弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴をいずれも棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣旨は末尾添附の被告人A弁護人飯山一司被告人B弁護人飯山一司及
び被告人C、同D弁護人松永東、同名尾良孝各名義の夫々控訴趣意書と題する書画
に記載の通りてある。これに対して当裁判所は次の様に判断する。
 A被告人弁護人論旨第一点に対して。
 原判決が被告人について共同正犯の窃盗事実を認定したことはその事実理由に徴
して明白である。而してこ<要旨第一>れに対する法令の適用に当つてはそれが如何
なる犯罪を構成し、如何なる刑罰の種類及び範囲において罰せられるか
を明かにすれば足るのであるから原判決が既に刑法第二三五条を適用した以上、同
法第六〇条の如く右の要件に直接に影響を及ぼさない総則的規定は必ずしもその適
用を明示するを要しない。従つて原判決の理由全体を綜合解釈すれば右の規定は原
判決に際して形式的にはその適用を明示せられなくても、実質的には適用せられて
いると解するを相当とする。原判決には所論の様な法令の適用の誤りは存しない。
論旨は理由がない。
 同論旨第二点及び第三点に対して。
 被告人の公判廷における陳述はそれが任意になされたかぎりこれを証拠にとり得
ることは現行法上明白である。而かも被告人は訴訟の当事者であつて純然たる証人
ではないからその陳述を証拠にとるに当つては必ずし<要旨第二>も普通の証人にお
けると同様の形式的要件を具備するを要しない。即ち共同正犯の場合においてその
一人が公判廷において自己の犯行について任意に自白しこれを聞知せる
他の被告人が自らも公判廷において任意に犯行を自白した場合においては、その一
人の自白を以てその他人の犯行に対する証拠となすにおいて何等採証上の違法を存
しない。所論は畢竟共同正犯者の一人がその他人に対する関係を普通の証人が単独
正犯者に対する関係と同視し、それに基いて独自の見解を述べたものに外ならない
から之を採用し難い。原審公判調書によると原審の共同正犯者なる被告人等はいす
れも自己並びに他人の犯行に関して自己の経験せるところを任意に陳述したものと
解せられるから、その一人の自白を以てその他人の犯行の証拠とすろにおいて毫も
採証上の違法を存しないと謂うべきである。従つて共同正犯者たる共同被告人の公
判廷における自白は他の同様なる共同被告人の犯行を認定する証拠とほる能力を十
分に備えていると謂うべきである。原判決も亦斯かる見解に基いて共同正犯者の自
白を交互に証拠に供したものと解すべきである。而して斯かる証拠並びに証人Eの
原審公廷における証言をA被告人の原審公廷における自白と綜合考量するときはA
被告人か判示他人と判示犯行を共謀して共同正犯の関係にあつたことを立証するこ
とができる。従つて原判決は被告人の共同正犯の認定についても各被告人の自白以
外に他の適法な証拠を挙示しておることになる。されば原判決には憲法第三十八条
に違反するとの所論違法も亦存しない。結局原判決には所論違法は一も存せず、論
旨はいずれも理由がない。
 C被告人及D被告人弁護人論旨同第三点に対して。
 謄本は正本の存在を前提とするけれども、既に謄本として正当に成立した以上は
その公信力において何等欠<要旨第三>くるところあるを見ない。従つてそれが証拠
として法廷に提出せられ、相手方においてその提出に同意し、それにつ
いて正規の証拠調が行われた場合には、それは適法な証拠となるのであつて、正本
が提出せられ又はその提出不能の事由が疎明せられることがなくても右謄本の証拠
としての適法性には何等の消長を来さない。されば原判決には所論違法は存せす、
論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 佐伯顕二 判事 久和田益喜 判事 仁科恒彦)

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