改良および輸出の振興、機械工業の合
理化ならびに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとと
もに、地方財政の健全化を図るという目的のために、適当な方法によつて行なわれ
ることにより違法性を阻却されているのである。しかしながら、大衆の射倖心をあ
おり、経済社会における勤労観念を希薄ならしめる点では可罰的な賭博と本質的に
変りはないので、一歩その方法と運営を誤れば重大な社会的弊害を招くに至るので
あつて、公共の福祉と重大な関係をもつものである。
(二) 競輪関係諸規程
競輪の右性格に鑑み、自転車競技法は競輪の実施により社会に害悪を及ぼすことの
ないよう公共の福祉を確保するための規定をおいている。すなわち、競輪の実施お
よび実施機構を全面的に国の監督下におくための規定(同法一条、二条、一四条の
二など)とともに公共の秩序維持に深く配慮を示した規定(同法三条四項、五条の
二、一四条、一六条二項、一六条の三など)を設けて、国の厳格な抑制的作用のも
とに競輪を公営し、当然随半することが予想される反社会的現象の生起を厳格かつ
神経質に排除することをねらつているのである。
そして、自転車競技法のもとに本件登録規則や被告日自振の自主法規である本件業
務規程が設けられ、競輪場の施設、選手、審判員、使用自転車、競走方法、投票方
法等細目的事項に至るまで放恣に流れないように明定されているのである。
(三) 被告日自振の性格
被告口自振は、競輪の公正かつ円滑な実施を図るとともに、自転車その他の機械に
関する事業および体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に資するこ
とを目的として自転車競技法自体によつて設立された特殊法人である。役員の職務
権限、役員の任命、欠格事項、解任、役員および職員の地位、業務の範囲、業務方
法等が同法自体によつて規制され、業務の実施にあたつてはすべて通商産業大臣の
設可を受けなければならず、業務の範囲としては審判員、選手の登録、自転車競技
会の指導、選手の出場あつせん、機械産業振興のための事業補助、公益事業補助等
公共の福祉に関係の深い業務を行なうものであつて、その業務内容を実質的にみれ
ば、行政事務の一部を国に代つて行なうものであると言つても過言ではない。
(四) 競輪選手の登録とその消除の意義・性質
1 競輪の公正、安全の確保に対する要請は選手の登録およびその消除についても
つとも重要視されなければならない。このことは、過去における競輪場内の紛争そ
の他競輪関係の不祥事件等が大部分不良選手によつてひきおこされたものであつた
ことに照らしても、競走が選手によつて行なわれ、選手が競走の主体であることか
らしても、また、不正競走(八百長)を行なうとすれば行なえることからみても言
えることである。
2 競輪選手の登録とは、登録申出をした者につき身体、技能、学力、人物等につ
いて検定を行ない、競輪選手としての適格性を有すると認めた者を被告日自振に備
付けてある選手登録簿に掲載したうえ、当該選手に対し全国各地で開催される競輪
に参加出走しうる一般的資格・身分を付与するところの法律的行為である。
3 競輪選手の登録の消除とは、ある選手について法定の事由が発生した場合に、
当該選手を選手登録簿の記載より抹消し、競輪選手たる資格・身分を剥奪する処分
である。登録消除事由としては、競走能力の欠除とか不正行為というような技術的
理由あるいは反社会的行為に限られず、一歩進んで不節制、風紀紊乱、勝利意欲欠
除等一般社会においては反社会的行為として非難されない行為についてまでいわば
反競輪的悪性として非難されなければならず、このような場合にも公共の安全のた
めに競走から排除される必要があるのである。すなわち、競輪選手はその行動につ
き高度の競輪的倫理性を要求されているのである。ところで、競輪は多岐多様な要
素をもち、また、レース自体技術的に微妙な点を多く含んでいるので、具体的に何
が反競輪的行為であるかを明確な尺度をもつて個別的に特定しこれを網羅しておく
ことは不可能に等しい。そこで、本件登録規則二一条七号においては「前各号に掲
げるもののほか、公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認められる理由があると
き」という登録消除事由を定めているのである。
そして、反競輪的行為の把握には多分に特殊専門知識を要するのであるから、一般
的思考方法をもつてこれにあたることは妥当性を欠くおそれなしとせず、適切妥当
な判断を敏速に行ないうるのは、競輪運営についての権能を付与されている唯一の
人格でありまた能力をもつ被告日自振に限られるのであるから、登録消除事由に関
する第一次判断権は被告日自振に与えられるべきである。濫用にわたらないかぎり
その判断が尊重されるべきであつて、そうしてはじめて被告日自振は競輪の秩序維
持に関する全責任を果たしうるものである。
(五) 競輪への参加
1 競輪施行者たる都道府県および市町村は、各地に設立されている特殊法人たる
自転車競技会に対し競輪の実施を委託しているが、自転車競技会が競輪を実施する
場合には、特定の選手を指名してその出場あつせんを被告日自振に求めてくる(本
件業務規程一一四条)
2 被告日自振は右求めに応じてあつせん計画をたて、選手をあつせんする(同一
一五条、一一六条、一一六条一項前段)と同時に、あつせんした選手に対して出場
あつせん通知書を交付する(同一一七条一項後段)。
3 選手があつせんを受けた競輪に参加するか否かは同人の自由であり、参加を希
望するときは参加する旨を記載した当該施行者あての参加申込書を被告日自振へ提
出し(同一一七条二項)、希望しないとぎはその旨を被告日自振へ申し出て(同一
一八条)、被告日自振は参加申込書を一括して施行者(自転車競技会)へ交付する
(同一一九条一項)。
4 参加申込書の交付を受けた施行者(自転車競技会)に参加希望選手あてに参加
通知書を交付し、ここに施行者(自転車競技会)と各選手間に競輪出場契約が結ば
れたことになるのである。
5 なお、施行者(自転車競技会)に競輪の公正、安全を害するおそれがあると認
められる選手についてはあらかじめあつせんを辞退しておくことができ、その選手
については辞退の解除があるまで、被告日自振も辞退をした施行者(自転車競技
会)の実施する競輪へはあつせんすることができない(同一二四条)。
(六) 異常売上および異常投票
1 異常売上
通常、競輪の競走は一開催を六日間とし、毎日一〇レースを行ない、前三日を前
節、後三日を後節とし、各節三日制のトーナメント方式で予選(初日)、準決勝
(二日目)、決勝(三日目)の順にて行なわれる。競輪選手は過去の成績によりA
級(上級)、B級(下級)の二つの級に格付けされており、毎日のレースはB級、
A級の順で行なわれ、しかも二日目以降は同一級内にて勝者は勝者同士、敗者は敗
者同士で組合わせて番組が組まれ、各節の最終日(三日目)の最終レースをA級決
勝戦とするなど初日より三日目まで毎日順次興味をたかめ、また、各日においても
第一レースより第一〇レースまで順次興味をたかめ、毎日の最終レースに最大の盛
上りを作るような番組が編成されている。
過去の実例をみると、フアンの投票すなわち車券の売上は右番組遍成に対応して通
常毎日一レースより一〇レースまで回を追つて売上額が順次上昇するのである。と
ころで、車券の売上額がこのように順次回を追つて上昇することなく、途中で異常
に上昇する場合がまれにある。この売上が途中で急激に上昇したレースを異常売上
レースと呼ぶ。
2 異常投票
競輪の一レースに出走する選手数は普通九名であるが、投票(車券の購入)の関係
ではこれを左のとおり六枠に分ける。
<略>
車券の購入方法は連勝単式、連勝複式等に区別され、連勝単式は一着および二着の
選手の組入れられる枠を当てるものであり(たとえば一着を一番選手、二着を五番
選手と予想すれば、枠番1と4を結びつけた車券《投票番号1~4の車券》を購入
する。)、連勝複式は一着または二着のいずれかの選手二名の枠を当てるものであ
る(右の例で、投票番号1~4、4~1のいずれの車券でもよい。)。なお、現在
の競輪では、一日一〇レースのうち前半五レースは連勝複式、後半五レースは連勝
単式の投票方法を採用している。
ところで、競輪におけるフアンの投票は一、二着に入賞する蓋然性の多い選手、す
なわち一、二着入賞を予想される選手に対してなされるのが理の当然であるから、
当該レースに出走する各選手のうち、一、二着に入賞を予想される選手に多く集中
するはずである。したがつて、これに反する車券の購入方法、たとえば本命枠(予
想新聞等が一着有望と予想する選手を本命選手または一番人気選手といい、この選
手の組入れられる枠を本命枠という。)を除外して他の枠が多数買われるとか、対
抗枠(本命選手の競走の好敵手となり二着となる可能性が強いと予想される選手を
対抗選手または二番人気選手といい、この選手の組入れられる枠を対抗枠とい
う。)を除外して他の枠が多数買われるといつたような場合は、人間心理に反する
ものであつて、これを異常投票と呼ぶ。
3 異常売上や異常投票の原因
異常売上の現象は、通常出走中の選手が事前に第三者と結託して作為的な走行を行
ない、結託した第三者がそのレースの車券を特別多数購入することによつておこる
ことが多く、また、異常投票も通常は出走中の選手があらかじめ第三者と結託し、
たとえば一着となることを予想されている選手が入賞を逸するなど一般の予想を裏
切る作為的走行をし、結託した第三者がこれに対応して当該選手を除外した車券を
購入することによつておこることが多い。
したがつて、両現象はいずれも不正競走(八百長)が行なわれたときにおこること
が多く、これらのいずれかの現象が生じたときこは当該レースに不正競走があつた
と疑うけに足りるのである。(七) 本件あつせん保留および本件登録消除処分の
具体的理由
被告日自振は、原告が公正かつ安全な競走を行なうのに不適当であると判断したた
め、本件あつせん保留や本件登録消除処分をしたのであるが、その理由の詳細は次
のとおりである。
1 特別あつせん辞退選手への指定とその解除
(1) 原告は、(ア)昭和三〇年三月一九日京都府営第一二回向日町競輪第四日
目第七レースに出走し、自己の全能力を発揮せず疑惑を受けるような走行をして七
着となり、(イ)昭和三一年三月一一日埼玉県営第一三回大宮競輪第二日目第一一
レー^スに出走し、本命と目されていながら誠意がなくフアンの激憤をかう走行を
して六着となり、(ウ)同月一四日同競輪第四日目第一〇レースに出走し、敢闘精
神に欠ける走行をし、(エ)昭和三二年二月四日京都府営第一一回向日町競輪第四
日目第五レースに出走し、自己の全能力を発揮せず疑惑を受けるような走行をして
七着となり、(オ)同年四月一一日から一三日までの間に開催された兵庫県淡路市
外五市組合営第一回明石競輪第一日目第一一レース、第二日目第一〇レース、第三
日目第八レースにそれぞれ出走し、いずれも全力を尽くさず故意に脚力を落して第
一日目、第二日目とも七着となり、第三日目には本命と目されて最終周回第二コー
ナーで最良の位置を確保しながら故意に不利な位置に落ちこみ、意識的にここから
抜け出す努力をすることなく徒らに凡走し、(カ)昭和三三年一月一五日千葉県営
第七回松戸競輪第一日目第一一レースに出走し、本命と目されながら自己の全能力
を発揮せずに走行して四着となつた。
なお、右(ウ)のレースでは車券師らしい者二名が相当数の当り車券を購入してお
り、右(オ)の第三日目のレースでは車券の購入(投票)面にも甚しい不自然さが
認められるなどしてフアンが抗議し、場内が騒然となり、また、右(カ)の競輪開
催中に不良選手としてすでに登録を消除された元選手(p)の兄が原告を訪れ、両
者間で不明朗な話合いがなされた。
(2) 原告は、(ア)昭和三一年三月上旬ごろ、通称車券師q(大宮市<以下略
>)およびr(通称s、上尾市<以下略>)らの不良分子がしばしば出入りする大
宮市<以下略>所在のt宅に約一〇日間止宿し、この間右車券師らと交際を重ね、
(イ)昭和三二年四月一三日明石競輪場において、当日レース終了後通称車券師u
に対して借用金を返済するとの口実で自己が現に使用中の競走行自転車一台を引き
渡した。
(3) 原告は右(1)に述べたような審判員その他競輪関係者やフアンの疑惑を
招くような好ましからざる走行が多く、かつ、私行上においても右(2)に述べた
ように車券師等不良分子との交渉があり、競輪選手の体面を汚す行為が多かつたと
ころ、昭和三〇年三月には社団法人京都府自転車振興会より、昭和三一年六月には
社団法人埼玉県自転車振興会より、同年九月には社団法人東京都自転車振興会よ
り、昭和三二年四月には社団法人兵庫県自転車振興会より、昭和三三年三月には社
団法人千葉県自転車振興会よりそれぞれ被告日自振に対し原告を所轄の競輪に出走
させない旨の申出(出場あつせん辞退)がなされた。なお、このほか昭和二八年五
月原告が名古屋競輪において不正を濃厚に疑わせる走行をしたため、社団法人愛知
県自転車振興会より昭和三一年度まで出場あつせん辞退がなされていた。
(4) そこで、被告日自振は昭和三三年五月二七日原告を特別あつせん辞退選手
に指定し、昭和三六年一月一〇日右指定を解除するまで、特別の場合を除き原告を
競走から排除した。
なお、右解除に際し、原告は、被告日自振に対し同月二四日「私は競輪関係諸法規
を遵守し競輪選手としての体面を汚すことなく精進致します。今後公正なる競輪の
運営に支障あると御認めの節は、登録の抹消処分を受けても異議のないことを誓約
致します。」との誓約書を提出した。
2 昭和三八年堺市営第一回大阪競輪における不良走行および異常投票
(2) 不良走行
(ア) 第四日目(五月一九日)第九レース二、〇〇〇メートル(四周)A級選抜
競走において、原告はスタート後三番手に位置し、第三周回には四番手となり、打
鐘後は理想的好位置の二番手として走行し、最終回には、第二コーナー出口におい
て一気に飛び出して先頭位置についたにもかかわらず、さらに第三コーナーでは通
常このようなレース展開ではまつたく必要のない急ピツチで「カケ」続けた。その
後、第四コーナーを過ぎてホーム・ストレンチ直線部(ゴール前三〇メートル線付
近)において故意に脚力を落したため、後続選手に抜かれ、ついに先頭選手と約三
メートル半の差を生じて三差となつた。
(イ) 第五日目(五月二〇日)第一〇レース二、〇〇〇メー1ル(四周)A級準
優競走において、原告はスタート後v選手に続いて三番手の好位置で走行したが、
第三周回第三コーナーからv選手がw選手らの後続選手に押えられるや、原告はま
つたくやる気なくそのままv選手について後退し、ついに最後尾となり、その後一
度七番手となつたものの、再びゴール前直線部でv選手に抜きかえされて八着とな
つた。
(ウ) 第六日目(五月二一日)第七レース二、〇〇〇メートル(四周)A級優秀
競走において、原告はスタート後トツプ引きのx、y二選手を追つて好位置の三番
手に位置して走行したが、打鐘後はz選手やp1選手らに抜かれ、最終周回では四
番手となつた。そして、最終周回第二コーナ出口から外廻りバツク直線部で原告は
まくつて出たにもかかわらず、第三コーナーで故意に「車を引き」スピードを落し
て四着となつた。
(2) 異常投票
(ア) 第四日目(五月一九日)第九レースの選手氏名および予想順位(人気)は
別表(二)記載のとおりであり、その予想に従えば、投票番号ごとの売上順位は、
I本命=対抗(6~4)、II本命=三番人気(6~1)、III対抗=本命(4
~6)、IV対抗=三番人気(4~1)等の順になるのが普通であつた。
しかるに、右レースにおける現実の投票番号ごとの売上は別表(三)記載のとおり
であつて、I本命=三番人気(6~1)、II本命=五番または四番人気(6~
5)、III本命=対抗(6~4)、IV本命=四番または五番人気(6~3)の
順で投票がなされて(車券が買われて)いて、一般の予想と異なり原告が二着にな
らないとの前提に立つた投票が多数行なわれているのである。さらに、原告は対抗
選手であるので、本命選手を除き他のどの選手よりも二着となる可能性が多いと予
想されたのであるから、原告を二着とする車券が本命選手を二着とする車券に次い
で多数購入されるのが普通であるところ、原告を二着とする車券よりも原告や本命
選手以外の選手を二着とする車券が多く購入されているのである。すなわち、投票
番号2~4より2~1が、3~4より3~1と3~5が、5~4より5~5が、6
~4より6~1と6~5がいずれも多く買われている。
これらの現象はいずれも異常投票であり、明らかに対抗選手たる原告が故意に一、
二着入賞を避けて走ること、したがつて、三番人気、四番人気選手が本命選手に次
いで入賞するであろうことが事前に知られていなければ通常ありえないことであ
る。すなわち、右異常投票は事前に原告に対して何らかの不正な工作がなされてい
たことを強く疑わせるものである。
(イ) 第五日目(五月二〇日)第一〇レースの選手氏名および予想順位(人気)
は別表(四)記載のとおりであり、その予想に従えば、投票番号ごとの売上順位
は、I本命=対抗(5~1)、II本命=三番人気(5~6)、III対抗=本命
(1~5)、IV対抗=三番人気1~6)の順になるのが普通であつた。
しかるに、右レースにおける現実の投票番号ごとの売上は別表(五)記載のとおり
であつて、I本命=四番人気(5~2)2)、II本命=対抗(5~1)、III
対抗=本命1~5)、IV本命=三番人気(5~6)、V本命=無印(5~3)、
VI対抗=無印(1~4)、VII対抗―無印(1~3)、VIII対抗=四人気
(1~2)、IX対抗=三番人気(1~6)の順で投票がなされて(車券が買われ
て)いて、一般の予想とは異なり原告が入賞しない可能性が多いとの予想に立つて
投票が行なわれているのである。とくに本命を一着、三番人気の原告を二着と予想
した車券(5~6)より本命を一着、四番人気選手を二着と予想した車券(5~
2)が倍以上も買われていることが注目される。
