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裁判例


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平成11年(行ケ)第340号審決取消請求事件
平成12年6月1日口頭弁論終結
判決
原告X
【A】代表者代表取締役
訴訟代理人弁護士飯田秀郷
同栗宇一樹
同和田聖仁
同早稲本和徳
同久保田伸
同秋野卓生
同七字賢彦
【B】被告特許庁長官
【C】指定代理人
【D】同
【E】同
被告補助参加人ザポロ/ローレンカンパニーリミテッ
ドパートナーシップ
【F】代表者
【G】訴訟代理人弁理士
【H】同
【I】同
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、参加によって生じた費用も含め、原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
特許庁が平10年審判第18846号事件について平成11年8月23
日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は、商品区分第25類の「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ
類、寝巻き類、和服、下着、水泳着、水泳帽、エプロン、えり巻、靴下、ゲー
トル、毛皮製ストール、ショール、スカーフ、足袋、足袋カバー、手袋、布製
、、、、、、、幼児おしめネクタイネッカチーフマフラー耳覆いずきんすげがさ
ナイトキャップ、ヘルメット、帽子、その他の被服、ガータ、靴下止め、ズボ
ンつり、バンド、ベルト、靴類、げた、草履類、その他の履物、運動用特殊被
服、運動用特殊靴」を指定商品とする「ASCOTPARKPOLO、
CLUB」の文字から成る商標(以下「本願商標」という)について、平成。
、()、5年1月29日商標登録出願平成5年商標登録願第7324号をしたが
平成10年11月5日に拒絶査定を受けたので、これに対する不服の審判の請
求をした。特許庁は、同請求を平成10年審判第18846号として審理した
結果、平成11年8月23日に「本件審判の請求は、成り立たない」との審。
決をし、その謄本は同年9月22日原告に送達された。
2審決の理由
別紙審決書の理由の写しのとおり、本願商標をその指定商品に使用する
場合には、これに接する取引者・需要者は【J】又は同人と組織的・経済的、
に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所につい
て混同を生ずるおそれがあるから、本願商標は商標法4条1項15号に該当す
ると認定判断した。
第3原告主張の審決取消事由の要点
審決は、出所の混同のおそれについての認定、判断を誤ったものであっ
て、この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り
消されるべきである。
1「POLO」の語について
(1)「POLO(ポロ」は一般用語である。)
「POLO(ポロ」は、スポーツ名である。ポロ競技は、千年以上)
前ペルシャで始まり、英国において数百年の歴史をもって盛んに行われ、世界
50か国以上で競技されている伝統的スポーツであり、我が国でも、国内で実
際の競技が行われる機会は少ないものの、英国皇太子に関する報道を含めて、
多くのマスコミが取り上げている、誰でも知っている競技である。
ポロ競技の際に着用することを語源とする「ポロシャツ」は、カジュ
アルウエアのごく一般的な商品を表わすもので、日本において、その名を知ら
ない者はないほど有名な普通名称である。
、、日本国内の辞書・事典160件余海外の辞書・事典250件余には
「POLO」はスポーツ名としてしか記載されておらず、ラルフ・ロ―レンと
の関係の記載はない。
さらに「POLO」は、特にヨーロッパでは、イタリアの探検家マ、
ルコポーロの略称として認識されている。
また「POLO(ポロ」は、日本ではポロシャツの略称である。、)
(2)【J】がデザインした紳士服、ネクタイ等には「乗馬したポロ競技、
者がマレットを振り上げている図柄「Polo【J「Poloby」、】」、
【J」といった標章が単独で又は組み合わされて使用されており(以下、】
これらを総称して「ラルフ標章」という、通常「POLO」という標章が。)、
単独で使用されることは、ほとんどない【J】がデザインした紳士服、ネク。
タイ等に付されてラルフ・ローレンの商品を示す標識として著名になったの
は「Polo」が単独で用いられたものではなく、ラルフ標章であるから、、
上記固有名詞や図柄を含むものであって初めて、ラルフ・ローレンの商品標識
。、、「」としての識別性が認められるというべきであるそしてこれはPOLO
が普通名称であることからすれば当然のことである。このように、ラルフ標章
、「」、「」、が使用されて著名になったからといってPoloポロという標章が
ラルフ・ローレンの商品標識として通用していたわけではないから、ラルフ・
ローレンが普通名称である「Polo「ポロ」の名称を独占すべき根拠は全」、
くない。
(3)被告は「POLO「Polo「ポロ」の標章は、遅くとも昭和、」、」、
59年ころまでには、我が国において、ラルフ・ローレンの商品に使用される
標章を総称するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されるに至ってい
たと主張する。しかし【J】のデザインに係る商品のうちの主力である、平、
成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の商品区分第17類(以下
