弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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             主         文
  1 原判決を次のとおり変更する。
   (1) 控訴人が被控訴人に対して平成12年5月22日付けでした別紙物件目
録記載の土地に係る平成12年度固定資産課税台帳登録価格の審査の申出に対し,
被控訴人が同年10月3日付けでした決定のうち,前記土地の価格が835万円を
超える部分の審査の申出を棄却した部分を取り消す。
   (2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
  2 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
             事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人が別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の平成
12年度固定資産課税台帳登録価格についての控訴人の審査申出を棄却する旨の平
成12年10月3日付け決定を取り消す。
 2 被控訴人
   本件控訴を棄却する。
第2 事案の概要
 1 本件は,控訴人が,その所有する土地について,平成12年度土地課税台帳
に登録された価格(本件価格。尾道市長が2431万9503円と決定したもの)
は「適正な時価」(地方税法341条5号。控訴人は99万5000円であると主
張。)を超えるものであるなどと主張して,被控訴人に対して審査請求を申し出た
ところ,同申出には理由がないとしてこれを棄却する旨の決定(本件決定)を受け
たため,これを不服として,同棄却決定の取消しを求めた事案である。
   その余の事案の概要は,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」に
記載のとおりであるから,これを引用する。
   原審は,本件土地の価格の評価に違法はなく,したがって,本件決定にも違
法はないとして,控訴人の本件請求を棄却した。
   これを不服として控訴人から提起されたのが,本件控訴事件である。
 2 当審における争点は,原審と同様であって,本件土地の価格の評価が違法で
あるかであり,この点についての当事者双方の当審における主張は,次のとおりで
ある。
 (控訴人)
  (1) 本件土地の地目を介在畑とした認定は,次のとおり違法である。
   ア 評価基準(地方税法388条1項に基づき総務大臣〔本件当時は自治大
臣〕が告示する固定資産評価基準)によれば,土地の評価は,土地の地目の別に定
める評価方法によって行い,この場合において,土地の地目は,土地の現況による
ものとされている。現況に照らせば,本件土地の地目は,一部畑,一部原野ないし
山林とすべきである。
   イ 評価基準は,宅地等への転用許可を受けた田畑及び田畑であっても宅地
等への転用が確実と認められるものについては,転用後の当該土地とその状況が類
似する土地の価額を基準とすべき旨規定している。評価基準がこのように規定する
のは,このような土地(介在農地)は,実質的にみて宅地等としての潜在価値を有
し,田畑と同様に評価することが不合理であって,宅地等との間に不均衡を生ずる
ことになるためである。この趣旨からすれば,介在農地との認定を,農地転用届出
書による所有者の主観のみにかからしめるのは相当でなく,公平な徴税という観点
から,客観的経済的にされるべきである。そして,本件土地は,現実に宅地等とし
て使用することが不可能であり,宅地等としての潜在的価値が全くないのであるか
ら,介在畑と認定すべきではない。
   ウ 本件土地は,一部畑,一部山林であり,両者は,現実的に担税力が異な
るからこそ,転用許可以前は,両者を分けて評価されていたのである。転用許可後
においても,転用可能性のある限度で介在畑と評価替えがされるべきであり,全体
としてこれを行うのは誤りである。
  (2) 本件土地の地目が介在畑であるとの認定が違法ではないとしても,本件価
格は,次のとおり違法である。
   ア 本件土地は,雑種地への転用を予定して転用許可を得た土地であるが,
396平方メートルの準平地(畑)部分,1593平方メートルの山林部分からな