右現象は異常投票であり、(ア)と同様事前に原告に対して何らかの不正な工作が
なされていたことを疑わせるものである。
3 昭和三九年富山市営第三回富山競輪における不良走行、異常売上および異常投

(1) 不良走行
(ア) 第一日目(五月三〇日)第一〇レース二、〇〇〇メートル(六周)A級選
抜競走において、原告は第二周回第二センターで三番手となり、その後変化なく走
行していたが、自己の全能力を発揮せず第五周回第一センター付近でp2選手らに
抜かれて五番手となつた。しかし、その後前進して二番手p2選手の外側を併走し
ていたにもかかわらず、力走せず最終回ホーム・ストレツチ通過後またもやずるず
る後退してついに七着となつた。
(イ) 第二日目(五月三一日)第八レース二、〇〇〇メートル(六周)A級準優
競走(先頭固定競走)こおいて、原告はスタート後終始p3選手をマークして第三
周回三番手に位置し、その後変化なく走行したが、第五周回第四コーナー通過後p
3選手がp4選手をかわし先行態勢に入つた。このような場合、原告のような位置
にあるものはp3選手に後続するのが通常のレース運びであるにもかかわらず、こ
とさらp4選手について内側に進路をとつたため後方から続く他の選手に包囲され
て六着となつた。
(2) 異常売上
第二日目(五月三一日)の各レースの車券の売上高は別表(八)記載のとおりであ
り、原告が出走した第八レースに著しい売上の急騰が認められた。
これは異常売上の現象である。
(3) 異常投票
第一日目(五月三〇日)第一〇レースの選手氏名および予想順位(人気)は別表
(六)記載のとおりであり、その予想に従えば、原告は本命選手であるから一着と
なる可能性が一番多いのみならず二着となる可能性も他の選手より多いにずであ
り、原告を二着とする車券が原告以外の選手を二着とする車券よりも多数購入され
て然るべきであつた。
しかるに、右レースにおける現実の投票番号ごとの売上は別表旧記載のとおりであ
つて、原告を二着と予想した車券よりも原告以外の選手を二着と予想した車券が多
数購入されているのである。すなわち、投票番号1~4より1~6、1~3、1~
2が、2~4より2~6、2~1が、5~4より5~6、5~3、5~1が、6~
4より6~1、6~5がいずれも多く買われているのである。
これは異常投票であり、このことと前記3(1)(ア)の不良走行の事実とを考え
合わせれば、不正競走が行なわれたことを強く疑わせるものである。
4 出場あつせん辞退
右2および3の事実があつたため、昭和三八年五月二五日には近畿自転車競技会大
阪支部より、昭和三九年六月一二日には中部自転車競技会富山県支部よりそれぞれ
被告日自振に対し原告を所轄競輪場に出走させない旨の申出(出場あつせん辞退)
がなされた。
5 その他の原告出走レースにおける異常売上
原告が出走した別表(九)記載のレースにはいずれも異常売上が認められた。
6 暴力行為
原告は、昭和四一年六月一二日大垣競輪場内選手控室において、競輪選手p5に対
し、同選手が被告の所管係員に対し原告の不行跡を密告しているのではないかと邪
推し、「お前はおれのあつせんがとめられるようなことを日自振に行つてしやべつ
たのだろう」などと暴言をはいたのち、同選手の左頬を殴打した。
7 以上の1ないし6の事実はいずれも正常な自転車競走を阻害するものであり、
これらの事実を総合すれば原告には公正かつ安全な競走を行なうに不適当な事由が
あつたと断ぜざるを得ない。そこで、被告日自振は本件登録規則二一条七号にもと
づき本件登録消除処分をしたものであり、また、右事実を調査している間本件業務
規程一二六条一項三号にもづき本件あつせん保留を行なつていたものであつて、い
ずれも適法になされたものである。
なお、本件あつせん保留の期間が約二年間に及んでいるが、それは、原告に関して
は被疑事実が非常に多く、しかも本件あつせん保留中にも暴力団の引起した不祥事
件に関与したかのごとく名前が浮ぶなど底知れぬ疑惑が充満していて調査に多くの
日時を要したこと、競輪選手の擁護団体である日本競輪選手会も原告の競輪選手と
しての不適格性を確認して長期間にわたり原告に自発的登録消除の申出を勧告して
いたこと、登録消除を恣意的に行なわないために選手代表等をも審議に参加せしめ
るための選手資格審査会の設置手続を進めていたところ、通商産業大臣の認可に若
干の日時を要したこと、登録消除事務担当の責任者に交替があり、後任者が慎重を
期して自ら確信するだけの調査を繰り返したという事情があつたこと、本件あつせ
ん保留当時の本件業務規定一二六条一項三号には、あつせん保留の期間について
「第八七条の規定に該当するおそれがあつて本会がその調査を開始したときは、一
月以内においてその調査中および審議中の期間。ただし、当該選手の参加が甚だし
く競輪の公正安全を害すると認められるときは、これを延長することができる。」
と規定していて、無期限の延長が認められていたことなどのためであつて、本件あ
つせん保留は適法である。
(八) 本件登録消除処分の手続の適法性
原告は、被告日自振が本件登録消除処分をするに先立つて原告の弁明を求めず、ま
た、処分通知書に処分理由を記載しなかつたことは違法である旨主張する。
しかし、被告日自振は、本件登録消除処分をするに先立ち原告に対して事前に具体
的な被疑事実を詳細に告げかつ何回にもわたり原告の弁明を徴したものであつて、
原告の主張は失当である。また、本件登録消除処分の通知書に理由の記載を義務づ
けた法令の規定はなかつたので、理由の記載を欠いたことは何ら違法ではない、仮
にそうでないとしても、右に述べたとおり、被告日自振は原告に対し事前に本件登
録消除処分の理由である具体的な被疑事実を詳細に告げていたので、原告は本件登
録消除処分の通知書に理由の記載がないことによりいささかの不利益も受けておら
ず、したがつて、右理由の記載がないことは本件登録消除処分の取消事由となるも
のではない。
四 本件異議決定の適法性に関する被告日自振の主張
(一) 異議申立手続にaを原告の代理人として関与させなかつたことについて
1 本件登録消除処分に対する異議申立事件において、被告日自振が昭和四三年四
月九日原告に口頭で意見を述べる機会を与えた際、原告から弁護士である代理人二
名(高木義明および大内英男)のほかにaを代理人に選任して手続に関与せしめた
い旨の申出があつた。
そこで、被告日自振は後記2で求べるような理由を原告および弁護士である二名の
代理人に詳細に告げて関与の必要のない旨を説明したところ、原告や弁護士である
二名の代理人から不満の様子は示ざれたものの、右申出を撤回し審理に応じたもの
である。
したがつて、aを原告の代理人として異議申立手続に関与させなかつたことが行政
不服審査法一二条に違反する旨の原告の主張は失当である。
2 仮に、原告がaの代理人選任の申出を撤回したものではなく、したがつて、被
告日自振がaの原告の代理人としての関与を拒絶したものであつたとしても、次に
述べるとおり、本件登録消除処分に対する異議申立ての審理手続には何らの違法も
ない。
すなわち、行政不服審査法一二条によれば不服申立てについて代理人の関与が認め
られているところ、被告日自振は原告の申出による弁護士である代理人二名の関与
をむしろ歓迎した一方、原告には弁護士である代理人に不得意であると思われる特
殊専門的な自転車競技に関する事実上の弁明があるかもしれないことを考え、あら
かじめ事故競走報告書等の参考書類を交付してとくに十分に弁明の機会を与え、原
告からもこれに対して昭和四三年三月四日競走上の諸点に関する弁明書等が提出さ
れた。そして、被告日自振は右弁明について原告に不利益がないことを十分に認識
しえたので、以後多数の代理人の関与はむしろ手続の煩雑を増すのみで迅速な手続
の進行の妨げとなるとの観点から、代理人の数を制限する立場をとつたものであ
る。したがつて、原告に手続上の不利益を与えたものではない。また、実質的に考
えても、aは競輪選手を職業としていたものであつたから、異議申立手続に通暁し
ていたものとは考えられず、とくに同人の関与が原告に利益を与えるものとは考え
られない。
ちなみに、不服申立手続において代理人の数を制限しうるとする見解は、公務員の
不利益処分についての不服申立てに関する人事院規則一三-一の一三条二項におい
て明らかにされているところである。
なお、本件登録消除処分に対する異議申立てがなされた当時、手続の進拠規定は本
件業務規程九二条、三七条ないし四一条等であつて、行政不服審査法の適用を受け
なかつたが、その後審理途中の昭和四二年一二月一八日に本件業務規程が改正され
た結果、行政不服審査法の適用を受けるに至つたものである。
(二) 本件登録消除処分の処分理由の告知について
被告日自振は、本件登録消除処分に対する異議申立手続において、原告に対し次の
とおりとくに念を入れて同処分の処分理由を告知した。
1 昭和四二年一〇月一四日  書面による
2 同月二〇日        口頭による
3 昭和四三年二月二三日   書面による
4 同年四月九日       口頭による
(三) 参考人の取調べに原告やその代理人を立ち会わせなかつたことや証拠書類
の閲覧謄写を拒んだことについて
行政不服審査法四八条は、異議申立手続について審査請求手続に関する三三条の準
用をとくに排除している。異議申立手続は、審査請求手続とは異なり、処分庁の自
己反省を主たる目的とするものであつて、手続に一定の限度があるのである。
したがつて、被告日自振が参考人を取り調べる際原告やその代理人を立ち会わせな
かつたりあるいは証拠書類の閲覧謄写を拒んだことが行政不服審査法に違反する旨
の原告の主張は失当である。
(四) 本件異議決定の取消しを求める法律上の利益がないことについて
本件登録消除処分が適法であることは前述のとおりであるから、仮に本件異議決定
の手続に何らかの違法があつたとしても、本件異議決定の取消しを求める法律上の
利益はないというべきである。
五 損害賠償責任に関する被告日自振を除くその余の被告らの主張
本件あつせん保留および本件登録消除処分は、いずれも国家賠償法一条一項にいう
「公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行う」行為にあたるので、
このような場合、公共団体である被告日自振が損害賠償責任を負うのは格別、被告
日自振の役員であるその余の被告ら個々人が損害賠償責任を負ういわれはない。
六 本件あつせん保留および本件登録消除処分の適法性に関する被告らの主張に対
する原告の答弁
被告らの主張三の冒頭の事実のうち、本件登録消除処分の根拠法令が本件登録規則
二一条七号であることは認める。同三(三)(被告日自振の性格)は認める。同三
(四)の2および3のうち競輪選手の登録の消除かある選手について法定の事由が
発生した場合に当該選手を選手登録簿の記載より抹消し、競輪選手たる資格・身分
を剥奪する処分であることは認める。同三(六)1は認める。もつとも、車券の売
上額が異常に上昇する場合がまれにあるとの主張は否認する。同三(六)2のうち
出走選手数および連勝単式等の車券の一般的購入方法に関する部分は認めるが、そ
の余は否認する。同三(六)3は否認する。同三(七)1(1)のうち原告が
(ア)ななし(カ)の各レースで走行したことは認めるが、その余は否認する。同
三(七)1(2)のうち原告が大宮市<以下略>所在のt宅に数日止宿したことは
認めるが、右t宅へ被告ら主張のような不良分子がしばしば出入りするかどうかは
不知、その余は否認する。同三(七)1(3)のうち被告ら主張の各都府県の自転
車振興会よりそれぞれ被告日自振に対し原告について出場あつせん辞退がなされた
ことは不知、その余は否認する。同三(七)1(4)は認める。同三(七)2
(1)については、(ア)のうち原告が第四日目(五月一九日)第九レースで最終
回第二コーナーから先行したが三着になつたこと、(イ)のうち第五日目(五月二
〇日)第一〇レースで八着になつたこと、(ウ)のうち第六日目(五月二一日)第
七レースで四着になつたことに認めるが、その余のうち原告の行為に関する部分は
否し、その余は不知。同三(七)2(2)については、被告ら主張の各レースにお
ける出走選手氏名、車番および枠番がその主張どおりであることは認めるが、事前
に原告に対して何らかの不正が工作がなされていたとの点は否認し、その余は不
知。同三(七)3(1)については、(ア)のうち原告が第一日目(五月三〇日)
第一〇レースに走行したこと、(イ)のうち第二日目(五月三一日)第八レースで
六着になつたことは認めるが、その余のうち原告の行為に関する部分は否認し、そ
の余は不知。同三(七)3(2)は不知。同三(七)3(3)のうち第一日目(五
月三〇日)第一〇レースの出走選手氏名、車番および枠番が被告ら主張のとおりで
あることは認めるが、不正競争が行なわれたとの点は否認し、その余は不知。
同三(七)の4および5は不知。同三(七)6のうち原告が昭和四一年六月一二日
大垣競輪場内において競輪選手p5の左頬を殴打したことは認めるが、その余は否
認する。同三(七)7は争う。同三(八)も争う。
七 本件異議決定の適法性に関する被告日自振の主張に対する原告の答弁および反

被告日自振の主張四(一)1のうち、原告が本件登録消除処分に対する異議申立事
件においてaを代理人に選任し手続に関与せしめたい旨の申出をしたが、被告日自
振がこれを許さなかつたため原告が不満を述べたこと、右異議申立事件において原
告は弁護士である高木義明および大内英男の二名を代理人として選任し、被告日自
振もこれを認めていたことは認めるが、その余は争う。被告日自振の主張四(一)
2のうち、原告が被告日自振から事故競争報告書の交付を受け、弁明書を被告日自
振へ提出したことは認めるが、その余は否認する。同四(二)は争う。もつとも、
被告日自振から昭和四二年一〇月一四日前記三(七)2(1)および同3(1)に
関する事実を文書で、同月二〇日前記三(七)の事実をかなり抽象化して口頭で、
昭和四三年二月二三日前記三(七)の事実をかなり抽象化して文書で、同年四月九
日同じく前記三(七)の事実をかなり抽象化して口頭でそれぞれ告知されたことは
認める。しかしながら、右告知は、本訴において被告日自振が本件登録消除処分の
処分理由として主張している事実(前記三(七))の一部ないしこれをきわめて抽
象化したものにすぎず、適法・妥当な処分理由の告知とはいえないものである。
第三 立証(省略)
○ 理由
一 本件登録消除処分等の存在
請求原因(一)ないし(三)の事実はいずれ本当事者間に争いがない。
二 競輪選手の登録とその消除の意義
競輪に出場する選手は、本件登録規則の定めるところにより被告日自振に登録され
たものでなければならない(自転車競技法五条一項)。被告日自振ば選手登録簿を
備付け、身体、技能、学力および人物について行なう選手資格検定に合格した者を
選手として登録する(本件登録規則一五条)。
被告日自振は、競輪の公正かつ安全な実施を確保するため必要があると認めるとき
は、本件登録規則の定めるところにより競輪選手の登録を消除することができる
(自転車競技法五条二項)。競輪選手の登録の消除は、競輪選手が登録の消除を申
請したとき、登録の更新を受けなかつたとき、死亡したときに行なわれるもののほ
か(本件登録規則二〇条)、一定の事由がある場合に被告日自振が競輪選手の意に
反して行なう場合がある(本件登録規則二一条)。その登録消除事由としては、
(1)登録証の記載事項に変更があつた場合の届出を怠り、または虚偽の届出をし
たとき、(2)不正な方法により選手資格検定または選手登録更新を受けたことが
明らかになつたとき、(3)競走に関し不正な行為をしたとき、(4)競走の成績
が不良であるとき、(5)身体に故障を生じ競走の能力を欠くに至つたと認められ
るとき、(6)正当な理由がないのに一年以上引き続き競輪に出走しなかつたと
き、(7)前各号に掲げるもののほか、公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認
められる理由があるときの七つの事由が定められている(本件登録規則二一条)。
右にみたように、競輪選手として競輪に出場するためには被告日自振の選手登録簿
に登録された者でなければならないので、競輪選手の登録とは登録された選手に対
し全国各地で開催される競輪に参加出走しうる一般的資格・身分を付与するところ
の行為であり、登録の消除とは右一般的資格・身分を剥奪するところの行為であ
る。
三 競輪の実施と競輪選手の参加出走
競輪の施行者は都道府県および自治大臣が指定する市町村であるが、競輪施行者は
競輪の競技に関する事務その他の競輪の実施に関する事務を自転車競技法にもとづ
き設立された特殊法人である自転車競技会に委託することができるようになつてお
り(自転車競技法一条、一三条、同条の二、四)、成立に争いがない乙第一八号証
および証人p6の証言によれば、全国を八ブロツクに分けてブロツクごとに特殊法
人である自転車競技会が設立され(たとえば、関東自転車競技会、中部自転車競技
会、近畿自転車競技会など)、現実にはこの八つの自転車競技会が競輪施行者から
それぞれ委託を受けて競輪の実施にあたつている(もつとも、昭和三七年一〇月以
前は自転車競技会なる特殊法人は存在せず、各都道府県の自転車振興会なる社団法
人が競輪施行者の委託を受けて競輪の実施にあたつていたが、同月自転車競技法が
改正されて、同法にもとづき自転車競技会なる特殊法人が設立されることになり、
以後前記のとおり八つの自転車競技会が競輪の実施にあたるようになつた。)こと
が認められる。
本件業務規程一一三条ないし一二五条に成立に争いがない乙第二九号証の三ないし
七、同号証の九の(イ)ないし(二)、同号証の一〇の(イ)、(ロ)、証人p7
の証言により成立が認められる同号証の一、二、八および証人p8の証言を総合す
れば、競輪選手が競輪に参加する手続は、(1)各自転車競技会は、競輪施行者の
委託を受けて、当該競輪の開催日の初日の属する月の二月前までに、出場選手あつ
