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平成21年9月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ワ)第6050号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成21年7月14日
判決
東京都北区〈以下略〉
原告新エネルギー計画株式会社
訴訟代理人弁護士平手啓一
同大内陽子
神奈川県大和市〈以下略〉
被告株式会社三井建築
(旧商号・株式会社三井建築設計)
訴訟代理人弁護士森河昭彦
同菅谷公彦
同篠原一廣
同中村穂積
同林さやか
同松村満美子
訴訟復代理人弁護士蓮見和章
さいたま市緑区〈以下略〉
被告A
さいたま市見沼区〈以下略〉
被告B
上記被告両名訴訟代理人弁護士水口匠
同吉岡毅
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告らは,原告に対し,各自210万円及びこれに対する被告株式会社三
井建築及び被告Bについては平成20年3月20日から,被告Aについては
同年4月17日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,住宅用太陽光発電システム及びオール電化機器の販売及び設置を
業とする原告が,同業者である被告三井建築株式会社(以下「被告会社」と
いう。)の営業担当従業員の被告A(以下「被告A」という。)及び被告
B(以下「被告B」という。)が,原告から商品を購入した原告の顧客3名
に対し,原告がモニター商法,詐欺的な商法といった違法な販売を行ってい
るなどと原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,その結果,原告
は上記顧客に対する商品代金の値引き返金を余儀なくされ,値引き返金相当
額の損害を被ったとして,上記虚偽の事実の告知は,被告らによる不正競争
防止法2条1項14号の不正競争(営業誹謗行為)に該当し,又は民法70
9条の不法行為を構成する旨主張し,被告会社については不正競争防止法4
条,民法709条又は715条(使用者責任)に基づき,被告A及び被告B
については不正競争防止法4条又は民法709条に基づき,被告らに対し,
損害賠償を請求した事案である。
2争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の
全趣旨により認められる事実である。)
(1)当事者
ア原告は,太陽光発電システム及びその周辺機器の販売,施工等を目的
とする株式会社である。
原告は,住宅用太陽光発電システム及びオール電化機器(エコキュー
ト(自然冷媒COヒートポンプ給湯機),IHクッキングヒーター等)2
の販売,設置を主たる業務としている。
イ被告会社は,建築資材の販売,建築の設計等を目的とする株式会社で
ある。
被告は,平成19年当時,業として,住宅用太陽光発電システム及び
オール電化機器の販売を行っていた。
ウ被告A及び被告Bは,原告の元従業員であり,原告に在籍していた当
時,営業を担当していた。
(2)原告による商品の販売及び販売後の値引き
ア(ア)原告は,平成19年4月21日,C(以下「C」という。)に対
し,住宅用太陽光発電システム(太陽電池200Wモジュールパネル
15枚),エコキュート1台及びIHクッキングヒーター1台(以
下,これらを総称して「本件商品①」という。)を代金399万円(
設置工事代金を含む。)で販売した(甲12)。
(イ)原告とCは,平成19年10月30日,原告がCに対し,本件商
品①の代金の値引き分として合計60万円を返金する旨の合意をし
た(甲5)。
イ(ア)原告は,平成19年10月14日,D(以下「D」という。)に
対し,住宅用太陽光発電システム(太陽電池200Wモジュールパネ
ル15枚),エコキュート1台及びIHクッキングヒーター1台(以
下,これらを総称して「本件商品②」という。)を代金401万円(
設置工事代金を含む。)で販売した(甲13)。
(イ)原告とDは,平成19年11月28日,原告がDに対し,本件商
品②の代金の値引き分として合計100万円を返金する旨の合意をし
た(甲3)。
ウ(ア)原告は,平成19年10月14日,E(以下「E」という。)に
対し,住宅用太陽光発電システム(太陽電池210Wモジュールパネ
ル15枚),エコキュート1台及びIHクッキングヒーター1台(以
下,これらを総称して「本件商品③」という。)を代金379万50
00円(設置工事代金を含む。)で販売した(甲14)。
(イ)原告とEは,平成20年3月8日,原告がEに対し,本件商品③
の代金の値引き分として合計70万0250円を返金する旨の合意を
した(甲4)。
3争点
本件の争点は,①被告A及び被告Bが,原告から本件商品①ないし③をそ
れぞれ購入したC,D及びEに対し,原告が主張する虚偽の事実を告知した
か(争点1),②上記①の虚偽の事実の告知は,被告A及び被告Bによる不
正競争防止法2条1項14号の不正競争(営業誹謗行為)に該当し,又は民
法709条の不法行為を構成するか(争点2),③上記①の虚偽の事実の告
知は,被告会社による不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当し,
若しくは民法709条の不法行為を構成するか,又は上記①の虚偽の事実の
告知について被告会社の使用者責任が成立するか(争点3),④原告の損害
の有無及び損害額(争点4)である。
第3争点に関する当事者の主張
1被告A及び被告Bによる虚偽の事実の告知の有無(争点1)について
(1)原告の主張
アDに対する虚偽の事実の告知
(ア)被告A及び被告Bは,平成19年11月9日及び10日,原告と
D間の本件商品②の販売契約を解約させて被告会社と新たな契約の勧
誘をする目的でD宅を訪れ,Dに対し,メモ(甲2)を見せて,①原
告は,「モニター商法,詐欺的な商法といった違法な販売をしてい
る」,②「原告の販売価格は高い(普通は340万円位)」,③原告
がDに示した太陽光発電システムの発電量には嘘がある旨述べた。
しかし,以下のとおり,上記①ないし③はいずれも真実に反するか
ら,被告A及び被告BがDに対し上記のとおり述べたことは,原告の
営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる。
(イ)a原告がモニター商法,詐欺的な商法をしているとの点(前記(ア
)①)について
詐欺商法とは,文字どおり,消費者に対して,虚偽の事実を申し
向けて錯誤に陥れた上で,契約を締結させる方法であり,「モニタ
ー商法」とは,商品を購入してモニター会員になれば,商品を利用
した感想をアンケートに記入して提出したり,商品を着用して展示
会に参加するなどの労務を果たすことにより,毎月高額なモニター
料を支払うなどと勧誘して商品を購入させるものの,次第にモニタ
ー料を支払わなくなることによって,結局は,商品代金の支払が残
るという詐欺的な商法を意味する。
しかし,原告は,Dに対しては勿論のこと,他の購入者に対して
も,上記のような「モニター商法」を用いて商品の販売を行ったこ
とはなく,また,購入者からその種のクレームを受けたこともな
い。
したがって,被告A及び被告Bが,原告があたかも上記のよう
な「モニター商法」をしているかの記載のあるメモ(甲2)を示し
て,Dに対し,「原告がモニター商法,詐欺的な商法をしている」
旨述べたことは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に
当たる。
b原告の販売価格は高いとの点(前記(ア)②)について
原告のDに対する本件商品②の販売価格は,リーズナブルなもの
である。
すなわち,本件商品②を構成する太陽電池モジュールパネルのメ
ーカー希望価格はパネル1枚につき14万円から15万円であるこ
と(甲17の10頁),原告は,営業担当者に対して当初の提示額
から概ね2割の値引きを認めており,本件商品②と同様のパネル枚
数が15枚の商品の場合には,当初見積額を530万8601円で
提示し,最終的に値引き後の価格411万8000円で販売してい
たこと(甲11),原告は,Dに対して上記と同様の見積額を提示
し,約2割の値引きをした結果,本件商品②の販売価格は401万
