弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人濱田源治郎、同柴田憲一、同小林覚の上告理由について
 一 本件訴訟は、上告人A1が、株式会社B(承継前の被上告人、以下「B」と
いう。)の経営するスーパーマーケットB小田急相模原店(以下「本件店舗」とい
う。)の屋上においてペットショップを経営する被上告補助参加人から、手乗りイ
ンコ二羽を購入して飼育していたところ、右インコがオウム病クラミジアを保有し
ていたため、上告人ら家族がオウム病性肺炎にかかり、上告人A2の妻であり、そ
の余の上告人らの母であるFが死亡したとして、上告人らがBの承継人である被上
告人に対し、商法二三条、民法四一五条等に基づき損害賠償を請求するものである
が、原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 Bは、チェーンストア形式による総合小売業などを営む株式会社であり、神
奈川県座間市において、地上四階建て(屋上あり)の本件店舗でスーパーマーケッ
トを営んでいた。Bは、本件店舗内に直営の売場を設けるほか、いわゆるテナント
に出店させていた。被上告補助参加人は、右テナントとして、昭和五三年三月一日、
Bとの間で出店及び店舗使用に関する契約を締結し、当初は「Gペットコーナー」、
後には「ペットショップH」ないし「Hペット」の店名又は屋号で、本件店舗屋上
の一部においてペットショップを営んでいた。
 2 本件店舗の外部には、Bの商標を表示した大きな看板が掲げられており、テ
ナント名は表示されていなかった。
 3 右1の出店及び店舗使用に関する契約においては、(1) 被上告補助参加人
は、店舗の統一的営業方針及び出店者間の合理的均衡を維持するため、Bの承諾し
た取扱品目(ペット)について営業するものとし、Bの承諾なしにこれを変更する
ことができないこと、(2) 賃料は、一定額の固定賃料と売上額を基準とした変動
賃料とから成り、その支払方法は、Bが被上告補助参加人の売上金を毎日管理し、
これから賃料、共益費その他の諸経費を控除して被上告補助参加人に返還するとい
うものであること、(3) 被上告補助参加人は、営業時間、休業日、商品物品の搬
入搬出、清掃、従業員の就業等、日常の営業行為又はその付随行為につき、Bが定
める店内規則を遵守し、店内規則に定めのない事項についてはBの指示に従うこと、
などが定められていた。
 4 ところで、昭和五八年二月当時、本件店舗には被上告補助参加人を含めて約
一二のテナントが入っていたが、店内数箇所に設けられた顧客案内用の館内表示板
には、Bが販売する商品の種類が黒文字で、その右横にテナント名が青文字で表示
され、RF(屋上)の部分には、青文字で「プレイランド」及び「ペットショップ
H」と表示されていた。
 5 また、被上告補助参加人を含む各テナントの貸借部分の前には、天井から横
約四〇センチメートル、縦約三〇センチメートルのテナント名を書いた看板がつり
下げられていた。
 6 本件店舗のB直営の売場では、原則として、いわゆるスーパーマーケット販
売方式(顧客が、スーパー専用の買物かごを持ち、購入する商品を買物かごに入れ、
その階のレジで代金を一括して支払う方式)で営業されていたが、被上告補助参加
人などテナントの売場では、それぞれ独自のレジを設け、対面販売方式で営業を行
っていた。
 7 本件店舗のB直営の売場では、原則として従業員が制服と名札を着用してい
たのに対し、被上告補助参加人においては、Bの制服や名札を着用せず、また、「
Hペット」と表示されたレシートを発行し、包装紙や代済みテープもBのものとは
異なるものを使用していた。ただし、被上告補助参加人は、右レシートの発行のほ
かには、自己の名称を積極的に表示することはしていなかった。
 8 本件店舗の屋上では、被上告補助参加人がペットショップを営業していたほ
かは、テナントであるI商会が経営するプレイランドと称する子供用遊戯施設が設
けられていただけであり、B直営の売場はなかった。そして、店内の四階から屋上
に上がる階段の登り口に設置されたプラスチック製屋上案内板には、比較的大きな
赤文字で「屋上遊園地、ペットショップ」と表示され、また、右階段の踊り場正面
の壁には、樹木を型取った模様の中に比較的大きな青文字で同様の表示がされてお
り、いずれもテナント名の表示はなかった。
 9 被上告補助参加人は、Bから賃借していた契約場所をはみ出し、四階から屋
上に上がる階段の踊り場等に値札を付けた商品を置き、また、契約場所以外の壁に
「大売出し」と大書した紙を何枚も張りつけるなどしていたが、Bは、これを黙認
していた。
 二 原審は、右事実関係の下において、次のとおり判示して、本件につき商法二
三条の類推適用を否定し、上告人らの本件請求を棄却した。
 すなわち、右一の4ないし7の事実によれば、営業主体の識別のために基本的に
して重要な事項であるテナントの店名表示、本件店舗の館内表示、Bとテナント店
の従業員の外観上の識別、代金支払方法の独自性、領収書の発行名義の明記、包装
紙等の区別などについて、Bは、被上告補助参加人の店の前に、他のテナント店と
同様にテナント名を記載したつり看板を設け、館内表示板には、直営売場とテナン
ト名とを区別して表示し、また、被上告補助参加人においても、Bの制服や名札を
着用することなく、独自に代金の支払を受けて自己の店名を表示した領収書を発行
し、包装紙や代済みテープもBのものとは異なるものを使用していたことを総合勘
