弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件各控訴を棄却する。
       理   由
 所論は、原判決は被告人等の本件所為に対し本条例第1条第5条を適用して処断
しているが、本件当時の本条例第1条には、集団行動の許可を管掌する機関は「公
安委員会」なる旨規定されており、右は本条例制定当時施行されていた、改正前の
警察法(昭和22年法律第196号、以下旧警察法と称する。)の関係条文及び本
条例第3条第4項を綜合すると、旧警察法の定める自治体警察を所轄する公安委員
会即ち東京都特別区公安委員会を指すものであるところ、これらは昭和29年7月
1日法律第162号警察法(以下新警察法と称する。)の施行に伴い廃止され、同
時に改正施行された本条例(以下改正条例と称する)第1条は、許可管掌機関を
「東京都公安委員会」と改めたため、許可管掌機関は右改正前とは全くその性格を
異にする別個のものとなるに至り、しかも改正条例は、改正前の本条例(以下旧条
例と称する。)施行当時の許可管掌機関がなした行為の効力につき何ら規定してい
ないから、改正条例の施行に伴い旧警察法当時の東京都特別区公安委員会を許可管
掌機関としていた旧条例は失効し、現在においては、被告人等の本件集団行動につ
き許可を所掌事項とする行政機関は存在せず、旧条例第1条は現実に作用するの由
なきに帰し、同条例第5条の罰則も適用の余地なく失効したものであつて、本条例
違反の公訴事実については犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当するから
免訴の判決をなすべきであつたのに、原判決がこれを看過して本条例違反の罪責を
問うたのは判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続上の法令違背を犯したもの
であるというにある。しかしながら、旧条例第一条にいう「公安委員会」とは単に
管轄の公安委員会という趣旨に解すべきであり、また同条例第3条第4項は、右公
安委員会が申請を許可しなかつた場合に関する規定であつて、警察法改正後におい
ても、同条例が集団行動の許可管掌機関を特に旧警察法に基づく東京都特別区公安
委員会に限定していた趣旨に解するのは相当でなく、新警察法施行後は、当然に同
法に基づく東京都公安委員会が右許可管掌機関に当るものというべきである。何故
ならば改正条例第1条が集団行動を行うに当り、あらかじめ東京都公安委員会の許
可を受けることを要する旨規定しているのも、旧条例と同様集団行動により明らか
に公共の安寧を害するような事態の発生を予防するためであり、本件の如き無許可
集団行動を処罰することの必要性は、旧警察法に基づく東京都特別区公安委員会が
廃止され、新警察法に基づく東京都公安委員会がこれに代るに至つたことにより、
何ら影響を受けないものと解するのが相当であるからである。(最高裁判所第三小
法廷、昭和36年(あ)第1427号岐阜県条例違反被告事件、昭和39年9月2
9日判決の趣旨参照)。されば旧警察法に基づく東京都特別区公安委員会が廃止さ
れたことを根拠として旧条例が現実に作用することができなくなつたとの観点に立
つ論旨は失当であつて理由がない。
(その余の判決理由は省略する。)
(裁判長裁判官 小林健治 裁判官 遠藤吉彦 裁判官 吉川由己夫)

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