せん依頼書に開催要項および概定番組ならびに希望選手名簿を添えて被告日自振へ
提出し、(2)被告日自振は、出場選手あつせん依頼書により算出した出場選手
数、地域ごとの居住選手数、競輪の開催内容、希望選手および選手の交流等を勘案
して、出場選手あつせん計画を作成し、(3)被告日自振は、右計画作成後当該自
転車競技会に出場あつせん選手一覧表を送付するとともに、当該選手に出場あつせ
ん通知書を送付し、(4)出場あつせんを受けた選手は、当該競輪に出場を希望す
る場合は出場希望回答の締切日までに当該競輪施行者あての参加申込書を被告日自
振へ送付し、(5)被告日自振は、参加申込書を取りまとめ、一括して当該自転車
競技会へ送付し、(6)当該自転車競技会は参加通知書を当該選手へ送付し、ここ
に競輪施行者(その委託を受けた自転車競技会)と当該選手との間に競輪参加(出
場)契約が成立し、当該選手は競輪へ参加出走するに至るものであることが認めら
れる。
次に、本件業務規程一二四条に成立に争いがない乙第二九号証の一二、一三ならび
に証人p8、同p9、同p7および同p6の各証言を総合すれば、各自転車競技会
は、競輪施行者と協議のうえ、自転車競技法違反容疑、不正競走容疑や不正競走協
定容疑がある場合、背後関係が不明朗な場合、競走上の適性が欠除している場合、
素行や態度が不良な場合などのやむを得ない理由により、ある選手について競輪へ
の出場あつせんを希望しない場合には、あつせん辞退選手名簿に所定の事項を記載
して被告日自振へ提出することができ(このことをかつては配分忌避と呼んでいた
時期もあつたが、その後あつせん辞退と呼ぶようになつた。)、この場合には、被
告日自振は当該自転車競技会が当該競輪施行者からその実施を委託された競輪に当
該選手をあつせんしないことになつていること、昭和三〇年ごろから昭和三七年ご
ろまでは特別あつせん辞退選手という制度があり、三か所以上の競輪施行者(その
委託を受けた各自転車振興会)からあつせん辞退があつた場合に、被告日自振は当
該選手を特別あつせん辞退選手に指定し、当該選手の出場あつせんをとくに希望す
る競輪施行者(その委託を受けた各自転車振興会)の場合を除き全国的に出場あつ
せんをしないものとすることができたことが認められ、この認定に反する証拠はな
い。
本件業務規程一二六条によれば、被告日自振は競輪選手に同条所定の事由が生じた
ときはそれぞれ所定の期間当該選手に対する出場あつせんを保留することができ、
同規程一二七条によれば、被告日自振は競輪選手が同条所定の事由に該当するとき
は一年以内出場あつせんをしないことができることになつている。
次に、競輪における通常の番組編成の方法に関する被告らの主張三(六)1の事実
(ただし、車券の売上額が異常に上昇する場合がまれにあるとの点を除く。)なら
びに被告らの主張三(六)2のうち出走選手数および連勝単式等の車券の一般的購
入方法に関する部分はいずれも当事者間に争いがない。
四 本件登録消除処分の実体上の適否
本件登録消除処分が本件登録規則二一条七号にもとづいてなされたものであること
は前記認定のとおりである。そこで、原告に右条号に定める事由(すなわち、「前
各号に掲げるもののほか、公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認められる理由
があるとき」)があつたかどうかについて検討する。
(一) 成立に争いがない乙第三号証の二の(イ)、証人p7および同p10の各
証言により成立が認められる同号証の一の(イ)、(ロ)、証人p7の証言により
成立が認められる同号証の二の(ロ)、証人p9および同p10の各証言により成
立が認められる同第四号証の一の(ロ)、(ハ)によれば、原告は昭和三〇年三月
一九日開催の京都府営第一二回向日町競輪第四日目第七レースに出走し(原告が右
レースに出走したことは当事者間に争いがない。)、疑惑を受けるような走行をし
て七着となつたこと、このため同月三一日社団法人京都府自転車振興会より「背後
関係で風評悪く、三〇年三月向日町に於てもその気配が濃厚であつた」との理由を
付して原告に関する配分忌避の申出がなされたことが認められ、この認定を覆えす
に足りる証拠はない。
(二) 成立に争いがない乙第一号証の二の(イ)、証人p7の証言により成立が
認められる同号証の一の(イ)ないし(ハ)、同号証の二の(ロ)、(ハ)および
同第四二号証の一、二、証人p9の証言により成立が認められる同第五号証の1一
ないし三によれば、原告は昭和三一年三月一一日開催の埼玉県営第一三回大宮競輪
第二日目第一一レースに出走し(原告、が右レースに出走したことは当事者間に争
いがない。)、本命と目されていながら誠意がなく六着となつてフアンの激憤をか
い、審判長から厳重注意を受けたこと、同月一四日開催の同競輪第四日目第一〇レ
ースに出走し(原告が右レースに出走したことは当事者間に争いがない。)、敢闘
精神に欠ける走行をして五着になつたこと、これらのことがあつたため同年六月社
団法人埼玉県自転車振興会より「昭和三一年三月開催の埼玉県営第十三回大宮競輪
に参加し初日より報道関係、自衛警備より兎角の風評ある旨連絡が有り注意中の処
第二日本命と目される人気で着外となり場内フアンの激憤をかい、競走態度に誠意
が見受けられず審判長より厳重注意を与えた、警備情報によると某予想業者がp1
1選手が消えると流布した向もあり最終日再び同様風説有り特に本人に敢闘を促し
たが五着、当会で調査した結果によるとp11は参加十日前位より大宮市<以下略
>の長野県選手数名下宿せるt宅へ泊り毎夜玉突きに過ごして居りt宅へは市内の
車券師q及び通称sが出入りしているとの風説も有り、最終日p11のレースで前
記二名らしき者が相当なる当り車券を取つているので競走態度、風説から合せ不正
容疑濃厚である。尚長野県選手は宿舎を直ちに変更せしめた。」との理由を付して
原告に関する配分忌避の申出がなされたこと、その後昭和三二年度から昭和三四年
度にかけても同旨の理由により配分忌避(なお、昭和三四年度においては出場斡旋
辞退という名称になつている。)更新の申出がなされたことが認められ、この認定
を覆えずに足りる証拠はない。
(三) 証人p7の証言により成立が認められる乙第一〇号証の一、二の各(イ)
ないし(ハ)、証人p9の証言により成立が認められる同第四七号証の一、二に証
人p6の証言を総合すれば、社団法人東京都自転車振興会は昭和三一年九月一五日
「過去素行不良で背後に強力な車券師を伴うものと広く信ぜられその優秀な脚力に
比し走行状況に不審な点が多かつたのでその後各地競輪場に於ける走行状況及競走
成績等につき特に注視して来たが今春大宮競輪参加の折も場内に不正レースの風評
が強く流れ走行状況もそれを裏付けるものがあつた。更に各地競輪参加の途次長時
日車券師宅に滞在する等不謹慎の行動が多く公正安全な競走の実施を期し難いた
め」との理由を付して原告に関する配分忌避の申出がなされたこと、昭和三二年一
月二〇日には「背後関係不明朗でその優秀な脚力に比し、走行状況に不審な点が多
かつたが昭和三一年大宮競輪に参加中も車券師滞同の疑が濃厚で、不正レースの噂
が強く流れ、走行状況もそれを裏付ける如く不可解であつた。又参加の途次車券師
宅に滞在する等プロ選手として不謹慎な行動が多く、選手間の風評も極めて悪く公
正安全な競走の実施を期し難い、」との理由を付して右配分忌避の更新の申出がな
され、昭和三三年一一月一五日には同旨の理由で斡旋辞退更新の申出がなされたこ
とが認められ、この認定を覆えずに足りる証拠はない。
(四) 1 前掲乙第四号証の一の(ロ)、(ハ)、成立に争いがない同号証の二
の(イ)、証人p7の証言により成立が認められる同号証の二の(ロ)によれば、
原告は昭和三二年二月四日開催の京都府営第一一回向日町競輪第四日目第五レース
に出走して七着となつたこと(原告が右レースに出走したことは当事者間に争いが
ない。)、右出走に関し社団法人京都府自転車振興会は昭和三三年一〇月九日「2
不正競走容疑関係 4背後関係不明朗関係 三〇年三月及び三二年二月向日町に於
いて疑惑を受けるようなレースをし又車券の売れ方も異常があつた」との理由を付
して原告に関するあつせん辞退更新の申出をしたことが認められ、この認定を覆え
ずに足りる証拠はない。
2 成立に争いがない乙第四〇号証、同第四一号証および同第四八号証に証人p1
0の証言を総合すれば、原告は昭和三三年一一月一五日社団法人京都府自転車振興
会理事長あてに「拝啓 時下初冬の候貴会益々御清栄の趣大慶に存じます。陳者小
生事配分忌避により六ケ月間に三本の配分しかなくその日の生活にも事欠くように
なり私自身も深く自己反省を致し二度と繰返さぬ覚悟で去る十月七日当選手会へお
願い致しましたので貴会に於かれましてもよろしく御配慮賜ります様御願ひ致しま
す。」との書面を提出して謹慎の意を表わしたが、右振興会およびその後身の近畿
自転車競技会京都府支部は容易にあつせん辞退を解除せず、昭和三八年ごろに至つ
てようやくこれを解除したこと、その際、原告は同年五月二二日付で近畿自転車競
技会京都府支部支部長あてに「御地競輪参加の節、関係者の方々に多大なる御迷惑
の念を抱かしたるが如き行為をなした事は私の不徳の至す処であり何とも申訳なき
次第であります。今後斯る行為をなした場合は如何なる処分を受けても差支えなく
今般の誓約書提出の機に更に一意専心選手道に邁致します事を誓います。何卒御寛
容賜りますよう御懇願申し上げます。上誓約致します。」との誓約書を提出したこ
とが認められ、この認定を覆えずに足りる証拠はない。
(五) 成立に争いがない乙第二号証の一、二の各(イ)、同第六号証の二の
(イ)および同第七号証の四、五の各(イ)、証人p10および同p12の各証言
により成立が認められる同第二号証の一の(ロ)ないし(ト)、証人p7および同
p9の各証言により成立が認められる同第二号証の二の(ロ)、同第七号証の二の
(ロ)、(ハ)、同号証の三の(イ)、(ロ)および同号証の四、五の各(ロ)、
証人p7の証言により成立が認められる同第六号証の一の(ロ)および同号証の二
の(ロ)ないし(二)、証人p9の証言により成立が認められる同第七号証の一の
(イ)ないし(ハ)に証人p10の証言を総合すれば、次の事実が認められ、この
認定を覆えすに足りる証拠はない。
原告は、昭和三二年四月一一日から一三日にかけて開催された淡路・相生営第一回
明石競輪第一日目第一一レース、第二日目第一〇レース、第三日目第八レースにそ
れぞれ出走したが(原告が右各レースに出走したことは当事者間に争いがな
い。)、第一日目、第二日目とも七着となり、第三日目は本命ないし対抗と目され
ていて最終周回第二コーナーで最良の位置を確保していながら結局三着に終つた。
右第三日目第八レースの原告の出走状況等に関し、社団法人兵庫県自転車振興会
は、同月一九日付で被告日自振に対し(原告は)「昭和三二年度淡路相生営明石競
輪前節(四月一一日-一三日)に参加した選手であるが第三日目(四月一三日)第
八レース一、六〇〇米A級一般競走に於で本命又は本命対抗の脚力あるものと予想
(別紙予想紙の通り)されていたに拘らず別紙コース図の如く第四周目第二コーナ
ーを過ぎてより脚力を発揮せず三着となりレース終了後一部フアンより故意に脚力
を落したと抗議の申出もあり、p11選手を管理室に召致し調査をしたが本人は脚
力一パイ走つた旨申立てるものであつた。本レースに於てはその売上において前の
七レースの売上一、三九二、三〇〇円に対し一、六六二、八〇〇円と急上昇し(配
当六九〇円)更に次の九レースには一、五四五、九〇〇円と低下した異常売上に鑑
み適中車券の大口払戻状況を穴場に連絡調査した結果別紙の如く相当数の大口払戻
の事実もありp11選手の走法に疑義多く更に追及中同選手に面会を求めたる二人
連れの男があり(一人は五〇才位の男で神戸市<以下略>居住米穀商u、今一人は
二八、九才の男で氏名不詳)その用務はp11選手に貸金の催促との事であつたの
でこの旨p11選手に告げた処、全然知らない、金を借つた事はないと否定するの
で係員立会の上面会させた処、uはp11に対しさきに三万円後から一万円貸した
金の返還を催促しp11はその金はp13から借りたと言えばuはp13だけであ
れば貸さないが君がp13と一緒に来たので君に貸したのだと論議の末、両者談合
の結果金を返えせないので金を返す迄p11選手の所持せる自転車をuが預ること
となり持ち帰つた。
この事実に対しp11について事情を聴取した結果は別紙供述書の通りであるがそ
の貸借条件については何の条件もないと申立てるのでこの間の実状をp13選手に
ついて調査したいが当時p13選手は福岡競輪出走中のため後日p13選手を召致
して調査することとしp11選手は帰郷させた。右の事実に対し関係人としてp1
3選手に出頭方を通知した処実父が出頭しp13選手は家庭の金策のため妻の実家
である熊本市に滞在中の申出があつたので更に滞在先に出頭方の通知を発した。四
月十八日に至りp13選手は実父と共に甲子園競輪場に出頭したので事情を聴取し
たが別紙供述書の通りでp11選手の借金関係は頑強に否定した。右の通りp11
選手とp13選手の供述は全く相違せるもので更に調査を要するもp11選手が他
県選手なる関係上貴会に於て御調査の上然るべく御措置願いたい。」との競輪事故
報告書(大口払戻の事実を記載した前示別紙には、百円券二〇〇枚一人、同四〇枚
一人、千円券八枚一人と記載されている。)を提出するとともに、同月二〇日付で
「(忌避理由)昭和三二年四月十三日昭和三二年度淡路相生営第一回明石競輪第三
日目第八レース一、六〇〇メートル一般競走に於いて敢闘精神欠如並に不正容疑
(レース状況)第三周目まで何等異常認められず通常の平凡なる競走形態で走行す
るも、最終回第二コーナーより走行態勢に入る様に見受けられたが後続車のスパー
トせるを認め乍ら自ら不利な位置から抜け出ようとする意志を認められず徒に凡走
して三着となる。(所見)初日選抜レースに於いて四番人気であつたが七着に凡
走、第二日目一般競走も亦七着となつた。A級一班の選手にして各班混合競走で七
着であることは全力を尺した競走を行つたとは考えられず、然るに最終回前述の如
き競走状態を以て凡走し連勝式払戻の枠より脱落した。之がために一部フアンより
故意に脚力を減殺したとの抗議があつた。(競走終了后投票所と連絡の結果該選手
を外した別記の大口投票的中車券があつた旨報告された》以上の如く第一日、二
日、三日と各日共脚力に相応しくない競走を行い、特に三日目異常投票の事実と関
連して或は故意に充分なる脚力を発揮せず競走したのではないかとの疑惑も生じて
来る処であり、予想紙にも『斗志に今一つ万全の信寄せ難い云々』と記載されてい
る程でありムラ選手として定評あるらしく特に開催回数も多くフアンの視野も洗練
されている地区でもあり競輪自体の不信を招来する憂いも考えられる。(処置)該
選手を呼んで事情聴取せるも現況不調を申述べるも敢斗精神に欠ける点厳重に訓戒
を与え帰郷せしめた。(投票券発売数比較及大口的中車券払戻状況)七レース一、
三九二、三〇〇円 八レース一、六六二、八〇〇円 九レース一、五四五、九〇〇
円 的中(五-六)一、七九八枚 配当金六九〇円 百円券二〇〇枚一人 百円券
四〇枚二人 千円券八枚一人(事后調査のため受取人の人相は確認し得ず》(場内
予想)省略」との理由を付して原告に関する配分忌避の申出をした。その後、右配
分忌避(のちにあつせん辞退と呼ばれるようになる。)の申出は明石競輪敢斗欠
如、不正競走容疑を理由に昭和四〇年一〇月二六日以降まで更新された。
(六) 成立に争いがない乙第八号証の二の(イ)、証人p9の証言により成立が
認められる同号証の一の(イ)ないし(ハ)、証人p7の証言により成立が認めら
れる同号証の二の(ロ)によれば、原告は昭和三三年一月一五日開催の千葉県営第
七回松戸競輪第一日目第一一レースに出走し四着となつたこと(原告が右レースに
出走したことは当事者間に争いがない。)、右レースに関し社団法人千葉県自転車
振興会は同年三月二九日「三三・一月松戸本命にて着外走行不良、東京p(取消)
の兄面会に来たが両者の話に疑問の点多く非常に不明朗である。」旨の理由を付し
て原告に関する配分忌避の申出をしたことが認められ、この認定を覆えずに足りる
証拠はない。
(七) そこで、被告日自振が昭和三三年五月二七日原告を特別あつせん辞退選手
に指定し、昭和三六年一月一〇日右指定を解除するまで、特別の場合を除き原告を
競走から排除したこと、右解除に際し、原告が被告日自振に対し同月二四日「私は
競輪関係諸法規を遵守し競輪選手としての体面を汚すことなく精進致します。今後
公正なる競輪の運営に支障あると御認めの節は、登録の抹消処分を受けても異議の
ないことを誓約致します。」との誓約書を提出したことは当事者間に争いがなく、
成立に争いがない乙第九号証の二および証人p9の証言により成立が認められる同
号証の一によれば、社団法人岐阜県自転車振興会は同年二月一一日被告日自振に対
し「特別斡旋辞退選手の取扱解除に伴う誓約書送付について」と題する書面を提出
したが、そこには「一月一二日付三六日振選二特一六号を以つて御通牒に係る標記
の件に関し早速当該選手を夫々弊会に招致し昨今の競輪状勢について説明し選手と
しての自覚と責任を常に認識し今後競輪選手として体面を汚すことなく精進するよ
う申し渡しました処三名共競輪界に於ける選手の責任の重大さを痛感し今日では心
身の修練に努めでいるような現状であります。小職と致しましても改心の情顕著と
認め?に本人より提出されました誓約に対し保証し今後は観察補導に最全を尽す所存
でありますれば何として宜しく御取計賜りますようお願い致します。」旨記載され
ていること、原告の提出した誓約書には原告の署名捺印と並んで社団法人岐阜県自
転車振興会の理事長の職にあつたp14が保証人として署名捺印していることが認
められ、この認定を覆えずに足りる証拠はない。
さらに、証人p9、同p8および同p7の各証言を総合すれば、昭和三三年ごろ競
輪選手は全部で約五、〇〇〇名ほど登録されていたが、そのうち特別あつせん辞退