円となったこと,被告Bも,原告に在籍中,本件商品②とほぼ同レ
ベルの商品を430万円あるいは388万円で販売していたこと(
甲19,20)に照らすならば,原告のDに対する本件商品②の上
記販売価格は,通常どおりの値引率に基づく販売価格であり,リー
ズナブルなものである。
したがって,被告A及び被告Bが,Dに対し,「原告の販売価格
は高い(普通は340万円位)」旨述べたことは,原告の営業上の
信用を害する虚偽の事実の告知に当たる。
c原告がDに示した太陽光発電システムの発電量には嘘があるとの
点(前記(ア)③)について
原告は,Dに対し,本件商品②を構成する太陽光発電システムの
発電量について断定的なことを述べたことはない。
太陽光発電システムの発電量は,気象条件,設置された建物への
日照条件等,様々な要因によって決定されるものであるから,発電
量について断定的な情報を提供することは不可能であり,実際,原
告は,営業担当者に対し,営業を行う際に太陽光発電システムの発
電量について断定的な言い方をしないよう徹底指導している。
そして,太陽光発電システムによって自家発電した電力から消費
分を差し引いた余剰電力は電力会社に対する売電の対象となるとこ
ろ,原告の営業担当者は,Dに対し,太陽光発電システムにより発
電した余剰電力の買受価格は1kW当たり23円として,1か月当
たり4000円から7000円の売電収入があるであろうと述べた
ことはあるが,被告A及び被告Bが主張するように売電額が1か月
当たり1万5000円から1万6000円であるなどと述べたこと
はない。
したがって,そもそも原告は発電量について断定的な情報を提供
したことはないのであるから,被告A及び被告Bが,Dに対し,原
告がDに示した太陽光発電システムの発電量には嘘がある旨述べた
ことは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる。
イC及びEに対する虚偽の事実の告知
被告A及び被告Bは,前記ア(ア)と同時期に,C宅及びE宅を訪れ,
C及びEに対し,前記ア(ア)①ないし③と同じ内容を述べて,原告の営
業上の信用を害する虚偽の事実を告知した。
(2)被告らの認否・反論
ア被告A及び被告Bの反論
(ア)Dに対する虚偽の事実の告知に対し
a被告A及び被告BがDに対し原告が主張するような虚偽の事実を
告知したことはない。
被告A及び被告Bは,被告会社と代理店契約を締結した代理店で
あって,被告会社と雇用関係にはない。
被告BがD宅を訪問したのは,新規顧客の開拓のためであり,そ
の訪問前には,D宅に原告の商品が既に設置済みであることを知ら
なかった。また,被告Aは,被告Bが再度D宅を訪問する際に,被
告Bの要望により,同行したにすぎない。
b被告A及び被告BがD宅を訪問した際にDに対して行った説明の
内容は,以下のとおりである。
被告Bは,平成19年10月ころから,被告Aと組んで一つの地
域を手分けして回り,主にエコキュートの販売のため各家庭を訪問
する営業活動を行っていた。
被告Bは,平成19年11年上旬ころ,D宅をたまたま訪問した
際に,玄関先で応対に出たDの妻に対し,エコキュートの宣伝であ
る旨伝えると,Dの妻から,エコキュートはもう付いている旨の回
答とともに,被告Bの方では,いくら位で付けられるのか尋ねられ
たので,「消費税別で320万円から340万円です。」と答え
た。すると,Dの妻は,自分が買ったのは高いと言ったような話を
したので,被告Bは,「購入された会社で説明を受けているのです
ね。どこの会社ですか。」と尋ねたところ,Dの妻は,原告の会社
名を答えた。被告Bは,Dの妻から,携帯電話を渡されて,夫と携
帯電話で話をして欲しい旨言われたので,電話に出たDに対し,自
分はエコキュートをメインとして訪問していたこと,エコキュート
の機械が見えなかったために間違ってD宅を訪問したこと,消費者
センターに聞けば教えてもらえること等を簡単に説明したところ,
Dは,もう一度しっかり説明して欲しい,Dが購入した商品の金額
は友人から高すぎると言われた旨述べた。
被告Bは,Dの妻に対し,「会社は料金について,どのように言
っていたか。」と尋ねたところ,Dの妻は,「390万円だけど,
モニターで,ただみたいな言い方だった。」と答えた。さらに,被
告Bが売電額について尋ねたところ,Dの妻は,夫は「月額で1万
6000円は売れる。」との説明を受けた旨答えた。被告Bは,「
それはあり得ないと思うので,サンヨーの大阪の本部に電話をして
みたらいかがですか。」とアドバイスをした。
その後も,Dの妻は,被告Bに対し,家に上がって説明をして欲
しい旨言ってきたが,被告Bは,これ以上原告と関わりたくないと
いう気持ちから,参考のためにシミュレーションを紙に書いてDの
妻に渡した。
そして,被告Bは,Dの妻に対し,総発電量の計算の仕方を簡単
に教えた上,総発電量でも,D宅ではせいぜい8000円か900
0円位分にしかならず,さらに,昼間電気を使用することを考える
と,せいぜい4000円位しか売電できない旨説明して帰った。
被告Bは,その日の夜になって被告Aと合流した際,もう一度D
宅に行ってDにしっかりと説明をすべきだと思い,その旨を被告A
に話したところ,被告Aは,被告Bに賛成したわけではなかった
が,被告Bを一人で行かせるのもどうかと考え,一緒にD宅に赴い
た。
被告Bと被告Aは,D宅で,応対に出たDに対し,一緒に説明を
した。その際,被告Aは,Dが原告から受けた売電料の説明内
容(「月額で1万6000円は売れる」旨の説明)を伝えてきたた
め,常識的に考えてそこまでの量を売電できるとは考えられないこ
と,「メーカーであれば分かると思うので,詳しいことはサンヨー
に聞いてみた方がいい。」などと説明した。
その3日後,被告Bは,営業活動中に,偶然にも原告の従業員の
F(以下「F」という。)の車を見つけたことを契機に,その日の
午後7時30分ころ,被告Aを誘って車でD宅に赴いた。被告Aは
車の中で待つこととし,被告Bが一人でD宅を訪れた。
その際応対に出たDは,前回の訪問時の対応とは異なり,ものす
ごい剣幕で,被告Bに対し,「新エネルギー計画を潰そうとしてい
る二人組がいる。一人はAといって会社をクビになった男で,もう
一人はBと言ってちょっと小太りの感じの人だ。内容は,ソーラー
システムを取り外させて営業できないようにしようとしている。」
と言った。被告Bは,何のことか分からなかったが,Dが誤解をし
ていることは間違いないと思い,説明したが,Dは,これを聞き入
れず,被告Bに対し,名刺を出すよう要求した。被告Bは,手元に
名刺を持ち合わせていなかったので,Dと一緒にAが待つ車に取り
に行った。結局,被告Bの名刺が見つからなかったので,被告Aか
らDに名刺を渡してもらった。被告Bは,Dがあまりにすごい剣幕
だったのでおそれを抱き,Dから名前を問われた際に,思わず「山
本」と嘘をついた。
(イ)C及びEに対する虚偽の事実の告知に対し
a被告A及び被告BがC及びEに対し原告が主張するような虚偽の
事実を告知したことはない。
そもそも被告Aは,C宅及びE宅を訪れたことはなく,C及びE
と会ったこともない。また,被告BがC及びEを訪問したのは,被
告会社の代理店としての新規顧客の開拓のためであり,その訪問前
に,C宅及びE宅に原告の商品が設置済みであることを知らなかっ
た。
b被告BがC宅を訪問した際にCに対して行った説明の内容は,以
下のとおりである。
被告Bは,D宅の訪問前の平成19年8月ころ,C宅をたまたま
訪問した際に,玄関先で応対に出たCに対し,エコキュートの宣伝
をしようとしたところ,Cから,「エコキュートはもちろん,ソー
ラーシステムもIHクッキングヒーターも既に付いている。」と言
われたので,「オール電化は,ものすごく便利なので長く使用して
下さい。太陽光も何千円かは売電できますから。」と言って,帰ろ
うとした。すると,Cは,太陽光は実際にはいくら位売れるものな
のかという質問をしてきたので,被告Bは,Cに対し,パネルの枚
数やモジュールを確認した上で,「総発電量として1か月で1万円
分位じゃないでしょうか。それに昼間使う電気を考えると,日照時
間にもよりますが,売れるのは4000円位じゃないでしょう
か。」と答えた。
Cは,1か月1万5000円から1万6000円位売れるのでは
