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平成16年(行ケ)第87号 審決取消請求事件
平成16年9月29日判決言渡,平成16年7月21日口頭弁論終結
     判    決
 原      告  ユーエスピーエー プロパティーズ インク
 訴訟代理人弁理士  広瀬文彦
 被      告  ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナ
ーシップ
 訴訟代理人弁護士  松尾眞,兼松由理子,向宣明,三谷革司,高田祐史
 訴訟代理人弁理士  曾我道照,岡田稔
     主    文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定め
る。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 「特許庁が無効2002-35271号事件について平成15年10月27日に
した審決を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
 本件は,後記本件商標の登録を無効とした審決の取消しを求める事件であり,原
告は登録を無効とされた本件商標の商標権者,被告は本件商標の登録に対する無効
審判の請求人である。
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は,別紙審決書(写し)の別掲(1)のとおりの構成からなり,指定商品
を商標法施行令別表の区分による第34類「喫煙用具(貴金属性のものを除
く。),たばこ,紙巻きたばこ用紙,マッチ」とする商標登録第4017664号
(平成5年11月25日出願,平成9年6月27日設定登録。以下「本件商標」と
いう。)の商標権者である。
 (2) 被告が平成14年に本件商標の登録について無効審判の請求をしたところ
(無効2002-35271号事件として係属),特許庁は,平成15年10月2
7日,「登録第4017664号の登録を無効とする。」との審決をし,同年11
月7日にその謄本を原告に送達した。
 2 審決の理由の要点
 審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,横長四角形中に
「Polo」の欧文字を配した標章と「by RALPH LAUREN」(又は
「by Ralph Lauren」)の欧文字を組み合わせた標章よりなる商標
及び「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」(別紙審決書(写し)の別掲(2)。以下
「引用商標」という。)は,アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著
名なラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を示すものとして,我が国に
おいては,昭和51年ころから使用され,遅くとも昭和50年代半ばまでには取引
者・需要者間に広く認識されるに至り,その当時から,引用商標及びこれを付した
商品ブランドは,「ポロ」,「POLO」(「Polo」)と略称されることもあ
り,ラルフ・ローレンの「ポロ」,「Polo」ないし「POLO」として著名に
なって,強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得し,その周知著名性は,その
後,本件商標の登録出願時(平成5年11月25日)はもとより,登録査定時(同
9年4月10日)を経て今日に至るまで継続しているところ,本件商標は,構成中
にラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等のファッンョンに関連
する商品に使用して著名な「Polo」の文字と同一の綴りからなる「POLO」
の文字及び同じく著名なポロプレーヤーの図形と類似するポロプレーヤの図形を有
しており,かつ,本件商標の指定商品にはファッション関連分野の商品が含まれて
いるばかりでなく,引用商標が使用されている商品とは取引者・需要者を共通にす
ることが多いものであること等の事情を総合勘案すると,本件商標を指定商品に使
用する場合には,これに接する取引者・需要者が「POLO」の文字及びポロプレ
ーヤーの図形に着目して,ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると連想,
想起し,その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的,経済的に何らかの関係を
有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ず
るおそれがあるものといわざるを得ず,したがって,本件商標の登録は,商標法4
条1項15号に違反してされたものであるから,同法46条1項の規定により,無
効とすべきである,というのである。
第3 当事者の主張
 1 原告主張の審決取消事由