案すれば、Bの直営売場とテナント店との営業主体の識別のための措置は一応講じ
られていたということができるから、被上告補助参加人の営業について、Bが自己
の商号使用を許諾したのと同視できる程度の外観を作出したものと認めるに足りな
い。
 三 しかしながら、原審の右の判断は是認することができない。その理由は次の
とおりである。
 1 原審の確定した事実関係によれば、Bは、チェーンストア形式による総合小
売業などを営む株式会社で、地上四階建て(屋上あり)の本件店舗でスーパーマー
ケットを営んでいたものであり、被上告補助参加人は、そのテナントとして、本件
店舗屋上の一部においてペットショップを営んでいたものであるところ、本件店舗
の外部には、Bの商標を表示した大きな看板が掲げられていたが、テナント名は表
示されていなかったというのであり、本件店舗の内部においても、本件店舗の四階
から屋上に上がる階段の登り口に設置された屋上案内板や右階段の踊り場の壁には、
「ペットショップ」とだけ表示されていて、その営業主体がBであるか被上告補助
参加人であるかは明らかにされておらず、そのほか、被上告補助参加人は、Bの黙
認の下に、契約場所を大きくはみ出し、四階から屋上に上がる階段の踊り場等に値
札を付けた商品を置き、契約場所以外の壁に「大売出し」と大書した紙を何枚も張
りつけるなどして、営業をしていたというのである。これら事実は、買物客に対し、
被上告補助参加人の営業があたかもBの営業の一部門であるかのような外観を与え
る事実ということができる。
 2 他方、本件においては、前記一の4ないし7の事実も存在するというのであ
るから、これら事実が、買物客が営業主体を外観上認識するにつき、どのような影
響を与えるかについて検討する。
 (一) 被上告補助参加人の売場では、B直営の売場と異なり、独自のレジが設け
られて対面販売方式が採られていたが、被上告補助参加人の取扱商品であるペット
は、その性質上、スーパーマーケット販売方式になじまないものであって、仮にB
がそれを販売するにしても、対面販売の方式が採られてもしかるべきものといえる
から、このことから買物客が営業主体を外観上区別することができるとはいえない。
 (二) 被上告補助参加人の従業員はBの制服等を着用していなかったが、営業主
体が同一の売場であっても、その売場で取り扱う商品の種類や性質によっては、他
の売場の従業員と同一の制服等を着用していないことは、世上ままあり得ることで
あって、このことも買物客にとって営業主体を外観上区別するに足りるものとはい
えない。
 (三) 被上告補助参加人の発行するレシートには被上告補助参加人の名称が記載
されていたが、レシート上の名称は、目立ちにくい上、買物客も大きな注意を払わ
ないのが一般であって、営業主体を区別する外観としての意味はほとんどない。
 (四) 被上告補助参加人はBと異なる包装紙や代済みテープを使用していたが、
これらは買物客にとってはBの包装紙等と比較して初めて判明する事柄であって、
両者の営業を外観上区別するに足りるものとはいい難い。
 (五) 被上告補助参加人の売場の天井からはテナント名を書いた看板がつり下げ
られており、また、本件店舗内数箇所に設けられた館内表示板には、テナント名も
記載され、Bの販売する商品は黒文字で、テナント名は青文字で表示されていたが、
天井からの看板は、横約四〇センチメートル、縦約三〇センチメートルという大き
さからして、比較的目立ちにくいものといえるし、館内表示板は、テナント名のみ
を色で区別して記載しているにすぎないから、買物客に対し営業主体の区別を外観
上明らかにしているものとまではいい得ない。
 してみれば、これら事実は、これを個々的にみても、また総合してみても、買物
客にとって、被上告補助参加人の売場の営業主体がBでないことを外観上認識する
に足りる事実ということはできない。
 3 以上によれば、本件においては、一般の買物客が被上告補助参加人の経営す
るペットショップの営業主体はBであると誤認するのもやむを得ないような外観が
存在したというべきである。そして、Bは、前記一の2のように本件店舗の外部に
Bの商標を表示し、被上告補助参加人との間において、同3の内容の出店及び店舗
使用に関する契約を締結することなどにより、右外観を作出し、又はその作出に関
与していたのであるから、Bは、商法二三条の類推適用により、買物客と被上告補
助参加人との取引に関して名板貸人と同様の責任を負わなければならない。
 四 以上と異なる原審の判断には商法二三条の解釈適用を誤った違法があり、右
違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由
があるから、原判決は破棄を免れず、その余の争点について更に審理を尽くさせる
ため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、民訴法四〇七条一頃に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   橋   久   子
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    三   好       達
            裁判官    遠   藤   光   男

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