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平成19年7月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成16年(ワ)第18142号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成19年5月17日
判決
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,原告に対し,連帯して4092万5949円及びこれに対する平
成13年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,被告学校法人A大学(以下「被告法人」という。)の開設するA大
学病院(以下「被告病院」という。)において歯科診療を受けた原告が,これ
を契機に,その際の担当医師であった被告B歯科診療所ことC(以下「被告
C」という。)からB歯科診療所(以下「被告診療所」という。)においてイ
ンプラント手術を受けるようになり,その際の被告Cの手技上の過失により,
術後,上顎洞炎を発症し,また,咀嚼に支障が生じるなどの障害を負ったと主
張して,被告らに対し,診療契約の債務不履行又は不法行為に基づき,損害賠
償を請求する事案である。
1前提事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア原告
原告は,昭和42年○○月○○日生まれの女性である。
イ被告ら
(ア)被告法人は,被告病院を開設する学校法人である。
(イ)被告Cは,平成13年4月当時,被告病院歯科口腔外科に口腔外科
・インプラント外来の非常勤講師として勤務し,また,被告診療所を院
長として実質的に運営していた歯科医師である(乙C1,2)。
(2)診療経過
ア原告は,平成13年から被告病院外科及びD医療センターに通院してい
たところ,同年4月27日,被告病院歯科口腔外科を受診した。
同日の診察において,原告が,右上臼歯部の動揺を訴えたところ,同日,
被告病院に非常勤講師として勤務していた被告Cが診察し,レントゲン撮
影を行った後,原告に対し,経過不良となっている右上6番(右上顎第1
大臼歯)を抜歯し,抜歯後には入れ歯かインプラントしかないと述べたう
え,インプラント手術についての説明を行った。
イ同日午後,原告は,被告診療所を訪れ,インプラント手術を受けること
を同意した。ここに,原告と被告Cとの間で,インプラント治療について
の診療契約が成立した。
ウ平成13年5月2日,原告は,被告診療所において,被告Cにより,右
上6番の抜歯を受けた。
エ平成13年5月8日,被告Cは,原告に対し,被告診療所において,イ
ンプラント手術(以下「本件インプラント術」という。)を施行した。
同手術において,被告Cは,右上4番(右上顎第1小臼歯)及び5番(右
上顎第2小臼歯)相当部に直径4.5mm,長さ13mmのインプラント体を,
右上6番の抜歯窩に直径5.5mm,長さ10mmのインプラント体をそれぞ
れ埋入した(丙A1・2頁)。
オ平成13年8月31日,被告Cは,被告診療所において,原告の右上4
番から6番相当部にインプラントの上部構造物を装着した(丙A1・3
頁)。
カ原告は,平成14年5月21日,E歯科医院で右上7番(右上顎第2大
臼歯)の歯周炎急性発作を指摘され,また,同月30日,インプラントに
よる歯性上顎洞炎の疑いがあるとして,被告病院にかかるよう指示された
(丙A9・1,4頁)。
キ平成14年5月31日,原告は,右顔面痛,歯痛,頭痛等を主訴に,被
告病院耳鼻咽喉科を受診し,右上顎洞炎との診断を受け,同年6月3日か
ら同月14日まで,同科に入院して治療を受けた(乙A2・4ないし7
頁)。
ク平成14年6月12日,原告は,F大学歯学部附属病院で,右頬部の圧
痛,右鼻閉感の原因を精査する目的で診察を受け,右上顎洞炎と診断され
た。同月18日,同病院で,原告の右上7番の抜歯が行われた(丙A10
・1,8頁)。
ケ平成14年8月10日から,原告は,G病院で診察を受けた。同年9月
17日,同病院の担当医師は,同日のカルテに原告の上顎洞炎は治癒の状
態であると記載した(丙A12・17頁)。
コ平成18年7月13日,原告は,H大学病院歯科医療センターにおいて,
右上6番のインプラント体を抜去する手術を受けた。同時点においては,
右上6番のインプラント周囲骨はインプラント中部に強硬にインテグレー
ション(骨組織との直接の結合)を起こしており,インプラント体を外し
た窩からは,洞粘膜が視認できる状態であった(甲B16・18,19
頁)。
サ被告診療所におけるその余の診療経過は,別紙「診療経過一覧表(B歯
科診療所分)」(略)記載のとおりであり,被告病院におけるその余の診
療経過は,別紙「診療経過一覧表(A大学病院分)」(略)記載のとおり
であり,他院におけるその余の診療経過は,別紙「診療経過一覧表(他院
分)」(略)記載のとおりである(ただし,当事者の主張が相違する部分
を除く。)。
2争点
(1)手技上の過失の有無
アインプラント体を洞粘膜(シュナイダー膜)に貫通させることにより,
易感染状態にさせた過失の有無(主位的主張)
(原告の主張)
(ア)本件インプラント術を施行するに当たり,被告Cには,インプラン
ト体を洞粘膜に貫通させずに上顎骨に埋入すべき手技上の注意義務があ
った。
(イ)にもかかわらず,被告Cは,上記注意義務を怠り,インプラント体
を上顎骨を経て洞粘膜に貫通させ,易感染状態を招き,原告に上顎洞炎
を発症させた。
(ウ)インプラント体が洞粘膜を貫通したことは,以下の点から推認でき
る。
a画像診断
平成14年10月17日にI病院(以下「I病院」という。)にお
いて撮影されたCT画像(丙A20の25)上,インプラント体の先
端が骨組織の一部分であると思われる灰色がかった部分を突き抜け黒
色の部分に位置しており,インプラント体が上顎洞に交通しているこ
とが見てとれる。
また,同病院の担当医師は,原告に対し,上記CT画像について,
インプラント体が上顎洞に突き抜けている旨の説明をした。
b検査報告書,診療情報提供書等の記載
(a)F大学歯学部附属病院関係
平成14年7月12日におけるF大学医学部附属病院放射線科医
師作成の報告書(丙A10・10頁)には,「遠心側のインプラン
ト体は上顎洞内に露出している。」との記載がある。
なお,F大学歯学部附属病院のJ医師(以下「J医師」とい
う。)は,平成15年10月28日,原告に対して,インプラント
体は洞粘膜を突き抜けていないと発言したが,それは,その際に検
討したCT画像(丙A17,平成14年8月8日撮影)上,洞粘膜
が上顎洞炎のために肥厚している状態であったために,インプラン
ト体が洞粘膜を突き抜けていないように写っていたにすぎない。
