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判決言渡平成20年11月26日
平成20年(行ケ)第10185号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年10月29日
判決
原告ソシエテアノニムデラマニュファク
チャードーロジェリィオデマルスピ
ゲットアンドカンパニー
訴訟代理人弁理士村田幹雄
同広川浩司
被告特許庁長官
指定代理人樋田敏惠
同岩井芳紀
同酒井福造
主文
1特許庁が不服2007−15949号事件について平成20年1月
9日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,原告が,意匠に係る物品を「腕時計」とする後記意匠登録出願をし
たところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許
庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。
2争点は,別紙第1記載の本願意匠が,内国雑誌「DIME」2003年(平
成15年)12月4日発行23号44頁所載の「腕時計」における別紙第2記
載の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA15027251号,以下「引用
意匠」という。)と類似するか(意匠法3条1項3号),である。
第3当事者の主張
1請求の原因
(1)特許庁における手続の経緯
原告は,2005年(平成17年)10月17日の優先権(スイス)を主
張して,平成18年(2006年)4月11日,意匠に係る物品を「腕時
計」とする別紙第1記載の意匠(以下「本願意匠」という。)について意匠
登録出願(意願2006−9371号。甲1)をしたが,平成19年3月1
6日に拒絶査定(甲3)を受けたので,これに対し不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2007−15949号事件として審理した上,
平成20年1月9日「本件審判の請求は,成り立たない」との審決(出訴期
間として90日附加)をし,その謄本は平成20年1月21日原告に送達さ
れた。
(2)審決の内容
ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願
意匠は,引用意匠と類似するから,意匠法3条1項3号により意匠登録を
受けることができない,というものである。
イなお,審決が認定した,本願意匠と引用意匠との共通点,差異点は,次
のとおりである。
(ア)共通点
両意匠は,上下端部にベルト連結部を設けた側本体中央部の円形状収
納部に時計本体部を配し,時計本体部は上部に3個の円形補助文字盤を
配した主文字盤とそれぞれの表示針を設け,時計本体収納部を覆うため
のガラスを押さえる略円形リング状部を,収納部の円形状縁部に重ねて
設け,その略円形リング状部は,内周縁部の全体を円形に,外周縁部の
全体を八角形とし,上面部に8個の固定ネジを設け,側本体右側部に,
竜頭と竜頭を挟んだ上下に押しボタン部を設けた,基本的態様が共通
し,
①ベルト連結部は,正面視先端部を窄めた略台形状で,上面部は略円
形リング状部の外周縁部が接する位置に水平状稜線部を設け,内側を
垂直面に,先端部を先下がりの斜面とし,上下先端部に2つずつ取付
部を設け,
②時計本体部の主文字盤は,目盛表示を大きくし,間に細い目盛線を
表示し,右側に小円孔表示部を設け,補助文字盤は,上下と左側に3
個を配し,表示を目盛線とし,主文字盤の外周縁上面に円形目盛りリ
ングを設け,
③ガラス押さえ略円形リング状部は,暗調子の厚いものであって,外
周縁部を面取り形成し,内周縁部に細幅縁部を設け,
④竜頭と押しボタン部は,それぞれのガード部を備え,全体を竜頭を
中心に左右対称状の山形状に形成した,具体的態様が共通する。
(イ)差異点
両意匠は,具体的態様において,
①ベルト連結部の取付部に,本願意匠は2つのリブ(うね模様)を設
けたのに対し,引用意匠は平面状であり,
②時計本体部主文字盤について,本願意匠は,大きな目盛表示を先尖
りの太い線で表示し,目盛表示部内側の円形領域に格子縞模様を施
し,その格子縞の地の部分を透かし状に形成し,内部機構部が透けて
見えるようにしたのに対し,引用意匠は,大きな目盛表示をアラビア
数字で表示し,目盛表示部背後も含めた主文字盤の全体領域に矩形体
突出模様の図柄を施し,
③ガラス押さえ略円形リング状部について,外周縁部の厚み部に,本
願意匠は全面に縦スリット模様を施したのに対し,引用意匠はこのよ
うな模様を施しておらず,上面部の8個の固定ネジ部について,本願
意匠は,各ネジを,内側に六角形状の凹部を設けた円筒状ネジとし,
各々外側に開口したU字状の取付け孔部を施して取り付けたのに対
し,引用意匠は,各ネジは中に1本の溝のある6角形のネジとし,リ
ング状部上面に埋め込むように略面一状に取り付けられ,
④竜頭と押しボタン部について,本願意匠は,竜頭は略円筒状とし,
