弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人伊藤誠一の上告理由について
 譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限
り、民法三七八条所定の滌除権者たる第三取得者には該当せず、抵当権を滌除する
ことができないものと解するのが相当である。けだし、滌除は、抵当不動産を適宜
に評価した金額を抵当権者に弁済することにより抵当権の消滅を要求する権限を抵
当不動産の第三取得者に対して与え、抵当権者の把握する価値権と第三取得者の有
する用益権との調整を図ることなどを目的とする制度であるが、抵当権者にとって
は、抵当権実行時期の選択権を奪われ、増価による買受け及び保証の提供などの負
担を伴うものであるところから、民法三七八条が滌除権者の範囲を「抵当不動産ニ
付キ所有権、地上権又ハ永小作権ヲ取得シタル第三者」に限定していることにかん
がみれば、右規定にいう滌除権者としての「所有権ヲ取得シタル第三者」とは、確
定的に抵当不動産の所有権を取得した第三取得者に限られるものと解すべきである。
そして、不動産について譲渡担保が設定された場合には、債権担保の目的を達する
のに必要な範囲内においてのみ目的不動産の所有権移転の効力が生じるにすぎず、
譲渡担保権者が目的不動産を確定的に自己の所有とするには、自己の債権額と目的
不動産の価額との清算手続をすることを要し、他方、譲渡担保設定者は、譲渡担保
権者が右の換価処分を完結するまでは、被担保債務を弁済して目的不動産を受け戻
し、その完全な所有権を回復することができるのであるから(最高裁昭和五五年(
オ)第一五三号同五七年一月二二日第二小法廷判決・民集三六巻一号九二頁、最高
裁昭和五六年(オ)第一二〇九号同五七年九月二八日第三小法廷判決・裁判集民事
一三七号二五五頁、最高裁平成元年(オ)第一三五一号同五年二月二六日第二小法
廷判決・民集四七巻二号一六五三頁)、このような譲渡担保の趣旨及び効力にかん
がみると、担保権を実行して右の清算手続を完了するに至らない譲渡担保権者は、
いまだ確定的に目的不動産の所有権を取得した者ではなく、民法三七八条所定の滌
除権者たる第三取得者ということができないからである。
 これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実は、次のとおりである。
(1) 上告人は、平成元年七月六日、Dに対し、弁済期を同年一〇月五日として、
少なくとも一〇〇〇万円を貸し付け(以下、右貸付けによるDの債務を「本件貸金
債務」という。)、右両者間で、同年八月三〇日に弁済期を同年一二月三一日と変
更する合意をした。(2) Eは、平成元年七月六日、Dの本件貸金債務を連帯保証
するとともに、右債務の担保とする趣旨で、上告人との間で、Eの所有に係る第一
審判決添付物件目録記載の土地及び建物(以下「本件不動産」という。)について
譲渡担保契約を締結した。そして、上告人は、右契約に基づき、平成元年七月七日、
本件不動産について、上告人への所有権移転登記を経由した。(3) 被上告人は、
本件不動産につき、昭和六三年六月三〇日、極度額を五〇〇〇万円とする根抵当権
(以下「本件根抵当権」という。)の設定登記を経由していた。(4) 上告人は、
平成元年九月一四日に被上告人から本件根抵当権実行の通知を受けたので、同年一
〇月四日、被上告人に対して本件根抵当権を三二〇〇万円で滌除する旨の通知をし
たが(以下、上告人のした右滌除権の行使を「本件滌除権の行使」という。)、右
の時点においては、本件貸金債務の弁済期が未到来であったため、譲渡担保権の実
行に着手していなかった。(5) 上告人は、被上告人が右の通知を受けてから一箇
月内に増価競売の請求をしなかったため、平成元年一一月一六日に滌除金額の三二
〇〇万円を供託した。(6) 上告人は、平成三年六月七日に至り、Eに対し、本件
不動産の所有権を確定的に上告人に帰属せしめる旨及びEに対して支払うべき清算
金はない旨を通知して、譲渡担保権を実行し、これにより本件不動産の所有権を確
定的に取得した。
 右の事実関係からすると、上告人は、本件滌除権の行使をした時点においては、
いまだ確定的に本件不動産の所有権を取得していなかったことが明らかである。そ
うすると、上告人は、右の時点においては、本件根抵当権を滌除することのできる
民法三七八条所定の第三取得者ではなかったから、上告人のした本件滌除権の行使
はその効力を生じないものというべきである。したがって、右と同旨の見解に立ち、
本件滌除権の行使が有効であることを前提として本件根抵当権設定登記の抹消登記
手続を求める上告人の本訴請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として
是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の各判例は、事案を異
にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    福   田       博

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