ないかと確かめてきたので,被告Bは,C宅の屋根が変形屋根(切
妻)であり,通常の屋根と比べると発電量が少ないこと,昼間電気
を使用すると売電はそれほど見込めないこと等を伝えるとともに,
総発電量についての計算の仕方を教え,その上で,1か月に1万5
000円から1万6000円売れることは到底あり得ないことを正
直に伝えた。
Cは,担当者から1万5000円から1万6000円ほど売電で
きるという説明を受けていたようであり,話が違うということを言
ってきた。被告Bは,同じ販売員として,あまりにいい加減な説明
をしていることに立腹し,Cに対し,会社名及び担当者の名前を尋
ねたところ,Cは,原告の会社名と担当のFの名前を答えた。被告
Bは,Cに対し,Fがどのようなことを言ったのか尋ねたとこ
ろ,「390万円だが,モニターの募集なのでお金はかからないと
いうようなことを言ってきて,それならば話を聞いてみようという
ことで説明を聞いた。聞いてみると,売電金額が1万5000円か
ら1万6000円位なので,それを併せるとお金がかからないと言
われた。」とのことであった。被告Bは,原告は以前務めていた会
社でもあったので,なるべく関わり合いを持ちたくなかったが,原
告が行っている商法の悪質性を聞いてしまった以上,これを看過す
ることはできないという正義感から,原告のいうモニター商法とい
うのは,違法な行為であること,390万円というのは一般の価格
からすれば少し高いこと,消費者センターや大阪に本社があるサン
ヨーエナジーシステム株式会社に連絡を入れた方がいいということ
をCにアドバイスをし,今後の対処法について,メモを残してCに
渡した。
c被告BがE宅を訪問した際にEに対して行った説明の内容は,以
下のとおりである。
被告Bは,D宅の訪問前の平成19年10月ころ,E宅をたまた
ま訪問した際に,玄関先で応対に出たEに対し,自己紹介した上
で,「オール電化の宣伝なんですが。」と言ったところ,Eから,
既に設置済みであり,エコキュート,IHクッキングヒーター及び
ソーラーシステムの3点をセットで購入した旨言われた。被告B
は,今後の参考のために販売会社名を尋ねたところ,Eは,原告の
会社名を答えた。被告Bは,Cのことが頭をよぎり,もしかしたら
原告がここでも虚偽の売電金額や,モニターで無料といったことを
宣伝しているのではないかと考え,「他にもいろいろな会社が訪問
してくると思うんですが,いくら位されたのですか。」と尋ねたと
ころ,Eは,「モニター募集で,390万円位だった。でも売電で
きるからお金がかからないと言われた。」と答えた。
被告Bは,原告がCのときと同じように,売れるはずもない売電
を宣伝しているのではないかと思い,Eに対し,「1万5000円
から1万6000円売れると言っていませんでしたか。」と尋ねた
ところ,Eは,そうだと答えた。
そこで,被告Bは,Eに対し,Cに説明したのと同じように,原
告が説明をしたモニター商法は違法であること,売電についても,
原告の言っているような額は到底見込めないこと,390万円は,
一般価格と比べると少し高いことを正直に伝え,太陽光発電の計算
式を教えた上で,昼間使用した電力の余りが東京電力に売れる旨教
えると,Eは,機嫌を損ね,自分からメーカーに問い合わせる旨述
べて,玄関ドアを閉めた。
(ウ)被告Bの説明内容は真実であること
aモニター商法について
被告Bは,C及びEから聞かされた原告の説明内容について,総
発電量や売電額が実際には考えられないものであったこと,価格も
一般的な販売価格よりも高額であったこと,ソーラーシステム(太
陽光発電システム)やオール電化システムを設置するに際し「無
料」若しくは「ほとんど無料」になることはそもそもあり得ないは
ずであること,売電によって購入者の受けるメリットと「モニタ
ー」という言葉を使った勧誘方法とは何の関係もないはずであるこ
となどから,Cに対し,「原告がモニターなる言葉を用いて,あた
かもオール電化システムが売電などによって無料になるかのように
誤信させて販売したのであれば,そのような販売方法は違法であ
る。」という趣旨で,「そのようなモニター商法というものは違法
である。」旨伝えたものである。被告Bは,Dからも,原告がC及
びEに対して行った説明と同様の説明をしていたことを聞かされ,
被告Bの意見を求められた際に,上記と同様の趣旨で,Dに対
し,「そのようなモニター商法というものは違法である。」旨伝え
たものである。
なお,被告B及び被告Aは,原告が主張するような「モニター商
法」の意味で,原告が違法なモニター商法をしている旨述べたこと
はない。
b原告の販売価格について
被告BがC,E及びDに示した価格が通常の販売価格であって,
原告の本件商品①ないし③の販売価格が一般価格と比べて高額であ
ることは,国民生活センターに対して原告の販売価格について多数
の苦情が寄せられていること(丙3の2)や,原告以外の第三者に
よる実販売価格(丙7等)から明らかである。
なお,原告の販売価格が一般価格と比べて高額であるかどうか
は,原告の販売価格と他の販売価格との比較により決するものであ
るから,原告が主張する被告Bが原告に在籍していた時代に販売し
たソーラーシステム等の販売価格(甲19,20)は,原告の販売
価格が一般価格と比べて高額であることが虚偽であることの根拠に
なり得ない。
c売電額の説明について
被告Bは,C,E及びDから,原告が1か月に1万5000円か
ら1万6000円位売電できると説明をした旨聞かされ,C,E及
びDに対し,原告の説明が実際と異なることを説明したものであ
る。
すなわち,ソーラーシステムにおける売電額は,「(総発電量−
使用電量)×単位当たりの売電額」で計算され,総発電量は,設置
方位や天候等の条件による変動幅を一応無視すると「ソーラーパネ
ル1枚の発電量×ソーラーパネルの設置枚数」でおおよそ求められ
るから(丙9の2),通常の営業担当者であれば,ソーラーパネル
の設置状況(枚数,設置屋根の状況等)を確認するだけで,当該家
庭におけるおおよその総発電量及び予想売電額を容易に計算できる
ものであり,予想売電額の計算が営業担当者によって大きく異なる
などということはあり得ない。そして,被告BがC,E及びDから
請われて示した売電額の計算等は,このような客観的な事実に基づ
く正確な数字であって,何ら虚偽はない。
イ被告会社の認否
被告A及び被告Bが原告主張の虚偽の事実を告知したことは不知。
2被告A及び被告Bの不正競争又は不法行為の成否(争点2)について
(1)原告の主張
ア被告A及び被告Bは,原告と同業の被告会社の営業担当従業員として
在籍し,販売業務について手数料収入を得ており,また,個人で独立し
て営業を開始する可能性もあるから,原告と競争関係にあるといえる。
したがって,被告A及び被告Bが前記1(1)のとおりD,C及びEに対
し原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した行為は,不正競争
防止法2条1項14号の不正競争に該当する。
イまた,被告A及び被告Bは,原告が行っている訪問販売で購入者との
間で何らかのトラブルが発生し,購入者である消費者が消費者センター
等の公的機関に苦情を申し入れたり,相談をした場合,いわゆる問題の
ある業者としてブラックリストに載ったり,あるいは連絡を受けたメー
カーから商品が納入されなくなり,原告の営業が立ち行かなくなる可能
性が非常に高いことを十分知りながら,原告に在籍中に知った原告の販
売先であるD,C及びEをわざわざ訪ねた上,前記1(1)のとおりD,C
及びEに対し虚偽の事実を告知したり,「消費者センター及びメーカ
ー(大阪サンヨーエナジー)に問い合わせた方がいい。」などと述べ,
不信感,不安感を煽り,原告に苦情を申し入れるように仕向けたもので
あるから,被告A及び被告Bの上記行為は,原告に対する営業妨害行為
として,民法709条の不法行為を構成するというべきである。
(2)被告A及び被告Bの反論
ア前記1(2)アのとおり,被告A及び被告BがD,C及びEに対し原告が
主張するような虚偽の事実を告知したことはないから,被告A及び被告
Bの行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当するとの原
告の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