選手に指定されたのは約五〇名位であつたこと、右約五〇名位のうち各自転車振興
会からのあつせん辞退(配分忌避)の数がもつとも多くなされていたのは原告であ
つたことが認められ、この認定を覆えずに足りる証各はない。
(八) 1 原告が昭和三八年五月開催の堺市営第一回大阪競輪第四日目(同月一
九日)第九レース、第五日目(同月二〇日)第一〇レース、第六日目(同月二一
日)第七レースにそれぞれ出走し、第四日目は三着、第五日目は八着、第六日目は
四着になつたことは当事者間に争いがない。
2 右1の第四日目第九レースについて
(1) 成立に争いがない甲第一五号証の一および同第二三号証、原告本人尋問の
結果により成立が認められる同第三一号証、証人p10および同cの各証言により
成立が認められる乙第一二号証の三、四に証人cの証言を総合すれば、右1の第四
日目第九レースは二、〇〇〇メートル(四周)A級選抜競走であつたが、原告はス
タート後三番手に位置し、第三周回には四番手となり、打鐘後は理想的好位置の二
番手として走行し、最終周回には第二コーナー出口において一気に飛び出して先頭
位置についたが、さらに第三コーナーでは急ピツチで「カケ」続け、その後第四コ
ーナーを過ぎてホーム・ストレツチ直線部(ゴール前三〇メートル付近)において
後続選手に抜かれ、ついに先頭選手と約三メートル半の差を生じて三着となつたこ
とが認められ(原告が最終周回第二コーナーから先行したことは当事者間に争いが
なく、三着となつたことも前記のとおり当事者間に争いがない。)、この認定を覆
えずに足りろ証拠はない。
(2) 前掲乙第一二号証の三、四、成立に争いがない甲第一四号証、同第一六号
証および同第二三号証、証人p10および同cの各証言により成立が認められる乙
第一二号証の二、証人p9の証言により成立が認められる同第一四号証の一の
(イ)、(ロ)に証人cの証言を総合すれば、右1の第四日目第九レースにおいて
は審判長のほかに全周走路審判員(レース状況の展開を観察するとともにレース内
容の分析を専門とする審判員)および八人の走路審判員が審判にあたつていたが、
右審判員たちは、長年にわたる審判業務の経験と感覚から(全周走路審判員である
cは昭和二六年四月一日に競輪審判員の登録を受けた。)、原告のスピードが右レ
ースの最終周回ゴール前三〇メートルラインのあたりから急に目に見えて落ちた
が、それは原告が意識的・作為的に脚力を抜きスピードを落したのではないかと疑
い、原告の走法に不自然さ・意外さを感じたことが認められ、この認定を覆えすに
足りる証拠はない。
(3) 右1の第四日目第九レースの出走選手氏名、車番および枠番が別表(二)
記載のとおりであつたことは当事者間に争いがなく、前掲乙第一二号証の二、成立
に争いがない同号証の六ないし八および同第一三号証の一、証人p10および同c
の各証言により成立が認められる同第一二号証の五、証人p7の証言により成立が
認められる同第一三号証の二および同第四五号証によれば、右第九レースにおける
予想紙の予想順位(人気)は別表(二)記載のとおりであり、現実の投票番号ごと
の投票(車券の売上)は別表(三)記載のとおりであつたことが認められ、この認
定を覆えずに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、投票番号ごとの投票順位(車券の売上順位)はI本命=三
番人気(6~1)、II本命=五番または四番人気(6~5)、III本命=対抗
(6~4)、IV本命=四番または五番人気(6~3)の順になつていて、本命=
対抗よりも本命=三番人気および本命=五番または四番人気の車券が多く購入され
ていること、原告を二着とする車券よりも原告や本命以外の選手を二着とする車券
が多く購入されていること(すなわち、2~4より2~1が、3~4より3~1と
3~5が、5~4より5~5が、6~4より6~1と6~5がいずれも多く購入さ
れている。)か明らかであるが、前掲乙第一二号証の二、同第一四号証の一の
(イ)、(ロ)、同第四五号証および甲第一六号証に証人p10および同p7の各
証言を総合すれば、近畿自転車競技会大阪府支部も被告日自振もともに、右投票
(車券購入)の状況につき、原告が二着にならないとの予想にもとづく投票が通常
より多く、異常投票であると判断したことが認められ、この認定を覆えずに足りる
証拠はない。
(4) 原告本人尋問の結果により成立が認められる甲第三一号証によれば、原告
は昭和四三年二月二七日付で弁明書(第一回)と題する書面を作成しているが、そ
こには右1の第四日目第九レースの展開につき「大阪競輪場の特質は一周五〇〇メ
ートルの長走路であるので、直線の距離が長く、また、コーナーも大きいため、先
行逃げ型の選手よりマーク追い込み型の選手の方が断然有利といわれている。この
レースに出走した選手のうち、p15選手は成績実力ともに抜群であつたが、同選
手をはじめp16、p17、p18の各選手はいずれもマーク屋として有名であ
り、これらの選手の後については絶対に良い位置はとれないと一般に言われていた
ので、自在型の私としてはこれらの選手をマークすることは諦め、先行逃げ型のp
19選手が先行するのを利用して前方へ出て最後には同選手を差し切つて入着しよ
うとの作戦を立てたに相違ない。私の現実のレース展開も第三周回第一コーナー付
近までそのようになつていたが、その付近から第二コーナー付近までの間に私の前
にp20選手が割り込んで来たため、このような順序では本命のp15選手がじつ
としているはずがなく、眼前のジヤン付近で同選手が前進して私や沢田選手を簡単
に押えてしまうであろうととつさに判断し、私は一足先に前進してp19選手を押
え込み先行態勢に入り、それから逃げにかかつた。しかし、大阪競輪場の前記特質
から追い込み型の選手に有利で、p15選手に追い抜かれてしまい、さらにその後
続者は前にp15選手という絶好の目標があることと風圧の減少というよりはむし
ろこれによつて吸い込まれるような現象によりスピードが増してp16選手にも追
い抜かれたのであろうが、私のこれまでの知識からすれば、よくもまあ三着に残れ
たものだと誇りに思つているぐらいである。私のレース展開は堂々たるもので、何
ら不明朗なところはない。なお、投票に異常が認められるとのことであるが、投票
のことなど選手の関知するところではなく、もし、選手に疑いの目を向けるのであ
つたら、私よりもむしろ後日不正レース(八百長)容疑で大阪府警に逮捕され、有
罪の確定判決を受けたp16選手に向けられて然るべきであろう。」という趣旨の
記載がなされていることが認められ、この認定に反する証拠はない。
(5) 原告本人尋問の結果により成立が認められる甲第三八号証の一、二によれ
ば、予想紙を発行している有限会社競輪研究社の代表取締役p21および取締役p
22は、昭和四二年一一月八日原告および社団法人岐阜県競輪選手会からの前記1
の大阪競輪第四日目ないし第六日目の各レースの内容分析の依頼に応じ、原告らに
対し「右各レースは当時の記録や出走選手カード等からみて異常なレースではない
と断言する。関西のフアンは特にどの選手に誰がマークするか、どの位置をとる
か、印のよい選手より悪い選手のうちでもどの選手がマークがうまいかなどレース
形態をよく見抜く玄人のフアンが多いので、別表(三)記載のような具合に車券が
売れたとしても別に異常ではない。原告が不正レースを行なつたあるいは疑惑をも
たれているというのなら非常に気の毒なことである。なお、岐阜のフアンは新人や
選手の調子をよく知つており、各地の競輪場へ団体で車券を買いに来ていたことを
覚えている。第四日目第九レースに出走したp16選手は当時強烈なマーク選手と
して近畿各地のフアンによく知られており、第六日目第七レースに出走したp23
選手は時々最終日に早目に強烈なマクリ戦法をとつたことが多く、右レースにおび
て本命選手を叩いて出る展開が示現されたことに関しては当然予想されたところで
ある。」という趣旨の話をしたことが認められ、この認定に反する証拠はない。
3 前記1の第五日目第一〇レースについて
(1) 前掲甲第三一号証、成立に争いがない同第二四号証、証人p10および同
cの各証言により成立が認められる乙第一二号証の一〇、一一によれば、前記1の
第五日目第一〇レースは二、〇〇〇メートル(四周)A級準優競走であつたが、原
告はスタート後v選手に続いて三番手の好位置で走行したが、第三周回第三コーナ
ーからv選手がw選手らの後続選手に押えられるや、原告はv選手について後退
し、最後尾となり、その後一度七番手となつたものの、再びゴール前直線部でv選
手に抜きかえされて八着となつたことが認められ(原告が八着となつたことは前記
のとおり当事者間に争いがない。)、この認定を覆えずに足りる証拠はない。
(2) 前掲甲第一四号証、同第一六号証、同第二四号証、乙第一二号証の二、一
〇、一一、同第一四号証の一の(イ)、(ロ)に証人cの証言を総合すれば、前記
1の第五日目第一〇レースにおける審判員の人員や全周走路審判員であるcの登録
年月日は前記2(2)のとおりであるが、右審判員たちは、長年にわたる審判業務
の経験と感覚から、v選手がw選手らの後続選手に押えられたとき、原告が右後続
選手の誰かに乗り換える余裕があつたのにこれをせず、v選手についてそのまま後
退し、ついに最後尾となつてしまつたことは、原告にまつたくやる気がなく、精彩
を欠いた凡走であると判断したことが認められ、この認定を覆えずに足りる証拠は
ない。
(3) 前記1の第五日目第一〇レースの出走選手氏名、車番および枠番が別表四
記載のとおりであつたことは当事者間に争いがなく、前掲乙第一二号証の二、同第
一三号証の一、成立に争いがない同第一二号証の一三ないし一五および甲第一五号
証の二、証人p10および同cの各証言により成立が認められる乙第一二号証の一
二、証人p7の証言により成立が認められる同第一三号証の三によれば、右第一〇
レースにおける予想紙の予想順位(人気)は別表(四)記載のとおりであり、現実
の投票番号ごとの投票(車券の売上)は別表(五)記載のとおりであつたことが認
められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、投票番号ごとの投票順位(車券の売上順位)はI本命=四
番人気(5~2)、II本命=対抗(5~1)、III対抗=本命(1~5)、I
V本命=三番人気(5~6)、V本命=無印(5~3)、VI対抗=無印(1~
4)、VII対抗=無印(1~3)、VIII対抗=四番人気(1~2)、IX対
抗=三番人気(1~6)の順になつていて、本命=三番人気(5~6)より本命=
四番人気(5~2)の車券が倍以上も購入されていることが明らかであるが、前掲
乙第一二号証の二、同第一四号証の一の(イ)、(ロ)および甲第一六号証に証人
p10および同p7の各証言を総合すれば、近畿自転車競技会大阪府支部も被告日
自振もともに、右投票(車券購入)の状況につき、原告が入着しないとの予想にも
とづく投票が通常より多く、異常投票であると判断したことが認められ、この認定
を覆えすに足りる証拠はない。
(4) 前掲甲第三一号証によれば、原告は昭和四三年二月二七日付で弁明書(第
一回)と題する書面を作成しているが、そこには前記1の第五日目第一〇レースの
展開につき「右レースではp24選手とw選手が強く、それ以外の選手は一格落ち
るといつたメンバー編成であるが、p24選手とw選手とではレースの技術と強引
さでp24選手の方が一枚上手であるので、私の作戦としては同選手に先着される
のはある程度やむをえないとしても(しかし、そう諦めきつたわけのものではな
く、折あらば一泡吹かせてやろうとは思つていたが)、なんとか二着までには入着
したいと思い、そのためにはp24選手のすぐ後位で廻つて流れ込みを狙いたいと
ころであるが、私の狙うところは他の選手の狙うところでもあるので、他の選手の
妨害が予想されるばかりか、私の技術ではその位置をとられてしまう公算が大きい
ので、一応p24選手のすぐ後位をとる作戦は諦めるが、その代りに、このレース
のメンバーのうちでただ一人の先行逃げ選手であるv選手の後位をとつておき、最
終周回第四コーナー付近で同選手を追い越しておけば、たとえその後p24選手に
追い越されても二着に入着することができると計算し、競走に臨んだはずである。
そして、実際の競走もこのような状況になり、私はv選手のすぐ後位に位置して
「ジヤン」に入つたが、ここでw選手が予想紙や大方の選手の見方と相異して前進
し先行逃げの態勢をとり、私がマークしていたv選手を押え込んでしまつた。ずる
ずる下るv選手に私の走路は遮断された形になつたため、私は後退するよりほかに
仕方がなくなり、最後尾となり、最終周回第二コーナーからは私より実力が上位で
あり、このレースの本命の一人であるw選手が懸命に逃げており全選手がこれを追
つているので、私としては何もなす術がなく、やつとゴールにたどりついたという
レース内容であつた。これをもつて敢闘欠如というのは私に違法行為を強要するも
のである。私は正々堂々と公明正大なレースをしたいと心がけ、常にこれを実行し
ており、何ら非難される点はない。そこで、これはあくまで私見であるが、もしこ
のレースに不審な点があつたとすれば、私よりむしろw選手にあると思う。同選手
は本命人気をp24選手と二分していながら、自他ともにその脚質とみられている
マーク追い込みと正反対の先行逃げを、しかも逃げ絶対不利のこの長走路で行な
い、五着に落ちているということはどういうことであろうか。私のレース作戦はこ
のw選手の走行によつて滅茶滅茶にされてしまつたのである。ちなみに、このレー
スにも後日不正競走(八百長)により逮捕され有罪の判決を受けたp16選手が出
走していた。本命のw選手がマーク追い込み型であるにもかかわらず先行し、その
すぐ後をp16選手がぴつたりとマークし、w選手が五着でp16選手が二着とい
うことこそ異常というべきであろう。」という趣旨の記載がなされていることが認
められ、この認定に反する証拠はない。
(5) 予想紙を発行している有限会社競輪研究社の代表取締役p21および取締
役p22が昭和四二年一一月八日原告および社団法人岐阜県競輪選手会からの依頼
に応じ前記1の大阪競輪第四日目ないし第六日目の各レースの内容分析について話
をしたことは、前記2(5)のとおりである。
4 前記1の第六日目第七レースについて
(1) 前掲甲第三一号証、証人p10および同cの各証言により成立が認められ
る乙第一二号証の一七、一八によれば、前記1の第六日目第七レースは二、〇〇〇
メートル(四周)A級優秀競走であつたこと、原告はスタート後トツプ引きのx、
y二選手を追つて好位置の三番手に位置して走行したが、打鐘後z選手やp1選手
らに抜かれ、最終周回では四番手となつたこと、そして、最終周回第二コーナー出
口から外廻りバツク直線部で原告はまくつて出たが、四着に終つたことが認められ
(原告が四着になつたことは前記のとおり当事者間に争いがない。)、この認定を
覆えずに足りる証拠はない。
(2) 前掲甲第一四号証、同第一六号証、乙第一二号証の二、同号証の一七、一
八、同第一四号証の一の(イ)、(ロ)に証人cの証言を総合すれば、前記1の第
六日目第七レースにおける審判員の人員や全周走路審判員であるcの登録年月日は
前記2(2)のとおりであるが、右審判員たちは、長年にわたる審判業務の経験と
感覚から、原告が最終周回四番手となり、第二コーナー出口から外廻りバツク直線
部でまくつて出たにもかかわらず、四着に終つたのは、第三コーナーで突然ふむ足
を休めて(車を引いて)故意にスピードを落したためであり、原告は勝利を得る意
志をまつたく放棄したものであると判断したことが認められ、この認定を覆えすに
足りる証拠はない。
(3) 前掲甲第三一号証によれば、原告は昭和四三年二月二七日付で弁明書(第
一回)と題する書面を作成しているが、そこには前記1の第六日目第七レースの展
開につき「このレースでは私とz選手が本命人気を二分しており、私は本命人気の
期待に何としてでも応えんものと、誰かを出来ればz選手に先行逃げをさせ同選手
をマークして完璧に一着を狙おうとの作戦を立てスタートしたのであるが、互いに
牽制しあつて前方に位置取りするものがなかつたので、本命の責任感からやむを得
ず私が先行位置についてしまつた。打鐘直後に中団に位置したp23選手が外を廻
りながら相当のピツチで上昇して来たので、私は外へ牽制したが、結局、私は押え
込まれてしまつた。p23選手は、はつきり言えば後続のz選手を引き出しにかか
つたのが本当の目的であつたようである。このp23選手の行動により私の先行態
勢は崩れ、最終周回第一コーナーでようやく四番手となつたが、z選手まで追い込
んで一着となることは出来ないと判断し、打鐘後のp23選手との先行争い、その
後のp1選手との競り合いで相当脚力を消耗していたにもかかわらず、第二コーナ
ーからまくりに出た。しかし、他人を引き出すつもりで懸命に逃げるp23選手の
スピードは思つたより速く、途中私が脚力を消耗していた誤算もあつたが、致命傷
は本走路の特質であるコーナーのカント(傾斜角度)が浅く遠心力で放られて無駄
な力を使う破目となり、そこをz選手に私を引きつけ外に斜行するという妨害をさ
れたことであると思う。私に不正はなく、正々堂々一着を目指して全力を尽くした
が、敗れただけであるにすぎない。」という趣旨の記載がなされていることが認め
られ、この認定に反する証拠はない。
(4) 予想紙を発行している有限会社競輪研究社の代表取締役p21および取締
役p22が昭和四二年一一月八日原告および社団法人岐阜県競輪選手会からの依頼
に応じて前記1の大阪競輪第四日目ないし第六日目の各レースの内容分析について
話をしたことは、前記2(5)のとおりである。
5 前掲甲第一四号証、同第一六号証、乙第一二号証の二、同第一四号証の一の
(イ)、(ロ)、成立に争いがない同号証の三ないし六の各(イ)、証人p10お
よび同cの各証言により成立が認められる同第一二号証の一、証大p7の証言によ
り成立が認められる同第一四号証の二の(イ)、(ロ)、同号証の三ないし六の各