周面にスリットを施し,上下の押しボタン部は長方形状とし,それぞ
れに切り込みを施し,上部押しボタン部の上方と下部押しボタン部の
下方にネジを設け,この部分全体の山形を角張った山形状としたのに
対して,引用意匠は,竜頭は略六角柱状とし,周面にスリットはな
く,上下の押しボタン部は円筒状で切り込みはなく,竜頭及び上下の
押しボタン以外に付加的なネジは設けず,この部分全体の山形を富士
山型の山形状とした点が,相違する。
(3)審決の取消事由
しかしながら,審決には,以下のとおり誤りがあるから,違法として取り
消されるべきである。
ア取消事由1(本願意匠と引用意匠との共通点及び差異点認定の誤り)
(ア)審決は,本願意匠と引用意匠の共通点として,「時計本体部の主文
字盤は,目盛表示を大きくし,間に細い目盛線を表示し,」(2頁11
行∼12行)と認定しているが,これは本願意匠の形態であって引用意
匠はこのような形態を有していない。引用意匠の主文字盤には,大きな
目盛表示に相当するアラビア数字が配置されているが,その間に細い目
盛線は表示されていない。
したがって,審決認定に係る具体的態様の共通点のうち,前記(2)イ(
ア)②の項目(2頁11行∼13行)は,「時計本体部の主文字盤は,
目盛表示を大きくし,右側に小円孔表示部を設け,補助文字盤は,上下
と左側に3個を配し,表示を目盛線とし,主文字盤の外周縁上面に円形
目盛りリングを設け,」となる。
(イ)審決は,本願意匠と引用意匠の共通点として,「竜頭と押しボタン
部は,それぞれのガード部を備え,全体を竜頭を中心に左右対称状の山
形状に形成した,」(2頁16行∼17行)と認定している。
ここで,ガード部とは側本体の一側部から突出状に形成されている部
分であって,竜頭あるいは押しボタン部の側面を取り囲むことでこれら
の誤操作を防止するためのものである。本願意匠のガード部と引用意匠
のガード部は,全体としては竜頭側が高く,上下端部側が低く形成され
ている点において共通している。
しかし,本願意匠は,側本体の上端から竜頭の上端位置にかけて上側
ガード部が設けられ,側本体の下端から竜頭の下端位置にかけて下側ガ
ード部が設けられ,各ガード部が竜頭を中心として対称な形状となるよ
うに形成されている。そして,上側ガード部と下側ガード部から突出す
るように,それぞれ押しボタン部が設けられている。これに対して引用
意匠は,上側ガード部と下側ガード部が各中間位置において切り欠かれ
た部分を有し,該切欠部分にそれぞれ押しボタン部が配置されている。
すなわち,引用意匠において押しボタン部は側本体から突出する態様を
有しており,ガード部は竜頭を取り囲むと共に押しボタン部も取り囲む
ように形成されている。
このように,本願意匠は竜頭についてガード部を備えているとはいえ
るが,押しボタン部についてはむき出しの状態であるためガード部を備
えているとはいえず,一方で引用意匠は,竜頭と押しボタン部にそれぞ
れガード部を備えているといえるから,ガード部について本願意匠と引
用意匠とには明確な形態差がある。
したがって,審決の上記認定において「竜頭と押しボタン部は,それ
ぞれのガード部を備え」とした点は誤りである。両意匠のガード部に関
する具体的態様の共通点は,「側本体の一側部から突出するようにガー
ド部が設けられ,該ガード部は全体が竜頭を中心に左右対称状とされて
なる点」とすべきである。
(ウ)上記(ア)で述べたように,引用意匠は主文字盤について本願意匠と
相違しているから,「本願意匠の主文字盤は,大きい目盛表示の間に細
い目盛線を表示しているのに対し,引用意匠は大きい目盛表示の間に細
い目盛線を有していない点」が差異点となる。
(エ)審決では具体的態様の差異点としてガード部に関する事項を挙げて
いないが,上記(イ)のとおり本願意匠のガード部と引用意匠のガード部
とには明確な形態差があるから,「本願意匠のガード部は,側本体の上
端から竜頭の上端位置にかけて上側ガード部が設けられ,側本体の下端
から竜頭の下端位置にかけて下側ガード部が設けられ,各ガード部の外
縁から押しボタン部が突出するように配置されるのに対し,引用意匠の
ガード部は,上側ガード部と下側ガード部の中間位置に切り欠かれた部
分を有し,該切欠部分にそれぞれ押しボタン部が配置される点」が差異
点となる。また,「本願意匠のガード部は,押しボタン部が配置される
領域が前面側に盛り上がるように形成され,該盛り上がり部分と周囲部
との間は傾斜面状とされているのに対し,引用意匠のガード部は前面が
平面状とされている点」も差異点である。
(オ)以上のように,審決には本願意匠と引用意匠の共通点及び差異点の
認定において誤りがある。
イ取消事由2(類否判断の誤り)
(ア)審決は,本願意匠と引用意匠について,「…共通点は意匠全体の各
部位にわたり,意匠全体の骨格をなすと共に共通する基調を形成してい
るもので,…両意匠間に類似性をもたらしている。」(3頁3行∼8
行),「…差異点はいずれも細部にわたる態様であり,類否判断に及ぼ
す影響は微弱で,共通点を凌ぐものとはなり得ていない。」(3頁9行
∼10行),「…両意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態において