っており,本件土地を宅地として造成するには,莫大な費用を要し,造成費控除と
しては97パーセント程度が相当であって,尾道市が採用した40パーセント造成
費控除の範囲内で造成することは不可能である(土地の造成費相当額は,直接評価
基準には定められていない。)。また,尾道市は,同市ab丁目c番dの土地(以
下「本件標準宅地」という。)を標準宅地として,これに各種補正をして本件価格
を決定しているが,本件土地には,里道しかなく(幅員1メートルの未舗装の道
路),法規上建物を建てることができないのであり,このような宅地効用のない土
地については,そもそも前提を異にするのであるから本件標準宅地から比準して価
格を決定する方法では,適正な時価を算定することなどできない。
     以上のとおり,本件土地は,雑種地への転用が予定された介在畑である
ことを前提としても,極めて個別性の高い土地であり,単純に宅地に準じて評価し
たのでは,「適正な時価」を算定できないのである。すなわち,本件土地について
は,最高裁判所平成15年7月18日第二小法廷判決(平成11年(行ヒ)第18
2号事件)にいう,評価基準が定める評価の方法によっては,「適正な時価」を算
定できない「特別な事情」がある場合にあたるのであって,その価格は,鑑定評価
書(甲38。以下「本件鑑定評価書」という。)記載の835万円と認められるべ
きである。
   イ 前記のとおり,本件土地は雑種地への転用を予定されているものである
が,雑種地については,遊園地,ゴルフ場,鉄塔敷地,高圧線下の土地など,そも
そもその価格の評価が多岐にわたる土地を含むものであり,雑種地であるというこ
とから,直ちに宅地に準じた評価を行うのは適当でない。当該土地を全体として,
現況及び利用目的に重点をおいて土地全体を評価することこそ評価基準に則った評
価というべきである。そうすると,本件土地は,雑種地ではあるが,現況は原野と
山林であり,前記のとおり山林部分の面積が圧倒的に広く,全体としては山林とし
て評価されるべきものである。
  (3) 仮に,被控訴人による本件土地の評価が評価基準に合致したものであると
すれば,本件土地の評価額の決定は評価基準によるべきことを定める地方税法40
3条は,本件土地に適用される限り違憲であるといわざるを得ない。
 (被控訴人)
  (1) 当該土地の所有者が農地転用の意思を示しながら,なおその上に現況を調
査して客観的に転用の可否を判断するような評価方法を地方税法及び固定資産評価
基準は認めていない(この意味では,現況主義の例外にあたる。もっとも,評価の
決定には,標準宅地の価格に各種補正を行い,可能な限り現況を反映した評価を行
っており,現況主義を逸脱するものではない。)。所有者の農地転用の意思が示さ
れた場合,当該土地については,農地として利用されている土地と区別して,転用
後の土地の地目に従って評価されるが,実質的にみても,それが公平な徴税という
趣旨に適うものである。そして,控訴人の農地転用届出書によれば,本件土地を一
体として資材置場(雑種地)へ転用することが予定されているのであるから,本件
土地は全体として一体的に評価すべきであり,区分して評価することはできない。
  (2)ア 控訴人は,本件土地を資材等の仮置場として使用する目的で購入し,雑
種地への転用申請をしたものであるところ,同目的に使用する限り,大規模な造成
工事は必要でなく,平坦地部分に対する簡易な切土,盛土等の整地工事で十分利用
することは可能であり,大規模な造成工事を行うことを前提とした評価方法による
ことはそもそも適切ではない。また,利用可能な土地の範囲も,控訴人が平坦地で
あると主張する396平方メートルに限定されるものではない。本件土地のがけ地
割合を40ないし50パーセントとした尾道市長の認定からすると,少なくとも本
件土地の半分は資材置場として利用可能であると判断できる。また,a県道の後背
地に位置し道路幅1ないし2メートル程度の街路に沿接する住宅と畑が混在する地
域であり,街路の状況,公共施設への接近状況,その他の宅地利用上の便について
同一性がみられる本件土地の属する状況類似地域内で本件標準宅地を選定したこと
に誤りはない。
   イ 本件鑑定評価書記載の本件土地の価格は,本件土地を個別的に評価して
算定されたものであり,固定資産評価基準という法定の画一的基準を用いた比準方
式とは目的も手段も異なる。固定資産評価は,法的拘束力をもつ評価基準に基づき
短期間に限られた予算や人数により大量の土地全てを評価しなければならないもの
