弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 1 弁護人高田利廣,同加藤雅明の上告趣意のうち,医師法21条の「検案」の
解釈について,憲法31条違反,法令解釈の誤りをいう点について
 所論は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法4
05条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ職権で判断すると,【要旨1】医師法21条にいう死体の
「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,
当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相
当であり,これと同旨の原判断は正当として是認できる。
 2 同上告趣意のうち,医師法21条の適用につき憲法38条1項違反をいう点
について
 所論は,死体を検案して異状を認めた医師は,その死因等につき診療行為におけ
る業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,異状死体に関する医
師法21条の届出義務(以下「本件届出義務」という。)を負うとした原判決の判
断について,憲法38条1項違反を主張する。
 そこで検討すると,本件届出義務は,警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易
にするほか,場合によっては,警察官が緊急に被害の拡大防止措置を講ずるなどし
て社会防衛を図ることを可能にするという役割をも担った行政手続上の義務と解さ
れる。そして,異状死体は,人の死亡を伴う重い犯罪にかかわる可能性があるもの
であるから,上記のいずれの役割においても本件届出義務の公益上の必要性は高い
というべきである。他方,憲法38条1項の法意は,何人も自己が刑事上の責任を
問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものと解さ
れるところ(最高裁昭和27年(あ)第838号同32年2月20日大法廷判決・
刑集11巻2号802頁参照),本件届出義務は,医師が,死体を検案して死因等
に異状があると認めたときは,そのことを警察署に届け出るものであって,これに
より,届出人と死体とのかかわり等,犯罪行為を構成する事項の供述までも強制さ
れるものではない。また,医師免許は,人の生命を直接左右する診療行為を行う資
格を付与するとともに,それに伴う社会的責務を課するものである。このような本
件届出義務の性質,内容・程度及び医師という資格の特質と,本件届出義務に関す
る前記のような公益上の高度の必要性に照らすと,医師が,同義務の履行により,
捜査機関に対し自己の犯罪が発覚する端緒を与えることにもなり得るなどの点で,
一定の不利益を負う可能性があっても,それは,医師免許に付随する合理的根拠の
ある負担として許容されるものというべきである。
 以上によれば,【要旨2】死体を検案して異状を認めた医師は,自己がその死因
等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合に
も,本件届出義務を負うとすることは,憲法38条1項に違反するものではないと
解するのが相当である。このように解すべきことは,当裁判所大法廷の判例(昭和
27年(あ)第4223号同31年7月18日判決・刑集10巻7号1173頁,
昭和29年(あ)第2777号同31年12月26日判決・刑集10巻12号17
69頁,昭和35年(あ)第636号同37年5月2日判決・刑集16巻5号49
5頁,昭和44年(あ)第734号同47年11月22日判決・刑集26巻9号5
54頁)の趣旨に徴して明らかである。
 3 同上告趣意のその余の主張について
 所論は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって
,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

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