イ(ア)前記1(2)アのとおり,被告A及び被告BがD,C及びEに対し原
告が主張するような虚偽の事実を告知したことはない。
被告B及び被告Aは,当時被告会社の代理店として主にエコキュー
トの販売のために各家庭を回っていたものであって,原告に損害を与
えるためにあえて膨大な時間と労力をかけてまで原告と契約済みの消
費者を探して,その家庭を回る理由などどこにもなく,被告BがD
宅,C宅及びE宅を訪問したのは自らが重点的に営業に回ろうとした
地域が原告が販売した地域と偶然に一致したにすぎない。なお,エコ
キュートを既に設置している家庭であっても,玄関先からその機器を
確認できることは少ないため,既に設置していることを知らずに,エ
コキュートの販売のために当該家庭を訪問することはよくあることで
ある。
また,被告B及び被告Aは,D,C及びEに対し,自分との契約を
新たに締結させようと話を持ちかけたことは一切なく,そのような意
思など全く持っていなかったことも明らかである。
そして,被告Bは,前記1(2)アのとおり,D,C及びEから,原告
が発電量や売電額等について実際と大きく異なる説明をして営業・販
売方法を行っていることを聞き及び,また,被告B自身かつて原告に
在籍し,一部の人間がそのような営業方法を行っていたことを知っ
て,憤りを感じたことから,D,C及びEに対して実際の発電量等を
説明し,真の市場価格からすれば原告の販売価格が高いことも告
げ,「そのようなモニター商法は違法である」旨の真実かつ正当な情
報を提供したにすぎないのであり,被告Bの上記行為に何ら違法性は
ない。
(イ)以上によれば,被告A及び被告Bの行為が民法709条の不法行
為を構成するとの原告の主張は,理由がない。
3被告会社の不正競争,不法行為又は使用者責任の成否(争点3)について
(1)原告の主張
ア被告会社は,同業の原告と競争関係にあるところ,被告A及び被告B
の使用者であるから,被告A及び被告Bが被告会社の営業担当従業員と
して業務を遂行するに当たり監督すべき立場にある。
また,仮に被告会社と被告A及び被告Bは,被告会社が主張するよう
に業務委託者と受託代理店の関係にあるとしても,被告A及び被告B
は,被告会社の従業員であることを示す名刺(甲7の1,2)を使用し
て営業活動を行い,独自の営業拠点を有していたわけではないこと,商
品の販売価格・販売方法等について被告会社から何らかの拘束を受けて
いることからすれば,被告会社と被告A及び被告Bとの間には,実質的
な指揮監督関係がある。
したがって,被告A及び被告Bが前記1(1)のとおりD,C及びEに対
し原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した行為は,被告会社
による不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する。
イまた,前記2(1)イのとおり,被告A及び被告Bの行為は,民法709
条の不法行為を構成するところ,被告A及び被告Bの当該不法行為は,
被告会社の事業の執行について行われたものであるから,被告会社は,
原告に対し,使用者責任(民法715条)を負うというべきである。
仮に被告A及び被告Bが被告会社の実質的な指揮監督下になかったと
しても,被告会社は自らの利益を確保するために被告A及び被告Bを使
用して経済活動を営んでおり,被告会社と被告A及び被告Bとは密接不
可分の有機的一体関係にあるといえるから,被告A及び被告Bの故意又
は過失は被告会社の故意又は過失と同視することができる。したがっ
て,被告A及び被告Bの前記2(1)イの行為は,被告会社自らの不法行為
を構成するというべきである。
(2)被告会社の反論
被告A及び被告Bは,被告会社の代理店であって,被告会社の営業担当
従業員ではなく,被告会社が被告A及び被告Bの使用者の地位にあったこ
とはない。
また,被告A及び被告Bが被告会社の代理店であることから,被告会社
が被告A及び被告Bに被告会社名が入った名刺を提供したことはあるが,
被告会社と被告A及び被告Bとの間には,服務規律などは一切存在せず,
被告会社にとって被告A及び被告Bは卸売販売をしていた取引先にすぎ
ず,実質的な指揮監督関係はない。
さらに,被告会社は自らの利益を確保するために被告A及び被告Bを使
用して経済活動を営んでいた事実もない。
したがって,原告主張の被告A及び被告Bによる虚偽の事実の告知が不
正競争行為に該当し,又は不法行為を構成するとしても,そのことについ
て被告会社が使用者責任を負うことはなく,また,被告A及び被告Bによ
る虚偽の事実の告知をもって被告会社が自ら不正競争行為又は不法行為を
行ったということはできない。
4原告の損害の有無及び損害額(争点4)について
(1)原告の主張
ア原告の損害の発生
被告A及び被告BのD,C及びEに対する前記1(1)の虚偽の事実の告
知が,被告らによる不正競争に該当し,又は不法行為を構成すること
は,前記2(1)及び3(1)のとおりである。
原告は,被告A及び被告Bから上記虚偽の事実の告知を受けたD,C
及びEから,原告の営業内容について説明を求められた際に,「販売価
格が高いのではないか。」,「違法な営業を行っているのではない
か。」,「契約をキャンセルするから設置した太陽光発電の機械を外
せ。キャンセルに応じなければ,消費者センターに相談に行く。」など
と強行に苦情の申入れを受けた。
原告は,原告が行っている訪問販売で購入者との間で何らかのトラブ
ルが発生し,購入者である消費者が消費者センター等の公的機関に苦情
を申し入れたり,相談をした場合,いわゆる問題のある業者としてブラ
ックリストに載ったり,あるいは消費者センター等から連絡を受けたメ
ーカーから商品が納入されなくなり,原告の営業が立ち行かなくなる可
能性が非常に高いほか,クレジット会社への返金,設置した機械の撤去
に伴う約400万円程度の修繕費用を負担させられることとなるため,
このような事態を回避するため,D,C及びEに対する本件商品①ない
し③の代金の値引き返金を余儀なくされ,前記争いのない事実等(2)ア(
イ),イ(イ)及びウ(イ)の各合意に従って,Dに対しては100万円,C
に対しては60万円,Eに対しては70万0250円(以上,合計23
0万0250円)を返金した。
したがって,原告のD,C及びEに対する上記返金は,被告らの上記
不正競争行為又は不法行為と相当因果関係のある損害に当たる。
イ原告の損害額
(ア)前記アのとおり,原告は,被告らの前記2(1)及び3(1)の不正競
争行為又は不法行為により,合計230万0250円の損害を被っ
た。
(イ)よって,原告は,被告会社については不正競争防止法4条,民法
709条又は715条(使用者責任)に基づき,被告A及び被告Bに
ついては不正競争防止法4条又は民法709条に基づき,被告らに対
し,各自,前記(ア)の損害額の内金210万円及びこれに対する訴状
送達の日の翌日(被告会社及び被告Bにつき平成20年3月20日,
被告Aにつき同年4月17日)から各支払済みまで民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)被告らの反論
ア被告会社の反論
(ア)原告主張の損害の発生及び損害額は,いずれも争う。
(イ)原告主張の原告のD,C及びEに対する本件商品①ないし③の値
引き返金による損害と原告主張の被告らによる不正競争行為又は不法
行為との間には相当因果関係がない。
aまず,原告が主張するように,原告が詐欺的商法やモニター商法
などを行っていないのであれば,原告がD,C及びEからの値引き
要求に応じる法律上の義務はないはずであり,上記値引き要求は,
単に自らの利益享受目的から原告に義務なきことを強制したものに
ほかならず,脅迫・強要・恐喝に当たる行為といえるから,原告に
損害が生じたとしても,このような脅迫的言動との間に最も強い相
当因果関係を認めるべきである。
次に,原告は,D,C及びEと協議の上,Dには100万円,C
には70万0250円,Eには60万円とそれぞれ異なった金額の
返金の合意をしており,その金額に合理的算出根拠がないように見
受けられることからすれば,減額の決定は原告の自由意思によるも
のといわざるを得ない。仮に原告がクレジット会社との関係を考え
る余り,減額返金に応じたとしても,その返金の責任は,原告の誤