(b)G病院耳鼻咽喉科関係
平成14年8月10日付けG病院耳鼻咽喉科医師作成の診療情報
提供書(丙A12)には,治癒が遷延している一因としてインプラ
ントの上顎洞内への露出の影響が懸念されるとの記載がある。
また,同病院の担当医師は,CTを読影した結果として,インプ
ラント体の1つについて確実に上顎洞内に突出していると判断して
いる。
cインプラント体抜去時の所見
原告が平成18年7月13日,H大学病院歯科医療センターにおい
て,インプラント体を抜去した時点で,窩から洞粘膜を視認すること
ができた。これは,右上6番のインプラント体は上顎骨を貫通した状
態であったということである。そして,洞粘膜の厚さが通常0.13
mmから0.15mmであることに照らせば,上顎骨を貫通したインプラ
ント体は,貫通時に洞粘膜をも貫通していた可能性が高い。インプラ
ント体の抜去時に洞粘膜の穿孔が認められなかったのは,経過中に洞
粘膜が再生したからであると考えられる。
(被告らの主張)
(ア)本件インプラント術において,被告Cは,インプラント体を洞粘膜
に貫通させていない。
a被告Cは,本件インプラント術において,インプラント体を埋入す
る箇所にインプラント窩を形成したが,その際,ゾンデ(消息子)に
て上顎洞との交通がないことを確認している。
また,インプラント体埋入後には,レントゲン写真(丙A5)でも
確認している。上顎洞との交通が生じていたとすれば,レントゲン写
真上,上顎洞内の出血の状況が示唆されるはずであるが,上記レント
ゲン写真にはそのような所見は認められない。
b仮に原告が主張するように,インプラント体を洞粘膜に貫通させた
のであれば,その直後に出血し,インプラント体を埋入した部位に著
しい腫脹が生じるはずである。しかし,本件インプラント術後,原告
にそのような症状は現れていない。
c原告の指摘するI病院のCT画像(丙A20の25)では,インプ
ラント体は上顎骨を貫通しているが,洞粘膜を突き抜けて上顎洞内に
穿孔を生じさせてはいない。洞粘膜の厚さは,0.13㎜から0.5
mmであり,画像には鮮明に描出されないから,上記画像所見からイン
プラント体が上顎洞に穿孔を生じさせていると判断することはできな
い。
また,同病院の診療録に,インプラント体が上顎洞内に突き抜けて
いる旨の記載はない。
d原告は,平成15年4月24日,Sにおいて,被告Cの装着したイ
ンプラントの上部構造物だけを除去して,インプラント体は抜去せず
に仮歯を作成し,また,同年7月3日,R歯科医院において,上部構
造物を再作成した。これは,いずれの時点においても,インプラント
体の埋入状況には問題がなかったことを示すものである。
e原告が平成18年7月13日にインプラント体を抜去した時点で,
洞粘膜の穿孔がなかったことが認められている(甲B16・18頁)。
(イ)仮に本件インプラント術によって上顎洞穿孔を生じ,原告に易感染
状態が生じたのであれば,術後,インプラント体の動揺,脱落が生じた
はずであり,インプラント体が平成18年7月13日に抜去されるまで
埋入されたままの状態であったのは不自然である。
よって,本件インプラント術によって原告に易感染状態が生じたとは
考えられない。
イ仮にインプラント体を洞粘膜に貫通させなかったとしても,上顎骨に貫
通させ,洞粘膜と接触させた過失の有無(予備的主張)
(原告の主張)
仮に,インプラント体が洞粘膜を貫通していないとしても,被告Cには,
本件インプラント術において,インプラント体を上顎骨に貫通させ,洞粘
膜と接触させることにより易感染状態を招いた点に注意義務違反が存在す
る。
(被告らの主張)
インプラント体で上顎骨を貫通させたとしても,洞粘膜を貫通していな
ければ,易感染状態にはならず,問題は生じない。
インプラント体で上顎骨を貫通させたうえ,洞粘膜を貫通させないよう
に挙上する施術方法も存在するのであり,インプラント体を上顎骨に貫通
させないようにするべき注意義務はない。
(2)因果関係の有無
(原告の主張)
ア前記(1)の手技上の注意義務違反により,インプラント体が上顎洞に貫
通し,またインプラント体の装着が不十分な状態となって,上顎洞が口腔
内と交通し,易感染状態が生じたために,原告は,上顎洞炎を発症し,ま
たインプラント体を埋入した部位で十分に咀嚼ができない状態となったも
のであるから,前記(1)の手技上の注意義務違反と原告の上記症状との間
には因果関係がある。
イ本件インプラント術が上顎洞炎発症の原因であることは,以下の点から
推認される。
(ア)F大学歯学部附属病院のJ医師は,平成14年6月18日,原告の
症状を右上顎洞炎と診断したが,その原因としては,右上7番の根尖病
巣か右上6番のインプラント体埋入による感染が考えられると診断した
(甲A2)。
(イ)F大学歯学部附属病院インプラント科のK医師も「上顎洞炎はイン
プラントが発端となっている」との見解を示していた(丙A10・7
頁)。
(ウ)原告に上顎洞炎の症状が出現したのは,本件インプラント術後から
であり,術前にそのような症状はみられなかった。
ウ被告らは,右上7番の根尖性歯周炎が上顎洞炎の原因であると主張する
が,右上7番の根尖相当部に5mm程度の嚢胞が認められたのであるから,
歯根の状態が外部に影響を与えていなかったと考えられること,右上7番
抜歯後も,上顎洞炎が完治したわけではないことに照らせば,被告らの主
張は理由がない。
(被告らの主張)
以下の点からすれば,本件インプラント術によって易感染状態が生じたこ
とが原因で上顎洞炎が発症したとは考えられない。
アインプラント体が上顎洞に穿孔を生じさせていたとすれば,本件インプ
ラント術直後から長期にわたり腫脹が生じ,また感染が生じて,インプラ
ント体の動揺,脱落を起こすはずであるが,原告にそのような症状は全く
みられなかった。平成14年4月3日のL歯科医院での診断時点では,原
告に上顎洞炎は発症していない。
イJ医師は,平成14年6月18日付け診断書(甲A2)では,原告の上
顎洞炎は右上7番の根尖病巣か右上6番のインプラント体埋入による感染
が考えられるとしていたが,その後,右上7番抜歯後に症状が改善した治
療経過を踏まえ,同年8月6日には,上顎洞炎の原因は右上7番の根尖性
歯周炎による可能性が大きい旨記載している(丙A10・13頁)。また,
K医師も,「上顎洞炎はインプラントが発端となっているが,右上7番の
方が原因として考えられるのでは?」と記載している(丙A10・7頁)。
ウ原告の上顎洞炎は平成14年8月ころには完治していたものの,インプ
ラント体は,平成18年7月13日に抜去されるまで埋入されたままの状
態であり,脱落が生じなかった。
(3)被告法人の責任
(原告の主張)
原告は,平成13年4月27日,被告病院歯科口腔外科を受診し,被告法
人との間で,歯科治療に関する診療契約を締結した。その後,原告は被告C