も,差異点はいずれも微弱なものにとどまり,それらが相まって奏する
効果を勘案しても,共通点は…圧倒的で,類否判断を支配しているか
ら,両意匠は全体として美感が共通し,類似するものである。」(3頁
下8行∼下5行)と判断している。
(イ)腕時計に係る意匠は,時計本体部及びそれを収納する収納部と,収
納部を覆うためのガラスを押さえるリング状部の部分が,時計としての
主要な機能を有する部分であるし,全体に占める割合も比較的大きいの
で,これらの形態が意匠全体の美感に与える影響が大きいことは確かで
ある。
しかし,腕時計の意匠においては,収納部及びリング状部の形態のみ
ならず,その側方に配置される竜頭等の操作部分によっても,全体の印
象が大きく左右される。特に,本願意匠は意匠全体に占める操作部分の
割合が通常の腕時計よりも大きく,また操作部分の形態も異なっている
ので,引用意匠をはじめ先行意匠群と比べて意匠全体の印象が大きく相
違する。本願意匠は,先行意匠群の腕時計側の意匠(別紙第3の甲5
「本願意匠と先行意匠群の対比表」(2)∼(4))に比べて,竜頭,押しボ
タン部,及びガード部の全体に占める割合が格段に大きく,かつ凹凸を
有した立体的な形状に形成されているので,これらの中にあって本願意
匠は,需要者の注意がより操作部分に向くこととなり,当該部分は看者
の注意を惹く意匠の要部を構成する。
(ウ)以上を前提にすれば,次のとおり,本願意匠と引用意匠は類似しな
い。
a審決は,「ベルト連結部の取付部の,2つのリブ(うね模様)の有
無の差異については,…局所的差異にとどまるものである。」(3頁
11行∼13行)としている。しかし,本願意匠は,上記(イ)で述べ
たように竜頭,押しボタン部,及びガード部を凹凸の多い形状とし,
全体として立体感を持たせており,ベルト連結部の取付部も,全体に
占める割合は大きくないものの,2つのリブ(うね模様)を施すこと
によって,意匠全体に立体感を持たせることに寄与しており,全体の
美感に対して統一性を持たせる役割を果たしている。
b審決は,「時計本体部主文字盤の差異について,目盛表示部は,従
来より各種の表示態様がなされ,本願意匠のような太い線状のものも
行われてきており,看者の注意を惹かず,主文字盤円形領域は,通常
は周囲の各種表示部や各文字盤部に看者の注意が向けられやすいの
で,周囲の共通性に希釈され,格別の印象を与えるほどではなく,類
否判断を左右するものではない。」(3頁14行∼18行)としてい
る。しかし,主文字盤は腕時計の中でも最も注意を惹く領域であり,
細部に渡る差異が全体の美感に大きく影響を与える。また,本願意匠
の目盛表示は補助文字盤及び主文字盤円形領域の格子縞模様と相まっ
て,一体感のある線模様を構成しているのであり,文字表示及び凹凸
模様により構成された引用意匠の形態とは全く異なる印象を与えるも
のである。
c審決は,「ガラス押さえ略円形リング状部の差異について,外周縁
部の厚み部の縦スリット模様は,腕時計は主として正面視される物品
であるから,看者の注意を惹かず,…」(3頁19行∼21行)とし
ているが,本願意匠に係る腕時計は,非常に高額であり,このような
高額な腕時計においては細部に渡るまでデザインが施されているのが
一般的であるから,需要者は正面視のみならず,あらゆる角度から観
察するのであり,ガラス押さえ略円形リング状部の縦スリット模様に
ついても,看者の注意を充分に惹きつけ,意匠全体の美感に影響を与
える部分であるといえる。
また,審決は,「…8個の固定ネジ部については,各ネジ自体の形
状や取り付け穴の有無に差異があっても,その配置態様の共通性が引
き起こす印象が圧倒的であるので,類否判断を左右するに至らないも
のである。」(3頁21行∼23行)としているが,各ネジの形状及
び取付穴の態様は,後記fのとおり本願意匠からF1(フォーミュラ
ワン)の世界を想起させることに寄与するものである。
d審決は,「竜頭と押しボタン部の差異について,竜頭も各ボタンも
小さく,また,この部位は意匠全体の中では従たる部位であって,看
者の注意を強く惹きつけるものではないうえ,従来より周囲にスリッ
トを施した竜頭が見られ,ボタン部を長方形状としたものも既に見ら
れ,また,この部位全体の山形形状の差異も,角張ったものも富士山
状のものも既に見られる態様であるので,看者の注意を惹かず,類否
判断を左右するものではない。」(3頁24行∼29行)としてい
る。しかし,上記(イ)で述べたように,本願意匠において,竜頭と押
しボタン部が全体に占める割合は,先行意匠群に比べて格段に大き
く,しかも本願意匠の竜頭は全体的に円筒形状で,その周面にスリッ
トを施してあり,また本願意匠の各押しボタン部は,全体的に長方形
状に形成してそれぞれに切り込みを施してあり,このような立体的形
状を有しない引用意匠に対し,一見して明らかな形態差を有してい
る。また,竜頭と押しボタン部の態様は,後記fのとおり本願意匠か
らF1(フォーミュラワン)の世界を想起させることに寄与するもの
である。
e審決はガード部についての本願意匠と引用意匠の差異点を認定して