った経営判断によるものであり,その誤りを被告らに転嫁すべきで
はない。すなわち,クレジット会社と顧客間の立替払契約と,原告
と顧客間の売買契約は別個の契約であり,一般に立替払契約は代位
弁済契約であると解されているから,売買契約上の抗弁事由を立替
払契約において主張することはできないのが原則であり,顧客がク
レジット会社に対して当然に売買契約履行上の抗弁を主張すること
ができるわけではない。一方,D,C及びEが本件商品①ないし③
の設置・引渡しを受け,それを問題なく使用していながら,原告の
過去の営業方法の不当性を主張して支払を拒絶することが無制限に
許されるわけではない。そもそも原告が不当な営業方法など行って
いないのであれば,顧客に支払拒絶の抗弁を提出する権利はなく,
加盟店である原告がクレジット会社との関係で取引停止となること
は考えられない。
以上のとおり,原告がD,C及びEに対し返金するに至るプロセ
スには,D,C及びEの脅迫的言動,クレジット取引停止に関する
原告の誤解,原告とD,C及びEとの協議・返金の合意といった複
数の事情が介在し,最終的には原告がある程度自主的に返金を決定
しているから,原告主張の値引き返金による損害と原告主張の被告
らによる不正競争行為又は不法行為との間には相当因果関係がな
い。
b原告においては,原告の営業担当者が,自ら販売価格を決定でき
るのであるから,少なくとも赤字にならない額までの値引きは可能
であり,その範囲での返金は,自由意思に委ねられるべき範囲の減
額である。したがって,相場ないし相場より低い金額までの減額で
なければ,原告にとってやむを得ず被った損害とはいえない。
ところで,経済産業省は,平成20年度「住宅用太陽光発電導入
支援対策費補助金」の支給基準として,1kW当たり70万円以下
の工事であることを要求しており(乙5の1,2),また,一般
に,1kW当たりの設置価格は平均60∼70万円とされている(
乙6)。少なくとも国の補助金の支給基準である70万円×3.1
5kWの価格(基準額)までであれば営業担当者が値引きをして
も,損害はないはずである。
そして,原告のD,C及びEに対する一部返金後の販売価格は,
上記基準額を上回り,原告がそれぞれ100万円以上の利益を上げ
ていることは確実であるから,値引きによる原告の損害として評価
すべき金額はゼロであるといわざるを得ない。
イ被告A及び被告Bの反論
(ア)原告主張の損害の発生及び損害額は,いずれも争う。
(イ)原告がD,C及びEに対して「モニター」などと言う言葉を一切
使わずに営業をし,D,C及びEとの間で,正当な契約を締結したの
であれば,その後になって,突然被告A及び被告Bが現れて「原告は
違法なモニター商法をしている。」などと述べたとしても,D,C及
びEとすれば,理解に苦しむはずである。
ましてや,D,C及びEが初めて会う被告A及び被告Bから,聞い
たこともない「モニター商法」の意味についてわざわざ説明を受け,
その結果,原告が違法なモニター商法を行っているとの確信に達して
原告にクレームを付け,かつ,原告との間で商品代金の一部について
返金の合意に達するなど,到底あり得ない。
また,何らの問題もなく,正当に営業活動を行っている業者が苦情
を言われただけで,原告が主張するように問題のある業者としてブラ
ックリストに載ったり,あるいは消費者センター等から連絡を受けた
メーカーから商品の納入が止まることなどあるはずがない。
原告がD,C及びEとの間で上記返金の合意をするに至ったのは,
被告A及び被告Bが原告が主張するような虚偽の事実を告知したこと
によるものではなく,原告がD,C及びEに対し発電量や売電額等に
ついて実際と大きく異なる説明をして営業・販売を行ったことによる
ものというべきである。
第4当裁判所の判断
1被告A及び被告Bによる虚偽の事実の告知の有無(争点1)について
(1)原告は,被告A及び被告Bは,平成19年11月9日及び10日,原告
とD間の本件商品②の販売契約を解約させて被告会社と新たな契約の勧誘
をする目的でD宅を訪れ,Dに対し,メモ(甲2)を見せて,①原告
は,「モニター商法,詐欺的な商法といった違法な販売をしている」,
②「原告の販売価格は高い(普通は340万円位)」,③原告がDに示し
た太陽光発電システムの発電量には嘘がある旨述べ,また,被告A及び被
告Bは,D宅を訪れたのと同時期に,C宅及びE宅を訪れ,C及びEに対
し,上記①ないし③と同じ内容を述べたが,上記①ないし③はいずれも真
実に反するから,被告A及び被告BがD,C及びEに対し上記のとおり述
べたことは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる旨主
張するので,以下において判断する。
(2)前記争いのない事実等と証拠(甲1ないし5,7ないし10,12ない
し17,21ないし23,乙1,2,7,丙1ないし3(以上,枝番のあ
るものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認
められる。
ア被告Bは,平成12年4月に,被告Aは,平成18年5月に原告に入
社し,住宅用太陽光発電システム及びオール電化機器の販売の営業を担
当していた。
被告B及び被告Aは,被告会社の代理店募集広告を見てこれに応募し
た。
被告Bと被告会社は,平成19年5月22日,被告Bが被告会社の取
扱商品(「省エネルギー設備機器,関連部品及びこれにともなう設置工
事」)の継続的な販売活動を行い,被告Bの顧客に被告会社の取扱商品
を販売し,その引渡しを完了したときは,被告会社が被告Bに対し販売
手数料を支払う旨の取引基本契約(乙2)を締結した。
また,被告Aも,同日,被告会社との間で,上記取引基本契約と同様
の内容の取引基本契約(乙1)を締結した。
その後,被告Bは,同年6月に原告を退職し,前記取引基本契約に基
づいて,被告会社の取扱商品の訪問販売の営業を行うようになり,ま
た,被告Aも,同年9月に原告を退職し,同様に,被告会社の取扱商品
の訪問販売の営業を行うようになった。
イ(ア)被告Bは,平成19年8月ころC宅を,同年10月ころE宅をそ
れぞれ訪問した。
被告Bが訪問した当時,C宅には,原告から同年4月21日に購
入した本件商品①(住宅用太陽光発電システム(太陽電池200W
モジュールパネル15枚),エコキュート1台及びIHクッキング
ヒーター1台)が,E宅には,原告から同年10月14日に購入し
た本件商品③(住宅用太陽光発電システム(太陽電池210Wモジ
ュールパネル15枚),エコキュート1台及びIHクッキングヒー
ター1台)がそれぞれ設置済みであった。
(イ)原告とCは,平成19年10月30日,原告がCに対し,本件商
品①の代金(399万円)の値引き分として合計60万円を返金する
旨の合意をした。
ウ(ア)被告B及び被告Aは,平成19年11月上旬ころ,D宅を訪問し
た。
被告B及び被告Aが訪問した当時,D宅には,原告から同年10月
14日に購入した本件商品②(住宅用太陽光発電システム(太陽電池
200Wモジュールパネル15枚),エコキュート1台及びIHクッ
キングヒーター1台)が設置済みであった。
被告Bは,上記訪問の際,Dに対し,被告Bが作成したメモ(甲
2)を交付した。
上記メモには,次のような記載があった。
『①②③④
モニター商法⇒他住宅メーカー⇒消費者センター(本社)
↓一般売買価格大阪サンヨーエナジー
禁止見積り
(課長以上に話しをする)』
『一般価格¥340∼350円
差額返金
<A>社名モニター価格
¥390円
米売電金額のメモ
担当上司
※メモ
「営業マンがお客様に説明したことが実際設備を使われた後に,例
えば電気の取れる量(発電量)が大きく食い違っていた場合等は特
定商取引法違反で訴えることが出来ます。その場合クーリングオフ
は消滅します。つまりいつでも解約が出来るということです。」』
(イ)また,被告Aは,上記訪問の際,Dの求めに応じて,「株式会社
三井建築設計企画室A」と記載された名刺(甲7の1,2)を交
付した。被告Bも,Dから名刺の交付を求められたが,持ち合わせて
いなかったので,交付しなかった。Dは,被告Bが自らを「山本」と
名乗ったので,上記名刺の裏面(甲7の2)に,「山本」と書き留
め,また,被告B及び被告Aが乗ってきた乗用車のナンバー(自動車登
録番号)を記載した。