である上,まずはその市町村全体の,次に状況類似地域間での,各価格の均衡の確
保が要求されている。このような固定資産の評価においては,個々の具体的な事情
を逐一反映させることは不可能であり,個別的評価の結論をもって固定資産評価額
の妥当性を論じることは適切ではない。
第3 争点に対する判断
 1 本件土地の地目認定について
   当裁判所も,尾道市長が本件土地を介在畑と認定したことに違法はなく,し
たがって,本件決定中,この点に関する判断にも違法はないものと判断する。その
理由は,原判決「事実及び理由」中「第3 争点に対する判断」の「1 本件土地
の地目認定に関する違法の主張について」(原判決13頁4行目から14頁7行目
まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
   なお,控訴人は,介在農地の認定を所有者の主観のみにかからしめるのは相
当ではないと主張する。
   しかしながら,農地法4条1項及び5条1項の規定により,宅地等への転用
に係る許可を受けた田及び畑並びにその他の田及び畑で宅地等に転用することが確
実と認められるものが宅地等介在農地とされているのであり,本件土地が農地転用
の許可を受けた以上,これを介在農地と認定することに違法はないし,通常,農地
転用の届出をする者は,当該土地の転用後の潜在的価値を前提として,同届出をす
るものと考えられるから,その主観にかからしめても特段不相当であるとはいえな
い。
   また,控訴人は,本件土地の現況に照らし,介在農地の認定も,現況畑の部
分に限定されるべきであると主張する。
   しかしながら,控訴人は,本件土地について,特に区分することなく,一体
として農地転用の届出をしたこと(乙7)からすれば,本件土地を一体として転用
する予定であるものと解されるから,これを区分する理由はなく,控訴人の主張は
採用できない。
 2 本件価格について
  (1) 固定資産税は,固定資産の資産価値に着目して,その所有者に課される財
産税であり,固定資産の「適正な時価」(地方税法341条5号)で固定資産課税
台帳に登録されたものがその課税標準とされているものである(同法349条1項
参照)。そして,前記の「適正な時価」とは,当該固定資産の客観的な交換価値
(以下「客観的時価」という。)をいうと解される。
    もっとも,法(地方税法388条1項,403条1項)は,大量の固定資
産について反復的,継続的に実施される評価を可及的に適正に行い,統一的な基準
による評価を行うことによって,各市町村全体の評価の均衡を確保するとともに,
評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するため,固定資産の評価
方法は評価基準によるものとしている。そうすると,評価基準に従った計算過程の
一部に,当該固定資産の特殊事情が十分に反映されない事象が生じることもあると
考えられるが,弁論の全趣旨によれば,そのような事象が生じた場合であっても,
評価基準に従った計算結果が客観的時価を超えないように,いわゆる7割評価の経
過措置等の制度が設けられているものと認められる。
    したがって,当該固定資産の評価が評価基準に従って行われている場合に
は,その価格に一応の妥当性があるものと推認することはできるが,評価基準が定
める評価の方法によっては当該固定資産を適切に評価することができないという特
別の事情が存することにより,評価基準に従って評価された登録価格が客観的時価
を上回ることが認められる場合には,当該登録価格は「適正な時価」を超えるもの
といわざるを得ず,その限度で違法となるというべきである(最高裁判所平成10
年(行ヒ)第41号・平成15年6月26日第一小法廷判決及び最高裁判所平成1
1年(行ヒ)第182号・平成15年7月18日第二小法廷判決各参照)。
  (2) 前記1において判示したとおり,評価基準によれば,本件土地は,宅地等
介在農地として,「沿接する道路の状況,公共施設等の接近の状況その他宅地等と
しての利用上の便等からみて,転用後における当該田及び畑とその状況が類似する
土地の価額を基準として求めた価額から当該田及び畑を宅地等に転用する場合にお
いて通常必要と認められる造成費に相当する額を控除した価額によってその価額を
求める方法」により評価されることとなる。
    そして,控訴人は,本件土地を雑種地に転用する旨の転用届を提出してい