(ロ)によれば、近畿自転車競技会大阪府支部は、昭和三八年五月二六日付で同競
技会本部を経由して被告日自振に対し、前記1の大阪競輪第四日目ないし第六日目
の各レースにおける原告の走法等につき「競走上の適性に欠けるほか投票面にも異
常が認められる」旨の事故競走報告書を提出するとともに、同月二五日付で「競走
上の適性欠如関係昭和三八年五月一九日より開催の大阪(住の江)競輪において下
記の如く凡退して多数フアンの期待を著しく裏切つたほか一九日(第四日目)二〇
日(第五日)の投票は異常が認められる。第四日九レース○印三、第五日一〇レー
ス△印八、第六日七レース◎印四」との理由を付して原告に関するあつせん辞退の
申出をし、右申出はその後更新されたことが認められ、この認定を覆えすに足りる
証拠はない。
(九) 1 原告が昭和三九年五月開催の富山市営第三回富山競輪第一日目(同月
三〇日)第一〇レースおよび第二日目(同月三一日)第八レースにそれぞれ出走
し、第二日目に六着となつたことは当事者間に争いがない。
2 右1の第一日目第一〇レースについて
(1) 成立に争いがない甲第二一号証、同第二五号証、証人bおよび同p25の
各証言ならびにこれにより成立が認められる乙第一五号証の五、一二、前掲甲第三
一号証を総合すれば、右1の第一日目第一〇レースは二、〇〇〇メートル(六周)
A級選抜競走であつたこと、原告はスタート後第二周回第二センターで三番手とな
りそのまま走行していたが、第五周回第一センター付近でp2選手らに抜かれて一
時五番手となり、その後前進して二番手p2選手の外側を併走していたにもかかわ
らず、最終周回ホーム・ストレツチ付近で後退し、七着になつたことが認められ、
この認定を覆えすに足りる証拠はない。
(2) 前掲甲第二一号証、同第二五号証、乙第一五号証の五、一二、成立に争い
がない甲第二七号証、乙第一五号証の一四、証人bおよび同p25の各証言ならび
にこれにより成立が認められる乙第一五号証の三、一八を総合すれば、右1の第一
日目第一〇レースの審判長を務めたbは昭和二六年四月一日に競輪審判員としての
登録を受けたものであるが、同人をはじめ当日の他の審判員たちは、長年にわたる
審判業務の経験と感覚から、原告がp2選手と併走していたにもかかわらず最終周
回ホーム・ストレツチ付近で後退したのは、同選手に競り負けたように見せかけ、
自己の脚質を無視し全能力を発揮せずにずるずる後退したためであり(右第一〇レ
ースの第五周回のラツプ・タイム《競輪場の走路を一周する時間》は二六・九秒で
あつたところ、富山競輪場における第五周回の平均ラツプ・タイムは二三・四秒で
あるので、右第一〇レースの第五周回の速度は遅い方であり、原告がp2選手との
競り合いにより脚力を消耗したとは考えられない。)、原告は競走を放棄したので
はないかと判断したことが認められ、この認定を覆えずに足りる証拠はない。
(3) 前記1の第一日目第一〇レースの出走選手氏名、車番および枠番が別表
(六)記載のとおりであつたことは当事者間に争いがなく、成立に争いがない乙第
一五号証の八の(イ)、同第一六号証の一の(イ)、証人bおよび同p25の各証
言により成立が認められる同第一五号証の六、同号証の八の(ロ)、証人p7の証
言により成立が認められる同第一六号証の一の(ロ)によれば、右第一〇レースに
おける予想紙の予想順位(人気)は別表(六)記載のとおりであり、現実の投票番
号ごとの投票(車券の売上)は別表(七)記載のとおりであつたことが認められ、
この認定を覆えすに足りる証拠はない。
右認定事実によれば、原告以外の選手が一着になるとの予想のもとに購入された車
券のうち原告を二着と予想したものよりも原告以外の選手を二着と予想したものの
方が多数購入されていること(すなわち、投票番号1~4より1~6、1~3、1
~2が、2~4より2~6、2~1が、5~4より5~6、5~3、5~1が、6
~4より6~1、6~5がいずれも多数買われている。)が明らかであるが、前掲
乙第一五号証の三、六に証人p25、同p9および同p7の各証言を総合すれば、
中部自転車競技会富山県支部も被告日自振もともに、右投票(車券売上)の状況に
つき、原告が入着しないとの予想にもとづく投票が通常より多く、異常投票である
と判断したことが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
(4) 前掲甲第三一号証によれば、原告は昭和四三年二月二七日付で弁明書(第
一回)と題する書面を作成しているが、そこには前記1の第一日目第一〇レースの
展開につき「このレースでは私とp2選手が本命人気を二分していた。私が出走前
に立てた作戦の中心は、最終的には逃げ込みを狙うp26選手の動きに注視しつ
つ、一方では私をマークすると思われるp2選手にマークされないように警戒して
走行し、最後にはp26選手を押えて逃げきることにあつた。しかし、実際には、
p26選手がまつたく先行せず、p2選手とともに後方に位置したため、他の選手
も互いに牽制し合い先行するものがいないので、本命人気の一方の旗頭に立つてい
た私は、レースを成立させあるいはトツプ引きに逃げきられないようにしなければ
ならない責任感・義務感から前方へ出て行つた。そして、第五周回第一センター付
近に至るや、今まで最後尾を走行していたp26選手とp2選手が同時にスパート
し、トツプ引きの後に続いたので私は『カブ』されてしまい、私の前には私と同じ
くp26選手らに押えられたx選手がいてずるずる後退するので、私も後方へ下げ
られてしまつた。その後、私はただちに外側から追い上げ(第五周回バツク・スト
レツチ付近の打鐘時には全選手のピツチが相当に上つているので、このような場合
に外側から追い上げることは相当脚力を消耗し不利であつたが、私はこの不利を承
知のうえで追い上げた。)、p2選手と併走し競り合つたのであるが、残念ながら
競り負けてしまい、末脚を失い、ずるずると後退し、ついに七着に終つてしまつた
のである。私は不明、不正なレースはしていない。積極的に勝とうとして堂々と勝
負をしたが、敗れた。ただそれだけのことである。むしろ、p26選手とp2選手
が作戦レースの展開を狙つていたように思われて仕方がない。それはともかく、レ
ースの結果はレース展開によつて生まれるものであり、本競輪開催の最終日の優勝
結果によると、本命人気で第一日に一着となつたp2選手は七着、第一日には問題
とされていなかつたx選手が一着、p27選手が二着、トツプ引きのp28選手が
三着になつているのである。」という趣旨の記載がなされていることが認められ、
この認定を覆えすに足りる証拠はない。
3 前記1の第二日目第八レースについて
(1) 前掲甲第二五号証、同第三一号証、成立に争いがない同第一八号証の二、
同第二二号証、同第二六号証、乙第一五号証の一六、証人bおよび同p25の各証
言ならびにこれにより成立が認められる乙第一五号証の九ないし一二を総合すれ
ば、前記1の第二日目第八レースは二、〇〇〇メートル(六周)A級準優競走であ
つたこと、原告はスタート後終始p3選手をマークして第三周回三番手に位置し、
その後変化なく走行したが、第五周回第四コーナー通過後p3選手がp4選手をか
わし先行態勢に入つたところ、原告はp3選手に続かず、p4選手について内側に
進路をとつたため、後方から続く他の選手に包囲されて六着となつたこと(原告が
六着になつたことは前記のとおり当事者間に争いがない。)が認められ、この認定
を覆えすに足りる証拠はない。
(2) 前掲甲第二二号証、同第二五号証、同二六号証、乙第一五号証の九、一
一、一二、成立に争いがない同号証の一五の(イ)、証人bおよび同p25の各証
言ならびにこれにより成立が認められる同号証の一五の(ロ)を総合すれば、前記
1の第二日目第八レースにおいても第一日目第一〇レースと同じくbが審判長を務
めたが、同人をはじめ当日の他の審判員たちは、長年にわたる審判業務の経験と感
覚から、原告がマークしていたp3選手が第五周回第四コーナー通過後にp4選手
をかわして先行態勢に入つたにもかかわらず、原告がp3選手に続かず、p4選手
について内側に進路をとつたことは原告が故意にそうしたものであつて、入着する
意志をもつていなかつたためであると判断したことが認められ、この認定を覆えす
に足りる証拠はない。
(3) 証人p9の証言により成立が認められる乙第一六号証の二の(イ)ないし
(ヌ)によれば、前記1の第二日目の各レースの車券の売上高が別表(八)記載の
とおりであつたことが認められ、この認定に反する証拠はない。右認定の事実によ
れば、右第二日目の車券の売上高は原告が出走した第八レースにおいて上昇し、第
九レースにおいては下降していることが明らかであるが、証人p9、同p10、同
p8、同p7および同p6の各証言を総合すれば、競輪の競走は通常一開催を六日
間とし、毎日一〇レースを行ない、競輪選手は過去の成績によりA級(上級)とB
級(下級)に格付されているが、毎日のレースはB級、A級の順で、しかも第一レ
ースより第一〇レースまで順次興味がたかまるように番組が編成されていること、
過去の実例につき被告日自振が統計をとつたところによれば、フアンの投票すなわ
ち車券の売上は毎日第一レースから第一〇レースまで回を追つてその売上高が上昇
していくのが通常であるが、例外的に車券の売上高が途中で異常に上昇し、その後
また下降するという場合があり、これを異常売上と呼んでいるが、その割合は全体
の三ないし四%見られること、その異常売上の原因としては、特別に興味のわく番
組が途中のレースに組まれていたり、天候や汽車の時刻等の関係からフアンが帰り
を急ぎ最終レースを待たずに、途中のレースで多数の車券を買うといつた場合のほ
か、いわゆる八百長などの不正が途中のレースに仕組れているような場合が考えら
れること、被告日自振は前記1の第二日目の車券の売上状況は異常売上であり、不
正競走の容疑によるものではないかと判断したことが認められ、この認定を覆えす
に足りる証拠はない。
(4) 前掲甲第三一号証によれば、原告は昭和四三年二月二七日付で弁明書(第
一回)と題する書面を作成しているが、そこには前記1の第二日目第八レースの展
開につき「このレースでは私とp2選手が本命人気を二分しているが、私はこのレ
ースに出走したメンバーのうち早駈といわれ、何が何でも逃げるタイプのp3選手
を直かにマークしてゴール寸前まで風圧を避けて力をためておき、p2選手が追い
込みに入る一歩前に新人の甘さのあるp3選手を押えて先頭に立ち逃げきる作戦を
立てていたと思う。さて、レースは私の予想と作戦どおりに進んだが、p3選手も
私の作戦と似た作戦で、たまたま前を走つていたp4選手を利用しようと思つたの
かp3選手にしては珍しく打鐘後四コーナーを廻つても一向に先行する様子が見ら
れなかつた。そこで、私はこの競輪場が一周三三三メートルの短走路であるところ
からこのまま三番手で廻つたのでは万一前二者を外から追い抜けないおそれがある
一方、p3選手は新人の甘さがあるので私が内側から競りかければ容易にその位置
を明け渡させることができると確信したので、内側からp3選手をはね上げに行つ
たところ、計算どおりに同選手は私にその位置を明け渡した。これにより私の当初
の作戦は一応軌道に乗つたわけであるが、たまたま先頭にいたp4選手は追込み差
し型の選手であり逃げが不得手であつたためかピツチがあまり上がらなかつたの
で、p3選手は私に外へ放り出されたその勢いで先頭のp4選手を『カブ』せて先
行逃げの態勢に入つてしまうという思わぬ状態になつてしまつた。しかし、私が内
をついてp3選手を放り出しに行つたことがこのときのもつとも合理的な方法であ
つたことは、p29選手がp3選手の後位につかずに私をマークして来たことだけ
からしても明白である。しかし、たまたまp4選手が追い込みの脚質であつたため
かピンチがそれほど上がつていなかつたことがp3選手やp2選手に幸いし、私や
p29選手に災いした形となり、p4選手が私の命取りとなり、私は動きがとれな
くなつてしまつたのである。私が故意にすなわち意識的にインにコースをとつたこ
とは間違いないことであるが、それは負けるためにではなく、勝つためにこそとつ
た行為であり、ただ途中から計算どおりにいかなかつたため後続車に『カブ』され
たにすぎないのである。私には不正などまつたくない。
」という趣旨の記載がなされていることが認められ、この認定を覆えすに足りる証
拠はない。
4 前掲乙第一五号証の三、九、成立に争いがない同第一七号証の一、証人p25
および同bの各証言により成立が認められる同第一五号証の一、二、証人p25の
証言およびこれにより成立が認められる同第一七号証の二によれば、中部自転車競
技会富山県支部は、昭和三九年六月二七日付で同競技会本部を経由して被告日自振
に対し、前記1の第一日目および第二日目の各レースにおける原告の走法等につぎ
不正競走容疑関係を理由に事故競走報告書を提出するとともに、同月一二日付で右
と同じ理由のもとに原告に関するあつせん辞退の申出をし、その後も右申出を更新
したことが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
(一〇) 原告が昭和四一年六月一二日大垣競輪場内において競輪選手p5の左頬
を殴打したことは当事者間に争いがない。
原告本人尋問の結果により成立が認められる甲第三七号証および同第三九号証によ
れば、原告がp5選手の左頬を殴打したのは、同人が同人のアリバイとして被告日
自振に対し一週間位原告のところへ行つて遊んでいた旨述べたことに対し、原告が
被告日自振から取調べを受けたので、何故そのようなことを述べたのかp5選手に
会つて事情を確めようと思い、原告が大垣競輪へ出場していたp5選手を訪ね、同
競輪場の管理室において、中部自転車競技会岐阜県支部の職員や競輪選手p30ら
二、三名の立会いのもとに、p5選手に会つて前記事実に関し質問したところ、同
選手がぶつきらぼうに知らない旨を答えたため、原告が興奮してp5選手の左頬を
平手打ちしたものであることが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
(一一) 証人p7の証言によれば、別表(九)記載のレースには原告が出走した
が、いずれも異常売上の現象があつたことが認められ、この認定を覆えすに足りる
証拠はない。
以上(一)ないし(二)に認定した事実にもとづいて原告に本件登録規則二一条七
号の事由があつたかどうかを検討する。
本件登録規則二一条は、競輪選手の登録消除事由として七つの事由を掲げている。
すなわち、一は「第五条に規定する届出を怠り、または虚偽の届出をしたとき」と
いうものであり、二は「不正な方法により選手資格検定または選手登録更新を受け
たことが明らかになつたとき」、三は「競走に関し不正な行為をしたとき」、四は
「競走の成績が不良であるとき」、五は「身体に故障を生じ競走の能力を欠くに至
つたと認められるとき」、六は「正当な理由がないのに一年以上引き続き競輪に出
走しなかつたとき」、七は「前各号に掲げるもののほか、公正かつ安全な競走を行
なうに不適当と認められる理由があるとき」というものである。ところで、本件登
録規則二一条の二は「選手資格検定および選手登録更新検定の方法および合格基準
ならびに選手登録の消除の方法および基準については、自転車競技法第一二条の一
八第一項〔業務方法書〕の規定により日本自転車振興会が通商産業大臣の認可を受
けて定める業務の方法による。」と規定し、これを受けて本件業務規程八七条は
「本会は、選手が次の各号の一に該当するに至つたときは、登録規則第二一条の規
定に基づき、その登録を消除する。」として一五の事由をあげている。すなわち、
一は「登録規則第五条に規定する届出を怠り、または虚偽の届出をしたとき」、二
は「不正な方法により選手資格検定または、更新検定を受けたことが明らかになつ
たとき」、三は「男子B級および女子選手にして、各級別審査期より過去三期間
(出走回数六回以下の期間は含まない)の級別審査対象成績がともに三・八点以下
となり、別に定める三回の審査のいずれにおいても不合格となつたとき、およびこ
の審査を受けなかつたとき」、四は「本会の指定する医師の診断により、身体の故
障により競走能力を欠くに至つたと認められるとき」、五は「正当な理由がないの
に一年以上引き続いて競輪に出走しなかつたとき」、六は「競走に関し、不正協定
の申し込みをなし、またはその協定を受諾し、もしくはその協定を実行したと
き」、七は「競走に関する不正な行為について、謀議し、または不正な行為の申し
込みを受けてこれを受諾し、もしくは実行したとき」、八は「競走に関する不正な
行為の申し込みまたは受諾について仲介し、もしくは申し込み、受諾、または実行
を幇助したとき」、九は「競走に関し、不正の目的をもつて、他人と連絡し、また
は他人に対し、情報を提供したとき」、一〇は「競走に関し、不正の目的をもつ
て、他の選手に対し、暴行し、脅迫し、または財物その他の利益を与え、もしくは
与えることを約束したとき」、一一は「前号の場合において、財物その他の利益を
受け、または受けることを約束したとき」、一二は「競走において、不正の目的を
もつて自己の全能力を発揮せず、または他の選手の全能力を発揮させなかつたと
き」、「三二は「不正の目的をもつて、他の選手の競走を妨害、その他の方法によ
り不利にし、または有利に導いたときし、一四は「甚だしく選手の体面を汚す行為
をしたとき」、一五は「前各号に掲げるもののほか、公正かつ安全な競走を行なう
に不適当と認められる理由があつたとき」というものである。右業務規程八七条一
号は本件登録規則二一条一号と、右八七条二号は右二一条二号と、右八七条五号は
右二一条六号とそれぞれ同じ事由であり、右八七条三号は右二一条四号を、右八七
条四号は右二一条五号のそれぞれ認定基準を定めたものであり、右八七条六号ない
し一三号はいずれも右二一条三号にいう競走に関する不正行為の内容を具体化した
ものであり、右八七条一四号、一五号は右二一条七号に関するものとみることがで
