弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役二年に処する。
     但し本判決確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     原審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人林武雄の控訴趣意書に記載されているとおりであるから
ここにこれを引用するが、これに対し当裁判所はつぎのように判断する。
 控訴趣意第一点について
 所論に鑑み記録を精査し、原判決挙示の各証拠及び原審及び当裁判所が取調べた
すべての証拠を仔細に検討すると、被告人の原判示犯罪事実は原判決挙示の各証拠
によつて優にこれを認めることができ、その認定に誤認ありとは認めがたい。すな
わち被害者たるA、Bの両名は泥酔していたとはいえ、夜間一面識もない被告人の
居宅の扉を開いて侵入し、飯場をぶち壊すなどと大声でわめきたて、被告人の制止
もききいれず土間から居室へ土足のまま上ろうとして被告人のため両名とも屋外へ
押しだされるや、両名で被告人に殴りかかり、Aの如きは松丸太をもつて被告人を
殴打しようとしたが、これをかわした被告人がすばやく同人の手から右松丸太を奪
いとつたのに、Aがさらに手拳で殴りかかつてきたので、被告人もやにわにその丸
太をもつてAの頭部を数回殴りつけてこれを転倒させ、さらにBが被告人の急を聞
いて駈けつけた被告人方飯場のCともみあつている背後からBの頭及び足を数回殴
打し、Aを硬脳膜外出血による脳圧迫症で死亡するにいたらしめ、Bに対しては加
療二週間を要する後頭部挫創、足打撲傷の傷害を負わせたものである。してみると
被告人の行為はその居宅に侵入してきた被害者両名の暴行に対し、その侵害を排除
するため行われたものであることは所論のとおりであるが、被告人がAの手から奪
取した松丸太で被害者両名を夫々一回ならず数回も殴り、しかもAに対しては頭部
をめがけて殴打していることなどの具体的事情からみて、その反撃は<要旨>やはり
原認定のように相当な程度を超えたものと認めざるを得ない。ところで、盗犯等の
防止及び処分に関する法律第一条第一項は、その第三号所定の住居の不法侵
入者を排斥せんとする場合において、自己又は他人の生命身体等に対する現在の危
険を排斥するため犯人を殺傷したときは、刑法第三六条第一項の防衛行為ありたる
ものとすと規定しており、同条項が正当防衛に関する刑法第三六条第一項所定の要
件を緩和した規定と解すべきか否かについては論議の存するところである。しかし
ながら、盗犯等の防止及び処分に関する法律第一条第一項はその各号所定の場合に
おいても、刑法第三六条第一項の「已むことを得ざる」にいでたことを当然に要件
としているものと解するのが相当である。果してそうだとするならば、被告人の本
件行為は前記の如く、不法に人の住居に侵入した者を排斥せんとして、自己の生
命、身体に対する現在の危険を排除するため、被害者を殺傷したものであるから、
盗犯等の防止及び処分に関する法律第一条第一項第三号の件を形式的には充足して
いるけれども、いわゆる相当性の要件を欠如し、防衛の程度を超えたものとして、
刑法第三六条第二項の過剰防衛と認めるほかなく、これと同趣旨にいでた原認定は
相当であつて論旨は採用できない。
 控訴趣意第二点(量刑不当)の論旨について、
 記録をしらべ、当審における事実取調の結果を参酌するに、被告人の本件犯行に
より被害者Aの春秋に富む尊い一命が失われるというとり返しのつかない重大な結
果を招来したことなどからみると、原審が被告人に対し懲役二年の実刑に処した量
刑の措置ももとよりこれを首肯し得られないではないが、そもそも本件犯行の動機
は前記のごとく被害者両名が泥酔して夜間一面識もない被告人方に不法に侵入し大
声でわめきたて、被告人の制止もきかばこそ、土足で居室に踏みこもうとするよう
な狼藉をはたらき、剰え被告人のため戸外に押しだされるや、両名で被告人に殴り
かかり、Aのごときは松丸太をもつて被告人を殴打しようとしたことに端を発して
いるのであつて、被告人の防衛行為にも程度を超えた遺憾の点があつたとはいえ、
非はまつたく一方的に被害者両名にあつたこと、被告人は平素素行の上にこれとい
う不評のない真面目な青年であるのに対し、被害者等は両名とも酒癖が悪く、酩酊
すればとかく常軌を逸した行動にいで、飯場の同僚などからもてあまされていた者
なること、被告人は被害者Aの遺族に対しては慰藉料を支払い誠意をつくしている
のみならず、本件による身柄拘束のうちにすでに十分な反省をとげ、改悛の情顕著
であつて再犯の虞なき名なること、その他諸般の情状に鑑みれば、被告人に対して
はいま直ちに実刑を科するより刑の執行を猶予することが刑政の本義にかなうもの
とおもわれ、この意味において原審の右量刑はいささか重きに過ぎるものと認めら
れるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないので、刑事訴訟法第三八一
条、第三九七条第一項により原判決を破棄するが、本件は同法第四〇〇条但書によ
り直ちに判決するに適するものと認め、当裁判所においてさらに判決する。
 原裁判所が認めた罪となるべき事実に法律を適用すると、被告人の原判示Aに対
する所為は刑法第二〇五条第一項に、Bに対する所為は同法第二〇四条、罰金等臨
時措置法第二条第三条に各該当するところ、後者の罪については懲役刑を選択し、
以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条第一〇条に則り重い前
者の罪の刑に同法第一四条の制限にしたがい法定の加重をなした刑期範囲内におい
て被告人を懲役二年に処し、前記のような情状刑の執行を猶予するを相当と認め、
同法第二五条第一項に従い、本判決確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、なお
原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人に
これを負担せしめることとし主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 小林登一 判事 成田薫 判事 斎藤寿)

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