 本件商標は,これに接する取引者及び需要者に対しその商品の出所につき誤認を
生じさせるものではなく,商標法4条1項15号に該当しないから,これに該当す
るとした審決は,誤りであり,取り消されるべきである。
 (1) 本件商標は,同一書体の欧文字を同一の大きさでほぼ等間隔で環状に表し,
その文字環の中に図形を配して,一体的にまとまりよく構成した商標であり,本来
的に文字部分と図形部分とに分離される理由はなく,全体として一つの識別標識と
して認識されるものであるから,本件商標の文字部分中の「POLO」の部分のみ
が単独で取り出されて着目されることはない。そして,本件商標の図形部分と引用
商標の図形部分とが類似していないこと,付加部分があることを考え併せると,本
件商標に接する取引者及び需要者は,ラルフ・ローレン又は同人と組織的,経済的
に何らかの関係を有する者以外の者の業務に係る商品と考えるはずであって,出所
について混同を生ずるおそれはなく,現に混同を生じていない。
 (2) 本件商標中の文字部分は,原告の上部団体である「U.S.POLO AS
SOCIATION」を表示する,いわゆるハウスマークであり,100年以上も
活動を続けている実在の団体の名称であって,このような出所表示部分が存在する
場合にまで,商品の出所について混同を生じるとは考えられない。
 (3) 引用商標が周知著名性を獲得しているのは,「被服,眼鏡」等のファッショ
ン関連商品であるところ,本件商標の指定商品である「喫煙用具(貴金属性のもの
を除く。),たばこ,紙巻きたばこ用紙,マッチ」は,ファッション関連商品とい
えるものではなく,これについて,引用商標は周知著名性を獲得していないから,
本件商標がその指定商品に使用されても,商品の出所について混同を生じることは
ない。
 (4) 特許庁が公開した平成11年法律第41号による商標法の改正に対応した商
標審査基準は,商標法4条1項15号の規定について,「他人の著名な商標と他の
文字又は図形等と結合した商標は,・・・原則として,商品又は役務の出所の混同
を生ずるおそれのあるものと推認して,取り扱うものとする。ただし,その他人の
著名な商標の部分が既成の語の一部となっているもの,又は,指定商品若しくは指
定役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものを除く。」と
している。
 本件商標中の文字部分は,「米国ポロ協会」という団体名を表示する語であり,
ポロを扱う協会の名称の中に存在する「POLO」の文字は,必要不可欠な構成部
分の一部であって,いわゆる「既成語の一部」と判断されるべきであり,また,本
件商標と引用商標との間で実際に出所の混同は生じていないのであって,「出所の
混同のおそれのないことが明白なもの」であるから,上記のただし書きに該当す
る。さらに,本件商標の図形部分と引用商標の図形部分とは類似していないとこ
ろ,仮にこれが類似しているとしても,審査基準及びWIPOの指針では,著名な
図形商標について,類似する範囲にまで保護が拡大されるというような特別の取扱
いは示されていない。
 2 被告の反論
 本件商標は,これに接する取引者及び需要者に対しその商品の出所につき誤認を
生じさせるものであるから,商標法4条1項15号に該当するとした審決に誤りは
ない。
 (1) 本件商標の文字部分が欧文字を環状に表したものであるからといって,その
一部が着目されないとはいえないし,また,本件商標が全体として一つの識別標識
として認識されるものであるとしても,その一部に他人の著名商標又はその一部が
含まれている場合には,その著名性を打ち消すような特段の事情がない限り,本件
商標に接する取引者及び需要者はその著名商標又はその一部に着目するのが自然で
あるから,出所について混同を生ずるおそれは依然としてある。
 (2) 本件商標中の文字部分が原告の上部団体の名称であるとしても,かかる団体
は日本において知名度が極めて低いものであり,被告の「POLO」商標の著名性
にかんがみると,団体の名称に出所表示部分があるとは認められない。
 (3) 今日においては,ライフスタイル全般をデザインするという見地から,伝統
的な概念からすればファッション関連商品とはいえないものについても,ファッシ
ョンデザイナーが商品を発表する事例は珍しくない上,本件商標の指定商品に含ま
れる喫煙器具,タバコ等は,ファッションの小道具として用いられることが少なく
なく,ファッション関連商品に近いということができるので,出所について混同を
生じるおそれは高い。
 (4) 本件商標中の文字部分が「米国ポロ協会」という,ポロを扱う協会の名称で
あるとしても,かかる団体は日本において知名度が極めて低いから,「既成語の一
部」であると判断するには無理がある。また,本件商標中の文字部分のうち,
「U.S.」と「ASSOCIATION」はそれぞれ「米国」,「協会」であっ
て,識別力のある語ではないから,「POLO」が被告の商標として著名性が高い
ことにかんがみれば,本件商標は,他人の著名な商標と結合した商標として,出所
の混同を生ずるおそれがあるとすべきである。