の治療を受けたが,原告は,被告法人に属する医師の治療を受けているもの
とばかり思っていた。
被告法人は,被告Cが,被告病院内で,被告法人の履行補助者として診察
することを許していたのであるから,医療過誤について,被告Cと共同して
責任を負うべきである。
よって,原告は,被告法人に対しても,不法行為(使用者責任)又は診療
契約の債務不履行に基づき,損害賠償請求権を有する。
(被告法人の主張)
被告法人が被告Cのインプラント治療に関する法的責任を負うことはない。
ア診療契約の内容について
被告Cは,平成13年4月27日,被告病院における具体的な治療方針
を策定しないまま,他院である被告診療所について紹介し,被告病院での
同日の診療を終えている。したがって,被告病院と原告との間に,具体的
な治療行為を内容とする診療契約は締結されていない。
イ被告法人と被告Cの関係について
(ア)被告法人と被告Cの使用関係
被告Cは,平成13年4月27日当時,被告病院歯科口腔外科の所属
医師として,診療を担当する日(毎週金曜日)に患者に対する診療行為
をしていた。
被告Cが被告病院において診療を担当する日(曜日)以外の日につい
て,被告法人と被告Cとの間に,他院への派遣を含め使用関係はなかっ
た。
(イ)被告法人と被告診療所の関係
被告診療所は,被告法人とは法人格を別にする独立した医療機関であ
って,関連病院でもなければ,被告病院からの医師派遣等も行われてお
らず,被告病院とは何の関係性もない。
(4)損害
(原告の主張)
原告の上顎洞炎の影響は全身に及び,原告には,炎症による粘膜肥厚,口
腔内への排濃が認められたほか,未だに噛めない,噛むと痛い等の状況が続
いている。また,原告は,(居住地)から東京へ1日がかりで治療に赴くた
めに仕事を辞めざるを得ず,次のとおり損害を被った。
ア治療費(平成15年末まで)314万9999円
イ通院交通費,宿泊費107万5950円
(ア)交通費88万2200円
(イ)宿泊費19万3750円
ウ休業損害3000万円
エ慰謝料300万円
オ弁護士費用370万円
カまとめ
よって,原告は,被告らに対し,診療契約の債務不履行又は不法行為に
基づき,連帯して,損害賠償金4092万5949円及びこれに対する不
法行為の日である平成13年5月8日から支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
(被告らの主張)
原告の主張は争う。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実のほか,証拠(各認定事実の後に掲記する。)及び弁論の全趣
旨によれば,原告の診療経過について,以下の事実が認められる。
(1)被告診療所受診までの経過
平成13年4月27日,原告は,被告病院歯科口腔外科を受診し,同日被
告病院に非常勤講師として勤務していた被告Cの診察を受け,右上臼歯部の
動揺を訴えた。被告Cは,デンタルX線写真及びパノラマX線写真を撮影し,
原告に対し,経過不良となっている右上6番を抜歯し,抜歯後には入れ歯か
インプラントしかないと述べた上,インプラント手術についての説明を行い,
さらに,被告病院では月2,3回程度の診察,治療しかできないが,被告診
療所であれば毎日診察していること等を話して,午後に被告診療所に来るよ
う指示した(乙A1・1,4,6頁,乙A8,9,丙A21,被告C反訳書
1・3頁)。
(2)被告診療所における診療経過
ア平成13年4月27日午後,原告は,被告診療所を受診し,被告Cに対
し,インプラント手術を受けることを同意した(丙A2・2頁,丙A2
1)。
イ平成13年5月2日,被告Cは,原告の右上6番の抜歯を行い,抜歯後,
パノラマX線写真を撮影した。同画像上,上顎洞に炎症所見は認められな
かった(丙A2・2頁,丙A3,4,21,被告C反訳書1・3,4頁)。
ウ平成13年5月8日,被告Cは,原告に対し,右上4番,5番相当部に
直径4.5mm,長さ13mmのインプラント体を,右上6番の抜歯窩に直径
5.5mm,長さ10mmのインプラント体をそれぞれ埋入し(本件インプラ
ント術),術後,パノラマX線写真を撮影した。同画像上,上顎洞内に出
血は認められなかった(丙A1・2頁,丙A5,6,21,被告C反訳書
1・5,6頁)。
エ平成13年8月1日,被告Cは,原告のインプラント体に動揺がないこ
とを確認した(丙A1・3頁)
オ平成13年8月31日,被告Cは,原告の右上4番から6番相当部にイ
ンプラントの上部構造物を装着した(丙A1・3頁,丙A21)。
(3)その後の診療経過
ア被告病院
平成14年1月30日,原告は,被告病院歯科でインプラントの定期検
診を受けた。その際,原告は,被告病院の担当医師に,下顎前歯の冷水痛
を訴えたのみで,右下1番,左下2番,3番について知覚過敏の処置を受
けた(乙A1・6頁)。
イL歯科医院
平成14年4月3日,原告は,右上7番歯周炎等の病名でL歯科医院の
受診を開始し,レントゲン検査,歯周疾患に対する処置等を受けた(丙A
15・2,3頁,丙A18)。
ウE歯科医院
平成14年5月16日,原告は,右上7番歯周炎等の病名でE歯科医院
の受診を開始した。そして,同月21日,右上7番の歯周炎急性発作を指
摘され,同月30日,右上5,6番インプラント歯性上顎洞炎の疑いがあ
るとされ,被告病院口腔外科を受診するよう指示された(丙A9・1ない
し4,6頁)。
エ被告病院
平成14年5月31日,原告は,右顔面痛,歯痛,頭痛等を主訴に,被
告病院耳鼻咽喉科及び口腔外科を受診した。その際,原告は,被告病院の
担当医師に対し,平成13年5月にインプラント手術を受け,直後から鼻
閉塞,頭痛等が起こったこと,2週間前から再び鼻閉塞が起こり,近医を
受診したところ,インプラントが上顎洞に突出していると指摘されたこと
を訴えた。被告病院の担当医師は,同日,原告の右中鼻道から多量の膿性
鼻汁の排出が認められ,レントゲン検査の結果右上顎洞に陰影が認められ
たことから,右上顎洞炎と診断し,パントモ画像(パノラマX線写真)上,
インプラントの動揺はなく,インプラントに問題は見られないので,上顎
洞炎とインプラントの因果関係は不明であると判断した。そして,原告に
対し,入院のうえ,抗生剤点滴等の治療を開始した(乙A1・7頁,乙A
2・4ないし7,14頁)。
オF大学歯学部附属病院
(ア)平成14年6月12日,原告は,右頬部の圧痛,右鼻閉感の原因を
精査する目的で,F大学歯学部附属病院口腔外科及びインプラント科を
受診し,右上顎洞炎と診断された。所見としては,右頬部圧痛及び鼻閉
感が認められ,鼻水に膿が混ざっている状態であり,右上7番及び遠心
インプラント(右上6番インプラント)の根尖相当分に圧痛が認められ
た。同日撮影されたパントモ画像上,右上顎洞の不透過性が亢進してお
り,右上7番の根管治療が不十分で,遠心インプラント周囲に骨吸収が