「旧第17類」という)についての「POLO」の登録商標は、昭和55年。
に他人が登録しており、その商標の現在の権利者は、ポロ・ビーシーエス株式
会社であって【J】でも同人とつながりのある者でもない。、
被告が、その主張の根拠とする日本国内の各種新聞、雑誌は、いずれ
もすべてが有料の広告費を出して掲載されたもので、クライアントの意向に沿
ってどのような表現でも宣伝でも行うのが普通であるから、内容の信憑性が薄
い。原告が主張するように中立的な辞書・辞典の記載をもとに判断するべきで
ある。また、広告を根拠とするのであれば、ラルフ・ローレン以外の「POL
O」ブランドの多くは、ラルフ・ローレンと同様に広告・宣伝を行っており、
その規模(回数・費用)は、ラルフ・ローレンの10倍を超えるという事実に
着目すべきである。
新聞が、偽物ブランドが出回っている旨の報道の過程で、ラルフ・ロ
ーレン標章を「ポロ「POLO(ポロ」と称しているのは、見出しの字数」、)
が少ない関係上、ただ単に読者に分かりやすい見出しを設定したものにすぎな
い。また、上記報道は、あくまで、ラルフ・ローレンの商品と全く同一の商品
を製造、販売した事例に関するもので、本件商標等とはその性格が異なる。
2「ASCOTPARKPOLOCLUB」が実在のポロクラブで
あることについて
「ASCOTPARKPOLOCLUB」は、英国に実在する有
名なポロクラブである。同クラブの主宰者【K】氏は、ポロのプレーヤーとし
て有名であると同時に、ポロの指導者としても、世界的に有名な「ポロ・スク
ール」を開設し、多くのポロ競技者を育成している。また、その著作「POL
O」は、ポロ競技のバイブルとして全世界で愛読されている。英国のチャール
ズ皇太子、故ダイアナ妃も、同クラブをよく訪問し、チャールズ皇太子は、同
クラブにおいて再三競技を行っている。
同クラブとその主宰者の「K】一家」は、日本の有名な女性雑誌「2【
5ans(ヴァンサンカン(婦人画報社発行、以下「甲第23号証刊行物」)」
という)でも紹介され、大きな話題になった。また、我が国のテレビでのコ。
マーシャルにも長く登場した。
原告は、同クラブと契約して、スポーツイメージのライセンス商品の展
開を行うことを考え、本願商標の登録出願をしたものであって、同クラブから
本願商標の登録出願の同意を得ている。決して「POLO」の名前やイメー、
、。ジを利用しまた便乗して事業をする目的で本願商標を出願したものではない
3ラルフ・ロ―レン以外の「POLO」ブランドについて
我が国内では「POLO」を含む登録商標は、旧17類の被服を指定、
、、「」商品として多数存在しておりこのうちラルフ・ローレン以外のPOLO
ブランドは、30種類あり、その売上総額は年間2000億円に達している。
このような登録商標の具体例としては「ビバリーヒルズポロクラブ「Pol」、
oClub」があり、これらの商標は多数の被服に使用されて、市場に完全
に定着している。消費者・需要者は、これらの商標とラルフ・ローレン標章と
を完全に別個のものと認識しており、全く両者の混同は生じていない。
「POLO」の商標権者であるポロ・ビーシーエス株式会社は、長年、継
続して「POLO」商標は自己の法律的権利であるとの主張を新聞紙上等で行
っている。しかし、これらの行為に対してラルフ・ローレンが抗議をしたこと
はない。このことは【J】自身も日本国内では「POLO」商標は他人の権利
であると認識していることを示している。また、ポロ・ビーシーエス株式会社
は「米国ポロ・ロ―レン社とは、契約により友好関係にあります」と広告し、。
ており「ビバリーヒルズポロクラブ」ブランドも「自分たちのブランドは、、、
ラルフ・ロ―レンとの共存関係を維持していくことが確認されている」と宣。
伝している。これは【J】自身が、他の「POLO」ブランドの日本国内で、
、「」、の展開に協力していることにほかならず他のPOLOブランドの存在は
何ら自己の営業活動に実害がないと表明していることにほかならない。
4東京高等裁判所平成12年1月27日判決(平成11年(行ケ)第25
3号。以下「別件判決」という)について。
別件判決は、商標「PALMSPRINGSPOLOCLUB」
について、特許庁の拒絶査定を維持した審決を取り消した。この判決の判示を
本件に当てはめると、以下のようになり、出所の混同のおそれが生ずることは
ないという結論に至る。
(1)「POLO(ポロ)がポロ競技を意味することは、我が国において」
も広く知られているところであるしたがって結合商標中にPOLOポ。、「」(
ロ)が含まれている場合、その商標からラルフ・ローレンに係る商標を連想す
るか否かは、ラルフ・ローレンに係る商標の強い識別力等を前提にして、個別
具体的に判断するほかはない。
(2)「ASCOTPARK」は「アスコット地方、地域」という意味、
であり、ロンドン郊外にあって、競馬を始め、乗馬、ポロ等の馬の競技を行う
地域として世界的に有名である。
(3)本願商標は、その指定商品の取引者・需要者がこれに接した場合、
ごく自然に「ASCOTPARK」にある「ポロ競技のクラブ」を認識す、
るものである。本願商標から「ASCOTPARK」にある「ラルフ・ロ、
」、「」ーレンに係るポロ製品の愛好者のクラブとの観念が生ずるとかPOLO
の部分のみが注目され、直ちにラルフ・ローレンに係る商標が連想されるとか
はいえない。
しかも「PALMSPRINGSPOLOCLUB」が実在、
しないのに対して「ASCOTPARKPOLOCLUB」は、実在、
のクラブであり、世界的に有名であることからすれば、このことは「PAL、
