弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人助川正夫が差し出した控訴趣意書に記載されたとおり
で、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 控訴趣意第一について、
 論旨は原判決が原判示写真(昭和三七年一一月九日に行なわれたA・Bの覚え書
調印式のもの)の所有者をC国のように認定してはいないのであつて、右の写真を
D委員会所有のものだと認定判示しているのである。そして、原判決が証拠として
掲げているEの検察官に対する昭和三九年五月一一日付供述調書によると、右の写
真の所有者がD委員会であることは十分これを認めることができ、一件記録をよく
検討してみてもこの認定に誤りがあるとは考えられない。また、そのように認定で
きる以上、あえて当該写真自体を証拠として取り調べる必要のないことも当然であ
る。したがつてこの点の論旨は理由がない。
 同第二について。
 論旨は、原判示器物毀棄教唆罪についてF展覧会協力会理事長Gが被害者の代理
人としてした本件告訴は、被害者の告訴の意思が明白でなく、他方告訴の代理はい
わゆる表示の代理に限ると解すべきであるから、結局無効だというのである。
 <要旨>そこで、まず、刑事訴訟法第二四〇条に規定されている代理人による告訴
は告訴権者がみずから決定した告訴の意思を代理人が単に表示するいわゆる
表示代理の場合だけに限られるのか、それとも告訴をするかどうかの意思決定まで
も告訴権者が代理人に一任するいわゆる意志代理の場合をも包含するのかについて
考えてみなければならない。そもそも告訴とは捜査機関に対して一定の犯罪事実を
申告し犯人の訴追を求める意思表示をいらのであるが、このような意思はその性質
上被害者本人だけが決定すべきものであると考えれば、右にいら意思代理を許す余
地はなく、同条にいう告訴の代理はつねに被害者本人の決定した告訴の意思を単に
伝達し表示するいわゆる表示代理に限られることになろう。しかしながら、よく考
えてみると、告訴をするかどうかは決して単なる犯人に対する憎しみなどの感情だ
けから決定さるべきものではなく、犯人の訴追または処罰によつて生ずる種々の影
響ないしは副作用をも考慮し判断したうえで決定されるものである。その最もよい
例は強姦罪および名誉段損罪の告訴の場合で、これらの罪においては告訴によつて
訴追がなされた場合これによつて被害者の名誉が一層傷つけられる虞れのあること
がこれを親告罪としてその訴追を被害者の意思に係らせた理由なのであつて、この
ことは、その告訴をするかどらかの決定が、単に犯人の処罰を希望するかどうかと
いらことだけではなく、訴追によつて生ずる影響などをも理性的に判断しかれこれ
勘案したろえでなされるものであることを示しているのである。そして、この理
は、他の種類の親告罪、たとえば本件の器物投棄罪などにおいても多かれ少なかれ
同一だといわなければならない。そこで、告訴の性質を右のよ弓に考えるならば、
これをするかどうかの判断は、必ずしも被害者本人しかできないというものではな
く、むしろ場合によつては他人の判断に一任したほうがより適切であることも十分
考えられるのであるから、告訴の性質上意思代理を許さないとする理由ないといら
べきである。しかも、他方、本人の決定した意思を単に伝達し表示するだけのいわ
ゆる表示代理ならば、あえて明文の規定をまたなくとも訴訟行為一般に通じて許さ
れると解されるばかりでなく、代理という文言の法律における用例が一般にいわゆ
る意思代理を指していることからみても、刑事訴訟法第二四〇条にいう代理には意
思代理を含むものと解しなくてはならない。昭和三五年八月一九日の最高裁判所第
二小法廷判決(刑集一四巻一〇号一、四〇七頁)も、その理由として説示するとこ
ろからみると、この解釈を前提として原判決を破棄したものと解されるのである。
 ところで、本件では、記録によると、被害物件の所有者であるD委員会の代表者
とみるべきF展覧団(右委員会の日本におけるF展覧会実施のための機構)団長H
(同委員会副主席)が捜査機関に対し原判示器物投棄罪について直接告訴をした事
実は認められないし、また告訴をする意思をみずから決定したという事実も明白に
は認められない。告訴は、F展覧会協力会の理事長であるGが代理人としてしてい
るのである。しかし、右F展覧会協力会は前記展覧会の開催について主催者である
D委員会からその管理、運営等をすべて委ざれ、これを代行していたもので、本件
の器物毀棄の犯罪事件が発生した際もH団長は告訴の問題を含めてこの問題の処理
を右協力会と日本の警察当局に一任する旨を言明しているのであつて、その際同団
長が犯人の訴追ないしは処罰を望まない意思を有していたものでないことは明らか
であるから、これによつて右協力会の理事長であるGに対し告訴についての代理権
が与えられたことは明白である。そして、前に説明したとおり告訴についての代理
人が自己の判断によつて告訴をすべきかどうかを決定することは許されるところで
あるから、Gがその判断に従つてした本件告訴はまさに有効だといわなければなら
ない。それゆえ、この点の論旨もまた理由がない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 新関勝芳 判事 中野次雄 判事 伊東正七郎)

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