きる。ところで、成立に争いがない乙第二一号証および同第二五号証の各一、二な
らびに同第二二号証、証人p7の証言により成立が認められる同第二三号証および
同第二四号証の一ないし一七、証人p6および同gの各証言ならびに被告日自振代
表者尋問の結果を総合すれば、競輪は公営賭博としての性格をもつものであり、一
瞬のうちに多額の金銭の得喪が決せられるため、不審な走行が行なわれた場合には
多数のフアンが激昂し場内が激発する危険性のあるものであること、競輪が発足し
た昭和二四年から昭和四二年までの間に全国で紛争事件は一五四件、騒擾事件は一
四件発生したが、そのうち選手の責に起因するものは紛争事件が一〇一件、騒擾事
件が一二件と大半を占めていること、なかでも人気選手の凡走(着外)や「チギレ
レース」等に起因するものが紛争事件で七七件、騒擾事件で六件ともつとも多いこ
とが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はないところ、右事実を本件登録規
則二一条および本件業務規程八七条の規定の仕方に合わせ考えれば、本件登録規則
二一条七号にいう「公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認められる理由がある
とき」とは競輪競走の公正安全な実施の障害となる場合を広く指し、これには同条
三号あるいは四号に準ずるような場合、すなわち、同条三号あるいは四号に該当す
ると断定することはできないが、右に該当するのではないかとの合理的な疑いがあ
る場合、競走の態度にしばしば不審な点がみられる場合、甚だしく選手の体面を汚
す行為をした場合なども含まれると解するのが相当である。
そこで、右のような観点から前記(一)ないし(二)に認定した事実をみるに、前
記日ないし(七)に認定したように、原告は各地の自転車振興会からあつせん辞退
(配分忌避)の申出を受け、昭和三三年五月二七日から昭和三六年一月一〇日まで
は被告日自振から特別あつせん辞退選手に指定されて特別に原告の参加を希望する
競輪施行者の場合を除き競走から排除されていたこと、前記(八)および(九)に
認定したように、昭和三八年五月開催の大阪競輪および昭和三九年五月開催の富山
競輪において原告はいずれも審判員たちからみて不審に思われる走行をして着外に
なつたのみならず、異常投票や異常売上の現象もみられたこと(なお、前記(八)
2(4)、同3(4)、同4(3)、(九)2(4)、同3(4)において認定し
たように、原告は右大阪競輪および富山競輪の各レースにおける原告のレース展開
につき、勝利を得る意志をもつて全力を尽くしたのであるが作戦上の失敗等により
結果的に不成績に終つたにすぎないものである旨をるる記載した弁明書を作成して
いるのであるが、次に述べるとおり、いずれも各レースにおける審判員たちの不審
感ないし疑惑を解くに十分でない。まず、大阪競輪第四日目第九レースにおける原
告のレース展開についてであるが、証人cの証言によれば、大阪競輪場は一周五〇
〇メートルの長走路であるが、走路の幅員が他の一周五〇〇メートルの走路をもつ
競輪場のそれよりも狭いため必ずしも追い込み型の選手に有利であるとはいえない
ことが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はなく、結局、原告が最終周回第
四コーナーを過ぎてゴール前三〇メートル線付近まで先頭を維持していながら、右
三〇メートル線付近からそのスピードが目に見えて落ちたことに対する弁明が十分
でないといわなければならない。大阪競輪第五日目第一〇レースにおけるレース展
開について、原告はマークしていた先行逃げ型のv選手がw選手らの後続選手らに
押えられたので、原告もv選手について後退するよりほかに仕方がなかつた旨弁明
しているのであるが、長年にわたる審判業務の経験と感覚から審判員たちは原告が
w選手らの後続選手のうちの誰かに乗り換える余裕があつたのにこれをしなかつた
ものであると判断しており、原告の弁明をもつてしても右審判員たちの判断が恣意
的ないし不合理なものであることを認めさせるに十分でない。
大阪競輪第六日目第七レースにおけるレース展開について、審判員たちは原告が最
終周回第三コーナーで突然ふむ足を休めて故意にスピードを落したものであると判
断したものであるところ、原告は大阪競輪場のコーナーの傾斜角度が浅く遠心力で
放られて無駄な力を使い、そこをz選手に原告を引きつけ外に斜行するという妨害
をされたことが致命的な敗因である旨弁明しているが、証人cの証言によれば、審
判員たちからみてz選手による妨害は認められなかつたというのであり、原告の弁
明をもつてしても審判員たちの判断が恣意的であることを認めるに十分でない。次
に、富山競輪第一日目第一〇レースにおけるレース展開について、審判員たちは原
告がp2選手に競り負けたように見せかけ自己の脚質を無視し全能力を発揮せずに
ずるずる後退したものであると判断したものであるところ、原告はp2選手との併
走に脚力を消耗し残念ながら競り負けたものである旨弁明しているが、右レースに
おける第五周回のラツプ・タイムは二六・九秒であつて富山競輪場における第五周
回の平均ラツプ・タイムが二三・四秒であることは前記のとおりであるから、原告
の弁明はピツチの遅いレースで脚力を消耗したという点に不自然さがあり、審判員
たちの判断が恣意的であることを認めるに十分でない。富山競輪第二日目第八レー
スにおけるレース展開につき、審判員たちは原告がマークしていたp3選手が第五
周回第四コーナー通過後に先行態勢に入つたにもかかわらず、同選手に原告が続か
ずp4選手について故意に進路を内側にとつたものであると判断したものであると
ころ、原告はマークしていたp3選手が一向に先行しないので内側から同選手に競
りかければ同選手は新人の甘さがあるため容易にその位置を明け渡させることがで
きると考え、意識的にそのような進路をとつた旨弁明しているが、p3選手にその
位置を明け渡させてもその前には追込み差し型のp4選手がいろというのであるか
ら、第五周回の第四コーナーという時点で故意にp4選手の後につくという点に不
自然さが感じられ、原告の弁明をもつてしても審判員たちの判断が恣意的であるこ
とを認めるに十分ではないといわなければならない。もとより競輪の競走はスピー
ドを競うものであり、風圧の影響、選手同士のかけひき、選手の体調等々によりレ
ースの展開が微妙な影響を受け、予期せぬ結果を生む可能性があることは弁論の全
趣旨およびこれにより成立が認められる甲第四八号証によつて認められるところで
あるが、証人c、同bおよび同fの各証言に弁論の全趣旨を総合すれば、競輪審判
員はたえず迅速適確な判断に習熟するよう努力を重ねており、レースの実施にあた
つては多数の審判員がそれぞれの部署・立場からレースの経過を観察しこれを記録
するように組織されており、不審や疑惑のある走行については審判員たちが合議を
行ない、審判長が判定していることが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠は
ないので、長年審判業務にたずさわり、豊富な知識と経験を有する審判員たちがあ
る走行につき不審や疑惑を抱いた場合には、それが恣意的であることを認めるに足
りる特段の事情が認められないかぎり、これを尊重するほかはない。以上要する
に、前記大阪競輪および富山競輪の各レースに関する審判員たちの不審感ないし疑
惑が恣意的であることは原告の詳細な弁明によつてもこれを認めるに十分でなく、
右不審感ないし疑惑は解消されるに至らないものというべきである。さらに、前記
(八)2(5)、同3(5)、同4(4)において認定したように、予想紙を発行
している有限会社競輪研究社の代表取締役p21および取締役p22は昭和四二年
一一月八日原告らに対し前記大阪競輪における各レースは異常なレースではないと
断言する旨述べているのであるが、右p21やp22が前記大阪競輪における審判
員たちよりもレースの展開や走法に関しより深い知識や洞察力をもつているもので
あることを認めるに足りる証拠はなく、右p21らの供述をもつてしても前記大阪
競輪における審判員たちの判断が恣意的であることを認めるに十分でない。)、そ
して、近畿自転車競技会大阪府支部や中部自転車競技会富山県支部から競輪事故報
告書が提出されるとともに原告に関するあつせん辞退の申出がなされたこと、前記
(10)で認定したように原告が暴力を振つたこと、前記(二)で認定したように
原告が出走した多くのレースにおいて異常売上の現象が認められたことを総合すれ
ば、原告には不正競走をしたのではないかとの合理的な疑いがあり、競走態度にも
しばしば不審な点がみられ、しかも選手の体面を汚す行為にも及んでいるので、本
件登録規則二一条七号にいう「公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認められる
理由があるとき」にあたると解するのが相当である。
してみれば、本件登録消除処分は本件登録規則二一条七号にもとづいてなされたも
のであつて、実体上は適法というべきである。
五 本件登録消除処分の手続上の適否
原告は本件登録消除処分の手続上の違法事由を種々主張するので、順次検討する。
(一) 弁明の機会を与えなかつたとの主張について
原告は、被告日自振が本件登録消除処分をする前に原告に対しまつたく弁明の機会
を与えなかつたが、この点において、同処分は違法である旨主張する。
しかしながら、成立に争いがない乙第四六号証、原告本人尋問の結果により成立が
認められる甲第三二号証、証人p31の証言により成立が認められる同第三三号
証、証人p9、同p7および同p31の各証言を総合すれば、被告日自振の業務第
二部選手第二課の課長その他の職員は、本件登録消除処分をするまでの間に昭和四
〇年八月六日、昭和四一年一月一三日、昭和四二年六月二日の三回のはかあと二、
三回原告に会い、被告日自振において疑惑を抱いたレースの名前等を告げるととも
に原告の弁明を聴取したこと、とくに右昭和四一年一月一三日には原告の供述調書
が作成されていることが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
してみれば、原告の前記主張は失当である。
(二) 約二羊間漫然とあつせん保留を続けたとの主張について
原告は、被告日自振が本件登録消除処分をする前約二年間にわたり漫然と本件あつ
せん保留を続けたが、この点において同処分は違法である旨主張する。
被告日自振が約二年間にわたり本件あつせん保留をしていたことは前記認定のとお
り当事者間に争いがない。しかしながら、競輪選手の登録消除処分をする前に必ず
あつせん保留をしなければならない旨を定めた規定は存在せず、あつせん保留は登
録消除処分の必要的な前置手続とはいえないので、あつせん保留の適否が直接登録
消除処分の適否につながることはないと解すべきである。
してみれば、本件あつせん保留の適否について判断するまでもなく、原告の前記主
張は失当である。
(三) 具体的事実を認定しないまま本件登録消除処分を行なつたとの主張につい

原告は、被告日自振が具体的事実を認定しないまま本件登録消除処分を行なつた
が、この点において同処分は違法である旨主張する。
しかしながら、成立に争いがない乙第三九号証に証人p9および同p7の各証言を
総合すれば、被告日自振は本件登録消除処分をするにあたり本件業務規程の定める
ところに従い登録消除審議委員会の決定にもとづきこれをしたものであるが、同委
員会においては本訴において被告らが本件登録消除処分の具体的理由として主張し
ている事実(被告らの主張三(七)の事実)の概要が認定され(とくに、右三
(七)2(1)および三(七)3(1)の事実についてはある程度詳細に)、この
事実を総合すれば原告には公正かつ安全な競走を行なうに不適当な事由があつたと
認められるとして、原告の登録を消除する旨の結論を出していることが認められ、
この認定を覆えすに足りる証拠はない。
してみれば、被告日自振は具体的事実を認定しないまま本件登録消除処分をした旨
の原告の前記主張は失当である。
(四) 本件登録消除処分の通知にあたり処分理由該当事実を告知しなかつたとの
主張について
原告は、被告日自振が本件登録消除処分を原告へ通知するにあたり登録消除理由に
該当する事実をまつたく告知しなかつたが、この点において同処分は違法である旨
主饗する。
しかしながら、競輪選手の登録消除処分を当該競輪選手へ告知するにあたり、その
処分通知書に登録消除理由に該当する事実を記載するとかその他の方法により右事
実を告知することを義務づけた規定はなく、また、登録消除処分は競輪選手の身
分・資格を剥奪する不利益処分であるが、一般に、不利益処分の告知にあたつては
被処分者に処分理由に該当する事実を告知しなければならないという法理も存在し
ない。
してみれば、原告の前記主張も失当である。
以上のとおり、原告が本件登録消除処分の手続上の違法事由として主張するところ
のものはすべて失当であるから、本件登録消除処分は手続上も適法である。
六 本件あつせん保留の適否
被告日自振が昭和四〇年八月六日以降昭和四二年七月二六日付で本件登録消除処分
をするまで約二年間にわたり原告に対し競輪出場のあつせんを保留していたこと
(本件あつせん保留をしたこと)は、前記認定のとおり当事者間に争いがない。
被告らは、本件あつせん保留は本件業務規程一二六条一項三号にもとづいてしたも
のである旨主張する。
右一二六条一項は「本会は、選手に次の各号の一に該当する事由が生じたときは、
それぞれの期間当該選手に対する出場あつせんを保留することができる。」と規定
し、その三号において「第八七条の規定に該当するおそれがあつて本会がその調査
を開始したときは、一月以内においてその調査中および審議中の期間。ただし、当
該選手の参加が甚だしく競輪の公正安全を害すると認められるときは、これを延長
することができる。」と規定していた。したがつて、右条項号によりあつせんを保
留することのできる期間は、原則として一月以内であり、例外的にその期間を延長
することができるようになつていたものである。右延長の回数や期間についてはと
くにこれを定めていなかつたので、解釈上これを制限すべきかどうかが問題となり
うるわけであるが、その点はさておき、少なくとも期間の延長が許されるためには
(1)登録消除事由の存否につき調査および審議を継続する必要があり、(2)当
該選手を競輪に参加させることが甚だしく競輪の公正安全を害すると認められる場
合でなければならないのである(なお、その後昭和四二年一二月一八日に右一二六
条一項三号は改正され、「第八七条第一項の規定に該当するおそれがあつて、本会
がその調査を開始したときは、三月以内において、その調査中および審議中の期
間。ただし、やむを得ない事由があると認められるときは、その期間を延長するこ
とができる。この期間の延長は、通じて二月をこえることができない。」こととな
り、同条項号にもとづくあつせん保留の期間は最大限五月となつた。)。
そこで、本件あつせん保留につき右に述べたような観点からその適否を検討する
に、前記四(八)5、四(九)4および五(一)で認定した事実に前掲乙第一二号
証の一ないし八、一〇ないし一五、一七および一八、同第一四号証の一ないし六の
各(イ)、(ロ)、同第一五号証の一ないし三、五、六、八の(イ)、(ロ)、九
ないし一二、一四、一五の(イ)、(ロ)、一八、同第一七号証の一、二、同第四
六号証、甲第三三号証、同第三三号証、成立に争いがない同第一号証、乙第一二号
証の九、一六、二〇ないし二三、同第一五号証の七、一六、一七の(イ)、証人p
10および同cの各証言により成立が認められる同第一二号証の一九、証人p25
および同bの各証言により成立が認められる同第一五号証の四、一三、一七の
(ロ)、証人p9、同p7および同p31の各証言を総合すれば、次の事実が認め
られ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
被告日自振は、昭和三八年五月三〇日ごろ近畿自転車競技会を経由して同競技会大
阪府支部より同月開催の堺市営第一回大阪競輪第四日目ないし第六日目の各レース
における原告の走法等に関する事故競走報告書をレース経過表その他の添付書類と
ともに受領し、そのころ右大阪府支部より原告に関するあつせん辞退の申出を受
け、また、昭和三九年七月四日ごろ中部自転車競技会を経由して同競技会富山県支
部より同年五月開催の富山市営第三回富山競輪第一日目および第二日目の各レース
における原告の走法等に関する事故競走報告書を審判長競走評その他の添付書類と
ともに受領し、そのころ右富山県支部より原告に関するあつせん辞退の申出を受け
た。その後、昭和四〇年六月ごろ大阪で暴力団に関係したいわゆる互久楽会事件な
るものが発生し、不正競走の容疑で数名の競輪選手が逮捕されたが、近畿自転車競
技会より原告もその捜査線上にあるのではないかとの連絡が被告日自振へなされ
た。そこで、被告日自振では同年八月六日原告を呼び、前記大阪競輪に関する不正
競走容疑等について説明を聞くとともに、あつせんを保留する旨を告げた。その後
二、三度被告日自振と原告との間に接触があり、昭和四一年一月一三日には原告の
供述調書が作成された。被告日自振において競輪選手のあつせん保留や登録消除事
務の主管課である業務第二部選手第二課の課長をしていたp9は、いろいろ事情を
調査した結果、同年三月ごろには原告に対する不正競走の容疑が非常に濃いので原
告を再び競輪へ参加させることは危険であると判断し、原告が自主的に登録消除の
申請をするよう勧告した方がよいとの結論に達し、競輪選手の団体である日本競輪
選手会に相談をし、同選手会は岐阜県競輪選手会を通して何度となく自主的に登録
消除の申請をするよう原告へ勧告したが、原告はこれに応じなかつた。同年八月一
五日付で被告日自振は原告に対しあつせん保留延長通知を出した。同年一一月被告
日自振の業務第二部選手第二課長がp9からp7に代つたが、その際p7はp9か