MSPRINGSPOLOCLUB」と比べて、本願商標の方によりよ
く当てはまることになる。
(4)本願商標は「ASCOTPARK」にある「ポロ競技のクラブ」、
と認識されるものである以上、全体の称呼等が長いからといって「ASCO、
TPARK」の部分が生産地、販売地のように除かれ「POLO」ないし、
「POLOCLUB」の文字のみが注目されるということにはならないので
ある。
5商標法4条1項15号にいう「混同」の概念について
審決は、商標法4条1項15号にいう「混同」の概念について「本願、
商標は(中略、該商品が【J】又は同人と組織的・経済的に何らかの関係が、)
ある者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそ
れがあるものと判断するのが相当である」として「広義の混同(別個の企。、」
業であるという認識があるにもかかわらず、それを使用している企業間に、業
務上、経済上、または組織上何らかの連携関係があると誤認される場合)を。
いうものと解釈している。しかし、同号における「混同」の概念は「狭義の、
混同(商品の出所が同一であると誤認させること)に限定されると解釈する」。
べきであるから「広義の混同」もこれに含まれるとした審決には、法令の解、
釈について重大な判断の誤りがある。
すなわち、平成5年改正前の不正競争防止法2条1項1号の「混同」に
「広義の混同」が含まれると解されていたのは、元来「狭義の混同」の意味に
解されていたところ、著名表示に便乗する者が表われ、しかも、このような著
名表示冒用行為に対応する適切な方法がなかったためのことである。しかし、
この解釈は、誤認混同の要件を実質的に骨抜きにし、解釈論の域を超えている
とのおそれがあるため、平成5年に不正競争防止法が改正され、著名表示冒用
行為に対しては「混同」を要件としないこととされた(不正競争防止法2条、
1項2号。この結果、現行の不正競争防止法においては、同法2条1項1号)
(周知表示)の「混同」に「広義の混同」という概念を入れる必要性も妥当性
もなくなった。上記のことは、商標法についても当然に当てはまるのであり、
平成5年改正前の不正競争防止法で必要とされていた「広義の混同」の概念を
安易に商標法4条1項15号の「混同」の概念に入れることは、解釈論を超え
ており、到底認められない。
第4被告の反論の要点
1「POLO」の語について
(1)ポロ競技は、我が国においては、その愛好者は極めて少なく、なじ
みの薄いスポーツである。一方、小学館ランダムハウス英和大辞典(株式会社
小学館1998年1月10日発行、乙第22号証)には「Polo」の語の、
、「【】」、意味として商標ポロ:米国のJデザインによるバッグなどの革製品
「ポロ→Poloby【J」の記載がある。】
(2)被服を始めとするファッション(装身に関する流行)関連の商品分
、【】、「」「【】」野においてJのデザインに係る商品にはPoloとbyJ
の文字によって構成される標章、あるいは、馬に乗ったポロ競技のプレーヤー
の図形によって構成される標章、さらには、これらが一体となったもののいず
れかが用いられてきている。我が国では、ラルフ標章を総称して単に「POL
OPoloポロと略称しておりこのPOLOPoloポ」、「」、「」、「」、「」、「
ロ」の標章は、遅くとも昭和59年ころまでには、我が国において取引者・需
要者の間に広く認識され、その認識は現在においても継続している。
このように「POLO(ポロ」は、被服を始めとするファッション、)
関連の商品分野において【J】のデザインに係る被服等について使用される、
標章を総称するものとして、以前から、取引者・需要者に広く認識されてきた
。、、「」、ものであるこのような状況の下で我が国においてはPoloを始め
ラルフ標章を真似た偽物を「J】のデザインに係る商品」などと触れ込んで、【
販売している事実もある。
これに対して、ポロ競技は、我が国では知名度は低く、愛好者も極め
て少ない、なじみの薄いスポーツである。
これらのことを前提にした場合、被服を始めとするファッション関連
商品において「Polo「ポロ」などの文字が使用された場合には、これ、」、
に接する取引者・需要者は、スポーツ競技の名称等を表わしたと理解するので
はなく【J】のデザインに係る商品であると認識することになるというべき、
である。
2「ASCOTPARKPOLOCLUB」が実在のクラブである
ことについて
原告は、本願商標を我が国において「洋服、コート、セーター類」等、
ファッション関連商品の商標として使用しようとしているのであるから、本願
商標の登録要件については、その指定商品「洋服、コート、セーター類」等フ
ァッション関連商品に関する取引の実情に基づいて、それらの取引者・需要者
の認識を基準として判断すべきである。
この場合「ASCOTPARKPOLOCLUB」は、我が国、
において一般には知られていない言葉であるから、その名のクラブが実在する
か否かは、本願商標について出所の混同が生ずるおそれがあるか否かについて
の判断においては、何ら関係がない事情である。しかも、本願商標は、指定商
品が「洋服、コート、セーター類」等であって「ポロ競技施設の提供」に係、、
る役務に使用するものではないから、球技としての「POLO」のイメージで
みるべきではない。
【J】が、アメリカを代表するデザイナーとして、我が国の服飾業界に
おいても広く知られていること、ラルフ標章が著名であることを踏まえ、本願
商標の指定商品「洋服」についてみれば、本願商標の構成中の「ASCOT」
の文字は、英国の地名であることから、商品の産地ないしはファッションの発
