弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
        本件上告を棄却する。
      当審における未決勾留日数中440日を本刑に算入する。
         理    由
 弁護人棚町祥吉の判例違反の論旨について
 1 所論は,確定判決の一事不再理効に関する原判決の判断が,所論引用の高松
高等裁判所昭和58年(う)第201号同59年1月24日判決・判例時報113
6号158頁(以下「本件引用判例」という。)と相反する旨主張する。
 原判決は,本件起訴に係る建造物侵入,窃盗の各行為が,確定判決で認定された
別の機会における建造物侵入,窃盗の犯行と共に,実体的には盗犯等の防止及び処
分に関する法律2条の常習特殊窃盗罪として一罪を構成することは否定し得ないと
しながら,確定判決前に犯された余罪である本件各行為が単純窃盗罪(刑法235
条の罪をいう。以下同じ。),建造物侵入罪として起訴された場合には,刑訴法3
37条1号の「確定判決を経たとき」に当たらないとの判断を示している。この判
断が,同様の事案において,「確定判決を経たとき」に当たるとして免訴を言い渡
した本件引用判例と相反するものであることは,所論指摘のとおりである。
 しかしながら,本件引用判例の解釈は,採用することができない。その理由は,
以下のとおりである。
 2 常習特殊窃盗罪は,異なる機会に犯された別個の各窃盗行為を常習性の発露
という面に着目して一罪としてとらえた上,刑罰を加重する趣旨の罪であって,常
習性の発露という面を除けば,その余の面においては,同罪を構成する各窃盗行為
相互間に本来的な結び付きはない。したがって,実体的には常習特殊窃盗罪を構成
するとみられる窃盗行為についても,検察官は,立証の難易等諸般の事情を考慮し
,常習性の発露という面を捨象した上,基本的な犯罪類型である単純窃盗罪として
公訴を提起し得ることは,当然である。そして,実体的には常習特殊窃盗罪を構成
するとみられる窃盗行為が単純窃盗罪として起訴され,確定判決があった後,確定
判決前に犯された余罪の窃盗行為(実体的には確定判決を経由した窃盗行為と共に
一つの常習特殊窃盗罪を構成するとみられるもの)が,前同様に単純窃盗罪として
起訴された場合には,当該被告事件が確定判決を経たものとみるべきかどうかが,
問題になるのである。
 この問題は,確定判決を経由した事件(以下「前訴」という。)の訴因及び確定
判決後に起訴された確定判決前の行為に関する事件(以下「後訴」という。)の訴
因が共に単純窃盗罪である場合において,両訴因間における公訴事実の単一性の有
無を判断するに当たり,①両訴因に記載された事実のみを基礎として両者は併合罪
関係にあり一罪を構成しないから公訴事実の単一性はないとすべきか,それとも,
②いずれの訴因の記載内容にもなっていないところの犯行の常習性という要素につ
いて証拠により心証形成をし,両者は常習特殊窃盗として包括的一罪を構成するか
ら公訴事実の単一性を肯定できるとして,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴に
も及ぶとすべきか,という問題であると考えられる。
 思うに,【要旨】訴因制度を採用した現行刑訴法の下においては,少なくとも第
一次的には訴因が審判の対象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の
確定判決も一事不再理効を有することに加え,前記のような常習特殊窃盗罪の性質
や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどにかんがみると,前訴
の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前
訴及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相
当である。本件においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴
因を通じて常習性の発露という面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,
両訴因の相互関係を検討するに当たり,常習性の発露という要素を考慮すべき契機
は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪による一罪という観点を持ち込
むことは,相当でないというべきである。そうすると,別個の機会に犯された単純
窃盗罪に係る両訴因が公訴事実の単一性を欠くことは明らかであるから,前訴の確
定判決による一事不再理効は,後訴には及ばないものといわざるを得ない。
 以上の点は,各単純窃盗罪と科刑上一罪の関係にある各建造物侵入罪が併せて起
訴された場合についても,異なるものではない。
 なお,前訴の訴因が常習特殊窃盗罪又は常習累犯窃盗罪(以下,この両者を併せ
て「常習窃盗罪」という。)であり,後訴の訴因が余罪の単純窃盗罪である場合や
,逆に,前訴の訴因は単純窃盗罪であるが,後訴の訴因が余罪の常習窃盗罪である
場合には,両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪とは一罪を構成するものではないけれ
ども,両訴因の記載の比較のみからでも,両訴因の単純窃盗罪と常習窃盗罪が実体
的には常習窃盗罪の一罪ではないかと強くうかがわれるのであるから,訴因自体に
おいて一方の単純窃盗罪が他方の常習窃盗罪と実体的に一罪を構成するかどうかに
つき検討すべき契機が存在する場合であるとして,単純窃盗罪が常習性の発露とし
て行われたか否かについて付随的に心証形成をし,両訴因間の公訴事実の単一性の
有無を判断すべきであるが(最高裁昭和42年(あ)第2279号同43年3月2
9日第二小法廷判決・刑集22巻3号153頁参照),本件は,これと異なり,前
訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪の場合であるから,前記のとおり,常習性の
点につき実体に立ち入って判断するのは相当ではないというべきである。
 3 したがって,刑訴法410条2項により,本件引用判例は,これを変更し,
原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の
理由にならない。
なお,所論は,判例変更に関連して憲法39条違反をいうが,後訴における被告人
の本件各行為が行為当時の本件引用判例の下においても犯罪であったことは明らか
であるから,所論は前提を欠き,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,刑訴法408条,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全
員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

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