認められた(丙A10・2,3,6頁)。
また,同日の診療録には,「インプラント科DrKによると,遠心イン
プラントはインテグレーションしていないかもしれないが,上部構造を
こわす覚悟でとらないと実際のところはわからない。上顎洞炎はインプ
ラントが発端となっているが,右上7番の方が原因として考えられるの
ではないか?とのこと」との記載がされた。
そして,口腔外科のJ医師は,上顎洞炎の原因として,①本来右上顎
洞に慢性炎症があり,インプラント埋入により急性化したか,②右上7
番の根尖病巣によるか,③右上6番インプラント埋入によるかのいずれ
もがあり得ると考え,まずは右上7番の根管治療を行い,経過をみて,
必要があれば右上7番の抜歯,右上6番インプラントの抜去を行うこと
とした(丙A10・7,8頁)。
(イ)平成14年6月18日,原告は,右上7番フルキャストクラウン
(鋳造された金属のかぶせ物),コア(土台)を外したところ,カリエ
ス(う触)が多く,保存不可能と判断され,右上7番の抜歯を受けた。
同部位には,上顎洞への穿孔が生じており,イソジン及び生理食塩水に
て上顎洞の洗浄がされた。右上7番根尖相当部に直径5mmほどの嚢胞状
のものがあり,排膿も認められた。
同日,J医師は,原告の症状について「右上顎洞炎,原因として右上
7番根尖病巣か右上6番部インプラント埋入による感染が考えられる」
との診断書を作成し(甲A2),1,2か月後に症状が改善しないよう
であれば遠心インプラントの除去を考えることとして,抗生剤,鎮痛剤
等を処方した(丙A10・9頁)。
(ウ)平成14年6月21日,原告から,鼻汁に膿が混ざっていたのが消
失したとの申述があった。同日撮影されたパントモ画像上,右上顎洞の
不透過性の低下が認められた(丙A10・9頁)。
(エ)平成14年6月25日,原告に再び右顔面部痛が出現した(丙A1
0・9頁)。
(オ)平成14年7月5日,原告から,右顔面部痛,頭痛,後鼻漏等の症
状はかなり治まったが,痰に少し膿が混ざることがあるとの訴えがあっ
た(丙A10・9頁)。
(カ)平成14年7月12日,原告から,後鼻漏がときどきあるとの訴え
があった(丙A10・9頁)。洗浄液が貯留している所見が認められた
ため,原告の右上顎洞の状態,インプラントと上顎洞の関係を再評価す
るために,単純CT検査が施行され,右側上顎洞の洞底部付近に炎症性
粘膜の肥厚像が認められ,右上顎洞炎が考えられるとの画像診断がされ
た(丙A10・10,11頁)。
(キ)平成14年7月16日,J医師は,同月12日施行のCT画像上,
原告の症状に改善が認められたことから,上顎洞内の洗浄を中止して,
抗生剤等の投与で経過を観察し,炎症が治まらなければインプラント体
を抜去することとした。原告からは,ときどき右鼻翼部や目の下が痛む
ときがある,後頭部の痛みもときどき出現するときがあるとの訴えがあ
った(丙A10・12頁)。
(ク)平成14年7月24日,原告から,右顔面部,口唇周囲のしびれ,
後鼻漏等の訴えがあった。同日撮影されたパントモ画像上,上顎洞炎が
認められた(丙A10・12頁)。
(ケ)平成14年7月31日,原告から,痛みが毎日あり,右顔面,眼窩
下部,のどの違和感,後鼻漏もあるとの訴えがあり,J医師は,右上7
番抜歯窩が閉鎖されていることから症状が再発しているのではないかと
考えた(丙A10・11,12頁)。そして,原告が,右上7番抜歯窩
の開放ではなく鼻腔への対孔形成を希望したため,J医師は,同年8月
6日,耳鼻科の外来担当医師に診察を依頼した。診療依頼書には,「1
年前に右臼歯部インプラントを埋入した後より症状が出たとのことです
が,右上7番のper(根尖性歯周炎)によるものが大きいと考え,イン
プラントはまだ残し,右上7番を抜歯し,洗浄,抗生剤投与にて経過を
みたところ,病状軽減しましたが,洗浄を止め,右上7番の抜歯窩が閉
鎖した後より,再び症状出現してきました。」との記載がなされた(丙
A10・12,13頁)。
同日,耳鼻科のM医師が原告の診察を行ったが,耳鼻科的には明らか
な異常が認められず,自然孔も空いており,対孔形成術の適応はないと
判断された。そのため,J医師は,右上7番抜歯窩を穿孔して,上顎洞
の洗浄を行った。インプラントの動揺,周囲歯肉の炎症は認められなか
った(丙A10・13,14頁)。
(コ)平成14年8月8日,右上顎洞の炎症状態を評価するために,単純
CT検査が施行されたが,痛みがあるほどの炎症は認められなかった
(丙A10・15,16頁,丙A17)。
(サ)平成14年8月30日,J医師は,CT画像上は上顎洞内に炎症は
ないと思われるにもかかわらず,原告が右頬部の違和感,痛みなどを訴
え続けていることから,原告の自覚症状は心因性のものが大きいと考え,
原告を心療科に紹介した(丙A10・16頁)。
カG病院
(ア)平成14年8月10日,原告は,右頬部痛,膿性鼻汁等を主訴に,
G病院耳鼻咽喉科を受診し,右上顎洞炎と診断された(丙A12・12
枚目裏,15枚目)。
(イ)平成14年8月12日,原告は,上顎洞の炎症は消失していると判
断され,治療は終了とされた(丙A12・16枚目裏)。
(ウ)平成14年8月19日,CT上もインプラント周囲の粘膜肥厚は認
められず,膿も認められなかった(丙A12・15,16枚目表)。
(エ)平成14年9月17日,原告は,上顎洞炎は現時点では治癒の状態
であると判断された(丙A12・16枚目表)。
キN大学附属病院
平成14年8月19日,原告は,右頬部の痛み等を訴えてN大学附属病
院口腔外科を受診した。平成14年9月3日,原告は,同病院の担当医師
に対し,右鼻翼基部の違和感,上下唇のしびれ感,咬合の違和感等を訴え
た(丙A11・3枚目表,4ないし6枚目,丙A19)。
クS
原告は,平成14年10月2日,左上6番の痛み等を訴えてSを受診し
た。そして,同月7日,原告は,左上顎洞炎と診断されたが,同月28日,
上顎洞炎は治っていると診断された(丙A13・5頁)。
ケI病院
(ア)平成14年10月15日,原告は,右側顔面痛を訴え,I病院を受
診した(丙A7・3,4頁)。
(イ)平成14年10月17日,原告は,CT検査を受け,同画像からは,
上顎洞炎とは思われず,洞内粘膜の肥厚等はみられないと診断された
(丙A7・4頁,丙A20)。
コH大学病院歯科医療センター
(ア)平成17年10月5日,原告は,上顎洞炎疑い,右側インプラント
周囲炎疑いとの病名でH大学病院歯科医療センターを受診した。同月1
9日,CT検査が行われたが,上顎洞に炎症は認められなかった(甲B
15)。
(イ)平成18年2月20日,O医師(以下「O医師」という。)及びP
医師(以下「P医師」という。)は,原告からの照会に対し,上顎洞に
粘膜肥厚や膿の貯留等の所見はなく,上顎洞炎は認めないこと,そのた
め,咬合痛の原因が上顎洞炎にあるとは考えられず,インプラント周囲