第4 当裁判所の判断
 1 商標法4条1項15号の規定は,周知表示又は著名表示へのただ乗りや当該
表示の希釈化を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用
する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするも
のであるから,同号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ
がある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該
商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商
標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社
等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する
関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標
が含まれるものと解するのが相当である。そして,上記の「混同を生ずるおそれ」
の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び
独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役
務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者
及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商品の指定商品又は指定
役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意を基準として,総合的に判断
されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第
三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
 2 そこで,これを本件についてみる。
 (1) 証拠(甲6,乙8,12ないし14)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
が認められる。
 ア ラルフ・ローレンは,1939年生まれの,アメリカ合衆国を代表するデザ
イナーの一人である。同人は,そのデザインに係る被服,眼鏡等のファッション関
連商品に引用商標を使用してきており,引用商標は,我が国において,本件商標の
登録出願がされた平成5年11月25日には,ラルフ・ローレンのデザインに係る
被服等のファッション関連商品を表示するものとして,取引者及び需要者の間に広
く認識されるに至り,その状態が現在においても継続している。
 イ 株式会社婦人画報社が発行した「MEN’S CLUB」1984年1月号
(乙12)には,「アメリカン・デザイナーの雄 ラルフ・ローレン物語」と題す
る記事が掲載されているが,その中で,「今シーズンデビューしたラルフ・ローレ
ンのホーム・ファーニッシング・コレクションは壁紙から寝具,食器まで包括した
意欲的なトータル・ホーム・ルック。」などと,ラルフ・ローレンが新たにインテ
リア部門のデザインを始めたことが紹介されており,また,1988年(昭和63
年)10月29日付日建流通新聞(乙14)には,「西武百貨店 「ポロ」事業を
独立 新商品導入し総合展開」との見出しの付された記事が掲載されているが,そ
の中で,西武百貨店が,100%子会社のポロ・ラルフローレンジャパンを設立
し,これを軸にファッション製品に加え,ハンカチ,ナイトウエアなど新しい商品
群を導入して,ポロ・ラルフローレンブランドのライセンス事業をトータル展開す
ることが紹介されている。
 なお,研究社が発行した「英和商品名辞典」1990年初版(甲6,乙13)に
よると,「Polo ポロ」を見出し語とするのは4項目あり,それぞれ「英国の大手
菓子メーカーRowntreeMackintoshConfectionery製の,小さいドーナツ形のペパ
ーミントキャンディー」,「米国のデザイナーRalphLaurenがデザインした革製
品(バッグなど).NewYork市のPolo/RalphLaurenLeathergoodsが製造」,
「米国Tennessee州のAcmeBootCo.,Inc.(NorthwestIndustries,Inc.傘下)製
の靴・ブーツ」,「→PolobyRalphLauren」との説明がされている。そし
て,「PolobyRalphLaurenポロバイラルフローレン」を見出し語とする項目に
は,「同氏は,寝室・食卓用リネン・ガラス器・陶器・カトラリー・壁紙など幅広
いジャンルの日用品もデザインしている。」との説明がされている。
 ウ 原告は,「UnitedStatesPoloAssociation」(米国ポロ協会)の知的財産
権の管理部門を担当する下部団体である。