ら原告については登録を消除することになつているのでそのように処置して欲しい
旨引継ぎを受けた。p7は昭和四二年一月ごろまでの間に引継ぎを受けた資料を検
討したり、実情を調べた係の職員の話を聞いたり、あるいは関係の自転車競技会へ
問い合わせをするなどして事案の把握に努めていたが、日本競輪選手会の西事務局
長より、同選手会の方からも原告へ自主的に登録消除の申請をするよう勧告をして
いるが、新しく被告日自振の業務第二部選手第二課長になつたp7の方からも勧告
をして欲しい旨の話もあつたので、同年二月二一日岐阜県へ赴いた。しかし、原告
はp7との会合に出度せず、原告の父p32が出席した。席上、p7は被告日自振
の方で疑惑を抱いているレースの内容について説明するとともに、原告は競輪選手
として不適格であるからやめて欲しい旨を伝えた。その後数度、原告が被告日自振
を訪れたりあるいは被告日自振の方で原告を呼んだりして、p7と原告との間に接
触がもたれ、p7から自主的登録消除申請の勧告がなされたが、原告はこれに応じ
なかつた。ところで、被告日自振においては、同年一月ごろから被告日自振の理事
のほか全国競輪施行者協議会、日本競輪選手会および自転車競技会からそれぞれ推
せんを受けた者を委員とする選手資格審査会なるものを作り、競輪選手の登録を消
除するにあたり消除事由の存否に関し専門的知識と判断が必要である場合には右審
査会の審査を経るようにしようとの動きが具体化し始め、同年四月初めごろ本件業
務規程の改正についての認可申請をし、同年六月ごろ通商産業大臣の認可を受け
た。そして、同月二四日原告の登録消除に関し選手資格審査会の審査にかけられ、
登録消除相当の結論が出され、さらに、同年七月二六日登録消除審議委員会が開か
れ、原告の登録を消除すべきであるとの結論が出され、本件登録消除処分がなされ
るに至つた。
以上の事実が認められる。
次に、成立に争いがない甲第四六号証によれば、原告とほぼ同じ時期に被告日自振
よりあつせんを保留され、原告と同じく約二年間にわたりあつせん保留の期間を延
長されていたaが東京法務局長に対し人権擁護の申立てをしたところ、同局長は調
査のうえ、あつせん保留の期間が不相当に長く、競輪選手の生活上の地位を不安定
にし生活権を侵害しているが、これは人権上も問題であるとして被告日自振の業務
第一部長らにその旨説示をしたこと、この点に関し、法務省人権擁護局長p33
は、昭和四二年八月一八日開かれた第五六回国会衆議院商工委員会において、本件
業務規程一二六条一項三号に「八百長をした疑いがあつて日本自転車振興会が調査
を開始したときは、一月以内においてその調査中及び審議中の期間その当該選手に
対する出場あつせんを保留することができる、なおその保留期間は一カ月以内であ
る。そういうふうに規定をいたしまして、保留期間というものは一カ月であるとい
うことを明らかにしておるわけであります。なお、ただし書きがついておりまし
て、この期間を延長できるという旨を規定しておりまして、しかもその延長期間に
つきまして制限する規定はございませんけれども、右の本文の規定の趣旨からいた
しますと、調査及び審議に通常要する以上の期間を保留することは妥当でない、こ
ういうふうに考えるわけであります。したがいまして、本件の場合、振興会におき
まして約二年もの間保留期間を延長した、そしてその二年の間におきまして三回程
度本人から事情を聞きましてまた警察などから情報を集めたほか、関係者、選手一
名につきまして事情を聞いた。そういう程度であることがわかりましたのでありま
すが、振興会は本人から結論を早く出すようにという要望があつたにもかかわら
ず、同人が自発的にやめるというようなことな期待していたらしくて、結論を出さ
ないままで放置しておいたということが認められたわけであります。これは先ほど
も述べましたように、この選手をしまして不当に長期間に不安定な状態に置いたと
いうことになりまして、生活権が侵害されておる、こういうふうに考えられました
ので、東京法務局におきまして振興会の業務第一部長らに対しまして右の点を説示
いたした次第でございます。」と述べていること、また、本件あつせん保留の期間
が約二年間にも及んだことについて、同日の衆議院商工委員会において、通商産業
省重工業局長p34は「ただ、二年間こういう状態でまいつたということは、私
は、結果的に見まして非常によろしくない、むしろ、登録の消除なり何なりするな
らするで、ある時期で決断をすべきではなかつたのか、こういう感じがいたしまし
て、その点は遺憾に存じておりますが、現在の制度でまいりますと、非常に不正な
行為をした、競技法違反といいますか、そういうたてまえのところまでいつておる
ということのほか、公正かつ安全な競走を行なうに不適当と認められる理由がある
場合、現在の認可を受けました業務方法書の事項の中で登録消除に至ります根拠規
定がございます。この根拠規定にようて、ある時期にむしろよしあしの決心をみず
からすべきではなかつたか、あとからでございますがこういう感じがするわけでご
ざいます。それでこういう手続をやつてまいります際に、自転車振興会の気持をそ
んたくいたしますと、途中でやはりできるだけ自発的に退いてもらうというところ
をねらいまして、何回も事情を聴取したりいたしまして、穏やかに済まそうという
気持がどうも強かつたように見受けられます。それが先ほどの、少し筋が乱れてお
りますが、新聞における発言等の気持にもどうも反映しておるようにも見られる。
それで今後のやり方としましては、こういつた人の権利に関する問題でございます
から、慎重に大いにやらなければいけないという面はございますが、それが逆に、
解決をつけないでいつまでも長くなつてしまうということはかえつて逆効果になる
ので、公正かつ安全な競走を行なうのに不適当だということが認められているとい
う認定は、ある時期においてはつきりとやつて、問題の処理をきれいにしていくと
いうことは必要ではないか、この点は特に振興会のほうにも注意をいたした次第で
ございます。」「私もその間の調査、審議の実態はよく存じませんが、振興会の立
場といたしましては、本件は非常にむずかしい案件と思いまして、調査をし、審議
をしながらその期間をこれに基づいて更新してまいつた。そして二年まで更新して
きた、こういうことでございます。それに気がつきましたので、むしろある段階に
おいて―-それだけあつせん保留の期間を長くするということは、むしろかえつて
こちらが何といいますか穏やかに済まそうという議論だけでいつておつてはかえつ
てものごとの本質を誤るゆえんではないか、これも適当なところで、保留の期間を
延ばしてはいかぬとは申しませんが、適正な良識があるわけで、早く決意して打ち
切つて、登録を消除するかしないかということをやるべきではないかということを
警告しました。その結果、登録除消に踏み切つた。非常に長くわたりましたこと
は、私よろしくないという感じを持つております。」「自転車振興会のほうから私
の承つておりますところの内容を御説明いたします。先ほど法務省からもお話がち
よつとございましたが、事情聴取を三回にわたつてやつておりますが、その間に自
転車振興会側として非常に苦慮いたしましたのは、こういう形で登録の消除という
ことは極力避けたいという気持があつたわけであります。これは気が弱い面もある
と思いますが、かどが立たないように処理したいという気持がかなり強かつたこと
と、それから自発的な退職かそうでないかでは共済会の退職給与にもいろいろ響い
てくるという実際上の問題もございまして、そこらを頭に置いて極力自発的に退職
されることを勧奨してまいつた、こういう感じのようでございます。それは先ほど
私が申しましたように、ややそちらに流れると今度は秩序が立たなくなるし、かえ
つて当人自身をつらい立場に追い込んでいくということにもなりますので、やり方
はぴつたりとやつていくべきではないかと思います。ちよつと私の感じで申します
と、業務方法書のあつせんを保留をいたします際に一カ月で調査がはたしてつくの
かどうかということになりますと、非常にむずかしい性格の問題で、どうするかと
いうことの判断もいろいろできるかと思います。一カ月ということは短きに失する
のではないかという感じは一つございますが、これを延長することができるという
たてまえになつておるからといつて、ただ延長するということはどうも処分として
妥当性を非常に欠くのではないか。したがつて、その点は厳重に注意いたしまし
て、今後の運営方法もひとつ考えてみたい、こういうように感じております。」と
述べていることが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。
以上認定の事実によれば、被告自白振における競輪選手の登録消除事務の主管課で
ある業務第二部選手第二課では、昭和四一年三月ごろまでには原告に関する登録消
除事由の存否の調査を終り、不正競走の容疑が非常に濃いので再び競輪に参加させ
ることは危険であると判断するに至つたが、ことを穏便にすませようと思つたため
と原告より自主的に登録消除の申請をさせた方が退職金の面で原告に有利であるこ
となどからただちに登録消除処分をすることなく、あるいは日本競輪選手会を通し
て、あるいは自ら原告に対し右申請をするよう勧告をしていたものであると考える
のが相当である。
この点に関し、被告らは、本件あつせん保留の期間が約二年間に及んだのは(1)
被疑事実が非常に多く、(2)本件あつせん保留中にも暴力団の引起した不祥事件
に関与したかのごとく名前が浮ぶなど底知れぬ疑惑が充満していて調査に多くの日
時を要したこと、(3)競輪選手の擁護団体である日本競輪選手会も原告の競輪選
手としての不適格性を確認して長期間にわたり原告に自発的登録消除の申請をする
よう勧告していたこと、(4)登録消除を恣意的に行なわないために選手代表等を
審議に参加せしめるための選手資格審査会の設置手続に若干の日時を要したこと、
(5)登録消除事務担当の責任者に交替があり、後任者が慎重を期して自ら確信す
るだけの調査を繰り返したことなどによるものであつて、約二年間にわたりあつせ
んを保留したことは適法である旨主張する。
しかしながら、被告らの右主張のうち(1)の点については、なるほど原告に対す
る被疑事実すなわち登録消除理由に該当する事実は前記四の(一)から(二)まで
に認定したように多数にわたるが、そのうち日から(六)までの事実は昭和三三年
以前の事実であつて被告日自振においてもこれらの事実のため同年五月二七日から
昭和三六年一月一〇日まで原告を特別あつせん辞退選手に指定していたというので
あるから(同(七))、それらの事実に関する資料は被告日自振に保管されていた
ものと考えられ、(八)の事実については大阪競輪の直後である昭和三八年五月三
〇日ごろに、また(九)の事実についても富山競輪の後まもなくの昭和三九年七月
四日ごろにはそれぞれ事故競走報告書等の資料が被告日自振へ送られて来ており、
(一〇)の事実は昭和四一年六月一二日の出来事であるが、その調査にそれほどの
日時を要するものとは思われず、(一一)の事実も車券の売上状況を検討すること
によつて把握できることがらであつてそれほど調査に日時を要するものとは思われ
ず、結局、これらの事実全部を調査するのに約二年間もかかるとはとうてい考えら
れないこと(事実、本件登録消除処分を維持するために被告らが本訴において提出
した証拠のうち、昭和四一年三月ごろ以降にとくに収集したというものはみあたら
ない。)、(2)の点については、なるほど昭和四〇年六月ごろ大阪で暴力団に関
係したいわゆる互久楽会事件なるものが発生し、不正競走の容疑で数名の競輪選手
が逮捕された際、近畿自転車競技会より原告もその捜査線上にあるのではないかと
の連絡が被告日自振へなされたことは前記認定のとおりであるが、本件全証拠によ
るも原告が右事件に関連して逮捕されたりその他取調べを受けた事実を認めるに足
りないから、右のような連絡があつたからといつて約二年間もの調査期間が必要で
あるとは考えられないこと、(3)の点については、日本競輪選手会が被告日自振
より相談を受け、岐阜県競輪選手会を通して原告に対し自主的に登録消除の申請を
するよう勧告していたことは前記認定のとおりであり、また、登録消除事由がある
場合にもただちに登録消除処分をすることなく、当該競輪選手に対し自主的に登録
消除の申請をする機会を与えること自体は不合理とはいえず、右機会を与えている
間あつせん保留を延長していたとしてもその期間が合理的な範囲内のものであるか
ぎり違法と解すベきでないこと後記のとおりであるが、競輪選手の擁護団体である
日本競輪選手会が自主的な登録消除申請の勧告をしていたからといつて、右合理的
な期間をこえてあつせん保留の延長を続けることは適法とはいえないこと、(4)
の点については、昭和四二年一月ごろから選手資格審査会制度を設けようとの動き
が具体化し始め、本件業務規程の改正手続が進められ、同年六月ごろ右改正につい
て通商産業大臣の認可を受けたことは前記認定のとおりであるが、選手資格審査会
なるものが制度化されていなくても、事実上の措置として登録消除事由の存否につ
き日本競輪選手会等の意見を聴取し、選手資格審査会が制度化されている場合と同
様の効果をあげることは何ら差支えないばかりでなく、事実、被告日自振(の業務
第二部選手第二課長)が日本競輪選手会と原告の登録消除の件に関し相談をしてい
ることは前記認定のとおりであるから、その際登録消除事由の存否についても意見
を交換しているものと考えるのが相当であり、結局、選手資格審査会の制度化に日
時を要したことをもつて本件あつせん保留の期間延長の正当事由とはなしえないこ
と、(5)の点については、なるほど昭和四一年一一月ごろ登録消除事務の責任者
である業務第二部選手第二課長がp9からp7へ交替したことは前記認定のとおり
であるが、登録消除事由の存否についての調査中に登録消除事務の責任者が交替し
た場合には交替しなかつた場合にくらべて調査期間が長くなつたとしてもそれはや
むを得ないことというべきであろうが、右調査が終了していた場合には右交替をも
つて調査期間が長くなることの正当事由とはなしえないというべきである。
してみれば、本件あつせん保留の期間が約二年間に及んだことを正当化しようとす
る被告らの右(1)ないし(5)の主張はすべて理由がないというべく、昭和四一
年三月ごろには被告日自振における登録消除事務の主管課である業務第二部選手第
二課において原告に関する登録消除事由の存否の調査を終つていたのであるから、
その後の審議に要する期間やまた登録消除事由のあることがわかつた場合にもただ
ちに登録消除処分をすることなく、原告に対し自主的に登録消除の申請をする機会
を与えることは、その方が原告にとつて退職金の面等で有利であることを考慮すれ
ば必ずしも不合理であるとはいえず、右機会を与える期間が合理的な範囲内のもの
であるかぎりその間あつせん保留を延長していたとしても違法ではないと解するの
が相当であるところ、その合理的な期間としては三か月もあれば十分であると解す
るのが相当であるので、これらの期間を考慮にいれたとしても昭和四一年八月ごろ
には原告の登録消除の件に関する調査および審議の必要はなかつたものと解するの
が相当である。
すなわち、本件あつせん保留はそれが開始された昭和四〇年八月六日には本件業務
規程一二六条一項三号にもとづき適法に開始され、その後も同号ただし書にもとづ
きその期間を延長されていたものというべきであるが(なお、原告の競輪への参加
が甚だしく競輪の公正安全を害すると認めるときにあたることは、前記のとおり原
告には本件登録規則二一条七号に該当する事実があると判断すべきであることから
も十分推認することができる。)、右開始後一年を経過した昭和四一年八月六日以
降はあつせん保留の期間延長の要件を欠くに至り、違法になつたものと解するのが
相当である(なお、右一年の期間は、前記のとおり昭和四二年一二月一八日以降本
件業務規程一二六条一項三号にもとづくあつせん保留の期間が通算五か月をこえる
ことはできなくなつたことと対比して、むしろ長すぎるきらいがないではないとは
いえ、決して短かすぎることはないというべきである。)。
七 本件異議決定の適否
原告の主張する本件異議決定の違法事由について、順次検討する。
(一) aを原告の代理人として異議申立手続に関与させなかつた点において違法
であるとの主張について本件登録消除処分に対する異議申立事件において、原告か
もと競輪選手であつたaを代理人に選任する旨書面で証明するとともに、被告日自
振が原告に口頭で意見を述べる機会を与えた際に原告よりaを代理人として手続に
関与せしめたい旨の申出をしたこと、被告日自振がこれを許さなかつたため原告が
不満を述べたことはいずれも当事者間に争いがない。
被告日自振は、原告が不満を述べたものの結局aの代理人選任の申出を撤回したも
のである旨主張する。
証人p8の証言中には被告日自振の右主張に副う部分があるが、これは証人aの証
言および原告本人尋問の結果に照らしたやすく信用できず、他に被告日自振の右主
張を認めるに足りる証拠はない(証人p8《右信用しない部分を除く。》および同
aの各証言ならびに原告本人尋問の結果によれば、aを原告の代理人として関与さ
せるかどうかが問題となつたのは、被告日自振が原告に対し口頭で弁明をする機会
を与えた昭和四三年四月九日のことであること、同日被告日自振よりaを原告の代
理人として手続に関与させることを認めることはできない旨聞かされて、原告の代
理人である高木義明弁護士《高木義明弁護士が原告の代理人として本件登録消除処
分に対する異議申立手続に関与していたことは後記のとおり当事者間に争いがな
い。》が非常に強い不満を示し被告日自振といろいろやりとりをしていたが、結
局、不承不承ながら原告が口頭で弁明をする席へ臨んだこと、しかし、その際高木
義明弁護士はaを原告の代理人として手続に関与させないことを了承したわけでは
ない旨を被告日自振へはつきり伝えたことが認められる。)。