祥地として認識され、自他商品の識別力が弱いか、あるいはないかの部分と認
識されるというべきである。
原告は、決して「POLO」の名前やイメージを利用し、また便乗して
事業をする目的で本願商標を出願したものではない旨主張するが、主観的意図
は、商標法4条1項15号適用の要件ではない。
3ラルフ・ロ―レン以外の「POLO」ブランドについて
仮に、原告が挙げる「POLO「Polo」の文字を含む商標が、原」、
告主張のとおり市場に定着しているとしても、それらの商標の付された商品を
購入している需要者が、その商標を、ラルフ・ローレンとは関係のない者の業
務に係る商品を示すものとして認識している、との事実の立証はない。
、「『』」また株式会社博報堂によるポロブランド調査1999年5月
(乙第21号証)によれば、ラルフ・ローレンの業務に係る商品の商標と、無
「」、関係のPOLOを含む商標とを別個のものとして識別している者の多くが
後者の商標をラルフ・ローレンと何らかの関係のある者の商標、すなわち、兄
弟ブランド・ファミリーブランドと考えていることが認められる。
これらをあわせ考えるときは、ラルフ・ローレン及びその関連会社以外
の者が「POLO」の文字を含む商標を本願商標の指定商品「洋服、コート、
セーター類」等に使用した場合、ラルフ・ローレン及びその関連会社の取扱い
に係る商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあるとみる以外にないので
ある。
4別件判決について
別件判決は、事実認定に誤りがあり、経験則に反し、商標法4条1項1
5号の解釈を誤ったもので、本件について参考にされるべきではない。本件と
同種の事案については、東京高等裁判所平成11年12月16日判決(平成1
1年(行ケ)第250号。商標「ThePoloCupChallen
ge、同裁判所同日判決(平成11年(行ケ)第251号。商標「Polo」)
Team、同裁判所同日判決(平成11年(行ケ)第290号。商標「R」)
OYALPRINCEPOLOCLUB同裁判所同月21日判決平」)、(
成11年(行ケ)第289号。商標「ROYALPOLOSPORTS
CLUB)を始め、圧倒的多数の判決において、出所の混同のおそれがある」
とされている。本件についてはこれらの判決を参考とすべきである。
5商標法4条1項15号の「混同」の概念について
商標法4条1項15号の「混同」の解釈については、旧商標法(大正1
0年法律第99号)2条1項11号の「混同」について広義の混同の解釈が認
められて以来、そのような解釈が採られているものであり、同解釈は商標法4
条1項15号に解釈として定着しているから、審決に法令解釈の誤りはない。
第5当裁判所の判断
1本願商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて
、、、、(1)乙第1ないし第10号証第11号証の12第12号証の各2
3によれば、次の事実が認められる。
【J】は、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等のデ
ザイナーである。同人は、1970年、73年の2回にわたりアメリカのファ
ッション界では最も権威があるとされるコティ賞を受賞し、1974年には映
画「華麗なるギャツビー」の男性衣装を担当するなどして、世界的に知られる
ようになった。ラルフ標章(そのうちの「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー図
形」は、馬上の競技者が、先端が小さなT字状になった棒のような物を持って
いる図形である)は【J】のデザインに係る商品に使用されている。我が国。、
においては、日本での【J】のデザインに係る商品の輸入・製造・販売のライ
センス(許諾)を得ていた西武百貨店(ただし、眼鏡、ネクタイのライセンス
は、別の会社が有していた)の昭和62年におけるポロ・ラルフローレンブ。
ランドの小売販売高は約330億円であり、平成元年ころ及び平成4年ころに
は、第三者がラルフ標章ないしこれに酷似した標章を付した偽ブランド商品を
販売して摘発されるという事件が発生するほど、ラルフ標章は顧客吸引力を有
していた。本願商標の商標登録出願前から、各種雑誌等において【J】のデ、
ザインに係る紳士服、婦人服、眼鏡を始めとする商品が一流ブランドないし流
行ブランドとして「ポロ「POLO「Polo」のブランド名のもとに、」、」、
紹介され、一般大衆を読者とする新聞でも、平成元年5月19日付け朝日新聞
夕刊(乙第12号証の2)に「ポロ』の偽を大量販売警視庁、通信販売会『
社を摘発・・・Polo(ポロ』の商標で知られるラルフローレンブランド『)
・・・米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の商標・デザインで西武百貨店
が日本での独占製造販売権を持っている『Polo』の商標と乗馬の人がポロ
競技をしているマーク、平成2年11月27日付け朝日新聞東京地方版/栃」
木栃木版(乙第11号証の1)に「プレゼント・・・ポロ・・・などの輸入
ブランドに人気があるという。女性から男性へは、ポロのセーター(1万40
00円、平成3年12月5日付け朝日新聞大阪地方版/京都京都版(乙第)」
11号証の2)に「ポロの靴下ブランド世代・・・足元は、申し合わせたよ
うにラルフロ―レンのポロのマーク、平成4年9月23日付け読売新聞東京」
本社版朝刊(乙第12号証の3)に「アメリカの人気ブランド『ポロ・・・』
のロゴ『ポロ・バイ・J」という各記事が掲載されているように、ラルフ【】』