(ウ)原告の常務取締役のG(以下「G」という。)は,平成19年1
1月ころ,Dから,自宅に呼ばれ,被告Bが作成した前記メモ(甲
2)及び被告Aの前記名刺(甲7の1,2)を見せられた。
原告は,上記名刺の裏面記載の乗用車のナンバーを手掛かりに当該
乗用車の使用者を調査した結果,同月16日付け登録事項等証明書(
甲8)から,その使用者が被告Bであることが判明した。
エ原告の代理人弁護士は,平成19年11月21日到達の内容証明郵
便(甲1の1,2)で,被告会社に対し,被告A及び被告Bが,原告を
退職した後,被告会社の営業社員として,原告が既に契約・設置済み
の「太陽光発電・オール電化システム」の顧客先を訪れて,原告があた
かも詐欺的な商法を行ったかの如く虚偽の事実を告知して,原告との契
約を解約するよう行動している事実が発覚している,被告会社は,被告
A及び被告Bの両名を監督する立場にある者として,今後はこのような
行動をとることがないよう監督されるよう警告する旨の通知をした。
オ(ア)原告とDは,平成19年11月28日,原告がDに対し,本件商
品②の代金(401万円)の値引き分として合計100万円を返金す
る旨の合意をした。
(イ)原告は,平成20年3月6日,本件訴訟を提起した。
(ウ)原告とEは,平成20年3月8日,原告がEに対し,本件商品③
の代金(379万5000円)の値引き分として合計70万0250
円を返金する旨の合意をした。
カ原告の営業に関する苦情や相談等についての弁護士法23条の2に基
づく照会に対する国民生活センター東京情報公開室情報部作成の平成2
1年3月19日付け回答書(丙3の2)中には,次の①ないし⑥のよう
な記載がある。
①「新エネルギー計画」という名称が登録されているものの営業に関す
る相談は,2004年度から2008年度までに合計42事例あった
こと,上記42事例の内容は,相談受付機関が相談者の申出を要約し
たもので,事実関係が必ずしも確認されたものではないこと。
②事例番号6[概要]「訪問で勧誘を受けた。システムを取り付けれ
ば月々15000円ぐらいの売電分があり,光熱費も以前の3分の1
ぐらいになると言われた。新築を購入したばかりでローンを抱えてい
るので無理,と言ったら,新たに支払うことはないといわれた。しか
し実際は2万円ぐらいの支出。すぐに苦情を言って30万円を2回に
分けて支払ってもらったが,その後なかなか話し合いに応じない。」
③事例番号14[概要]「光熱費が毎月1万5千円かかっていたがオー
ル電化にすれば3千円から5千円になるし,太陽光発電は1日8時間
で月20日発電すれば月1万4千円から1万5千円の収入に必ずなる
補償するというので契約した。しかし今月の光熱費は1万円請求され
たし電力の収入は5千円程度にしかならなかった。説明と違うので損
失の補填や解約について業者と交渉したいがどうしたらよいか。」
④事例番号15[概要]「自然冷媒給湯器を製造しているメーカーの代理
店だと言う。オール電化にすると光熱費が安くなる。5軒限定のモニ
ター価格で提供すると言うが,具体的な価格は聞いていない。」
⑤事例番号16[概要]「大手電気メーカーの社員と錯覚するような名刺
を持ち業者が来訪。ソーラーシステムにして余った電気を電力会社に
売れば毎月1万8千円位の利益になると説明を受けたが,メーカーに
確認したら当該製品の発電力はもともと1万円位だと分かった。メー
カーのモニターになれば値引きすると言われたが,モニター制度がな
い事が分かった。又自分で調べたら,金額が相場より100万円位高
いような気がする等の理由で解約したい。」
⑥事例番号17[概要]「訪販で太陽光発電システムの勧誘を受けた。そ
の際の説明によると,余剰の電力は電力会社に売ることが可能で,毎
月の平均売電額は1万円,ガス電気代の節約額は1万2千円以上との
事。装置の割賦代金を差し引いても毎月の負担は5千円くらいで済む
と言われた。しかし,実際に設置してみて,売電額,節約額とも非常
に低額で,説明と全く違う。騙された感じで,納得いかない。」
(3)ア原告は,被告A及び被告Bは,平成19年11月9日及び10日,原
告とD間の本件商品②の販売契約を解約させて被告会社と新たな契約の
勧誘をする目的でD宅を訪れ,Dに対し,メモ(甲2)を見せて,①原
告は,「モニター商法,詐欺的な商法といった違法な販売をしてい
る」,②「原告の販売価格は高い(普通は340万円位)」,③原告が
Dに示した太陽光発電システムの発電量には嘘がある旨述べたことが,
原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる旨主張する。
被告B及び被告Aが,平成19年11月上旬ころ,D宅を訪問したこ
と,被告Bは,上記訪問の際,Dに対し,被告Bが作成したメモ(甲
2)を交付したことは,前記(2)ウ(ア)認定のとおりであることからすれ
ば,原告の上記主張は,被告B及び被告Aが上記訪問の際にDに対し上
記①ないし③の虚偽の事実を告知したことをいうものと解される。
そこで,以下においては,被告A及び被告Bは,上記訪問の際に,D
に対し上記①ないし③を述べたかどうか,又そのことが虚偽の事実の告
知に当たるかどうかについて判断する。
イ原告がモニター商法,詐欺的な商法をしているとの点について
原告は,詐欺商法とは,文字どおり,消費者に対して,虚偽の事実を
申し向けて錯誤に陥れた上で,契約を締結させる方法であり,「モニタ
ー商法」とは,商品を購入してモニター会員になれば,商品を利用した
感想をアンケートに記入して提出したり,商品を着用して展示会に参加
するなどの労務を果たすことにより,毎月高額なモニター料を支払うな
どと勧誘して商品を購入させるものの,次第にモニター料を支払わなく
なることによって,結局は,商品代金の支払が残るという詐欺的な商法
を意味するところ,被告A及び被告Bが,原告があたかも上記のよう
な「モニター商法」をしているかの記載のあるメモ(甲2)を示して,
Dに対し,「原告がモニター商法,詐欺的な商法をしている」旨述べた
ことは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる旨主張
する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア)被告BがDに交付したメモ(甲2)には,「モニター商法→禁
止」,「モニター価格¥390円」などの記載がある(前記(2)ウ(
ア))。上記記載からはモニター商法が禁止されていること,モニター
価格が390万円であることを表現したものと読み取ることができる
ものの,上記メモ全体を読んでも,いかなる意味で「モニター商法」
の文言を用いたのかは定かでない。
また,Gの陳述書(甲10)中には,原告の常務取締役のGは,平
成19年11月ころ,Dから,自宅に呼ばれ,いきなり,「お前のと
ころは,詐欺商法をやっているのか。警察に行くぞ。消費者センター
に行くぞ。」と怒鳴られた,どういうことなのかと尋ねると,「当社
の販売価格が高いとか,モニター商法をしているとか,発電量に嘘が
あるといった内容でした。」,Dと話をする過程で,Dから,甲2の
メモを見せられ,被告Bと被告Aが何度かD宅を訪れ,Dに対し,「
原告の販売価格は高い(普通は340万円位)」,「モニター商法,
詐欺的な商法といった違法な販売をしている」といった根も葉もない
虚偽の事実を告知していたことが判明した旨の記載部分がある。
しかし,Gの上記陳述書には,Dがいかなる意味で「モニター商
法」という言葉を用いたのか,被告B又は被告Aがどのような理由か
ら原告がモニター商法,詐欺的な商法といった違法な販売をしている
とDに説明したのか,その具体的な経緯や理由についての記載はな
い。
(イ)この点について被告A及び被告Bは,原告が主張するような「モ
ニター商法」の意味で,原告が違法なモニター商法をしている旨述べ
たことはなく,被告Bが,Dから,原告がDに行った説明を聞い
て,「原告がモニターなる言葉を用いて,あたかもオール電化システ
ムが売電などによって無料になるかのように誤信させて販売したので
あれば,そのような販売方法は違法である」という趣旨で,「そのよ
うなモニター商法というものは違法である」旨伝えたと主張し,これ
に沿うように被告Bの陳述書(丙1)中には,被告Bは,Dの妻か
ら,原告担当者の説明内容について「モニターでただみたいな言い方