骨の骨吸収に基づく炎症や,インプラント周囲を支える辺縁性歯周炎に
より痛みが生じている可能性があることを回答した(甲B10,原告反
訳書5・10頁)。
(ウ)平成18年7月7日,原告から,担当医師に対し,①インプラント
を入れたことがきっかけで頬部の症状が出現し,②インプラント埋入後
に鼻出血,鼻漏が出現したことを前提として,頬部症状の原因について
質問がなされたが,担当医師は,CT画像上は上顎洞炎の症状がみられ
ず,インプラントが原因で頬部症状が出現しているのかは分からないと
判断した(甲B16・16頁)。
(エ)平成18年7月13日,原告は,右上6番のインプラント体を抜去
する手術を受けた。抜去時,右上6番のインプラント周囲骨はインプラ
ント中部に強硬にインテグレーションを起こしていた。また,インプラ
ント体を外した窩からは,洞粘膜を視認することができ,口腔内の空気
が鼻腔に抜けることもなく,洞粘膜の穿孔は認められなかった(甲B1
5,甲B16・16ないし19頁)。
2争点(1)ア(インプラント体を洞粘膜に貫通させ,易感染状態にさせた過失
の有無)について
(1)原告は,被告Cには,本件インプラント術において,インプラント体を
洞粘膜に貫通させた手技上の過失があると主張するので,以下,本件インプ
ラント術において,インプラント体が洞粘膜を貫通したと推認することがで
きるか検討する。
ア画像所見について
(ア)原告は,平成14年10月17日,I病院において撮影されたCT
画像(丙A20の25)上,インプラント体の先端が,骨組織の一部分
であると思われる灰色がかった部分を突き抜け,黒色の部分に位置して
おり,インプラント体が上顎洞に交通していることが見てとれると主張
する。
(イ)確かに,証拠(丙A20の25)によれば,上記CT画像上,イン
プラント体の先端部分は,灰色がかった部分を突き抜けて黒色の部分に
位置しているように見える(丙A20の25)。
(ウ)しかしながら,この点に関しては,以下の事実を指摘することがで
きる。
a上顎洞は,3次元的には球体のような形であるから,インプラント
体が上顎洞の前方又は後方に存在し,これが上顎洞の底面より上方に
位置しているような場合には,2次元的なCT画像においては,あた
かもインプラント体が上顎洞内に突出しているかのような像が描出さ
れる場合がある(丙21,被告C反訳書1・7,8頁)。したがって,
2次元的なCT画像の所見だけから,インプラント体が上顎洞内に突
出しているかを正確に判断することは困難である。
b金属の入っている部分をCTで撮影すると,ハレーション(光の強
くあたった部分の周囲の画像が白くぼやける現象)が生じることから,
メタルアーチファクト(本来存在しない像が画面上に出現すること,
または本来存在している像が出現しないこと)が混入し,正確な描出
をすることができない。また,前記CT画像(丙A20の25)は,
上顎洞内の炎症状態をみるために,骨,空気,液体等が明確に描出さ
れるように分子量を調整して撮影されたものであると考えられるから,
金属であるインプラント体の形状及び大きさが前記CT画像に正確に
描出されているとは言い難く,インプラント体と上顎骨及び洞粘膜の
物理的な関係を正確に判断することはできない(被告C反訳書1・1
0ないし12頁)。
cまた,仮にインプラント体が上顎洞内に突出していたとしても,そ
れによって,洞粘膜が貫通しているとは推認できない。洞粘膜は,多
層性の円柱上皮で,厚く弾性に富むものから,薄く脆弱なものまで,
その性状は様々であるが,概ね6㎜から7㎜までは,破ることなく上
顎洞内への挙上が可能である(甲B4・37頁,丙B5・16頁)。
そして,洞粘膜は,厚さが0.13mmから0.5mmの非常に薄い膜で
あるので,炎症等により肥厚が生じている場合等を除き,単純レント
ゲンやCTでは画像上鮮明に描出されない。したがって,画像上描出
されないため,洞粘膜の貫通があるかを判断することはできない(甲
B4・37頁,甲B10・1頁,丙A21・14頁,被告C反訳書1
・13頁,反訳書4・14頁)。
したがって,上記画像所見をもって,インプラント体が洞粘膜を貫
通していると推認することはできない。
(エ)なお,原告は,I病院の担当医師が,原告に対し,前記CT画像に
ついて,インプラント体が上顎洞に突き抜けている旨の説明をしたと主
張する。しかしながら,診療録にその旨の記載はなく(丙A7),これ
を認めるに足りる証拠はない。
イ検査報告書,診療情報提供書等の記載について
(ア)F大学歯学部附属病院におけるCT検査報告書
証拠(丙A10)によれば,F大学歯学部附属病院歯科放射線外来に
おける平成14年7月12日付けCT検査報告書には,「遠心側のイン
プラント体は上顎洞内に露出している。」との記載があることが認めら
れる(丙A10・11頁)。
しかしながら,上記記載が,洞粘膜の貫通まで含む趣旨かは明らかで
ないこと,前記説示のとおり,洞粘膜は非常に薄い膜であるので,単純
レントゲンやCTでは画像上鮮明に描出されないことに照らせば,前記
CT検査報告書に「遠心側のインプラント体は上顎洞内に露出してい
る。」と記載されていることから,直ちにインプラント体が洞粘膜を貫
通しているとは推認することはできないというべきである。
(イ)G病院における診療情報提供書等
a証拠(丙A12)によれば,平成14年8月10日付けG病院耳鼻
咽喉科Q医師(以下「Q医師」という。)作成の診療情報提供書には,
「右上顎洞炎」との診断名に続けて,「貴院で加療中とのことですが,
症状が再び悪化したようです。治療が遷延している一因として,イン
プラントの上顎洞内への露出も懸念されます。」との記載があること
が認められる(丙A12・13枚目裏)。
しかしながら,上記記載は,Q医師が,原告の上顎洞炎の治療が長
引いている要因の1つとして,インプラント体が上顎洞内に露出して
いる可能性が考えられる旨を指摘したにすぎないことが明らかであり,
同医師が,インプラント体が上顎洞内に露出しているとの断定的な判
断を示したものとは認められない。
bまた,証拠(丙A12)によれば,同病院医師作成の「(原告)様
の病状及びインプラントと右上顎洞炎との因果関係について」と題す
る書面には,インプラント体が上顎洞内に突き抜けているかどうかに
つき,「F大学で平成14年8月8日に撮影した副鼻腔CTを読影す
ると,右5のインプラントは確実に上顎洞内に突出していると判断で
きます。」との記載があることが認められる(丙A12・18ないし
20枚目)。
しかしながら,前記ア(ウ)aに述べたとおり,2次元的な画像では,
インプラント体が上顎洞内に突出しているように見えるとしても,必
ずしもインプラント体が上顎洞内に貫通しているとは判断できないの
であり,この点に照らせば,上記の記載から直ちにインプラント体が
洞粘膜を貫通したと推認することはできない。
