弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決中、上告人敗訴の部分を取り消す。
     前項の部分に係る被上告人らの請求をいずれも棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人太田博之、同中村勝己、同後藤昭樹、同立岡亘、同大岡琢美の上告理
由について
 一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 1 上告人は、平成二年五月に開業した「Dクラブ」という名称の預託金会員制
ゴルフクラブ(以下「本件クラブ」という。)を経営する株式会社である。
 2 亡Eは、平成二年一月二二日、上告人との間で本件クラブへの入会契約を締
結し、上告人に対し入会保証金二三〇〇万円を預託した。
 3 亡Eは、平成三年四月八日に死亡した。その相続人は、妻である被上告人B
1並びに子である被上告人B2、同B3及び同B4の四名である。
 4 本件クラブの会則には、次のような規定がある。
  (一) 会員は、譲渡、退会、除名、死亡、法人会員の消滅等の場合には会員資
格を喪失する(一五条)。
  (二) 会員が会員資格を喪失したときは、上告人は、保証金を返還する。ただ
し、入会後一〇年以内の退会及び法人会員の消滅の場合には、払込みの日の翌日か
ら一〇年を経過した後に返還する(八条)。
  (三) 会員に相続が開始した場合には、相続人は、名義変更手続をしなければ
ならない。ただし、理事会が相続人への名義変更を適当でないと認める場合には、
相続人は、八条の規定にかかわらず、保証金の返還を受けることができる(一〇条
二項)。
 二 本件は、亡Eの相続人である被上告人らが、上告人に対し、本件クラブの会
則一五条、八条本文の規定を根拠に、亡Eの死亡により保証金返還の始期が到来し
たと主張して、保証金の返還を求めたところ、上告人が、会則上、いまだ保証金返
還の始期が到来していないとして、被上告人らの請求を争っている事案である。
  原審は、亡Eは、平成三年四月八日に死亡し、会則一五条により会員資格を喪
失したものであるところ、会則八条によれば、会員が会員資格を喪失したときは、
退会と法人会員の消滅の場合を除いて、上告人は直ちに保証金を返還するものとさ
れているから、亡Eの預託した保証金については返還の始期が到来したと解すべき
であり、被上告人らは、亡Eの相続人として、法定相続分の割合で保証金返還請求
権を取得したとして、その限度で被上告人らの本訴請求を認容すべきものであると
判断した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 原審の確定した事実関係によれば、亡Eの取得した会員権は預託金会員制ゴ
ルフクラブの会員権であり、その関係は、会員と本件クラブを経営する上告人との
間におけるゴルフ場施設の優先的利用権、預託した保証金の返還請求権、年会費納
入の義務等を内容とする債権的法律関係であると解される(最高裁昭和四九年(オ)
第二四六号同五〇年七月二五日第三小法廷判決・民集二九巻六号一一四七頁参照)。
   そして、本件クラブの会則が死亡を会員資格の喪失事由と定めているとおり
(一五条)、ゴルフ場施設を利用することのできるゴルフクラブの会員たる資格は、
一身専属的な性質を有しているから、亡Eの本件クラブの会員としての資格自体は、
相続の対象となるものではない。しかし、他方において、本件クラブの会則には、
相続に伴う名義変更手続に関して規定が設けられ(一〇条二項)、会員契約上の地
位に相続性が認められているから、会員が死亡した場合には、保証金返還請求権を
含む右の債権的法律関係が一体としてその相続人に承継され、相続人は入会承認を
得ることを条件として本件クラブの会員となることのできる地位を取得するものと
解される(最高裁平成六年(オ)第一五九三号同九年三月二五日第三小法廷判決・
民集五一巻三号一六〇九頁参照)。
   したがって、本件クラブの会員が死亡した場合には、会則上、特に保証金の
返還を求めることができる旨が規定されていない限り、その相続人は、会員の死亡
を理由に直ちに右の債権的法律関係の中から保証金返還請求権だけを行使すること
はできないものというべきである。
 2 この点に関し、本件クラブの会則一五条は、譲渡、退会、除名、死亡、法人
会員の消滅等を会員資格の喪失事由と定めており、また、会則八条は、会員資格の
喪失事由が発生したときは上告人は保証金を返還するものとし、退会と法人会員の
消滅の場合にだけ一〇年間の据置期間経過後に保証金を返還すると定めているから、
これらの文言からする限り、形式的には、退会と法人会員の消滅以外の資格喪失事
由が発生した場合には、上告人は直ちに保証金を返還すべきものと見る余地がない
ではない。
   しかし、他方、会則一〇条二項本文は、会員に相続が開始した場合には、相
続人は名義変更手続をしなければならないものとし、同項ただし書は、理事会がこ
れを拒絶した場合に初めて、保証金の返還を受けることができるものと規定してい
る。さらに、会員契約上の地位の承継という点において会員の死亡と類似した性質
を有する会員権の譲渡の場合には、保証金返還の問題が生じないことは明らかであ
るが、会則八条にはそのような留保は設けられていない。これらの点にかんがみる
と、会則一五条、八条に関して前記のような解釈を採ることはできず、本件クラブ
の会則上、会員の死亡は直ちに会則八条本文に定める保証金の返還事由には該当す
るものではないといわざるを得ない。そのほか、本件クラブの会則には、会員が死
亡した場合に、相続人が名義変更手続請求と保証金返還請求のいずれかを選択行使
し得ることを認めた規定も存しない。
   そして、このように会員に相続が開始した場合に相続人に保証金返還請求権
を行使することを認めない会則の規定は、必ずしも不合理であるということはでき
ず、その効力を否定すべき理由は見いだし得ない。
 3 そうすると、被上告人らの主張する保証金の返還事由が発生したと認めるこ
とはできず、他に、亡Eの預託した保証金につき、返還請求権の始期が到来したこ
との主張立証もない(仮に、被上告人らの保証金返還の申出を本件クラブからの退
会の意思表示と見ても、亡Eが保証金を払い込んだ後、いまだ一〇年の据置期間が
経過していないことが明らかである。)。
 四 したがって、これと異なる原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があ
り、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論
旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれ
ば、被上告人らの本訴請求はいずれも理由がないから、第一審判決中、上告人敗訴
の部分を取り消した上、右部分に係る被上告人らの請求をいずれも棄却することと
する。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    金   谷   利   廣
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    元   原   利   文

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