 本件商標は,「U.S.POLO」と「ASSOCIATION」との欧文字
を,「U.S.POLO」の文字を上側に,「ASSOCIATION」の文字を
下側に環状に記載し,その文字環の中に馬に乗ったポロプレーヤーの図形を配置し
た結合商標である。
 (2) 以上の事実に基づき検討する。
 ア 我が国の一般国民の通常の英語の理解力に照らすと,本件商標を構成する
「POLO」の語はスポーツとしての「ポロ競技」を意味する語であると理解さ
れ,また,「POLO」の語以外の語句のうち,「U.S.」が「アメリカ合衆
国」を意味し,「ASSOCIATION」が「協会」などを意味する語であると
理解されると考えられる。そして,文字環の中に配置された図形は馬に乗ったポロ
プレーヤーであるから,本件商標からは,「アメリカ合衆国のポロ競技の協会」と
いう観念が生じ得るということができる。
 イ しかし,1個の商標から複数の観念が生じることはしばしばあるのであっ
て,殊に,本件商標が環状に配置された19字からなる外観及び称呼の比較的長い
欧文字に図形が組み合わされた商標であることにかんがみれば,簡易迅速性を重ん
ずる取引の実際において,その一部分だけによって簡略に呼称,観念されることが
あり得るといわなければならない。本件商標は,引用商標の一部と同一の「POL
O」の部分をその構成の一部に含む結合商標であって,その外観,称呼及び観念
上,この同一の部分がその余の部分から分離して認識され得るものであると考えら
れること,引用商標は,ラルフ・ローレンのデザインに係る被服,眼鏡等のファッ
ション関連商品を表示するものとして,我が国における取引者及び需要者の間に広
く認識され,その周知著名性の程度が極めて高いものであること,本件商標の指定
商品は喫煙用具,たばこ等であって,引用商標が使用されている被服,眼鏡等とは
同一ではないものの,少なくとも喫煙用具は,ファッションに関連する分野の商品
の一つであるということができること,ラルフ・ローレンは,昭和59年から,壁
紙から寝具,食器までをも包括した分野でのデザインを始めたものである
ところ,これらの商品と本件商標の指定商品は生活用品であるから,取引者及び需
要者を共通にすることが多い上,需要者が特別な専門的知識経験を有しない一般大
衆であって,これを購入するに際して払われる注意はさほど緻密なものではないと
考えられること,などの事情に照らすと,本件商標がその指定商品に使用されたと
きは,その構成中の「POLO」の部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を
特に強く引くであろうことは容易に予想できるところである。そうすると,本件商
標からは,上記のような「アメリカ合衆国のポロ競技の協会」という観念ととも
に,ラルフ・ローレン若しくはその関与する会社又はこれらと緊密な関係にある営
業主の業務に係る商品であるとの観念も生ずるということができる。
 ウ そうであれば,本件商標は,これに接した取引者及び需要者に対し引用商標
を連想させて商品の出所につき誤認を生じさせるものであり,商標法4条1項15
号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たるといわなければならない。
 (3)ア 原告は,本件商標は全体として一つの識別標識として認識されるものであ
るから,本件商標の文字部分中の「POLO」の部分のみが単独で取り出されて着
目されることはないこと,本件商標の図形部分と引用商標の図形部分とが類似して
いないこと,付加部分があることを考え併せると,出所について混同を生ずるおそ
れはなく,現に混同を生じていない旨主張する。
 確かに,本件商標の図形部分と引用商標の図形部分とは,馬の向き,ポロプレー
ヤーの姿勢,ポロプレーヤーが持つマレットの位置,ボールの有無等において差異
があり,また,本件商標の文字部分は,「POLO」の語以外の語句が付加されて
いるのであって,前記のとおり,本件商標からは「アメリカ合衆国のポロ競技の協
会」という観念も生じ得るところである。
 しかし,本件商標は,本件商標が環状に配置された19字からなる外観及び称呼
の比較的長い欧文字に図形が組み合わされた商標であって,全体として一個不可分
の既成の概念を示すものとは認められないから,本件商標から「アメリカ合衆国の
ポロ競技の協会」という観念が生じ得るものであるとしても,それのみが生じると
考える合理的な根拠はない。そして,引用商標の周知著名性の程度など上記(2)イに
判示したところに照らすと,本件商標の図形部分と引用商標の図形部分とに差異が
あり,かつ,本件商標の文字部分に「POLO」の語以外の語句が付加されていた
としても,本件商標に接する取引者及び需要者は,本件商標中の構成のうちでも,
特に「POLO」の文字部分に着目すると考えられるのであって,そうであれば,
出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
 イ 原告は,本件商標中の文字部分は,原告の上部団体である「U.S.POL