ウ上顎洞炎の発症について
原告は,本件インプラント術後から,原告には上顎洞炎に伴う鼻閉,頭
痛等の様々な症状が生じており,これは,本件インプラント手術の際,イ
ンプラント体が洞粘膜を貫通したことによるものであると主張する。
しかしながら,原告の上顎洞炎が確認されたのは,本件インプラント術
から約1年後の平成14年5月であって,本件インプラント術によって生
じたと認めるに足りないことは後記4に認定のとおりであり,これによれ
ば,本件インプラント術後に上顎洞炎が発症したとの事実から,洞粘膜の
貫通があったと推認することはできない。
エインプラント抜去時の所見について
(ア)平成18年7月13日,原告が,H大学病院歯科医療センターにお
いてインプラント体を抜去した時に,窩から洞粘膜を視認することがで
きたことが認められ,したがって,同日時点では,洞粘膜の穿孔が無か
ったことが認められる。
しかしながら,仮に本件インプラント術の際に洞粘膜を貫通したとし
ても,その後無菌の状況が一定期間以上続けば,インプラント体を覆う
形で洞粘膜が再生されることはあり得ることであるから(被告C反訳書
1・18頁,反訳書4・40,41頁),平成18年7月13日時点で
洞粘膜の貫通が無かったからといって,直ちに本件インプラント術の時
点で洞粘膜の貫通が無かったと推認することはできない。
(イ)ところで,原告は,平成18年7月13日当時,インプラント体を
抜去した窩から洞粘膜が視認できたこと,インプラント周囲骨がインプ
ラント中部に強硬にインテグレートしていたことからすれば,右上6番
のインプラント体は,埋入時から上顎骨を貫通していたと考えられ,そ
して,洞粘膜の厚さが通常0.13mmから0.15mmであることに照ら
せば,上顎骨を貫通していたインプラント体は,洞粘膜をも貫通してい
た可能性が高い旨主張する。
そして,確かにインプラント体先端部と上顎洞底との間に骨が残され
ていたり,あるいは骨形成が生じていたとすれば,インプラント体を抜
去しても洞粘膜を視認することはできないはずである(被告C反訳書4
・45頁)から,右上6番のインプラント体は,埋入時に,原告の上顎
骨を貫通したと推認することができる。
(ウ)しかしながら,洞粘膜が,前記のとおり,通常6㎜から7㎜挙上す
ることができるようなある程度の弾力性を備えた膜であると認められる
ことに照らせば,厚さ0.13mmから0.5mmの薄い膜であるというこ
と(甲B4・37頁,被告C反訳書1・13頁)のみから,上顎骨を貫
通したインプラント体が,同時に洞粘膜をも貫通したであろうと推認す
ることはできない。
オその他の事情
かえって,原告の治療経過においては,以下の事実が認められる。
(ア)本件インプラント術後のパントモ画像上,上顎洞内には,洞粘膜の
穿孔を窺わせる出血が認められなかった(前記1(2)ウ)。
(イ)仮にインプラント体が洞粘膜を貫通していれば,手術直後から感染
や出血が起こることが考えられるが,平成13年5月9日には,原告の
口腔内,鼻腔内から,出血は認められず,その後同年8月31日にイン
プラントに上部構造を装着する際にも,感染の徴候は見られなかった
(丙A1・2,3頁)。また,平成14年1月30日には,被告病院に
おいて,インプラントの定期検診が行われているが,その際も,原告か
ら下顎前歯の冷水痛の訴えがあったのみで,インプラントに関する異常
は認められなかった(乙A1・6頁)。
(ウ)仮にインプラント体の洞粘膜の貫通が原因となって感染を生じてい
れば,インプラントの周囲に動揺が生じることも考えられるが,平成1
3年8月1日の被告診療所における診察時にインプラントの動揺は見受
けられず(丙A1・3頁),平成14年5月31日の被告病院における
診察時にもインプラント体に問題はないと診断された(乙A1・7頁)。
また,平成15年4月24日,Sでは,インプラントの上部構造だけを
除去して,インプラント体は撤去せずに仮歯を作成し,同年7月3日,
R歯科医院では,やはりインプラント体は撤去せずにインプラントの上
部構造物を作成しており,これらの時点でも,インプラント体の異常は
特に指摘されておらず(丙A13・11頁,丙A14・14頁),平成
18年7月13日,H大学病院歯科医療センターにおいてインプラント
体を抜去する際にも,右上6番のインプラントは,中部において周囲の
骨と強硬にインテグレートしていることが確認された(前記1(3)コ
(エ))。
(エ)加えて,被告Cは,本件インプラント術の際,上顎洞との交通がな
いことを確認しており,その旨診療録にも記載している(丙A1・2頁,
被告C反訳書4・12ないし14,19,30頁)。
カ以上検討したところによれば,原告の指摘する点を考慮しても,本件イ
ンプラント術において,右上6番に埋入されたインプラント体が洞粘膜を
貫通したと認めることはできない。
(2)よって,被告Cには,本件インプラント術において,インプラント体を
洞粘膜に貫通させた手技上の過失があるとの原告の主張は採用できない。
(3)なお,原告は,仮に本件インプラント術中に洞粘膜の貫通が生じなかっ
たとしても,術後,咬合圧によってインプラント体が沈下し,洞粘膜の貫通
が生じたと考えられる旨主張する。
しかしながら,①インテグレーションは手術後1か月程度で生じるのが通
常であること(被告C反訳書4・26頁),②本件インプラント術から上部
構造物の装着までには3か月以上の期間がおかれており,その後,インプラ
ント体の動揺がないことを確認した後に上部構造物を装着していること(前
記1(2)ウないしオ)からすると,咬合圧によりインプラント体が沈下した
とは考えにくい(被告C反訳書4・21,37頁)。したがって,術後,咬
合圧によってインプラント体が沈下し,それによって洞粘膜の貫通が生じた
と認めることもできないというべきである。
3争点(1)イ(インプラント体を上顎骨に貫通させ,洞粘膜と接触させること
により,易感染状態にさせた過失の有無)について
(1)原告は,仮に,インプラント体が洞粘膜を貫通していないとしても,被
告Cには,本件インプラント術において,インプラント体を上顎骨に貫通さ
せ,洞粘膜と接触させた点に手技上の過失があると主張する。
そこで,まず,被告Cが,本件インプラント術において,右上6番に埋入
したインプラント体を上顎骨に貫通させたと認められるかにつき検討する。
前記2(1)エに判示したとおり,本件インプラント体の抜去時に,窩から
洞粘膜が視認できたことからすれば,インプラント体は,上顎骨を貫通して
いたと推認するのが相当である。
この点につき,被告Cは,本件インプラント術では,右上6番の抜歯窩の
底から2mm浅い部分までドリリングを行い,インプラント体を埋入したもの
であり(被告C反訳書4・17,20ないし22,28ないし30,33,
