弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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【主文】被告人を懲役3年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
被告人から金20万円を追徴する。
【理由】
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,a党が,埼
玉県第8区における小選挙区選出議員選挙の候補者として届け出,かつ,北関東選
挙区における比例代表選出議員選挙の衆議院名簿登載者として届け出る予定であっ
たAの選挙運動者であるが,
1同年10月17日ころ,(ア)所在の被告人方において,Aに当選を得させる
目的の下に,被告人から他のAの選挙運動者又は各選挙区の選挙人に供与すべき投
票報酬,選挙運動報酬等の資金として,Aから現金210万円の交付を受け,
2前記Aに当選を得させる目的をもって,同人と共謀の上,別紙犯罪事実一覧
表第1及び第2記載のとおり,いまだ前記立候補の届出及び衆議院名簿の届出のな
い同月25日ころから同月27日ころまでの間,前後18回にわたり,(イ)所在の
(ウ)外16箇所において,いずれも各選挙区の選挙人であるB外17名に対し,上
記Aのため,投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,現金
合計180万円を供与し,一面立候補届出前の選挙運動をし,
3前記Aに当選を得させる目的をもって,別紙犯罪事実一覧表第3記載のとお
り,いまだ前記立候補の届出及び衆議院名簿の届出のない同月27日ころ,前後6
回にわたり,(エ)所在のA事務所外2箇所において,いずれも各選挙区の選挙人で
あるC外5名に対し,上記Aのため,投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をする
ことの報酬として,現金合計80万円を供与し,一面立候補届出前の選挙運動を
し,
第2前記第43回衆議院議員総選挙に際し,a党による前記届出を終えたAの選
挙運動を総括主宰するものであるが,同人に当選を得させる目的をもって,別紙犯
罪事実一覧表第4記載のとおり,同月31日ころから同年11月4日ころまでの
間,前後3回にわたり,前記A事務所外1箇所において,いずれも各選挙区の選挙
人であるD外2名に対し,上記Aのため,投票及び投票取りまとめ等の選挙運動を
することの報酬として,現金合計30万円を供与し
たものである。
(法令の適用)
被告人の判示第1の1の所為は,公職選挙法221条1項5号(同項1号)に,
判示第1の2の別紙犯罪事実一覧表第1の1ないし15及び同犯罪事実一覧表第2
の1ないし3の各所為のうち,各現金供与の点はいずれも刑法60条,公職選挙法
221条1項1号に,各事前運動の点はいずれも刑法60条,公職選挙法239条
1項1号,129条に,判示第1の3の別紙犯罪事実一覧表第3の1ないし6の各
所為のうち,各現金供与の点はいずれも同法221条1項1号に,各事前運動の点
はいずれも同法239条1項1号,129条に,判示第2の別紙犯罪事実一覧表第
4の1ないし3の各所為は,いずれも同法221条3項2号,同条1項1号にそれ
ぞれ該当するところ,判示第1の2の別紙犯罪事実一覧表第1の1ないし15,同
犯罪事実一覧表第2の1ないし3及び判示第1の3の同犯罪事実一覧表第3の1な
いし6の各現金供与と各事前運動はそれぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合
であるから,刑法54条1項前段,10条によりそれぞれ1罪として重い各現金供
与の罪の刑で処断することとし,各所定刑中判示各罪についてそれぞれ懲役刑を選
択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により
刑及び犯情の最も重い判示第2の別紙犯罪事実一覧表第4の2の罪の刑に法定の加
重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適
用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,被告人が判示第1
の1の犯行により交付を受けた現金のうち金20万円の現金は,既に費消して没収
することができないので,公職選挙法224条後段によりその価額を被告人から追
徴することとする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙にa
党から立候補を予定していたAの選挙運動者として,同人に当選を得させる目的の
下に,他の選挙運動者や選挙人に供与すべき投票報酬,選挙運動報酬等の資金とし
てA本人から現金210万円の交付を受け(判示第1の1の事実),これを原資と
して,同人と共謀の上,a党甲支部の各地区長ら18名に対して現金合計180万
円を供与し(判示第1の2の事実),また,単独で,甲市議会議員6名に対し現金
合計80万円を供与し(判示第1の3の事実),さらに,立候補届出後,Aの選挙
運動の総括主宰者となった被告人が,同市議会議員3名に対し現金合計30万円を
供与し(判示第2の事実)た公職選挙法違反の事案である。
 被告人は,家業の農業を営む傍ら,平成7年から3期連続して甲市の市議会議員
を務め,本件当時はa党甲支部幹事長として,地元から同党公認の衆議院議員を選
出したいという強い希望を抱いていたものであるが,Aの選挙対策本部長として,
選挙対策本部を組織し,a党系の甲市議会議員会派に所属する議員を幹部に据え,
選挙運動の地区責任者にはa党甲支部の各地区長等を選任するなどして選挙運動に
取り組み,選挙運動を総括主宰する立場にあったところ,自らの選挙対策本部の立
ち上げが遅れていることなどに焦りを覚えたAから,投票報酬,選挙運動報酬の資
金として交付されるものであることを知りながら,現金210万円の交付を受ける
と,Aの意思を忖度し,過去の総選挙において2度落選したAを今回こそ当選させ
たいと考え,これを原資として,a党甲支部の各地区長ら18名に対して合計18
0万円の現金を供与し,さらに,甲市議会議員9名に対しても,現金合計110万
円を供与したというもので,各地区長や市議会議員など,地元では影響力の大きい
運動員を選んで現金を供与しており,しかも,本件選挙の公示前から多数の地元有
力者に現金を供与して各犯行に及んでいる。買収の相手は地区長18名,市議会議
員9名の合計27名の多数に及んでおり,供与された金額も1件当たり5万円から
20万円と多額で,供与金額の合計は290万円の高額に上っている。本件のよう
な買収事犯,とりわけ現金買収事犯が議会制民主主義の根幹を危うくし,国民の政
治不信を助長するものであることは多言を要しない。被告人は,本件選挙の終了
後,警察が捜査を開始したことを知ると,犯跡を隠ぺいするために供与した金員を
回収したり,口裏合わせをするなどの罪証隠滅工作も行っている。被告人の議会人
としての経歴や,当時被告人がa党の甲支部幹事長の要職にあり,Aの選挙対策本
部長という責任ある立場にあったことを考えると,被告人の刑事責任は誠に重いと
いわざるを得ない。
 しかしながら,他方,被告人が,事実を認め,今後は政治活動からは手を引き,
公職の選挙運動にも関与せず,家業の農業に精励すると述べて反省悔悟の念を披瀝
していること,その後,市議会議員を辞職していること,本件各買収の発端は,A
から供与資金として現金が交付されたことにあり,被告人から求めたものではない
こと,市議会議員としてこれまで地域社会に貢献してきた節もうかがわれること,
妻と知人が更生に助力することを誓約していること,その他被告人の家庭の状況
等,被告人のためにしん酌し得る事情も認めることができる。そこで,以上の情状
を総合考慮し,主文掲記の刑に処することとした。
(求刑懲役3年,金20万円の追徴)
【さいたま地方裁判所第三刑事部裁判長裁判官川上拓一,裁判官森浩史,裁判官南
宏幸】

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