弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一点について
 所論は上告人において再調査の結果、被上告人の許可申請書記載の事項と事実と
相違する点が明白となつたから許可処分に要素の錯誤による違法を認め且かかる処
分を存置するのは一般農民に対し悪影響があるので公益的見地から右処分の取消を
断行したというのである。元来許可が行政庁の自由裁量に属するものであつても、
それはもともと法律の目的とする政策を具体的の場合に行政庁をして実現せしめる
ために授権されたものであるから、処分をした行政庁が自らその処分を取消すこと
ができるかどうか、即ち処分の拘束力をどの程度に認めうるかは一律には定めるこ
とができないものであつて、各処分について授権をした当該法律がそれによつて達
成せしめんとする公益上の必要、つまり当該処分の性質によつて定まるものと解す
るのが相当である。ところで本件において都道府県知事は農地の賃貸借の当事者が
農調法九条三項所定の許可を受けるために申請書を提出しても、その申請書の記載
にはかかわりなく、同法施行令一一条所定の基準に従つて、当該賃貸人が自作を為
すに必要な経済能力、施設等を有するかどうか、当該賃貸人の自作によつて当該農
地の生産が増大するかどうか、更に賃貸借の解除、解約(合意解約を含む)又は更
新の拒絶により当該農地の賃借人の相当な生活の維持が困難となることがないかど
うか等諸般の事情を考慮して許可を与えることが相当であるかどうかを決しなけれ
ばならないのである。それ故かりに右申請書に不実の記載があつても、行政庁は申
請書の記載にかかわりなく、当事者双方に存する前記諸般の事情を勘案した上許可
を与えることが相当であると決定することができるのであつて行政庁がその権限に
基いて許可を与えれば、それによつてたゞに申請者だけが特定の利益を受けるので
はなく、利害の反する賃貸借の両当事者を拘束する法律状態が形成せられるのであ
る。それ故かような場合に、申請者側に詐欺等の不正行為があつたことが顕著でな
い限り、処分をした行政庁もその処分に拘束されて処分後にはさきの処分は取消し
できないことにしなければ、農調法九条三項所定の法律行為について特に賃貸借当
事者の意思の自主性を制限して、その効力を行政庁の許可にかからしめた法的秩序
には客観的安定性がないことになつて、それでは却て耕作者の地位の安定を計る農
調法の目的に副わないことになることは明である。されば所論のように、上告人に
おいて許可後に許可申請書記載の事項と事実とが相違することが明となつて、さき
の許可を与えなかつた方がよかつたという見解に到達したとしても、それは上告人
においてさきの調査が不充分であつたかも知れないという内部の事情に過ぎないこ
とであつて、かかる事情の下においては、所論要素の錯誤を理由として農調法上の
法的秩序に優位せしめなければならない程度にさきの許可を取消すべき公益上の必
要あるものとはとうてい認めることができないと断ぜざるをえない。よつてかかる
場合は行政処分によつてさきの処分を取消すことは許されないとした原判決は正当
であつて論旨は理由がない。
 同第二点、第三点について
 原判決は本件農地は訴外Dにおいて買入れた上無償で控訴人に貸与したものであ
るという事実を認定した以上、之を使用貸借としたのは正当であり、更に進んで右
使用貸借が国の買収処分前に消滅したことの証拠がないと認定したのであるから、
控訴人は右買収処分による所有権移転当時には本件農地につき使用貸借上の権利を
有していたと解したのもまた正当であつて、論旨は原判決と異る前提に立つて原判
決を攻撃するに帰するから採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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