弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人宗藤泰而、同藤原精吾、同豊川義明、同高橋典明、同出田健一、同戸
田勝の上告理由第一について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものであって、採用することができない。
 その余の上告理由について
 原審の適法に確定した事実関係によれば、(1) 被上告会社では、昭和四〇年二
月一日、D火災海上保険株式会社鉄道保険部で取り扱ってきた保険業務を引き継い
だのに伴い、同部に勤務していた者をそれまでどおりの労働条件で雇用することと
なったが、それ以来、E損害保険労働組合F火災海上支部(以下「組合」という。)
との間で、鉄道保険部出身の労働者とそれ以外の労働者の労働条件の統一に関する
交渉を続け、昭和四七年までに、鉄道保険部出身の労働者の労働条件をそれ以外の
労働者の基準まで引き上げることによって就業時間、退職金、賃金制度等の労働条
件を順次統一してきたが、定年の統一については合意に至らないまま時が経過し、
鉄道保険部出身の労働者の定年が満六三歳とされていたのに対し、それ以外の労働
者の定年は満五五歳とされたまま推移した、(2) 被上告会社は、昭和五二年度の
決算において実質一七億七〇〇〇万円の赤字を計上するという経営危機に直面し、
従来からの懸案事項であった定年の統一と併せて退職金算定方法を改定することを
会社再建の重要な施策と位置付け、組合との交渉を重ねるようになった、(3) そ
の間、労使間の合意により、昭和五四年度以降退職手当規程の改定についての合意
が成立するまでは、退職金算定の基準額を昭和五三年度の本俸額に凍結する変則的
取扱いがされることとなった、(4) 組合は、常任闘争委員会や全国支部闘争委員
会で討議を重ね、組合員による職場討議や投票等も行った上で、本件労働協約の締
結を決定し、昭和五八年七月一一日、これに署名、押印をした、(5) 本件労働協
約は、被上告会社の従業員の定年を満五七歳とし(ただし、満六〇歳までは特別社
員として正社員の給与の約六〇パーセントに相当する給与により再雇用のみちを認
めるものとする。)、退職金の支給基準率を引き下げることを主たる内容とするも
のであるが、鉄道保険部出身の労働者の六三歳という従前の定年は、鉄道保険部が
満五〇歳を超えて国鉄を退職した者を雇用していたという特殊な事情に由来する当
時としては異例のものであったのであり、本件労働協約が定める定年や退職金の支
給基準率は、当時の損害保険業界の水準と対比して低水準のものとはいえず、また、
その締結により、退職金の算定に関する前記の変則的取扱いは解消されることにな
った、(6) 上告人は、本件労働協約が締結された時点で満五三歳の組合員であり、
上告人に同協約上の基準を適用すると、定年が満六三歳から満五七歳に引き下げら
れて満五七歳の誕生日である昭和六一年八月一一日に被上告会社を退職することに
なり、退職金の支給基準率は七一・〇から五一・〇に引き下げられることになると
いうのである。以上によれば、本件労働協約は、上告人の定年及び退職金算定方法
を不利益に変更するものであり、昭和五三年度から昭和六一年度までの間に昇給が
あることを考慮しても、これにより上告人が受ける不利益は決して小さいものでは
ないが、同協約が締結されるに至った以上の経緯、当時の被上告会社の経営状態、
同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らせば、同協約が特定の又は一
部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目
的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はない。
これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。本件労働協約に定
める基準が上告人の労働条件を不利益に変更するものであることの一事をもってそ
の規範的効力を否定することはできないし(最高裁平成五年(オ)第六五〇号同八
年三月二六日第三小法廷判決・民集五〇巻四号一〇〇八頁参照)、また、上告人の
個別の同意又は組合に対する授権がない限り、その規範的効力を認めることができ
ないものと解することもできない。論旨は、独自の見解に立って、原判決を論難す
るものであって、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    藤   井   正   雄

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