標章は「ポロ(POLO」ないし「Polo)の商標の名で知られ、これ」「」
を付した商品もブランドとして「ポロ(POLO」ないし「Polo)と」「」
呼ばれていた。
以上の事実によれば、本願商標の商標登録出願時までには、ラルフ標
章は「ポロ(POLO」ないし「Polo)の商標などと呼ばれ、これを、」「」
付した商品もブランドとして「ポロ(POLO」ないし「Polo)と呼」「」
ばれて、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等のファッション関連商品についてラ
ルフ・ローレンのデザインに係る商品に付される商標ないしそのブランドとし
て著名であったことが認められる。
(2)一般に、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標は、各構成
部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどにま
で不可分的に結合していない限り、常に必ずその構成部分全体の名称によつて
称呼、観念されるというわけではなく、しばしば、その一部だけによって簡略
に称呼、観念され、その結果、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずる
ことがあるのは、経験則の教えるところである(最高裁判所第1小法廷昭和3
8年12月5日判決・民集17巻12号1621頁参照。)
、「、、、また本願商標が使用される商品のうち洋服コートセーター類
靴下」等のファッション関連商品は、主たる需要者は、老人から若者までを含
む一般大衆であって、その商品「洋服、コート、セーター類、靴下」等に係る
商標やブランドについて、詳しくない者や中途半端な知識しか持たない者も多
数含まれている。そして、このような需要者が購入する際は、恒常的な取引や
アフターサービスがあることを前提にメーカー名、その信用などを検討して購
入するとは限らず、そのような検討もなくいきなり小売店の店頭に赴いたり、
ときには通りすがりにバーゲンの表示や呼び声につられて立ち寄ったりして、
。(、短い時間で購入商品を決定することも少なくないものである以上の事実は
当裁判所に顕著である)。
したがって、本願商標についての混同のおそれの判断に当たっては、
以上のような経験則、及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断
すべきである。
(3)本願商標は、17文字からなり、これより生ずる「アスコットパー
」、、クポロクラブの称呼は長音を含む12音より構成されているからその外観
称呼とも、一つの名称のものとしては、冗長というべきである。そして「A、
」、、「」SCOTPARKは地名ないし場所名としてその後に続くPOLO
以下の語を修飾する語であり「POLOCLUB」は「ポロの同好の士の、、
団体」というような意味合いであるから、本願商標において「POLO」の文
字は重要な意味を持つ言葉と認識されるものと認められる。ところが、本件全
、「」、証拠によってもASCOTPARKPOLOCLUBとの文字が
全体として特定の熟語や団体名称を表わすものとして我が国の一般の取引者・
需要者によく知られているものとは認められない。
このように、本願商標の文字相互の結びつきは、それを分離して観察
することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分的に結合している
ものとは認めることのできないものである。
(4)そうすると、本願商標がその指定商品のうち「洋服、コート、セー、
ター類、靴下」等のファッション関連商品に使用された場合には、これに接し
た取引者・需要者は、その「POLO」の文字部分に着目して「ポロ(P、」「
OLO」ないし「Polo)の商標と呼ばれるラルフ標章や「ポロ(PO」、」「
LO」ないし「Polo)と呼ばれるブランド名を連想し【J】又は同人と」、
組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、
その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
この点について出所の混同の発生する具体的な例を挙げれば、本願商
標は「POLO」の文字を重要な要素として含んでいるのであるから、これ、
を「ASCOTPARKPOLOCLUB「アスコットパークポロク」、
ラブ」という冗長であって一般に知られていない名称で称呼、観念するのでは
なく、簡略に「ポロ」の商標と称呼、観念して取引することが考えられる。、
このようにして取引したとしても、決して不自然ということはできない。まし
、「」(「」「」)、てポロPOLOないしPoloの商標と呼ばれるラルフ標章や
「ポロ(POLO」ないし「Polo)ブランドが著名であり、強い顧客」「」
吸引力を有していることからすれば、ラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」
の商標ないし「ポロ」ブランドであることには大きな価値があるから、そのよ
うな称呼、観念は、より発生しやすいところである。そして、取引者、特に販
売者が、本願商標を「ポロ」の商標と呼んだとき(前示のとおり、このこと、
自体を不自然ということはできない、前記取引の実情における需要者の注意。)
力を考慮すれば、需要者は、本願商標の「POLO」の部分に着目して、それ
が「ポロ」の商標であるから、ラルフ・ロ―レンに係る著名な「ポロ」の商標
ないし「ポロ」ブランドと誤解し、あるいは、ラルフ・ロ―レンに係る著名な
「」、「」ポロの商標とは全体の構成が異なることに気付いたとしても同じポロ
