弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意は、原判決は、被告人が同一の日時場所において、無免許で、
かつ、自動車検査証の有効期間が満了した普通乗用自動車を運転した所為につき、
右は一個の行為であるから、右無免許運転の罪と自動車検査証の有効期間が満了し
た車両を運行の用に供した罪とは観念的競合の関係にあると判示しているが、この
判断は所論引用の判例に違反するというのである。
 所論引用の判例(最高裁昭和三九年(あ)第一二六三号同四〇年一月二九日第二
小法廷決定・刑集一九巻一号二六頁)は、無免許で、制限乗車人員を超えて乗車さ
せた第一種原動機付自転車を運転したという事案につき、無免許運転の所為と、乗
車制限違反の所為とが、たまたま同一の運転の機会に行なわれたとしても、両者の
罪は観念的競合の関係にあるものでなく、併合罪の関係にあるものと解するのが相
当であるとしたものであるが、これを本件事案と対比すると、運転者が無免許者で
あり、しかも行為としては運転行為以外にないことは両者に全く共通であり、ただ、
一方は運転した車両が制限乗車人員超過の者の乗車している第一種原動機付自転車
であるのに対し、他方は運転した車両が自動車検査証の有効期間が満了した自動車
であるといういわば運転した車両の具体的状況を異にするにすぎないものであるか
ら、両者は同種の事案というほかなく、したがつて、所論のとおり、原判決は右判
例と相反する判断をしたものといわなければならない。
 しかしながら、刑法五四条一項前段の規定は、一個の行為が同時に数個の犯罪構
成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として
刑を科する趣旨のものであるところ、右規定にいう一個の行為とは、法的評価をは
なれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上
一個のものとの評価をうける場合をいうと解すべきである。
 これを本件についてみると、被告人が本件自動車を運転するに際し、無免許で、
かつ、自動車検査証の有効期間が満了した後であつたことは、車両運転者又は車両
の属性にすぎないから、被告人がこのように無免許で、かつ、自動車検査証の有効
期間が満了した自動車を運転したことは、右の自然的観察のもとにおける社会的見
解上明らかに一個の車両運転行為であつて、それが道路交通法一一八条一項一号、
六四条及び昭和四四年法律第六八号による改正前の道路運送車両法一〇八条一号、
五八条の各罪に同時に該当するものであるから、右両罪は刑法五四条一項前段の観
念的競合の関係にあると解するのが相当であり、原判決のこの点に関する結論は正
当というべきである。以上の理由により、当裁判所は所論引用の最高裁判所の判例
を変更して、原判決の判断を維持するのを相当と認めるので、結局、判例違反の論
旨は原判決破棄の理由とはなりえないものである。
 よつて、刑訴法四一〇条二項、四一四条、三九六条により、主文のとおり判決す
る。
 この判決は、裁判官岸盛一、同天野武一、同江里口清雄の各補足意見、裁判官岡
原昌男の意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官岸盛一の補足意見は、次のとおりである。
 私は、最高裁昭和四七年(あ)第一八九六号昭和四九年五月二九日大法廷判決に
おいて補足意見を述べたが、観念的競合についての私の考え方は、右補足意見で述
べたところと趣旨において同一であるから、ここにこれを引用するほか、裁判官天
野武一の補足意見に同調する。
 裁判官天野武一の補足意見は、次のとおりである。
 私は、最高裁昭和四六年(あ)第一五九〇号昭和四九年五月二九日大法廷判決に
おいて、無免許で酒酔い運転をした場合に右両罪の観念的競合を是認するに際し補
足意見を述べたが、本件は、無免許で自動車検査証の有効期間が満了した自動車を
運転したという点において前者と違反の態様を異にするにとどまり、両者ともに観
念的競合を是認する考え方において全く共通であるから、同一の趣旨を引用するほ
か、裁判官岸盛一の補足意見に同調する。
 裁判官江里口清雄の補足意見は、次のとおりである。
 私は、裁判官岸盛一、同天野武一の各補足意見に同調する。
 裁判官岡原昌男の意見は、次のとおりである。
 観念的競合に関する多数意見の基本的な考え方には異論があるが、本件は私のよ
うな見解でも結論は同じになるので、多数意見の結論に同調する。なお、私の見解
の詳細については、最高裁昭和四七年(あ)第一八九六号昭和四九年五月二九日大
法廷判決における反対意見のとおりである。検察官横井大三、同別所汪太郎 公判
出席
  昭和四九年五月二九日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    吉   田       豊

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