いないが,上記アのとおり,本願意匠のガード部と引用意匠のガード
部は差異点を有する。これらの差異点は,本願意匠のガード部が引用
意匠に比べて全体に占める割合が大きく,かつ立体的な形状を有する
ようにされていることにより,引用意匠に対し一見して明らかな形態
差を有している。また,ガード部の態様は,後記fのとおり,本願意
匠からF1(フォーミュラワン)の世界を想起させることに寄与する
ものである。
f本願意匠における個々の部品は,自動車レースであるF1(フォー
ミュラワン)の世界を想起させるようなデザインを有して形成されて
いる。
具体的には,ガラス押さえ略円形リング状部の固定ネジ部は,エン
ジンのネジを模して形成されている。自動車のエンジンに用いられる
ネジは,先行意匠群のネジのように六角形のネジ頭に一本線状の溝が
設けられているものではなく,略円柱状のネジ頭を有し,これを六角
レンチにより螺合をなすものが一般的に用いられており,本願意匠の
各ネジはそれを模している。また,ガラス押さえ略円形リング状部の
外周縁部は自動車のベンチレーテッドブレーキディスクの形状を,竜
頭は自動車のギア(歯車)を,押しボタン部及びガード部の形状は自
動車のエアベント(通風口)を,それぞれ模して形成されている。さ
らには,側本体の背面側には,スポーツカーのタイヤのリムを再現し
たレリーフが施されている。
これらの形態により,本願意匠は全体的にはF1のレーシングカー
を連想させるような印象を生じさせる。
gこれまで述べてきたように,本願意匠の竜頭,押しボタン部及びガ
ード部は,先行意匠群に比べて全体に占める割合が大きく,かつ立体
的な形状を有していることにより,看者の注意を強く惹きつけるもの
であり,かつこれらを含む各部品が自動車部品の形状を模して形成さ
れていることにより,本願意匠は全体的にはF1のレーシングカーを
連想させるような印象を生じさせている。また,主文字盤における目
盛表示及び主文字盤円形領域の格子縞模様による一体感のある線模様
も,レーシングカーにおける機械的な雰囲気を印象付けることに寄与
している。引用意匠にはこのような印象を生じさせる要素は全く存在
せず,両者は美感における明確な差異を有しているから,類似するも
のではない。
2請求原因に対する認否
請求原因(1)(2)の各事実は認めるが,(3)は争う。
3被告の反論
(1)取消事由1に対し
ア審決記載の「主文字盤」の語は,中央に3個の小さい円形補助文字盤を
配置し,外周にタキメーター目盛を表示した主たる文字盤の意味で用いた
ものである。確かに,引用意匠の主文字盤には,大きな目盛表示の間に細
い目盛線が表示されてはいないものの,外周にタキメーターの細い目盛線
があることから,美感に訴求する印象としては,大きな目盛表示の間に細
い目盛線が設けられているということができる。これに対し,本願意匠の
分時刻表示の目盛線は,タキメーター部の細い目盛線と同種のありふれた
細線であるため,視覚上格別目立つものではない。
意匠の類否判断においては,必ずしも両意匠の差異点を細部にわたり,
そのすべてを認定しなければならないというものではなく,類否判断に影
響を及ぼす構成態様についてはもれなく認定し,影響を及ぼさない構成態
様についても視覚を通じて可能な限り把握した上で,美感の異同を含め,
総合的に類否についての判断をすれば足りる。そうすると,分時刻表示部
の細い目盛線は,それを設けることも設けないことも,この種物品分野に
おいて,本願の出願前よりごく普通に行われてきたものであり,また,該
目盛線はありふれた細線であって,視覚上格別目立つものではないことか
ら,その有無の差異は類否判断に影響を及ぼすものではない。
イ一般にガード部とは,外部からの衝撃に対して,主要部又は脆弱部を保
護するためのものであり,本願意匠と引用意匠のガード部も,外部に露出
する可動部であるところの,押しボタンをガードするように配置されてお
り,たとえ本願意匠の押しボタンをガードする部位に引用意匠のような切
り欠かれた部分が設けられていないとしても,ガード部として機能するも
のであることは図面上明らかである。
審決は,本願意匠と引用意匠のガード部の差異を独立した項目として摘
記していないとしても,ガード部の共通点及び差異点については,竜頭と
押しボタン部とを含めた操作部位として一体的に捉えた上で,本願意匠と
引用意匠のガード部の形態は,全体を竜頭を中心に左右対称状の山形状に
形成した点で共通する(2頁16行∼17行)が,その山形状は,本願意
匠が角張った山形状であるのに対し,引用意匠は富士山型の山形状である
(2頁下6行∼8頁1行)と認定している。
このように,操作部位として一体的に認定した理由は,腕時計側の分野
にあっては,竜頭と押しボタン部を設けるときに,竜頭と押しボタンのみ
を設ける場合(「TRAVEL&LEISURE」2000年[平成12年]12月号
AmericanExpressPublishingCorporation27頁[乙1]の腕時計),竜
頭にのみガード部を設ける場合(「2003IMPORTEDWATCH&CLOCKGENERAL
CATALOGUE輸入時計総合カタログ」社団法人日本時計輸入協会2002年