だった。」と聞いた,「「原告がモニター募集をすれば,結果的には
お金がかからないということを言っていた」と聴いたので,そのよう
なモニター商法は違法だと言っただけのことです。」との記載部分が
ある。
そして,本件においては,被告BがDから聞いた原告の説明内容
が,被告Bの上記陳述書の記載部分と相違することをうかがわせる特
段の反証はされておらず,被告Bの上記陳述書の記載部分は措信する
ことができる。なお,原告は,原告担当者のFの陳述書(甲22)を
提出しているが,上記陳述書には,「1.被告の陳述書に記述されて
いるように,当該設備での売電量を15,000∼16,000円/
月などと,顧客に申し述べたことはありません。」,「2.三洋の販
売資料に基づいて,発電量は約10,000円/月であり,売電量
は,それから消費分を差し引いた余剰分であることを申し述べており
ます。」,「3.私の,販売先の顧客はすべて,設備を喜んでご使用
戴き,快適な生活を享受されております。」との記載があるだけで,
FがDにどのような説明をして本件商品②の販売に至ったのかについ
て具体的な記載はなく,上記陳述書は,被告Bの上記陳述書の記載部
分の信用性を左右するものとはいえない。
かえって,前記(2)カの認定事実によれば,原告が住宅用太陽光発電
システム及びオール電化機器の販売の勧誘をする際に,モニター価格
で提供する旨述べたり,実際とは異なる売電額の説明をしたなどとし
て消費者から国民生活センターに相談が寄せられたことがうかがわれ
る。このことは,被告Bの上記陳述書の記載部分の信用性を補強する
事情であるといえる。
(ウ)以上の(ア)及び(イ)を総合すると,被告Bが,D又はその妻か
ら,原告担当者がDに行った説明内容を聞いて,Dに対し,原告の販
売方法について「モニター商法」という言葉を用いて「そのようなモ
ニター商法は違法である。」旨述べたことは認められるものの,被告
Bが述べた「モニター商法」が,原告が主張するような「モニター商
法」(商品を購入してモニター会員になれば,商品を利用した感想を
アンケートに記入して提出したり,商品を着用して展示会に参加する
などの労務を果たすことにより,毎月高額なモニター料を支払うなど
と勧誘して商品を購入させるものの,次第にモニター料を支払わなく
なることによって,結局は,商品代金の支払が残るという詐欺的な商
法)を意味するものと認めることはできない。
そして,被告Bが上記のとおり述べたことが原告の営業上の信用を
害する虚偽の事実の告知に当たるとまで認めることはできない。
また,被告Aについては,そもそも被告AがDに対し原告の販売方
法について「モニター商法」という言葉を用いて説明したことを認め
るに足りる証拠はない。
ウ原告の販売価格は高いとの点について
原告は,原告のDに対する本件商品②の販売価格は,リーズナブルな
ものであるにもかかわらず,被告A及び被告Bが,Dに対し,「原告の
販売価格は高い(普通は340万円位)」旨述べたことは,原告の営業
上の信用を害する虚偽の事実の告知に当たる旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア)原告のDに対する本件商品②(住宅用太陽光発電システム(太陽
電池200Wモジュールパネル15枚),エコキュート1台及びIH
クッキングヒーター1台)の販売価格が401万円であることは,前
記(2)ウ(ア)及びオ(ア)認定のとおりである。
そして,甲2のメモには,「一般価格¥340∼350円」との
記載があること(前記(2)ウ(ア)),被告Bの陳述書(丙1)中には,
被告Bが,平成19年11月上旬ころ,D宅を訪問した際,Dの妻か
ら,被告会社の取扱商品の価格を聞かれて,「消費税別で320万円
から340万円です。」と答えた,「価格についても,通常は,32
0万円から340万円で販売しているので,それに比べると,390
万円は高いのではないか言っただけです。」との記載部分があること
に照らすならば,被告Bは,Dに対し,本件商品②と同種の他社商品
の販売価格は,通常340万円位であるのに比べて,原告の販売価
格(401万円)は高いという趣旨のことを述べたことが認められ
る。
(イ)この点について原告は,太陽電池モジュールパネルのメーカー希
望価格はパネル1枚につき14万円から15万円であること,原告が
営業担当社員に対して当初の提示額から概ね2割の値引きを認めてお
り,本件商品②と同様にパネル枚数が15枚の商品の場合には,当初
見積額を530万8601円で提示し,最終的に値引き後の価格41
1万8000円で販売していたこと,原告は,Dに対して上記と同様
の見積額を提示し,約2割の値引きをした結果,本件商品②の販売価
格は401万円となったこと,被告Bも,原告に在籍中に,本件商品
②とほぼ同レベルの商品を430万円あるいは388万円で販売して
いたことに照らすならば,原告のDに対する本件商品②の上記販売価
格は,通常どおりの値引率に基づく販売価格であり,リーズナブルな
ものであるから,被告Bの説明は,虚偽の事実の告知に当たる旨主張
する。
しかし,原告の上記主張は,本件商品②と同種の他社商品の販売価
格は通常340万円位であるとの被告Bの説明が誤りであることの根
拠を示すものでも,原告の販売価格が他社商品と比べて高額でないこ
とを基礎付けるものでもないから,被告Bの説明が虚偽であることの
根拠となるものではない。
かえって,千代田建装工事株式会社作成の太陽光発電・オール電化
システム工事一式についての代金341万9440円(消費税込み)
とする見積書(丙7)や,被告会社の取扱商品(太陽電池モジュール
のパネル枚数16枚)についての代金333万3750円(消費税込
み)とする見積書(丙8)に照らすならば,本件商品②と同種の他社
商品の販売価格は通常340万円位であるとの被告Bの説明は,一応
裏付けのあるものといえる。
(ウ)そうすると,被告Bが,Dに対し,本件商品②と同種の他社商品
の販売価格は,通常340万円位であるのに比べて,原告の販売価
格(401万円)は高いという趣旨のことを述べたことが,虚偽の事
実の告知に当たるものと認めることはできない。
また,被告Aについては,そもそも被告AがDに対し本件商品②と
同種の他社商品の販売価格は,通常340万円位であるのに比べて,
原告の販売価格(401万円)は高いという趣旨のことを述べたこと
を認めるに足りる証拠はない。
エ原告がDに示した太陽光発電システムの発電量には嘘があるとの点に
ついて
原告は,Dに対し,本件商品②を構成する太陽光発電システムの発電
量に関して断定的な情報を提供したことはないから,被告A及び被告B
が,Dに対し,原告がDに示した太陽光発電システムの発電量には嘘が
ある旨述べたことは,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知に
当たる旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
(ア)Gの陳述書(甲10)中には,原告の常務取締役のGは,平成1
9年11月ころ,Dから,自宅に呼ばれ,原告が示した「発電量に嘘
がある」と言われた旨の記載部分がある。
しかし,Gの上記陳述書全体を精査しても,Dがいかなる意味で「
発電量に嘘がある」と言ったのか,Dはなぜそのように考えたのかな
ど,その具体的な経緯や理由を読み取ることはできない。
(イ)この点について被告A及び被告Bは,Dから,原告が1か月に1
万5000円から1万6000円位売電できると説明をした旨聞かさ
れ,Dに対し,原告の説明が実際と異なることを説明したにすぎず,
原告が主張するように原告がDに示した太陽光発電システムの発電量
には嘘があると単に述べたものではない旨主張する。これに沿うよう
に被告Bの陳述書(丙1)中には,被告Bが,D宅を訪問した際に,
原告が「売電については,どのようなことを言っていたか」と尋ねた
ところ,Dから,「1万6000円は売れる。」との説明を原告から
受けたとのことであったので,「それはあり得ないと思うので,サン
ヨーの大阪の本部に電話をしてみてはいかがですか。」と言った,総
発電量の仕方を簡単に教えた上,総発電量でも,D宅ではせいぜい8
000円か9000円位にしかならず,昼間電気を使用することを考