たのであるから,本件における「宅地等」とは,雑種地のことであると解される。
その評価については,評価基準第1章第10節に規定があり,同規定によれば,雑
種地(ゴルフ場等の用に供する土地及び鉄軌道用地を除く。)の評価は,雑種地の
売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものと
され,ただし,市町村内に売買実例価額がない場合においては,土地の位置,利用
状況等を考慮し,付近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものと
されている(乙1)。また,証拠(乙16,23ないし25及び原審証人A)並び
に弁論の全趣旨によれば,評価対象雑種地と状況の類似した雑種地の売買実例のあ
ることは稀であるため,付近の土地の価額に比準して評価せざるを得ないのが実情
であること,市街化区域内の雑種地は,宅地に比準して評価されるのが一般的であ
ることが認められる。
    そうすると,本件土地の評価を近隣の宅地に比準した点は,一般的な合理
性を肯定することができ,それ自体評価基準に違反するということはできないとい
うべきである。
  (3) しかしながら,本件土地については,評価基準が定める評価の方法によっ
ては適切に評価することができないという特別の事情のあることが認められ,その
結果,本件価格は,客観的時価を上回ったものというべきである。その理由は,次
のとおりである。
   ア 争いのない事実等に加え,証拠(甲19ないし22,23の1ないし
3,甲24,25,28ないし30,37,38,42,乙6,7,12ないし1
4,16,27,28,原審証人B,同C,同D,同A,当審証人E及び原審にお
ける控訴人本人)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
   (ア) 法規上,現状では,本件土地に建物を建てることができない。
      まず,本件土地に接している里道は,建築基準法に定義された道路に
該当しない(同法42条1項5号参照)ので,幅4メートルの接面道路を約100
mにわたって築造しなければならない。
      さらに,本件土地は,宅地造成工事規制区域に指定されているので,
宅地造成等規制法及び同法施行令に適合するように,東側のがけ地を補修しなけれ
ばならない。
   (イ) 上記の接面道路の築造及びがけ地の補修を行うためには,本件価格を
大幅に上回る費用(測量士,一級土木施工管理技士のDの計算によると9456万
5000円)がかかる。
      ただし,上記の補修等を行っても,宅地として利用できる面積は約3
0パーセントにすぎない。
      このようなことから,本件土地を単独で造成等して宅地化することは
採算がとれず,無理がある。また,周辺の農地と一体として開発する方法も考えら
れるが,幹線街路からの進入路(幅員6メートル)を確保することが困難である
し,現在の経済状況に照らしても,開発事業は現実的でない。結局,現時点におい
て,本件土地は,現状の畑,山林のままとしておくのが,最有効使用とみざるを得
ない。
   (ウ) 控訴人は,転用の目的を「雑種地」とし,「土木,園芸資材等の仮置
場」に使うとして,農地法5条1項に基づく農地転用の届出をし,これは農業委員
会に受理された。その際,控訴人は,本件土地上に倉庫を建てる予定を述べてい
た。
      控訴人は,本件土地の取得後,本件土地上に倉庫を建てるためには,
上記の接面道路の築造及びがけ地の補修をしなければならない旨を知った。そこ
で,控訴人は,建物を築造しないまま,本件土地の取得後,約半年間にわたり,本
件土地の一部を土木園芸資材等の仮置場として利用していた。
   (エ) 広島地方裁判所尾道支部による本件土地の評価は,平成7年11月3
0日時点で596万7000円,平成10年3月20日時点で298万4000
円,平成11年3月10日時点で99万5000円であった。
      また,控訴人が農地転用の届出をする以前の平成11年度の本件土地
の固定資産評価は,現況地目畑部分396平方メートルと山林部分1593平方メ
ートルとを分け,前者を666万6660円,後者を2万4282円としていた
(合計669万0942円)。
      なお,本件土地付近においては,土地の価格にそれほど変動はなく,
平成11年度と平成12年度では,ほとんど変わらないものが多い。
   (オ) 不動産鑑定士Eは,本件鑑定評価書において,前記のような本件土地