の一種であって兄弟ブランドないしファミリーブランドと誤解して、その出所
について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
もとより、上記は、原告がそのような方法で出所の混同を発生させる
ことを意図して本願商標の登録出願をしたという趣旨ではない。しかし、商標
がいったん登録された場合には、自由に譲渡されたり使用権が設定されたりし
得るものであるから、出所の混同のおそれは、出願人の出願の意図とは関係な
く、取引の実情に基づき客観的に判断せざるを得ないのである。
2審決時における商品の出所の混同のおそれについて
(1)乙第12号証の4ないし6及び弁論の全趣旨によれば、本願商標の
商標登録出願後審決時にかけても、朝日新聞、読売新聞に「偽『ポロ』眼鏡、
枠を摘発・・・ポロ競技のマークで知られる米国のファッションブランド『P
OLO(ポロ』の製品に見せかけた眼鏡枠「偽ブランドの販売で元社長に)」、
有罪判決・・・米国ブランド『ポロ』などのマークが入った偽物のセーターや
ポロシャツ「ラルフロ―レン偽物衣類を販売・・・ポロ」ブランドの偽物」、「
セーターとの記事が掲載されていることにも示されているとおりポロP」、「」(「
OLO」ないし「Polo)の商標などと呼ばれるラルフ標章、及び、その」
ブランドである「ポロ(POLO」ないし「Polo)ブランドの著名性」「」
は継続しており、また、ラルフ標章の顧客吸引力に着目して偽「ポロ」ブラン
ド商品を販売する者も絶えなかったことが認められる。
そして、本願商標の商標登録時から審決時までの間に、前記1の認定
に係る事情に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから、審決時にお
いても、前記1の認定に係る混同のおそれは、なお継続していたものと認めら
れる。
3原告の主張について
(1)原告は、①日本国内の辞書・事典160件余、海外の辞書・事典2
50件余には「POLO」はスポーツ名としてしか記載されておらず、ラル、
、「」、、フ・ロ―レンとの関係の記載はない②POLOは特にヨーロッパでは
イタリアの探検家マルコポーロの略称として認識されている③POLOポ、「(
ロ」は、日本ではポロシャツの略称である、と主張する。)
しかし、原告の挙げる上記①ないし③は、いずれも、前記1の判断の
妨げとはなり得ない。
ア①について
本願商標の登録出願時までには、ラルフ標章は「ポロ(POL、」「
O」ないし「Polo)の商標などと呼ばれ、それの付された商品もブラン」
ドとして「ポロ(POLO」ないし「Polo)と呼ばれて、いずれも紳」「」
士服、婦人服、眼鏡等のファッション関連商品について【J】のデザインに係
る商品に付される商標ないしそのブランドとして著名であったことは前示のと
おりである。
一方、乙第13ないし第16号証によれば、ポロ競技は、我が国で
は、平成10年ころでも競技者がわずか約30人という程度のものであって、
「スポーツ用語(株式会社教育社1992年11月25日発行「ニュース」)、
ポーツ百科(株式会社大修館書店1995年9月20日発行「NEWC」)、
OLORSPORTS1995(一橋出版株式会社1995年発行)に」
も取り上げられておらず、関心の薄いスポーツであったことが認められる。
この点に関して、原告は、日本でも、英国皇太子に関する報道を含
めて、多くのマスコミが取り上げていると主張する。しかし、甲第43号証の
1によれば、ポロ競技が、映画「プリティー・ウーマン」のポロ・シーンとし
て紹介されたことがあることは認められるものの、我が国において、多くのマ
スコミが、スポーツとしてのポロ競技を取り上げて報道していることを認める
に足りる証拠はない。そして、我が国において、テレビ・ラジオや新聞・雑誌
において、ポロ競技の試合結果が時々報道されるとか、ポロの観戦に関心のあ
るファンがある程度はいるとかという事実を認めるに足りる証拠もない。した
がって、原告の主張は、ポロ競技が我が国において関心の薄いスポーツである
との前記認定を左右するものではない。
そうである以上、本願商標の指定商品である「洋服、コート、セ、
ーター類靴下等のファッション関連商品との関係においてはポロP、」、「」(「
OLO」ないし「Polo)とは、前記ラルフ・ローレンと関係のある「ポ」
ロ」の商標ないし「ポロ」ブランドを指すものであると理解されることが多い
のは、当然というべきである。
イ②については、我が国において「ポロ(POLO」ないし「P、」「
olo)がマルコ・ポーロの略称として著名であると認めるに足りる証拠は」
ない。のみならず、我が国において、マルコ・ポーロが、本願商標の指定商品
である「洋服、コート、セーター類、靴下」等と関係があると認識されてい、
ることを認めるに足りる証拠もない。そうである以上、本願商標の指定商品で
ある「洋服、コート、セーター類、靴下」等の関係においては「ポロ(P、、」「
OLO」ないし「Polo)が、マルコ・ポーロを指すものと理解されるも」
のとは認められないというほかはない。
ウ①については、本願商標が、ポロシャツ以外の物について使用され
た場合に「POLO」がポロシャツのことであると理解されることはあり得、
ないところである。
(2)原告は、旧第17類についての「POLO」の登録商標は、昭和5
5年に他人が登録しており、その商標の現在の権利者は、ポロ・ビーシーエス
株式会社であると主張する。
しかし、ラルフ標章は「ポロ(POLO」ないし「Polo)の、」「」
商標などと呼ばれ、それが付された商品は、ブランドとして「ポロ(POL」「