[平成14年]11月30日,229頁[乙2]の腕時計),本願意匠と
引用意匠のように押しボタンにもガード部を設ける場合(「DIME」2
005年[平成17年]5月5日号綴じ込み別冊「2005新作腕時計最
速図鑑」小学館8頁[乙3]の腕時計)があり,押しボタンにもガード部
を設ける場合には,ガード部を含めた押しボタン部や竜頭は,側本体から
突設状に形成された塊状の操作部位として,看者に視認されるからであ
る。そして,本願意匠と引用意匠の当該部位は,甲5(「本願意匠と先行
意匠群の対比表」)(3)の腕時計や,乙4(「GolfDigest」2002年[
平成14年]6月号GolfDigest/Tennis,Inc111頁)の腕時計の場合
のように,側本体の側方部をそのまま突出変形させて山形状としたもので
はなく,当該部位を正面視すると明らかなように,側本体の表面部に対し
て段差を介して設けられており,それ故にこの部位全体が一体となった塊
状に視認されるのである。
また,審決は,ガード部における切欠きの有無について言及していない
が,その理由は,引用意匠のガード部の切欠きが極めて微細であり,ま
た,従来より普通に見られる態様であって,視覚的な訴求力が弱く,当該
部位が有する山形の印象を妨げないことから,両意匠の類否判断に影響を
及ぼす差異ではないと判断したことによるものである。
なお,本願意匠と引用意匠のガード部を仔細に認定すれば,押しボタン
部領域には,切欠きの有無以外にも,前面側の盛り上がりの有無といった
差異もあるが,本願意匠のように押しボタン部が切欠きのないガード部か
ら突出状に設置されたものは,上記乙3や乙5(「G-SHOCK」カタログ1
995年[平成7年]カシオ計算機株式会社2頁裏)の腕時計に示すよう
に,従来から普通に見られる態様であり,また,押しボタン部が配置され
る領域が前面側に盛り上がっているのは,ガード部が押しボタンを囲むよ
うに形成されているからであり,そのような態様は乙6(「TOOLCONCEPT
NEWTRIPLESENSOR」カタログ2001年[平成13年]カシオ計算機株式
会社2頁)の腕時計に示すように従来から普通に見られることから,本願
意匠を特徴づける構成態様として特段に評価する理由はない。
(2)取消事由2に対し
ア原告の主張は,甲5に掲載された(2)∼(4)の腕時計の意匠のみを先行意
匠群としている点で偏ったものであり,前提において誤りがある。例え
ば,原告が販売している腕時計に限っても,2004年(平成16年)に
発表したとされるモデル(ロイヤルオークオフショアファン・パブロ
・モントーヤモデルチタンとピンクゴールドの両タイプあり)が先行意
匠群から抜け落ちているが,この腕時計のガード部は,本願意匠のように
大きいものである(株式会社アールケイエンタープライズがインターネ
ットに掲載した「RodeoDrive」の頁[乙7の1]の腕時計,シュッピン株
式会社がインターネットに掲載した「GMT時計専門店」の頁[乙7の2
]の腕時計)。ゆえに,本願意匠の操作部は,先行意匠に比し,格別に看
者の注意を引くとの原告の主張は根拠が無く,妥当性を欠くものである。
イ本願意匠において,竜頭,押しボタン部及びガード部からなる操作部
と,ベルト連結部の取付部の位置は,側本体から見た向きが90度違い,
離れていることに加え,凹凸の態様も大きく異なっている。本願意匠のベ
ルト連結部の取付部のリブの凹凸は,ごく小さく,表面的な凹凸模様をな
して,装飾的効果に寄与するものであって,意匠全体に立体感を持たせる
効果はほとんどないということができる。しかも,ベルト連結部の取付部
にリブ(うね模様)を設けた態様は,乙8(「FRHJAHR/SOMMER'96」19Ü
96年[平成8年]Quelle738頁)の腕時計に示すように,従来より
普通に見られることから,格別看者の注意を惹くものではない。
ウ本願意匠の目盛表示の中で最も目立つ大きな目盛は,略砲弾形の時間を
示す表示であるが,放射状に配置されており,縦横の線からなる格子縞模
様を構成するような線を想起させるものではない。また,略砲弾形の目盛
表示は,乙9(「JCKJEWELERS'CIRCULARKEYSTONE」1997年[平成9
年]ChiltonCompany184頁)の腕時計に示すように,時間時刻表示に
しばしば使用され,この表示自体も格別着目されるものではない。さら
に,文字盤領域に格子縞状の模様を施すことは,乙10(「das
spielzeug」1988年[昭和63年]11月号InternationalToy
MagazinesGroup1364頁),乙11(「2003IMPORTEDWATCH&CLOCK
GENERALCATALOGE輸入時計総合カタログ」社団法人日本時計輸入協会20
02年[平成14年]11月30日,6頁)の腕時計に示すように,従来
から普通に見られることから,該格子縞模様は,看者の注意を殊更喚起す
るほどのものではない。したがって,本願意匠は,目盛表示が,補助文字
盤及び主文字盤円形領域の模様と相まって,一体感のある模様を構成して
いるとはいえない。