の状況(道路開設及びがけ地補修の必要から本件土地を単独で宅地化するには莫大
な費用がかかること等)及び近隣地域の状況を前提とし,本件土地を,市街化区域
内の現況地目が畑・山林で,鑑定評価上は熟成度の低い宅地見込地地域内の宅地見
込地とし(雑種地の概念はあいまいであり,市街地の駐車場利用のように宅地に近
いものもあるが,本件土地は,雑種地への転用を予定して転用の届出がされ,土木
園芸資材等の仮置場として使用されているとしても,宅地効用のない土地であると
ころから,熟成度の低い宅地見込地とする。),平成12年度(同年1月1日時
点)の本件土地の価格を835万円と評価している。
   イ 以上の事実によれば,本件土地は,雑種地とする予定で農地転用届出が
されたものの,宅地効用がなく,倉庫を築造することすらできず,宅地化するにし
ても,道路開設及びがけ地補修等に莫大な費用を要し,本件土地単独では,採算が
とれず,現状の経済状況などをも勘案すれば,周辺土地を含んでの宅地化も著しく
困難であるのであって,極めて個別性の高い土地であるといわざるを得ず,そもそ
も現況が宅地である本件標準宅地から比準する方法によること,造成費控除を40
パーセントとすることでは,本件土地の「適正な時価」を算定することはできな
い,すなわち,評価基準が定める方法によっては,「適正な時価」を算定すること
ができない特別の事情が存する場合であるというべきである。
     そして,前記ア(オ)によれば,本件鑑定評価書の本件土地の評価方法に
は合理性が認められ,また,本件土地は極めて個別性が高いことからして,他に適
切な評価方法を見い出すことも困難であるというべきであるから,本件鑑定評価書
の835万円が平成12年度の本件土地の「適正な時価」(客観的時価)であると
認めるのが相当である。
   ウ これに対し,被控訴人は,本件鑑定評価書の本件土地の評価は,個別的
な評価であって,近隣土地内での価格の均衡を維持しながら,短期間に限られた人
員で大量に評価しなければならない固定資産評価額の妥当性を論じることは適切で
はない旨主張する。
     しかしながら,既に認定したように固定資産評価については,被控訴人
主張の制約を前提として,客観的時価を超えないように,7割評価の経過措置等の
制度が設けられているのであって,固定資産評価においては,客観的時価を超える
ことは許されない,すなわち違法であるといわなければならないのである。そし
て,客観的時価を評価するについて,当該土地の個別性の程度によって,適切な評
価方法が見い出せない場合において,個別的評価によることを排斥することはでき
ないというべきであり,被控訴人の主張を採用することはできない。
   エ なお,控訴人は,本件決定の全部を取り消すべきであると主張するが,
本件のように登録価格の適否が問題となっている場合,「適正な時価」を超える部
分のみを取り消す一部取消判決をすれば,同判決の拘束力によって,市町村長は,
審査決定と同様の措置をとることが義務づけられるのであって,違法の理由が審査
手続の違法である場合や内容の違法であっても例外的に審査委員会に審査のやり直
しを求めるのが相当である場合を除いては,審査決定のうち違法な部分を取り消せ
ば足りるというべきである。そして,本件においては,前記の835万円を超える
部分のみを取り消せば足りるというべきであり,控訴人の主張は採用できない。
第4 結論
   以上の次第であり,控訴人の本訴請求は,本件決定のうち,835万円を超
える部分の審査の申出を棄却した部分は違法であり,この部分の取消しを求める限
度で理由があるから,この限度で認容すべきところ,これと異なる原判決は不当で
あるから変更することとし,主文のとおり判決する。
     広島高等裁判所第2部
            
         裁判長裁判官    鈴   木   敏   之
           
            裁判官    松   井   千 鶴 子
         
            裁判官    工   藤   涼   二
(別紙)
        物   件   目   録
 所 在   尾道市ab丁目
 地 番   e番f
 地 目   畑
 地 積   1989平方メートル
                              以 上

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