弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主     文
       本件各上告を棄却する。
            理     由
 被告人Aの弁護人佐藤榮一及び被告人Bの弁護人福島昭宏の各上告趣意は,いず
れも単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告
理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,殺人罪の成否について職権で判断する。
 1 1,2審判決の認定及び記録によると,本件の事実関係は,次のとおりであ
る。
 (1) 被告人Aは,夫のVを事故死に見せ掛けて殺害し生命保険金を詐取しよう
と考え,被告人Bに殺害の実行を依頼し,被告人Bは,報酬欲しさからこれを引き
受けた。そして,被告人Bは,他の者に殺害を実行させようと考え,C,D及びE
(以下「実行犯3名」という。)を仲間に加えた。被告人Aは,殺人の実行の方法
については被告人Bらにゆだねていた。
 (2) 被告人Bは,実行犯3名の乗った自動車(以下「犯人使用車」という。)
をVの運転する自動車(以下「V使用車」という。)に衝突させ,示談交渉を装っ
てVを犯人使用車に誘い込み,クロロホルムを使ってVを失神させた上,a付近ま
で運びV使用車ごと崖から川に転落させてでき死させるという計画を立て,平成7
年8月18日,実行犯3名にこれを実行するよう指示した。実行犯3名は,助手席
側ドアを内側から開けることのできないように改造した犯人使用車にクロロホルム
等を積んで出発したが,Vをでき死させる場所を自動車で1時間以上かかる当初の
予定地から近くのbに変更した。
 (3) 同日夜,被告人Bは,被告人Aから,Vが自宅を出たとの連絡を受け,こ
れを実行犯3名に電話で伝えた。実行犯3名は,宮城県石巻市内の路上において,
計画どおり,犯人使用車をV使用車に追突させた上,示談交渉を装ってVを犯人使
用車の助手席に誘い入れた。同日午後9時30分ころ,引地が,多量のクロロホル
ムを染み込ませてあるタオルをVの背後からその鼻口部に押し当て,cもその腕を
押さえるなどして,クロロホルムの吸引を続けさせてVを昏倒させた(以下,この
行為を「第1行為」という。)。その後,実行犯3名は,Vを約2㎞離れたbまで
運んだが,被告人Bを呼び寄せた上でVを海中に転落させることとし,被告人Bに
電話をかけてその旨伝えた。同日午後11時30分ころ,被告人Bが到着したので
,被告人B及び実行犯3名は,ぐったりとして動かないVをV使用車の運転席に運
び入れた上,同車を岸壁から海中に転落させて沈めた(以下,この行為を「第2行
為」という。)。
 (4) Vの死因は,でき水に基づく窒息であるか,そうでなければ,クロロホル
ム摂取に基づく呼吸停止,心停止,窒息,ショック又は肺機能不全であるが,いず
れであるかは特定できない。Vは,第2行為の前の時点で,第1行為により死亡し
ていた可能性がある。
 (5) 被告人B及び実行犯3名は,第1行為自体によってVが死亡する可能性が
あるとの認識を有していなかった。しかし,客観的にみれば,第1行為は,人を死
に至らしめる危険性の相当高い行為であった。
 2 【要旨1】上記1の認定事実によれば,実行犯3名の殺害計画は,クロロホ
ルムを吸引させてVを失神させた上,その失神状態を利用して,Vを港まで運び自
動車ごと海中に転落させてでき死させるというものであって,第1行為は第2行為
を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること,第1行為に
成功した場合,それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が
存しなかったと認められることや,第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接
性などに照らすと,第1行為は第2行為に密接な行為であり,実行犯3名が第1行
為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから,そ
の時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。また,
【要旨2】実行犯3名は,クロロホルムを吸引させてVを失神させた上自動車ごと
海中に転落させるという一連の殺人行為に着手して,その目的を遂げたのであるか
ら,たとえ,実行犯3名の認識と異なり,第2行為の前の時点でVが第1行為によ
り死亡していたとしても,殺人の故意に欠けるところはなく,実行犯3名について
は殺人既遂の共同正犯が成立するものと認められる。そして,実行犯3名は被告人
両名との共謀に基づいて上記殺人行為に及んだものであるから,被告人両名もまた
殺人既遂の共同正犯の罪責を負うものといわねばならない。したがって,被告人両
名について殺人罪の成立を認めた原判断は,正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁
判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 泉 徳治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島
田仁郎 裁判官 才口千晴)

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