エ高額の腕時計の需要者が,正面視のみならず,あらゆる角度からデザイ
ンを観察するとしても,それをもって直ちに当該需要者が,意匠全体の骨
格を成す構成態様及び全体の基調を差し置いて,「ガラス押さえ略円形リ
ング状部」の外周縁部の縦スリットの有無の差異を,意匠全体の美感に影
響を与える差異として着目するものであるとすることは,短絡的である。
また,高額商品の需要者であるか否かによって,意匠の類否判断の基準を
変えることは,意匠制度の目的に照らして妥当ではない。意匠の類否判断
は,各部位に着目すると共に,全体観察した時の美感に基づいてなされる
べきものであるところ,面積的に非常に小さな部位の差異が,類否判断に
大きな影響を及ぼすケースとしては,面積的に大きな部分が極めてありふ
れていたり,機能上等の制約から変更が不可能な場合等が想定されるが,
外周縁部に縦スリット模様を設けた態様は,乙12(「JCKJEWELERS'
CIRCULARKEYSTONE」1998年[平成10年]6月号ChiltonCompany
135頁)の腕時計に見られるように,本願の出願前に普通に見られる態
様であり,看者の注意をとりわけ喚起するものではないことから,本件は
そのようなケースには該当しない。
オ原告は,本願意匠は,竜頭周面にスリットを,各押しボタン部に切り込
みを施しており,引用意匠とは明らかな形態差を有していると主張する。
しかし,円筒形状竜頭周面にスリットを施した態様は,例えば上記乙1,
乙2に,長方形状押しボタン部に切り込みを施した態様は,例えば上記乙
5,乙7の1・2に見られるように,本願の出願前に普通に見られる態様
であり,引用意匠との特徴的な差異ではなく,看者の注意をとりわけ喚起
するものではない。
カ略円柱状のネジ頭を有し,これを六角レンチにより螺合をなすネジ,す
なわち,通称「六角穴付ボルト」(JISB1176)は,乙13
(「新機械工学便覧」理工学社1973年[昭和48年]5月15日縮刷
第4版,4−6頁,4−8頁)のとおり,自動車のエンジン用としてのみ
ならず,産業界において広く知られ,従来より各分野で適宜使用されてき
たものである。したがって,このネジの採用をもって,本願意匠をして,
引用意匠とは別異のF1の世界を想起させる特異な印象を看者に与える旨
の主張は,原告の願望に過ぎないものである。
第4当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実
は,当事者間に争いがない。
2取消事由1(本願意匠と引用意匠との共通点及び差異点認定の誤り)につい

(1)本願意匠は,意匠に係る物品を「腕時計」とする別紙第1記載の意匠で
あり,引用意匠は,別紙第2記載の「腕時計」の意匠である。
(2)審決は,本願意匠と引用意匠の共通点として,「時計本体部の主文字盤
は,目盛表示を大きくし,間に細い目盛線を表示し,」(2頁11行∼12
行)と認定している。本願意匠の時計本体部の主文字盤は,大きな目盛表示
の間に細かい時刻表示の目盛線があるが,引用意匠は,大きな目盛表示に相
当するアラビア数字の間に細い時刻表示の目盛線はないから,上記のように
共通点を認定することはできない。
したがって,審決が上記の形態を共通点としたことは誤りであり,「本願
意匠の主文字盤は,大きい目盛表示の間に細い目盛線を表示しているのに対
し,引用意匠は大きい目盛表示の間に細い目盛線を有していない点」を差異
点とすべきである。
この点について,被告は,引用意匠においては,外周にタキメーターの細
い目盛線があることから,大きな目盛表示の間に細い目盛線が設けられてい
るということができる,と主張する。しかし,大きい目盛表示の間にある時
刻表示の目盛線と外周にあるタキメーターの目盛線は異なるものであるか
ら,タキメーターの目盛線があるからといって,本願意匠と引用意匠の共通
点として,「時計本体部の主文字盤は,目盛表示を大きくし,間に細い目盛
線を表示し,」と認定することはできないというべきである。
(3)審決は,本願意匠と引用意匠のガード部について,「竜頭と押しボタン
部は,それぞれのガード部を備え,全体を竜頭を中心に左右対称状の山形状
に形成した,具体的態様が共通する。」(2頁16行∼17行)と認定した
上,ガード部の山形状は,本願意匠が角張った山形状なのに対し,引用意匠
は富士山型の山形状であるから,差異があると認定している(2頁下6行∼
3頁1行)。
(4)しかし,本願意匠のガード部と引用意匠のガード部は,次のような点が
異なっている。
本願意匠は,側本体の上端から竜頭の上端位置にかけて設けられている上
側ガード部と,側本体の下端から竜頭の下端位置にかけて設けられている下
側ガード部から突出するように,それぞれ押しボタン部が設けられている。
したがって,本願意匠のガード部は,竜頭をガードしているということがで
きるが,押しボタン部をガードしているということはできない。
これに対して引用意匠は,側本体の上端から竜頭の上端位置にかけて設け
られている上側ガード部と,側本体の下端から竜頭の下端位置にかけて設け
られている下側ガード部が,各中間位置において切り欠かれた部分を有し,