O」ないし「Polo)と呼ばれて、いずれも紳士服、婦人服、眼鏡等のフ」
ァッション関連商品について【J】のデザインに係る商品に付される商標ない
しそのブランドとして著名であったことは前示のとおりである。そして、旧1
7類についての商標「POLO」の商標権者が誰であったかとは関係なく、取
引者・需要者が、ラルフ標章及びそれが付された商品のブランドを上記のよう
に呼んでいる以上、本願商標の出所の混同のおそれを判断するに当たっては、
上記事実を前提として判断すべきであることは、当然である。
(3)原告は「ASCOTPARKPOLOCLUB」が英国に実、
在する有名なポロクラブであり、同クラブとその主宰者の「K】一家」は、【
甲第23号証刊行物でも紹介され、大きな話題になり、日本のテレビでのコマ
ーシャルにも長く登場したと主張する。
しかし、甲第23号証によれば、同号証刊行物には「驚異の【K】、“
”英国でそう呼ばれる姉妹がいることを聞いた“ポロ”というスポーツをご。
存じだろうか?」として「K】4姉妹」を中心とする【K】一家が紹介され、【
ているものの「ASCOTPARKPOLOCLUB」というクラブ、
についての記述はないことが認められるから、同号証刊行物によって「AS、
」。COTPARKPOLOCLUBが紹介されたということはできない
また「ASCOTPARKPOLOCLUB」という名称が、我が国、
のテレビのコマーシャルにおいて登場したと認めるに足りる証拠もない。結局
のところ、本件全証拠によっても「ASCOTPARKPOLOCL、
UB」との文字が、全体として特定の熟語や団体名称を表すものとして我が国
の一般の取引者・需要者によく知られているものと認めることができないこと
は、前認定のとおりである。
そして、我が国の一般の取引者・需要者によく知られているものでは
ない以上「ASCOTPARKPOLOCLUB」が英国に実在する、
としても、そのことは、我が国における本願商標についての出所の混同のおそ
れの判断を左右するものではない。
なお、原告は「ASCOTPARKPOLOCLUB」から、
本願商標の登録出願の同意を得ていると主張するが、この事実も、本願商標に
ついての出所の混同のおそれの判断を左右するものではない。
(4)原告は、我が国において、ラルフ・ローレン以外にも、30種類の
「POLO」ブランドがあり、これらのための市場が確立されていると主張す
る。
しかし「POLO」の語を含む結合商標が他にも多数存在すること、
は当裁判所に顕著ではあるものの、それらがラルフ・ロ―レンによって使用さ
れる「POLO」と明確に区別されていることは、本件全証拠によっても認め
ることができない。
すなわち、前認定のとおり、ラルフ標章が「ポロ(POLO」ない「
しPoloの商標ラルフ標章の付された商品のブランドがポロP「」)、「」(「
OLO」ないし「Polo)と呼ばれて、著名である事実に照らせば、需要」
者が「POLO」の語を含む結合商標について【J】のデザインに係る商品、、
を示すものであって、それの付された商品を、著名な「ポロ(POLO」な」「
いし「Polo)ブランドないしその兄弟ブランドであるなどと誤解してい」
る可能性も十分にあるのである。
のみならず、前認定のとおり、ラルフ標章が「ポロ(POLO」な「
いしPoloの商標ラルフ標章の付された商品のブランドがポロP「」)、「」(「
OLO」ないし「Polo)と呼ばれて、著名である事実に照らせば「PO」、
LO」の文字を含む商標であってこれと区別して認識されているものが、仮に
あるとしても、そのことは、本願商標による商品の出所の混同のおそれの認定
を左右するものではない。なぜなら、仮に、他の結合商標が、著名な「ポロ」
(POLO」ないし「Polo)の商標ないし「ポロ(POLO」ないし「」」「
「Polo)ブランドと呼ばれるものと区別され、出所を異にするものとし」
て理解されているとすると、そのことは、それが「POLO」とそれ以外の、
他の特定の文字とが結合した文字からなるものとしてよく知られ、かつ、何ら
かの事情によりそれがラルフ・ローレンとは関係のないものとしてよく知られ
るに至っているか、又は「POLO(ポロ」以外の文字の特異性などにより、)
当然にそれが認識される等の特段の事情があることを意味するのであって、そ
うであるからこそ、区別されているといい得るものである。ところが、本件全
証拠によっても、本願商標が「POLO」以外の他の文字と結合した文字から
なるものとしてよく知られ、かつ、ラルフ・ローレンとは関係のないものとし
てよく知られるに至っているとか「POLO」以外の文字の特異性などによ、
って当然にそれが認識されるとかというような特段の事情も窺えない。したが
って、前記各ブランドの存在によって、本願商標についての前記商品の出所の
混同のおそれが減少するものということはできないのである。
また原告はラルフ・ロ―レンないし米国ポロ・ローレン社はP、、、「
OLO」の商標権者であるポロ・ビーシーエス株式会社及び「ビバリーヒルズ
ポロクラブ」ブランドとの契約により、共存関係を維持していくことを確認す
るなどしているから【J】自身が、他の「POLO」ブランドの存在は、何、
ら自己の営業活動に実害がないと表明していることになると主張する。
、、【】、「」しかし原告主張の事実によってもJ自身が他のPOLO
ブランドの存在は、何ら自己の営業活動に実害がないと表明したということは
できない。仮に、ラルフ・ロ―レンないし米国ポロ・ローレン社が、他の会社
に「POLO」を含む特定の商標の使用を認める趣旨の契約を結んでいるとし
ても、これらと何ら契約関係のない原告において、それとは別の商標であって
