弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人奥村賢治の上告理由について
 一 民法三〇四条一項ただし書は、先取特権者が物上代位権を行使するには払渡
し又は引渡しの前に差押えをすることを要すると規定しているところ、同法三七二
条がこの規定を抵当権に準用した趣旨は、抵当権の効力が物上代位の目的となる債
権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、その債
権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても
弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に
置かれるおそれがあるため、差押えを物上代位権行使の要件とすることによって、
第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば、その
効果を抵当権者にも対抗することができることとして、二重弁済を強いられる危険
から第三債務者を保護しようとする点にあると解される。
 右のような民法の趣旨目的に照らすと、同法三〇四条一項の「払渡又ハ引渡」に
は債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が他に譲渡され、その譲
渡について第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差
し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。
 ただし、(一)民法三〇四条一項の「払渡又ハ引渡」という用語は当然には債権
譲渡を含むものとは解されない上、物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然
的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、
(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債
権の差押えをした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権
譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ、弁済
をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから、抵当権者
に目的債権の譲渡後に物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されるこ
ととはならず、(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵
当権設定登記により公示されているとみることができ、(四)対抗要件を備えた債
権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者から
の差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れること
ができることとなり、この結果を容認することは抵当権者の利益を不当に害するも
のというべきだからである。
 そして、以上の理は、物上代位による差押えの時点において債権譲渡に係る目的
債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく、当てはまるものということ
ができる。
 二 本件において、原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 D及びEは、原判決別紙物件目録記載の本件不動産の共有者(持分各二分の
一)である。
 2 D及びEと被上告人は、昭和六二年六月一日、本件不動産につき、株式会社
F銀行がDに貸し付けた一億一〇〇〇万円についての保証委託契約に基づく被上告
人のDに対する事前求償権を被担保債権とする抵当権設定契約を締結し、同日、抵
当権設定登記を経由した。
 3 D及びEは、平成元年一〇月三一日、各月の賃料の弁済期を前月末日と約し
て本件不動産を株式会社Gフードサービスに賃貸し、その平成六年六月分以降の賃
料は月額一五七万円である。
 4 上告人は、平成五年一一月一〇日、株式会社H電気工業所に対し六五〇〇万
円を貸し付けた。D及びEは、同日、H電気工業所の上告人に対する右債務を担保
するため、Gフードサービスに対する本件不動産についての同年一二月分以降の賃
料債権を上告人に対して譲渡し、同年一一月一三日到達の内容証明郵便によりGフ
ードサービスに対して右の債権譲渡がされたことを通知した。
 5 大阪地方裁判所は、平成六年一〇月一七日、抵当権者である被上告人の物上
代位権に基づく申立てにより、本件不動産についての賃料債権のうち差押命令送達
時に弁済期にある分以降一億一〇〇〇万円に満つるまでの部分を差し押さえる旨の
差押命令を発し、右命令は同月一九日にGフードサービスに送達された。
 6 Gフードサービスは、本件不動産の平成六年一一月分から同七年六月分まで
の賃料を供託したので、大阪地方裁判所は、同年六月二六日、右供託金及び供託利
息合計一二五八万一九八〇円から執行手続費用七七〇円を控除した一二五八万一二
一〇円を弁済金として被上告人に交付した。
 三 右事実関係によってみれば、上告人は、被上告人の抵当権設定登記後に賃料
債権を譲り受けて対抗要件を具備した者であるから、右賃料債権に対する被上告人
の物上代位権の行使につきその不許を求める本件第三者異議請求は、うち既に執行
の終了した同七年六月分までの賃料債権に係る部分については、利益がないから訴
えを却下すべきであり、翌七月分以降の賃料債権に係る部分については、右賃料債
権が譲渡され、対抗要件が具備されたからといって、抵当権者である被上告人が自
らこれを差し押さえて物上代位権を行使することができなくなるものではないとい
うべきであるから請求を棄却すべきである。以上と同旨の原判決の結論は正当であ
り、論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    元   原   利   文
            裁判官    金   谷   利   廣

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