該切欠部分にそれぞれ押しボタン部が配置されている。したがって,引用意
匠ガード部は,竜頭とともに押しボタン部をガードしているということがで
きる。
(5)以上のとおり,本願意匠と引用意匠のガード部に関する具体的態様は,
本願意匠においては,上側ガード部と下側ガード部から突出するように,そ
れぞれ押しボタン部が設けられているのに対し,引用意匠においては,上側
ガード部と下側ガード部が各中間位置において切り欠かれた部分を有し,該
切欠部分にそれぞれ押しボタン部が設けられている点が相違し,本願意匠の
ガード部は,竜頭をガードしているということができるが,押しボタン部を
ガードしているということはできないのに対し,引用意匠ガード部は,竜頭
とともに押しボタン部をガードしているということができる。
また,本願意匠と引用意匠は,「本願意匠のガード部は,押しボタン部が
配置される領域が前面側に盛り上がるように形成され,該盛り上がり部分と
周囲部との間は傾斜面状とされているのに対し,引用意匠のガード部は前面
が平面状とされている点」でも相違する。
(6)「腕時計」の側面に設けられたガード部は,正面からよく見える,目立つ
部分であるから,上記(5)認定に係るガード部の形態の相違は,差異点とし
て認定すべきである。また,審決が,本願意匠と引用意匠のガード部につい
て,「竜頭と押しボタン部は,それぞれのガード部を備え,」と認定したこ
とは誤りというべきである。
この点について,被告は,①押しボタンにもガード部を設ける場合,ガー
ド部を含めた押しボタン部や竜頭は,側本体から突設状に形成された塊状の
操作部位として,看者に視認される,②本願意匠と引用意匠の当該部位は,
側本体の側方部をそのまま突出変形させて山形状としたものではなく,側本
体の表面部に対して段差を介して設けられており,それ故にこの部位全体が
一体となった塊状に視認されるのである,と主張する。確かに,本願意匠や
引用意匠のガード部は,一体となった塊状に視認されるが,そうであるとし
ても,そのガード部の形態は,上記(5)認定のとおり異なっているのである
から,この点は差異点というべきであり,ガード部が一体となった塊状に視
認されることがその認定を左右するものではない。
また,被告は,引用意匠のガード部の切欠きが極めて微細であり,従来よ
り普通に見られる態様であって,視覚的な訴求力が弱く,当該部位が有する
山形の印象を妨げないことから,ガード部における切欠きの有無は,両意匠
の類否判断に影響を及ぼすものではない,と主張するが,ガード部における
切欠きの有無は,一見して明らかな目立つ部分であり,ガード部の形態全体
に与える影響を無視することはできないから,差異点として認定すべきであ
る。
さらに,被告は,本願意匠のような,押しボタン部が切欠きのないガード
部から突出状に設置されたものは,従来から普通に見られる態様であり,ま
た,押しボタン部が配置される領域が前面側に盛り上がっているものも,ガ
ード部が押しボタンを囲むように形成されているからであり,そのような態
様は,従来から普通に見られる,と主張するが,これらの形態が従来から普
通に見られる形態であるとしても,そのことから直ちに本願意匠を特徴付け
る構成態様として評価することはできないということにはならないのであっ
て,上記のとおり差異点と認定すべきである。
(7)よって,取消事由1の主張は理由がある。
3取消事由2(類否判断の誤り)について
(1)本願意匠と引用意匠は,審決が認定した次の差異点(2頁20行∼3頁
1行)を有するほか,前記2(2)及び前記2(6)認定の差異点を有する。
①ベルト連結部の取付部に,本願意匠は2つのリブ(うね模様)を設けた
のに対し,引用意匠は平面状である点
②時計本体部主文字盤について,本願意匠は,大きな目盛表示を先尖りの
太い線で表示し,目盛表示部内側の円形領域に格子縞模様を施し,その格
子縞の地の部分を透かし状に形成し,内部機構部が透けて見えるようにし
たのに対し,引用意匠は,大きな目盛表示をアラビア数字で表示し,目盛
表示部背後も含めた主文字盤の全体領域に矩形体突出模様の図柄を施した

③ガラス押さえ略円形リング状部について,外周縁部の厚み部に,本願意
匠は全面に縦スリット模様を施したのに対し,引用意匠はこのような模様
を施しておらず,上面部の8個の固定ネジ部について,本願意匠は,各ネ
ジを,内側に六角形状の凹部を設けた円筒状ネジとし,各々外側に開口し
たU字状の取付け孔部を施して取り付けたのに対し,引用意匠は,各ネジ
は中に1本の溝のある6角形のネジとし,リング状部上面に埋め込むよう
に略面一状に取り付けられている点
④竜頭と押しボタン部について,本願意匠は,竜頭は略円筒状とし,周面
にスリットを施し,上下の押しボタン部は長方形状とし,それぞれに切り
込みを施し,上部押しボタン部の上方と下部押しボタン部の下方にネジを
設け,この部分全体の山形を角張った山形状としたのに対して,引用意匠
は,竜頭は略六角柱状とし,周面にスリットはなく,上下の押しボタン部
は円筒状で切り込みはなく,竜頭及び上下の押しボタン以外に付加的なネ
ジは設けず,この部分全体の山形を富士山型の山形状とした点
