弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山嵜進、同杉政静夫の上告理由第二章について
 一 本件は、上告人が、戸籍上は同人の嫡出子とされている被上告人との間に親
子関係が存在しないと主張し、その確認を求めるものであるところ、記録により認
められる本件の事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人は、昭和六二年一一月一八日、Dとの婚姻の届出をし、同人と同居し
た。
 2 その後、両名は不和となって、昭和六三年二月ころ以降は性交渉もない状態
となり、同年一〇月一二日、別居するに至った。もっとも、両名の間には、同年一
一月二二日、性交渉があった。
 3 上告人は、昭和六三年一二月二〇日ころ、Dから妊娠したことを知らされた。
Dは、平成元年一月二七日、横浜家庭裁判所に対し、上告人を相手方として夫婦関
係調整の調停を申し立て、同年六月二二日、同事件において、上告人とDとは当分
の間別居し、上告人は、Dに対し、同年九月から婚姻費用の分担金として毎月七万
円を支払うほか、出産費用として同年七月末日限り一〇万円を支払う旨の調停が成
立した。
 4 Dは、平成元年七月二七日、被上告人を出産し、上告人は、その直後ころ、
右事実を知った。
 5 上告人は、平成元年一一月二一日、横浜家庭裁判所川崎支部に対し、被上告
人を相手方として嫡出否認の調停を申し立てた。同調停事件は、平成二年一〇月一
五日、合意が成立する見込みはなく調停が成立しないものとして終了した。
 6 上告人は、家事審判法二六条二項の期間を経過した後の平成二年一一月一五
日、横浜地方裁判所川崎支部に対し、被上告人を被告として嫡出否認の訴えを提起
したが、平成三年一月二五日ころ、右訴えを取り下げた。
 7 上告人は、平成三年一一月六日、横浜家庭裁判所川崎支部に対し、被上告人
を相手方として親子関係不存在確認の調停を申し立てた。同調停事件は、平成四年
二月一二日、合意が成立する見込みはなく調停が成立しないものとして終了した。
 8 上告人は、平成四年二月二六日、本件訴えを提起した。本件訴えにおいては、
当初、Dが甲と不貞を犯したことを原因として右両名に対し慰謝料の支払を求める
請求も併合されていたが、原審において、右請求に係る弁論は分離され、平成七年
一月三〇日、右請求につき、被上告人は上告人の子ではなく、Dには不貞行為があ
ったものと認められるが、甲が被上告人の父であるとは認め難いとして、上告人の
Dに対する請求を一部認容し、その余の請求を棄却する判決が言い渡された。
 9 上告人は、平成九年八月一一日、被上告人の親権者をDと定めて、同人と協
議離婚した。
 二 被告人は上告人とDとの婚姻が成立した日から二〇〇日を経過した後にDが
出産した子であるところ、右事実関係によれば、上告人は、被上告人の出生する九
箇月余り前にDと別居し、その以前から同人との間には性交渉がなかったものの、
別居後被上告人の出生までの間に、Dと性交渉の機会を有したほか、同人となお婚
姻関係にあることに基づいて婚姻費用の分担金や出産費用の支払に応ずる調停を成
立させたというのであって、上告人とDとの間に婚姻の実態が存しないことが明ら
かであったとまではいい難いから、被上告人は実質的に民法七七二条の推定を受け
ない嫡出子に当たるとはいえないし、他に本件訴えの適法性を肯定すべき事情も認
められない。
 してみると、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認
することができる。論旨は採用することができない。
 その余の上告理由について
 民法七七七条が憲法一三条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高
裁昭和二八年(オ)第三八九号同三〇年七月二〇日大法廷判決・民集九巻九号一一
二二頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和五四年(オ)第一三三一号同五
五年三月二七日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号三五三頁参照)。その余の論
旨は、独自の見解に立って原判決を非難するか、又は原判決の結論に影響しない事
項についての違法を主張するものであって、いずれも採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    福   田       博

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