O ASSOCIATION」を表示する,いわゆるハウスマークであり,100
年以上も活動を続けている実在の団体の名称であって,このような出所表示部分が
存在する場合にまで,商品の出所について混同が生じるとは考えられない旨主張す
る。
 しかし,本件商標が特定の団体の名称を表示するものとして我が国において広く
認識されていることを認めるに足りる証拠はないから,本件商標が「U.S.PO
LO ASSOCIATION」を表示するハウスマークであると認識する者がい
るとしても,本件商標に接する取引者及び需要者が,本件商標を「U.S.POL
O ASSOCIATION」のハウスマークとしてのみ認識するとは考え難い。
原告の上記主張は,その前提を欠き,採用することができない。
 ウ 原告は,引用商標が周知著名性を獲得しているのは,「被服,眼鏡」等のフ
ァッション関連商品であるところ,本件商標の指定商品である「喫煙用具(貴金属
性のものを除く。),たばこ,紙巻きたばこ用紙,マッチ」は,ファッション関連
商品といえるものではなく,これについて,引用商標は周知著名性を獲得していな
いから,本件商標がその指定商品に使用されても,商品の出所について混同を生じ
ることはない旨主張する。
 しかし,上記(2)イに判示したように,本件商標の指定商品である喫煙用具,たば
こ等は,引用商標が使用されている被服,眼鏡等とは同一ではないものの,少なく
とも喫煙用具は,ファッションに関連する分野の商品の一つであるということがで
きるのであり,また,ラルフ・ローレンは,昭和59年から,壁紙から寝具,食器
までをも包括した分野でのデザインを始めているところ,これらの商品と本件商標
の指定商品は生活用品であるから,取引者及び需要者を共通にすることが多い上,
特に需要者についていえば特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって,こ
れを購入するに際して払われる注意はさほど緻密なものではないと考えられる。し
かも,乙9及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成14年春ころには,サブライ
センシーを通じて,ライターに引用商標のうちの図形部分を付して販売しているこ
とが認められる。以上の事情を併せ考えると,引用商標が周知著名性を獲得してい
るのが「被服,眼鏡」等のファッション関連商品であるとしても,本件商標がその
指定商品に使用されたときは,これに接する取引者及び需要者において,出所につ
いて混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
 エ 原告は,本件商標中の文字部分は,「米国ポロ協会」という団体名を表示す
る語であり,「POLO」の文字は必要不可欠な構成部分の一部であって,いわゆ
る「既成語の一部」と判断されるべきであり,また,本件商標と引用商標との間で
実際に出所の混同は生じていないのであって,「出所の混同のおそれのないことが
明白なもの」であるから,第3の1(4)記載の商標審査基準のただし書きに該当する
旨主張する。しかし,既に判示したように,本件商標が特定の団体の名称を表示す
るものとして我が国において広く認識されていることを認めるに足りる証拠はな
く,本件商標に接する取引者及び需要者が,本件商標を「米国ポロ協会」という団
体名としてのみ認識するとは考え難いから,「POLO」の文字が必要不可欠な構
成部分の一部であるとしても,上記商標審査基準のただし書きにいう「既成語の一
部」に当たるということはできない。
 また,既に判示したところから明らかなように,上記商標審査基準のただし書き
にいう「出所の混同のおそれのないことが明白なもの」に当たるということもでき
ない(なお,本件商標に接する取引者及び需要者において,出所について現に混同
を生じていないことを認めるに足りる的確な証拠もない。)。原告の上記主張は,
採用することができない。
 原告は,審査基準及びWIPOの指針では,著名な図形商標について,類似する
範囲にまで保護が拡大されるというような特別の取扱いは示されていない旨主張す
る。しかし,既に判示したように,本件商標に接する取引者及び需要者は,本件商
標中の構成のうちでも,特に「POLO」の文字部分に着目し,これにより,引用
商標を連想して商品の出所につき誤認すると認められるのであって,著名な図形商
標について,類似する範囲にまで保護を拡大するというのではないから,原告の上
記主張は,採用の限りでない。
 3 結論
 以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由は理由がないから,原告の請求
は棄却されるべきである。
        東京高等裁判所知的財産第4部
                裁判長裁判官   塚  原  朋  一
                   裁判官   塩  月  秀  平
                   裁判官   髙  野  輝  久

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