44頁),ドリリング後にゾンデで上顎洞との交通がないことを確認した旨
供述する(被告C反訳書4・12ないし14,19,30頁)。
しかしながら,他方において,上顎骨は非常に軟らかいため,ゾンデで確
認をした際,上顎骨が残されていたのか,洞粘膜に触れていたのかを明確に
区別することはできないとも供述していること(被告C反訳書4・13,1
9,20頁),被告C自身,本件インプラント体が上顎骨を貫通し,洞粘膜
を若干押し上げる形で,洞粘膜に接している状況にある図を作成しているこ
と(丙A21・14頁,別紙図面)に照らせば,本件インプラント術におい
て右上6番のインプラント体が上顎骨を貫通したとの前記推認は左右されな
いというべきである。
(2)そこで,インプラント体を上顎骨に貫通させたことが過失に当たるか検討
する。
証拠によれば,インプラント体を上顎骨に貫通させ,洞粘膜と接触させた
としても,そのことで直ちに易感染性が生じるとは認められないことが認め
られる(甲B24・187頁,被告C反訳書4・36・43頁)。
しかしながら,ドリルで上顎骨を貫通すると,シュナイダー膜まで穿孔し
てしまう危険性が高まるため,一般的には上顎骨を残すものとされているこ
と(丙B5・10頁,被告C反訳書4・43,44頁),被告C自身,ぎり
ぎりまでドリリングをすると上顎洞穿孔という偶発症が発生する危険もある
ので,骨を少し残すのが一般的であると述べていること(被告C反訳書4・
21,22,43頁)に照らせば,被告Cには,本件インプラント術におい
て,インプラント体を上顎骨に貫通させないように,骨を残してドリリング
をすべき手技上の注意義務があったと認めるのが相当である。
(3)この点につき,被告らは,インプラント体で上顎骨を貫通させた上,洞
粘膜を貫通させないように挙上する施術方法も存在し,上顎洞を貫通させた
としても,洞粘膜を貫通していなければ,問題は生じない旨主張する。
確かに,証拠によれば,上顎骨を貫通し,上顎洞底を挙上する術式として
はソケットリフト法が存在することが認められる(甲B9・4頁,丙B5)。
しかしながら,ソケットリフト法は,上顎洞底を挙上した部位に骨補填材を
填入することにより,支持骨の増大を図る術式であり(甲B9・4頁,丙B
5),上顎骨貫通後の補強が予定されていること,被告Cは,本件インプラ
ント術において上記術式を採用したのではなく,あくまで上顎骨を貫通させ
ずにインプラント体を埋入する手技をとろうとしたこと(被告C反訳書4・
12,13頁)が認められる。
したがって,上記術式が存在するからといって,本件インプラント術にお
いてインプラント体を上顎骨に貫通させないように,骨を残してドリリング
をすべき手技上の注意義務が否定されるものではない。
(4)以上によれば,被告Cには,本件インプラント術において,インプラン
ト体を上顎骨に貫通させないように,骨を残してドリリングすべき手技上の
注意義務に違反した過失が認められる。
4争点(2)(因果関係の有無)について
(1)原告は,インプラント体を上顎骨に貫通させたことにより,インプラン
ト体の装着が不十分な状態となって,インプラント体が洞粘膜を貫通し,上
顎洞が口腔内と交通し,易感染状態が生じたために,原告に上顎洞炎が発症
し,その結果,インプラント体を埋入した部位で十分に咀嚼ができない状態
となったものであると主張する。
(2)そして,原告の主張に沿う事情として,①骨内インプラントが予後不良
の症例で上顎洞炎が起こり得ること(甲B23ないし29,被告C反訳書4
・10頁),②原告は,本件インプラント術前には,上顎洞に炎症所見がみ
られず(前記1(2)イ),本件インプラント術後である平成14年5月31
日に上顎洞炎の診断がされたこと(前記1(3)エ),③F大学歯学部附属病
院における平成14年6月12日の診療録に「上顎洞炎はインプラントが発
端となっている」との記載があること(前記1(3)オ(ア)),④F大学歯学
部附属病院のJ医師が,平成14年6月18日,原告の症状につき「右上顎
洞炎,原因として右上7番根尖病巣か右上6番部インプラント埋入による感
染が考えられる」と診断書に記載したこと(前記1(3)オ(イ)),⑤原告は,
右上6番のインプラント抜去後,痛みが改善した旨を訴えたこと(甲B16
・19頁)がそれぞれ認められる。
(3)しかしながら,この点については,以下の事実を指摘することができる。
ア上顎洞炎の発症時期について
(ア)原告は,本件インプラント術施行直後から鼻閉感,痛みなどの症状
があったと供述する(原告反訳書3・4頁,反訳書5・19頁)。
そして,原告が平成14年5月31日,被告病院歯科において,「イ
ンプラント埋入後より鼻閉感が発現した」旨を訴えたこと(乙A1・7
頁),被告病院耳鼻咽喉科において,「平成13年9月に微熱,頭痛が
出現し,平成14年に入り右顔面痛が出現していた」旨を訴えたこと
(乙A2・4頁),平成18年7月7日,H大学病院において,「イン
プラント埋入後に鼻出血,鼻漏が出現した」旨を訴えたこと(甲B16
・16頁)等は,原告の上記供述に沿う内容のものである。
しかしながら,①原告が,平成13年9月5日まで,被告診療所にお
いて,異常を訴えた形跡はなく,原告が後にH大学病院で述べたような
鼻出血,鼻漏が生じていたことを疑わせる形跡も存しないこと(丙A1
・2,3頁),②平成14年1月30日,原告が被告病院歯科にインプ
ラントの定期検診に訪れているが,その際,下顎前歯の冷水痛を訴えた
のみで,他の異常を訴えた形跡も,異常がみられた形跡も存しないこと
(乙A1・6頁),③平成14年5月16日,原告は,E歯科医院の初
診時に,予診表の「歯をぬいた時又はその他の手術後の異常」という事
項について,「なかった」との回答をしていたこと(丙A9・4頁),
④原告の上記鼻閉感,痛み等の訴えは,平成14年5月30日,E歯科
医院において,右上5,6番インプラントによる歯性上顎洞炎の疑いが
あるとの指摘がなされた後に,本件インプラント術後約1年を経過して
から初めてみられるようになったものであることに照らせば,本件イン
プラント術直後から,原告に鼻閉感,痛みなどの症状があったとの原告
の上記供述は直ちに採用することができないというべきである。
(イ)そして,仮に本件インプラント術に起因して感染,炎症が生じたと
すれば,遅くとも平成14年4月のL歯科医院受診時には,インプラン
ト埋入部位の感染,炎症を示唆する所見が現れているものと考えられる
が,同医院においてそのような所見は指摘されていないこと(前記1
(3)イ,被告C反訳書1・14頁),原告は,平成14年5月30日に上
顎洞炎の疑いを指摘されており,その後同月31日,被告病院において
右上顎洞炎と診断されていることに照らせば,原告の右上顎洞炎は,平
成14年5月ころ,発症したものと推認するのが相当である。
イ上顎洞炎の発生原因について