出所の混同のおそれのある本願商標を使用することが許されることになるもの
ではないことは、論ずるまでもないところである。
(5)原告は、別件判決の判示を本件に当てはめると、本願商標について
混同のおそれが生ずることはないと主張する(前記第3、4。)
アこれに関連して、原告は、まず「ASCOTPARK」は、競、
馬を始め、乗馬、ポロ等の馬の競技を行う地域として世界的に有名であると主
張する。
弁論の全趣旨によれば、我が国において「アスコット競馬」がある
程度知られていることは認められる。しかし、本件全証拠によっても、我が国
において「ASCOTPARK」が、ポロ競技を行う地域として知られて、
いると認めることはできない。
なお、原告は「ASCOTPARK」を「アスコット地方、地、
域」という意味であると主張するが、少なくとも我が国においては「ASC、
OTPARK」は「アスコット公園」という意味に理解されるものと認めら
れる。
イまた、原告は、本願商標は、その指定商品の取引者・需要者がこれ
に接した場合、ごく自然に「ASCOTPARK」にある「ポロ競技のク、
ラブ」を認識するものであり「ASCOTPARK」にある「ラルフ・ロ、
」、「」ーレンに係るポロ製品の愛好者のクラブとの観念が生ずるとかPOLO
の部分のみが注目され、直ちにラルフ・ローレンに係る商標が連想されるとは
いえず「POLO」ないし「POLOCLUB」の文字のみが注目される、
とかと解することはできないと主張する。
しかし、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがある
ことは、前示のとおりであるから、本願商標から「ASCOTPARK」、
にある「ポロ競技のクラブ」が認識されるとしても、そのことによって、直ち
に出所の混同が生じなくなるというものではない。
そして前記1の(1)認定に係るラルフ・ローレンと関係のあるポ、「
ロ(POLO」ないし「Polo)の商標及び「ポロ(POLO」ない」「」」「
し「Polo)ブランドと呼ばれるものの著名性、同(2)認定に係る経験則及」
び取引の実情を考慮したとき、取引者・需要者は、本願商標の「POLO」の
部分から、本願商標を、例えば「ポロ」の商標と称し、その結果【J】又は、、
同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのよ
うに、その出所について混同を生ずるおそれがあることは、前示のとおりであ
る。
本願商標について、冷静かつ厳密に分析し、その意味を正確に理解
、、「」し取引に当たろうとする者であるならば誤りなくASCOTPARK
にある「ポロ競技のクラブ」と認識することになるかもしれない。しかし、簡
易迅速を尊ぶ取引の実際、本願商標に係る指定商品の取引の実情における需要
者の注意力ポロPOLOないしPoloの商標及びポロP、「」(「」「」)「」(「
」「」)(、OLOないしPoloブランドと呼ばれるものの著名性換言すれば
ラルフ・ローレンと関係のある「ポロ」ブランドであることの価値)を考慮す
れば、本願商標に係る指定商品の取引の実情においては、本願商標のような結
合商標であって、かつ全体としては冗長な商標について、そのように冷静かつ
厳密に分析し、その意味を正確に理解することが普通であって、そのように理
解されないことは、本願商標の登録の可否を論ずるうえで無視できる程度にし
か生じないであろう、などということはできないのである。
この点に関する原告の主張も、採用することができない。
(6)原告は、商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品と混
同を生ずるおそれがある場合」とは「その他人の業務に係る商品である誤認、
し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある場合(い」
わゆる「狭義の混同)と解釈すべきであるのに、審決が「その他人と経済的」、
又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商
品の需要者が商品の出所について混同を生じるおそれがある場合(いわゆる」
「広義の混同)も含むと解釈したのは誤りである旨主張する。しかし、商標」
法4条1項15号が「広義の混同」を含むとの解釈は、一般に採用されている
解釈であり、今これを変えるべき理由を見出すことはできない。原告は、平成
5年の不正競争防止法の改正により同法2条1項1号は「狭義の混同」と解釈
すべきことになったので、商標法4条1項15号も同様に解するべきであると
主張する。しかしながら、上記改正は、著名表示冒用行為につき「混同」を要
件としないこととしたものにすぎず(不正競争防止法2条1項2号、同改正)
後も、不正競争防止法2条1項1号の混同に「広義の混同」が含まれるとの解
釈に変わりはないというべきである。原告の主張は採用できない。
4以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他
審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
第6よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件
訴訟法7条、民事訴訟法61条、66条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官山下和明
裁判官宍戸充
裁判官阿部正幸

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