ところで、被告日自振は、本件登録消除処分に対する異議申立事件において、原告
の申出による弁護士二名(高木義明および大内英男)の代理人としての関与をむし
ろ歓迎した一方、原告には弁護士である代理人に不得意であるとは思われる特殊専
門的な自転車競技に関する事実上の弁明があるかもしれないことを考え、あらかじ
め事故競走報告書等の参考書類を交付してとくに十分に弁明の機会を与え、原告か
らもこれに対して競走上の諸点に関する弁明書等が提出されていたので、多数の代
理人が関与することはむしろ手続の煩雑を増すのみで迅速な手続の進行を妨げると
の観点から、代理人の数を制限する立場をとり、異議申立手続に通暁しているとは
思われないaが原告の代理人として関与することを拒絶したものであつて、原告に
対し手続上の不利益を与えたものではないので、右拒絶は違法とはいえない旨主張
する。
なるほど、本件登録消除処分に対する異議申立手続において原告が弁護士高木義明
および同大内英男を代理人に選任し、被告日自振も右弁護士二名の代理人としての
関与を認めたことは当事者間に争いがなく(もつとも、原告本人尋問の結果により
成立が認められる甲第二九、第三〇号証に証人p8および同aの各証言ならびに原
告本人尋問の結果を総合すれば、当初本件業務規程九二条、三八条が競輪選手に対
する登録消除処分の異議申立ては代理人によつてすることができない旨定めていた
ため、被告日自振は高木義明弁護士が原告の代理人として手続に関与することを認
めなかつたこと、そこで原告が代理人不許可処分の取消訴訟を東京地方裁判所へ提
起し、同裁判所で話合いが行なわれた結果、被告日自振は競輪選手の登録消除処分
に対する異議申立てを代理人によつてもすることができるように本件業務規程を改
正することにし、昭和四二年一二月一八日通商産業大臣より右改正についての認可
を受け、代理人を認めない旨の前記九二条によつて準用されていた三八条は削除さ
れ、新しく九二条によつて準用される三七条は行政不服審査法によつて異議申立て
をすることができる旨を明定するに至つたこと(同法一二条一項は代理人により不
服申立てをすることができる旨を定めている。》その後、被告日自振は弁護士高木
義明および同大内英男が原告の代理人として異議申立手続に関与することを認め、
従来の審理をやり直したことが認められ、この認定に反する証拠はない。)、ま
た、後記認定のとおり原告が事前に被告日自振より事故競走報告等の参考資料を受
領し、競走上の諸点に関する詳細な弁明書等を被告日自振へ提出しており、高木義
明弁護士は原告の代理人として種々の観点から原告の権利利益を擁護するための活
動をしていたものではある。しかしながら、行政不服審査法一二条一項によつて認
められている不服申立手続の代理人については、代理人に選任したことを書面で証
明しなければならないはか(同法一三条一項)、その資格や人数を制限するような
規定は何ら存在せず、代理人は各自不服申立人のために当該不服申立てに関する一
切の行為をすることができるのである(同法一二条二項、この規定は代理人が複数
選任されることを予定し、これを是認しているものといえる。)。そして、いかな
る者を幾人代理人に選任するかはもつぱら不服申立人の意思によつて決められるべ
き事柄であり、不服申立てを受けた行政庁においてこれを決めたりあるいは干渉し
たりすべき事柄ではないから(代理人の人数についてもこれを制限しうる旨の規定
がない以上、法はこれをいかほどにするかを不服申立人の意思にかからしめている
と解するのが相当である。)、被告日自振が原告の選任したaの異議申立手続への
関与を拒絶したことは、行政不服審査法一二条に違反し、違法であるといわなけれ
ばならない。
ところで、異議申立手続の過程において法令違反があつた場合にも、その違法性の
程度が軽微であり、実質的にみて異議申立人の手続上の利益を侵害したものとはい
えない場合には、その法令違反は異議決定の取消事由にはならないと解するのが相
当である。
もつとも、行政不服審査法一二条の趣旨は、代理人が不服申立人に代つてかつ不服
申立人のために不服申立手続に関する行為を行なうことにより、不服申立人の行為
を代行しあるいは補充し、”もつて不服申立人の権利利益の救済に便宜を与えよう
とするものであつて、異議申立手続において同条違反があつた場合には、その違法
性は軽微とはいえず、原則として異議決定の取消事由になると解すべきであるが、
本件登録消除処分に対する異議申立手続においては、前記のとおり、原告が弁護士
高木義明および同大内英男を代理人に選任し、被告日自振も右弁護士二名の代理人
としての関与を認めたこと、成立に争いがない甲第五ないし第七号証、同第一二、
第一三号証、同第二〇ないし第二八号証、同第四六号証、同第五八号証、乙第四九
号証、同第五〇号証の一、二、証人aの証言および原告本人尋問の結果により成立
が認められる甲第八ないし第一〇号証、同第一九号証、証人aの証言により成立が
認められる同第五七号証、原告本人尋問の結果により成立が認められる同第三一、
第三二号証、証人aおよび同p8の各証言、原告本人尋問の結果ならびに弁論の全
趣旨を総合すれば、本件登録消除処分に対する異議申立後の昭和四二年九月七日被
告日自振より証拠書類提出の有無等に関する照会書を受領した原告は、原告と同じ
ころ被告日自振より競輪選手の登録消除処分を受け、同処分に対する異議申立てを
していたaとともに高木義明弁護士に相談し、原告およびaの連名で登録消除事由
に該当する具体的事実やその事実を認定するに至つた証拠を知らせてくれるかどう
かなどを記載した同月一〇日付の質問書を作成して被告日自振へ提出したこと、そ
の後、右質問書の質問事項等の件に関して原告やaの代理人である高木義明弁護士
と被告日自振の代理人である風間克貫弁護士や雨笠宏雄弁護士との間に何度か折衝
があり、原告およびaは被告日自振より同年一〇月一三日付の回答書および証拠資
料(原告が請求p17因(四)3(4)で主張する証拠資料)を風間法律事務所で
受領したが(右証拠資料を受領した事実は当事者間に争いがない。)、右回答書に
は原告に関する登録消除事由に該当する事実として被告らの主張三(七)2(1)
および同3(1)に関する事実が記載されていたこと(この事実は当事者間に争い
がない。)、同月一六日原告およびaは再び風間法律事務所で事実関係書類やレー
ス経過表、走行運行表等を受領したが、原告に関する事実関係書類には被告らの主
張三(七)の事実がかなり抽象化されて記載されていたこと、同月二〇日被告日自
振において登録消除審議委員会が開かれ原告も弁明のために出席したが、その席上
原告に対し口頭で被告らの主張三(七)の事実をかなり抽象化して告げられたこと
(同日口頭で右事実をかなり抽象化して原告に告げられたことは当事者間に争いが
ない。)、昭和四三年二月二五日原告は被告日自振より「通知ならびに照会」と題
する書面を受領したが、その別紙には被告らの主張三(七)の事実の概略が記載さ
れていたこと(原告が被告日自振より右事実をかなり拙象化して記載した文書を受
領したことは当事者間に争いがない。)、原告およびaは高木義明弁護士の指導援
助のもとに被告日自振から指摘を受けた各レースの展開状況等につき詳細な弁明書
等を作成し、厚さ一〇センチないし一五センチ位にわたる膨大な証拠書類等を被告
日自振へ提出したこと、昭和四三年四月九日被告日自振において登録消除審議委員
会が開かれて原告に弁明の機会が与えられ、原告は高木義明弁護士および大内英男
弁護士とともに出席し弁明したが、その際高木義明弁護士らは原告のために積極的
に発言したこと、原告は昭和四二年九月四日に本件登録消除処分の取消しを求める
訴えを当裁判所へ提起したが、当初より高木義明弁護士と大内英男弁護士の両名が
訴訟代理人に選任されており、原告に弁明の機会が与えられた前記昭和四三年四月
九日ごろにはもつぱら高木義明弁護士が訴訟活動をしていたこと、同日にはaにも
原告と同じく弁明の機会が与えられていたことが認められ、これらの認定を動かす
に足りる証拠はない。右に述べた状況のもとにおいては、被告日自振がaにつき原
告の代理人としての関与を拒絶したことは前記のとおり行政不服審査法一二条に違
反するといわざるをえないが、これにより原告の代理人により不服申立てをするこ
とができるという手続上の利益は実質的にみて侵害されたとはいえないので、その
違法性の程度は軽微というべく、結局、本件異議決定の取消事由にはあたらないと
解するのが相当である。
してみれば、aを原告の代理人として異議申立手続に関与させなかつた点において
本件異議決定は違法である旨の原告の主張は理由がない。
(二) 本件登録消除処分の処分理由を告知しなかつた点において違法であるとの
主張について
原告は、本件登録消除処分に対する異議申立てについて適正かつ十分な審理をする
ためには遅くとも審理の際には右処分の理由を告知すべきであるのに、被告日自振
がこれをしなかつた点において本件異議決定は違法である旨主張する。
しかしながら、本件登録消除処分前の本件あつせん保留の期間中に被告日自振にお
いて疑惑を抱いていたレースの内容等につき原告が聞かされていたことは前記六で
述べたとおりであり、同処分に対する異議申立手続において原告が数度にわたり登
録悄除事由に該当する事実の告知を受け、詳細な弁明書を被告日自振へ提出してい
たことは前記七(一)で述べたとおりであるから、原告の右主張は理由がない。
(二) 参考人の取調べに原告やその代理人を立ち合わせなかつたり証拠書類の閲
覧謄写を拒んだ点において違法であるとの主張について
行政不服審査法においては、異議申立てを受けた行政庁が参考人を取り調べる場合
に、異議申立人またはその代理人に対し右取調べに立ち会う権利を保障した規定は
なく、また、異議申立人または代理人に対し証拠書類の閲覧謄写を請求する権利を
保障した規定もない(同法四八条は、審査請求人に書類等の閲覧請求を認めた同法
三三条の異議申立手続への準用をとくに排除している。)。
してみれば、被告日自振が参考人を取り調べるにあたり原告やその代理人を立ち合
わせなかつたり、原告やその代理人からの証拠書類の閲覧謄写の請求を拒んだ点に
おいて本件異議決定は違法である旨の原告の主張は理由がない。
以上のとおり、本件異議決定が違法である旨の原告の主張はすべて理由がないの
で、それは適法といわなければならない。
八 損害賠償義務
(一) 原告は、本件あつせん保留および本件登録消除処分はいずれも違法であ
り、これにより損害を受けた旨主張する。本件登録消除処分が適法であることは前
記四および五で述べたとおりであり、また、本件あつせん保留のうち昭和四〇年八
月六日から昭和四一年八月五日までのものが適法であることも前記六で述べたとお
りであるから、これらにより原告が損害を被つたとしてもその賠償を請求すること
ができないことはいうまでもない。
ところで、本件あつせん保留のうち同月六日から昭和四二年七月二五日までのもの
が違法であることは前記六で述べたとおりである。
そして、請求原因(五)1、2の事実を被告らは明らかに争わないのでこれを自白
したものとみなす。
してみれば、原告が本件あつせん保留のうち違法な部分によつて被つた損害は、次
の1および2の合計一、四七〇、四六九円と考えるのが相当である。
1 昭和四一年八月六日から同年一二月三一日まで(一四八日間)の損害
1、492、364円×148日/365日÷605、122円
別表(一)記載の昭和四一年度における競輪選手の年間平均賞金額一、四九二、三
二六四円につき一四八日間分を計算したものである(円未満切捨て)。
2 昭和四二年一月一日から同年七月二五日まで(二〇六日間)の損害
1、533、262×206日/365日÷865、347円
別表(一)記載の昭和四二年度における競輪選手の年間平均賞金額一、五三三、二
六二円につき二〇六日間分を計算したものである(円未満切捨て)。
(二) 証人p7の証言によれば、あつせん保留を決定するのは被告日自振の業務
担当理事であるところ、原告に対する本件あつせん保留を決定したのは当時の業務
担当理事であつた訴外p35であること、昭和四一年一一月ごろあつせん保留関係
の業務担当理事はp35から被告kへ代つたことが認められ、これらの認定を覆え
すに足りる証拠はない。
そして、昭和四一年八月六日以降本件あつせん保留を違法のまま継続させていたこ
とについては、業務担当理事であるp35あるいは被告k、その業務履行の補助者
である業務第二部長や業務第二部選手第二課長に少なくとも過失があつたものと考
えるのが相当である。
(三) そこで、次に、原告の被つた前記損害の賠償義務者について考える。
被告日自振は自転車競技法にもとづき設立された特殊法人であり(同法一二条、一
二条の二、一二条の四、特殊法人登記令一条)、被告日自振の行なうべき業務の範
囲は同法により具体的に定められ(同法一二条の六)、その業務の方法および役員
の任免等について通商産業大臣に広範な権限が付与され(同法一二条の九、一二条
の一八等)、その役員および職員は同法により強い身分上の制約を受けるものとさ
れていること(同法一二条の一二、一二条の一四等)、他方、競輪は国が一定の目
的のために一定の地方公共団体に限つてこれを行なうことを認めているものである
から(同法一条一項)、競輪の公正・円滑な実施を図るための業務は性質上行政事
務に属すると解されることからすれば、被告日自振は、国が右の事務を行なうため
自らの行政機関を設ける代りに、その事務を遂行すべき機関として設立した特殊法
人であつて、国家賠償法一条一項にいう公共団体に含まれるものと解するのが相当
である。
そして、競輪選手の登録およびその消除の意義や競輪選手の参加出走、競輪選手に
対する出場あつせん保留の制度は前記二および三において述べたとおりであつて、
競輪選手は登録や出場あつせん等に関する措置を通じて被告日自振の指導・統制に
服しているということができ、被告日自振が競輪選手に対して行なうところの出場
のあつせんを保留する行為は、競輪の公正・円滑な運営を期するための公益上の必
要から法律により被告日自振のみに与えられた指導・統制権にもとづく権力作用に
ほかならないと解するのが相当である。
してみれば、被告日自振の業務執行機関である理事がその職務として行なう競輪選
手に対する出場のあつせんを保留する行為は、国家賠償法一条一項にいう「公共団
体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行う」行為であるといわなければな
らない。
ところで、自転車競技法一二条の六は被告日自振につき民法四四条の規定を準用し
ているので、これが国家賠償法五条にいう「民法以外の他の法律に別段の定がある
とき」にあたらないかどうかが問題となる。しかしながら、右五条にいう「別段の
定があるとき一とは、同条の規定の文理および趣旨・目的からみて、国または公共
団体の損害賠償責任の要件および効果につき、国家賠償法一条ないし四条による場
合よりもこれを加重ないし軽減する規定が民法以外の他の法律に定められている場
合を指すと解するのが相当であるところ、自転車競技法一二条の六、民法四四条
は、被告日自振の会長、副会長、理事などの役員による違法行為一般について、そ
れが公権力の行使にあたると否とを問わず、被告日自振が損害賠償責任を負う旨を
規定したものであつて、国家賠償法一条ないし四条による場合よりも被告日自振の
損害賠償責任の要件および効果を加重ないし軽減するものではないから、自転車競
技法一二条の六は国家賠償法五条にいう「別段の定」にはあたらないものと解する
のが相当である。
そして、被告日自振の役員の違法行為による損害賠償責任の根拠法条としては、そ
の違法行為が公権力の行使にあたる場合には、自転車競技法一二条の六と国家賠償
法一条が問題となるが、両者は一般と特別の関係に立つと解するのが相当であるか
ら、結局国家賠償法一条によるべきこととなり、そして、この場合には公共団体た
る被告日自振のみが損害賠償の責任を負い、公務員たる役員個人は直接被害者に対
して損害賠償の責任を負わないものと解すべきである。
(四) したがつて、被告日自振は、国家賠償法一条一項にもとづき、本件あつせ
ん保留のうち違法な部分によつて原告の被つた損害一、四七〇、四六九円およびこ
のうち昭和四一年度の損害である六〇五、一二二円については不法行為の後である
昭和四二年一月一日から、昭和四二年度の損害である八六五、三二四七円について
は不法行為の後である昭和四三年一月一日からいずれも支払ずみまで民法所定年五
分の割合による遅延損害金を賠償する義務があるが(なお、原告は国家賠償法一条
は適用されないとして自転車競技法一二条の六にもとづき被告日自振に損害賠償の
請求をしているが、本件あつせん保留のように公権力の行使にあたる行為について
は、自転車競技法一二条の六と国家賠償法一条は前記のとおり一般と特別の関係、
すなわち法条競合の関係に立つと解すべきであるから、このような場合には適用す
べき法律についての原告の主張に裁判所は拘束されないものといわなければならな
い。)、被告日自振を除くその余の被告らには損害賠償の義務はないというべきで
ある。
九 むすび
本件登録消除処分および本件異議決定はいずれも適法であり、その取消しを求める
原告の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却する。
原告の損害賠償請求のうち、被告日自振に対するものは前記八で認定した限度で理
由があるのでこれを認容し、その余を棄却し、同被告を除くその余の被告らに対す
るものはすべて理由がないのでこれを棄却する。
よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条、九三条一項を適用し、仮執行の
宣言の申立てについてはその必要がないものと認めてこれを却下することとし、主
文のとおり判決する。
(裁判官 高津 環 上田豊三 横山匡輝)
別表(一)~(九)(省略)

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