そして,①原告が右上5,6番インプラント埋入部位の上顎洞炎の疑い
を指摘されたのは,E歯科医院において,右上7番について歯周炎の急性
発作を指摘された直後のことであること(前記1(3)ウ),②証拠によれば,
上顎大臼歯の歯根尖は,上顎洞底に最も接近しており,ときには上顎洞内
に突出していることもあるため,根尖性又は辺縁性の歯周炎が波及して上
顎洞炎を発症しやすいとの指摘が存すること(甲B2・184頁,甲B3
・67頁),③平成14年6月18日,原告は,右上7番フルキャストク
ラウンを外したところ,カリエスが多く,右上7番の抜歯を受けたが,そ
の際,同部位には,上顎洞への穿孔が生じており,右上7番根尖相当部に
は直径5㎜ほどの嚢胞状のものがあり,排膿も認められたこと(前記1
(3)オ(イ))を併せ考えれば,原告の上顎洞炎は,本件インプラント術に起
因して生じたものというよりは,むしろ右上7番の歯周炎に由来したもの
であると考えるのが合理的である(被告C反訳書1・14頁)。
ウF大学歯学部附属病院K医師及びJ医師の所見について
(ア)前記のとおり,F大学歯学部附属病院における平成14年6月12
日の診療録には,「DrKによると…上顎洞炎はインプラントが発端とな
っている」との記載があることが認められる。しかしながら,この記載
は,本件インプラント術後から右側頬部痛等の症状が生じたとの原告の
申述を基礎にしていると考えられるところ,その申述を直ちに採用する
ことができないことは,前記説示のとおりである。加えて,上記記載部
分は,全体としては,「上顎洞炎はインプラントが発端となっているが,
右上7番の方が原因として考えられるのでは?」との記載であること
(丙A10・7頁)からすると,K医師は,上顎洞炎発症の根本原因と
しては,むしろ右上7番の根尖病巣をより疑っていたと認められる。
したがって,K医師の所見から,本件インプラント術が上顎洞炎発症
の原因であったと推認することはできない。
(イ)J医師の所見(前記(2)④)についても,右上7番の歯周炎と右上
6番のインプラントの双方を原因として疑うものであり,右上6番のイ
ンプラントが原因であると断定まではされていないことに鑑みると,上
記所見から,本件インプラント術が上顎洞炎発症の原因であったと直ち
に推認することはできない。
エ上顎洞炎の症状経過について
(ア)前記認定事実によれば,原告は,平成14年6月18日,右上7番
を抜歯され,上顎洞の洗浄,消毒を受けた結果,同月21日,鼻汁に膿
が混ざっていたのが消失し,パントモ画像上,右上顎洞の不透過性が低
下し,その後,右上5,6番のインプラントについては保存的に経過観
察がされたが,右顔面部痛,後鼻漏等の症状軽減が認められ,平成14
年8月8日施行のCT画像及び同月12日施行のX線画像上,上顎洞の
炎症所見が消失し,平成14年9月17日,上顎洞炎は治癒の状態にあ
ると判断されたことが認められる(前記1(3)オ(イ),(ウ),(オ),
(キ),(ケ),(コ),カ(イ)ないし(エ))。
以上の経過に照らせば,原告は,右上5,6番のインプラントを除去
しなかったにもかかわらず,右上7番についての治療後に上顎洞炎の症
状が改善したと認められるのであるから,原告が上顎洞炎を発症した原
因は,右上5,6番のインプラントではなく,むしろ右上7番の病変に
あったと推認するのが合理的である。
(イ)原告は,右上7番の治療後も上顎洞炎の症状は改善していなかった
と主張する。なるほど原告が右上7番の抜歯後もたびたび右顔面部痛,
後鼻漏,口唇周囲のしびれなどを訴えていたことが認められる(前記1
(3)オ(カ),(ク),カ(ア))。
しかしながら,①前記(ア)のとおり,複数の医療機関において,他覚
所見としては,上顎洞炎の軽減ないし消失が指摘されたこと,②J医師
が,原告につき,CT画像上,上顎洞炎の所見が認められなかったこと
から,原告の自覚症状を心因性のものと考え,原告を心療科に紹介した
こと(前記1(3)オ(サ))からすれば,原告の前記主訴は心因的要素に
よるものであったと推認することができ,客観的には上顎洞炎の症状は
改善していたと認めるのが相当である。
オH大学病院歯科医療センターにおける所見について
(ア)前記認定のとおり,原告は,H大学病院歯科医療センターにおいて
右上6番のインプラント抜去を受けた直前も,上顎洞炎の症状は認めら
れず,また,抜去時,インプラント周囲骨はインプラント中部に強硬に
インテグレートしていたことが認められる(前記1(3)ク(イ)ないし
(エ))。このように,インプラントを抜去しないまま,長期にわたり経
過が安定していたことに鑑みれば,インプラント埋入が原因となって上
顎洞炎が生じていたとは考え難い。
(イ)この点につき,原告は,I病院のCT画像(丙A20の23)に基
づき,インプラント体の左側部分に影がかかった形になっている部分が
あり,同部分には空間が存在するものと推認されるから,インテグレー
ションが十分でないことが窺われると主張する。
しかしながら,I病院の他のCT画像(丙A20の24ないし26)
には,インプラント体がしっかりと埋入,装着されている様子が写し出
されていること,CT画像(丙A20の23)上,インプラント体の左
側部分に影がかかった形になっているのは,アーチファクトの可能性も
考えられ,上記CT所見(丙A20の23)のみをもってインテグレー
ションが不十分であると判断することはできない。
(ウ)さらに,原告は,H大学病院の担当医師から,上顎洞炎の原因は右
上6番である可能性が高いとの説明を受けたと供述する(原告反訳書3
・5頁)。しかしながら,これを裏付ける証拠はなく,むしろH大学病
院歯科医療センターの担当医師が,インプラントが原因で頬部症状が出
ているのかどうかは分からないと判断していたこと(前記1(3)コ(ウ))
に照らしても,原告の前記供述を採用することはできない。
以上の点に鑑みれば,前記(2)①ないし⑤の事実を考慮しても,原告の上
顎洞炎は,右上7番の根尖性歯周炎に由来して生じた可能性が高く,原告が,
本件インプラント術の手技により易感染性が生じたことが原因で,上顎洞炎
を発症し,また,インプラント体を埋入した部位で十分に咀嚼ができない状
態となったとは認められないというほかない。
(4)よって,前記3に認定した手技上の過失と原告の上顎洞炎の発症及び咀
嚼機能の低下との間に因果関係を認めることはできない。
第4結論
以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,い
ずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第30部
裁判長裁判官秋吉仁美
裁判官田代雅彦
裁判官渡邉隆浩

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