えればせいぜい4000円位しか売電できないことを説明した旨の記
載部分がある。
これに対し原告担当者のFの陳述書(甲22)には,前記イ(イ)の
とおり,「1.被告の陳述書に記述されているように,当該設備での
売電量を15,000∼16,000円/月などと,顧客に申し述べ
たことはありません。」,「2.三洋の販売資料に基づいて,発電量
は約10,000円/月であり,売電量は,それから消費分を差し引
いた余剰分であることを申し述べております。」との記載部分がある
が,Fの上記陳述書は,FのDに対する勧誘態様を具体的に説明する
ことなく,単に売電額や発電量の説明内容についての結論のみを述べ
るものであって,被告Bの上記陳述書の記載部分の信用性を左右する
ものではなく,他にこれを左右するに足りる証拠はない。
かえって,前記(2)カの認定事実によれば,原告が住宅用太陽光発電
システム及びオール電化機器の販売の勧誘をする際に,実際とは異な
る売電額の説明をしたなどとして消費者から国民生活センターに相談
が寄せられたことがうかがわれる。このことは,被告Bの上記陳述書
の記載部分の信用性を補強する事情であるといえる。
(ウ)以上の(ア)及び(イ)を総合すると,原告が主張するように,被告
Bが,Dに対し,原告がDに示した太陽光発電システムの発電量には
嘘がある旨述べたとしても,それは,被告Bが,Dに対し,「1万6
000円は売れる。」との売電量に関する原告の説明が実際と異なる
ことを説明したにすぎないものというべきであるから,原告の営業上
の信用を害する虚偽の事実の告知に当たるものと認めることはできな
い。
また,被告Aについても,これと同様である。
(4)ア原告は,被告A及び被告Bは,前記(3)アと同時期に,C宅及びE宅
を訪れ,C及びEに対し,前記(3)ア①ないし③と同じ内容を述べたが,
上記①ないし③はいずれも真実に反するから,被告A及び被告BがC及
びEに対し上記のとおり述べたことは,原告の営業上の信用を害する虚
偽の事実の告知に当たる旨主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
イまず,被告Aについては,被告AがC宅及びE宅を訪れ,C及びEと
会って話をしたことを認めるに足りる証拠はない。
ウ次に,被告Bについては,被告Bが平成19年8月ころC宅を,同年
10月ころE宅をそれぞれ訪問したことは,前記(2)イ(ア)認定のとおり
である。
しかし,被告BがC宅及びE宅を訪問した際に原告の販売方法等に関
しどのように述べたのかについては,Gの陳述書(甲10,23)にお
いてすら何ら具体的な記載がなく,結局,本件全証拠によっても,被告
Bが原告が主張するような虚偽の事実を述べたことを認めるに足りな
い。
(5)以上によれば,被告A及び被告BがD,C及びEに対し原告の営業上の
信用を害する虚偽の事実を告知したとの原告の主張は,理由がない。
2被告A及び被告Bの不正競争又は不法行為の成否(争点2)について
(1)原告は,原告と競争関係にある被告A及び被告BがD,C及びEに対し
原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した行為は,不正競争防止
法2条1項14号の不正競争に該当する旨主張する。
しかし,前記1で説示したとおり,被告A及び被告BがD,C及びEに
対し原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものとは認められ
ないから,原告の上記主張は,理由がない。
(2)原告は,被告A及び被告Bは,原告が行っている訪問販売で購入者との
間で何らかのトラブルが発生し,購入者である消費者が消費者センター等
の公的機関に苦情を申し入れたり,相談をした場合,いわゆる問題のある
業者としてブラックリストに載ったり,あるいは連絡を受けたメーカーか
ら商品が納入されなくなり,原告の営業が立ち行かなくなる可能性が非常
に高いことを十分知りながら,原告に在籍中に知った原告の販売先である
D,C及びEをわざわざ訪ねた上,D,C及びEに対し虚偽の事実を告知
したり,「消費者センター及びメーカー(大阪サンヨーエナジー)に問い
合わせた方がいい。」などと述べ,不信感,不安感を煽り,原告に苦情を
申し入れるように仕向けたものであるから,被告A及び被告Bの上記行為
は,原告に対する営業妨害行為として,民法709条の不法行為を構成す
る旨主張する。
そこで検討するに,原告とCとの本件商品①の販売契約が締結されたの
は,被告Bが原告を退職した平成19年6月より前の同年4月21日であ
るが(前記1(2)ア,イ(ア)),被告Bが原告に在籍中にCが原告の取引先
であることを知っていたとまで認めるに足りる証拠はない。また,原告と
Dとの本件商品②の販売契約,原告とEとの本件商品③の販売契約が締結
されたのは,いずれも同年10月14日であって(前記1(2)イ(ア),ウ(
ア)),被告Bの退職後であるから,被告Bが原告に在籍中にD及びEが原
告の取引先であることを知っていたものと認めることはできない。
同様に,被告Aは,同年9月に原告を退職しているから(前記1(2)
ア),被告Aが原告に在籍中にDが原告の取引先であることを知っていた
ものと認めることはできず,また,前記1(4)イのとおり,被告AがC及び
Eを訪問したものとは認められない。
そして,前記(1)のとおり,被告A及び被告BがD,C及びEに対し原告
の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものとは認められない以
上,被告BがD,C及びEに対して原告との取引について「消費者センタ
ー及びメーカー(大阪サンヨーエナジー)に問い合わせ方がいい」などと
述べたことにより,結果的に,D,C及びEが原告に苦情を申し入れるこ
とになったとしても,そのことをもって直ちに違法な行為に当たるとまで
評価することはできない。
なお,被告Bは,D宅を訪問した際,Dに対し,本名を述べずに「山
本」との偽名を名乗っており(前記1(2)ウ(イ)),この点は不自然な行動
であるといえるが,このことをもって被告Bの行為の違法性を基礎付ける
ことはできない。
したがって,被告A及び被告Bの行為が不法行為を構成するとの原告の
主張は,理由がない。
(3)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の被告A
及び被告Bに対する請求は,いずれも理由がない。
3被告会社の不正競争,不法行為又は使用者責任の成否(争点3)について
(1)原告は,被告A及び被告BがD,C及びEに対し原告の営業上の信用を
害する虚偽の事実を告知した行為は,原告と競争関係にある被告会社によ
る不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当する旨主張する。
しかし,前記1で説示したとおり,被告A及び被告BがD,C及びEに
対し原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものとは認められ
ないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がな
い。
(2)原告は,前記2(2)記載の被告A及び被告Bの行為は,営業妨害行為と
して,不法行為を構成するところ,被告A及び被告Bの当該不法行為は,
被告会社の事業の執行について行われたものであるから,被告会社は,原
告に対し,使用者責任(民法715条)を負い,また,仮に被告A及び被
告Bが被告会社の実質的な指揮監督下になかったとしても,被告A及び被
告Bの行為は,被告会社自らの不法行為を構成する旨主張する。
しかし,前記2(2)で説示したとおり,被告A及び被告Bの行為が不法行
為を構成するものとは認められないから,原告の上記主張は,その前提を
欠くものであって,理由がない。
(3)以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の被告会
社に対する請求は,いずれも理由がない。
4結論
以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官大西勝滋
裁判官関根澄子

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