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平成13年(行ケ)第295号 特許取消決定取消請求事件(平成14年1月21
日口頭弁論終結)
          判           決
       原      告   日本ポリケム株式会社
       訴訟代理人弁理士   須 藤 阿佐子
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      高 梨   操
       同          加 藤 志麻子
       同          森 田 ひとみ
       同          宮 川 久 成
          主           文
 特許庁が異議2000-72908号事件について平成13年5月1
7日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は、名称を「積層フィルム」とする特許第3003996号発明(以
下「本件発明」という。)の特許権者である。なお、この特許は、平成4年12月
3日、同月25日及び平成5年5月13日の各国内優先権を主張して平成5年11
月26日にされた特許出願(特願平5-297010号、以下「原出願」とい
う。)の一部を分割して平成9年12月24日にした新たな特許出願(特願平9-
354638号)に係り、平成11年11月19日に設定登録されたものである。
    上記特許につき特許異議の申立てがされ、異議2000-72908号事
件として特許庁に係属したところ、原告は、平成13年2月6日、明細書の特許請
求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正
請求」という。)をした。
    特許庁は、同特許異議事件について審理した上、同年5月17日、「訂正
を認める。特許第3003996号の請求項1~3に係る特許を取り消す。」との
決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は同年6月2日原告に送達され
た。
 (2) 原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の同年9月18日、本件明
細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審判の請
求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39165号事件として審理
した上、同年12月4日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」とい
う。)をし、その謄本は同月14日原告に送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載
   【請求項1】基層とヒートシール層とからなる積層フィルムであって、該シ
ートヒール層はエチレン・α-オレフィン共重合体及びとエチレン重合体を含有す
る樹脂組成物から形成され、該樹脂組成物のMFRが5~25/10分、密度が
0.87~0.932g/㎝3
、Q値が2~10、ME(3g)が1.2~2.3、
MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が
   ME≧[0.2×MT+1]/g
   を満たし、該積層フィルムのヒートシール層同志をシール温度110℃;シ
ール圧力2㎏/㎝2
;シール時間1秒でヒートシールした時のシール強度が2.9~
5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシール温度が84~114℃である
積層フィルム。
   【請求項2】前記樹脂組成物の密度が0.89~0.912g/㎝3
であ
り、前記シール強度が3.4~5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシー
ル温度が84~100℃である請求項1記載の積層フィルム。
   【請求項3】前記シール強度が4.9~5.9㎏/15㎜である請求項2記
載の積層フィルム。
   【請求項4】前記エチレン・α-オレフィン共重合体がメタロセン触媒を用
いて製造され、且つそのMFRが2~30g/10分、密度が0.935g/㎝3

下であり;前記エチレン重合体が0.1~20g/10分のMFR及び0.915
~0.930g/㎝3
の密度を有する高圧法ポリエチレンであり;前記樹脂組成物が
50~99重量%の該エチレン・α-オレフィン共重合体および1~50重量%の
該エチレン重合体を含有する請求項1~3のいずれか一項記載の積層フィルム。
 (2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、本件訂正請求に
係る訂正は、訂正前の請求項1~3を削除するとともに、同4を下記請求項1~3
のとおりに訂正するというものである。)
   【請求項1】基層とヒートシール層とからなる積層フィルムであって、該ヒ
ートシール層はメタロセン触媒を用いて製造され、且つそのMFRが2~30g/
10分、密度が0.935g/㎝3
以下であるエチレン・α-オレフィン共重合体5
0~99重量%及び0.1~20g/10分のMFR及び0.915~0.930
g/㎝3
の密度を有する高圧法低密度ポリエチレン1~50重量%を含有する樹脂組
成物から形成され、該樹脂組成物のMFRが5~25g/10分、密度が0.87
~0.932g/㎝3
、Q値が2~10、ME(3g)が1.2~2.3、MTが
1.0以上であり、MEとMTの関係が
   ME≧[0.2×MT+1]/g
   を満たし、該積層フィルムのヒートシール層同志をシール温度110℃;シ
ール圧力2㎏/㎝2
;シール時間1秒でヒートシールした時のシール強度が2.9~
5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシール温度が84~114℃である
積層フィルム。
   【請求項2】前記樹脂組成物の密度が0.89~0.912g/㎝3
であ
り、前記シール強度が3.4~5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシー
ル温度が84~100℃である請求項1記載の積層フィルム。
   【請求項3】前記シール強度が4.9~5.9㎏/15㎜である請求項2記
載の積層フィルム。
 (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注、上記(2)との相違
部分を下線で示す。)
   【請求項1】基層とヒートシール層とからなる積層フィルムであって、該ヒ
ートシール層はメタロセン触媒を用いて製造され、且つそのMFRが2~30g/
10分、密度が0.935g/㎝3
以下、温度上昇溶離分別(TREF)によって得
られる溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が20~85℃であり、か
つ、このピークの[ピークの高さ]/[ピークの1/2の高さにおける幅](H/
W)が1以上であるエチレンと炭素数3~18のα-オレフィンとの共重合体50
~99重量%及び0.1~20g/10分のMFR及び0.915~0.930g
/㎝3
の密度を有し、かつ、ME(3g)は、1.6以上、MTが1.5g以上であ
る高圧法低密度ポリエチレン1~50重量%を含有する樹脂組成物から形成され、
該樹脂組成物のMFRが5~25g/10分、密度が0.87~0.932g/㎝3
、Q値が2~10、ME(3g)が1.2~2.3、MTが1.0以上であり、M
EとMTの関係が
   ME≧[0.2×MT+1]/g
   を満たし、該積層フィルムのヒートシール層同志をシール温度110℃;シ
ール圧力2㎏/㎝2
;シール時間1秒でヒートシールした時のシール強度が2.9~
5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシール温度が84~114℃である
積層フィルム。
   【請求項2】前記樹脂組成物の密度が0.89~0.912g/㎝3
であ
り、前記シール強度が3.4~5.9㎏/15㎜であり、且つ3㎏荷重ヒートシー
ル温度が84~100℃である請求項1記載の積層フィルム。
   【請求項3】前記シール強度が4.9~5.9㎏/15㎜である請求項2記
載の積層フィルム。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、本件訂正請求に係る訂正を認め、本件発明の要旨を同訂正後の
特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定した上、本件発明は、原出願の願
書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲外の点をその要旨とするものであ
るから、本件に係る出願は特許法44条1項の規定による適法な分割出願とは認め
られず、その出願日は分割出願のされた平成9年12月24日となるところ、本件
発明は、特開平7-26079号公報(原出願に係る公開公報)記載の発明と同一
であるから、その特許は、同法29条1項3号に違反してされたものであり、同法
113条2号の規定に該当するものとして取り消されるべきとした。
第3 当事者の主張
 1 原告
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲
の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は、本件訂正審決の確定により特許
請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため、誤りに帰したことに
なる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから、本件決
定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件決定が本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の
記載(上記第2の2(2))のとおり認定したこと、他方、本件訂正審決の確定によ
り、特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に
争いがないところ、両者の記載を対比した場合に、後者の特許請求の範囲の記載
は、前者の特許請求の範囲を減縮したのと同一の結果となっていることは明らかで
ある。
   そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を上記のとおり認定したことは、
結果的に誤りであったことに帰する。そして、これが本件決定の結論に影響を及ぼ
すことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れな
い。
   よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告の申立て等
本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判決す
る。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 長  沢  幸  男
    裁判官 宮  坂  昌  利

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