(2)本願意匠は,①ベルト連結部の取付部に2つのリブ(うね模様)が設け
られていること,②ガラス押さえ略円形リング状部の外周縁部の厚み部全面
に縦スリット模様が施されている上,上面部の8個の固定ネジ部の各ネジ
は,内側に六角形状の凹部を設けた円筒状ネジとし,各々外側に開口したU
字状の取付け孔部を施して取り付けられていること,③竜頭は略円筒状と
し,周面にスリットが施され,上下の押しボタン部は長方形状とし,それぞ
れに切り込みが施され,上部押しボタン部の上方と下部押しボタン部の下方
にネジが設けられていること,④上側ガード部と下側ガード部から突出する
ように,それぞれ押しボタン部が設けられ,ガード部の押しボタン部が配置
される領域が前面側に盛り上がるように形成され,該盛り上がり部分と周囲
部との間は傾斜面状とされたこと,以上の具体的態様によって,全体として
凹凸の多い立体的な印象を看者に抱かせるものということができる。
これに対し,引用意匠は,①ベルト連結部の取付部が平面状であること,
②ガラス押さえ略円形リング状部の外周縁部の厚み部に模様が施されていな
い上,上面部の8個の固定ネジ部の各ネジは中に1本の溝のある六角形のネ
ジとし,リング状部上面に埋め込むように略面一状に取り付けられているこ
と,③竜頭は略六角柱状とし,周面にスリットはなく,上下の押しボタン部
は円筒状で切り込みはなく,竜頭及び上下の押しボタン以外に付加的なネジ
は設けられていないこと,④上側ガード部と下側ガード部が各中間位置にお
いて切り欠かれた部分を有し,該切欠部分にそれぞれ押しボタン部が設けら
れている上,ガード部は前面が平面状とされていること,以上の具体的態様
によって,全体としてすっきりとした平坦な印象を看者に抱かせるものとい
うことができる。
「腕時計」の側面にある竜頭,押しボタン及びガード部は,正面からよく
見える,目立つ部分であるから,上面部の固定ネジ部と共に,その違いを軽
視することはできないし,ベルト連結部の取付部やガラス押さえ略円形リン
グ状部の外周縁部の厚み部の模様は,それだけであれば,さほど目立たない
ともいえるが,本願意匠においては,上記のとおり他の部分と相まって一つ
の印象を抱かせる意匠を形成しているのであるから,これらの違いを軽視す
ることもできない。
さらに,本願意匠と引用意匠とでは,時計の正面にあって最も目立つ部分
である時計本体部主文字盤について,本願意匠は,大きな目盛表示を先尖り
の太い線で表示し,大きい目盛表示の間に細い目盛線を表示するとともに,
目盛表示部内側の円形領域に格子縞模様を施し,その格子縞の地の部分を透
かし状に形成し,内部機構部が透けて見えるようにしたのに対し,引用意匠
は,大きな目盛表示をアラビア数字で表示しているが,大きい目盛表示の間
の細い目盛線はなく,目盛表示部背後も含めた主文字盤の全体領域に矩形体
突出模様の図柄を施した点で,異なっている。
(3)そうすると,本願意匠と引用意匠は,上記(1)の差異点が相まって,その
全体的な印象は大きく異なるというべきである。そして,その差異は,前記
第3,1(2)イ(ア)の共通点(ただし,前記2(2)及び前記2(6)認定のとお
り誤りである点を除く。)を凌ぐものというべきであって,本願意匠と引用
意匠が類似すると認めることはできない。
この点について被告は,本願意匠の竜頭,押しボタン部及びガード部から
なる操作部と,ベルト連結部の取付部の位置は,側本体から見た向きが90
度違い,離れていることに加え,凹凸の態様も大きく異なっている,と主張
する。しかし,これらの位置が90度違いで離れているとしても,一つの
「腕時計側」を構成する態様として一体として見ることができる。また,凹
凸の態様が異なっているとしても,本願意匠について全体として凹凸の多い
立体的な印象を看者に抱かせるということができるものである。
また,被告は,①本願意匠のように大きいガード部を有する腕時計が存す
る,②ベルト連結部の取付部にリブ(うね模様)を設けた態様,外周縁部に
縦スリット模様を設けた態様,円筒形状竜頭周面にスリットを施した態様,
長方形状押しボタン部に切り込みを施した態様は従来より普通に見られる,
③略円柱状のネジ頭を有し,これを六角レンチにより螺合をなすネジ(通称
「六角穴付ボルト」)は,産業界において広く知られ,従来より各分野で適
宜使用されてきたものである,④略砲弾形の目盛表示は,時間時刻表示にし
ばしば使用されているし,文字盤領域に格子縞状の模様を施すことは,従来
から普通に見られる,と主張するが,本願意匠は,上記のとおり各部分の態
様が相まって統一的な印象を生じさせているものであって,本願意匠の各部
分の態様がそれぞれ別々に知られていることは,本願意匠と引用意匠が類似
するとの上記認定を直ちに左右するものではない。
(4)よって,取消事由2の主張も理由がある。
4結論
以上の次第で,原告主張の取消事由1及び2は理由がある。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官森義之
裁判官澁谷勝海

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