弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は、被告人の負担とする。
         理    由
 控訴趣意第二点および第三点について。
 右第二点の所論は、乗客掛としての被告人の業務上の注意義務は、乗客の一人一
人を誘導し、その危険を防止するまでには及ばないものであり、同第三点の所論
は、被告人は、乗客掛としての職務を十分に果していて、過失責任はないから、原
判決には、事実の誤認があるという旨の各主張に帰着する。
 しかし、およそ人の生命、身体に危害を生ずるおそれのある危険業務に従事する
者は、その業務の性質に照らし危険を防止するため法律上、慣習上もしくは条理上
必要なる一切の注意をなすべき義務を負担するものであつて、法令上明文のない場
合といえども、この義務を免れるべきものではないと解すべきであり(昭和三七年
(あ)第二二〇九号同年一二月二八日最高裁判所第二小法廷決定、刑集一六巻一二
号一七五二頁参照)、また、駅長その他の鉄道従業員は、単に列車の運転に関する
特別の規定を守るだけで、その義務を常につくしたということはできず、いやしく
も列車の運転に関して危険の発生を防止するに可能なかぎり、一切の注意義務をつ
くさなければならないものであるから(昭和三〇年(あ)第二八二二号同三二年一
二月一七日最高裁判所第三小<要旨>法廷決定、刑集一一巻一三号三二四六頁参
照)、駅長、その他の鉄道従業員(助役、車掌、乗客掛、駅務手などの名称
のいかんを問わない。)が、プラットホーム(以下、たんにホームという。)にい
るときには、法令に明文のない場合においても、ホーム上における旅客の安全を常
に確認する注意義務があるものといわなければならない。
 本件において、原判決挙示の証拠および当審における事実取調の結果をも合わせ
て考察すれば、原判示A株式会社池袋線B駅に駅務手として勤務し、本件の事故発
生した当夜には乗客掛をも命ぜられて、旅客の誘導、案内、整理、乗降の危険防止
などの業務(A株式会社鉄道係員服務規程第一二六条、第九〇条、第九一条)に従
事していた被告人は、昭和三六年五月一一日午前零時三三分B駅に到着した四両編
成の第四、六九電車(以下、たんに本件電車という。)をB駅の車庫に入庫させる
ため駅長その他の上司のいない同駅プラットホームにおいて原判示駅務係Cと車掌
Dの三人だけで旅客の降車、整理に従事し、被告人は後部二両を担当したこと、本
件電車は客扱終了後同駅の車庫に入庫するものであり、後続の最終電車が到着する
のは同日午前零時四三分で、入庫する時間についても列車のような時間的厳格な制
限もなく、かつ深夜であつて、旅客も比較的少く(五〇名か六〇名位)、旅客のう
ちには酔つたり居眠りをしたりして車両内に居残る者もあつたが、後部二両につい
ては、三両目に二名、四両目に一名あつたのみで混雑時とは異り客扱いに十分の時
間的余裕があつたこと、被告人は先ず四両目の最後部のドアーから車内に入り、同
車両の前の方に向つて左側の中程の座席に眠つていて酒の匂いがした原判示被害者
Eの肩を三回位叩くと同人は眼をさまし、一寸ふらふらしながら右側中央のドアー
からホームに出て行つたが、被告人はこれを見送つたのみで同人が下車をしてから
単独でホームにある待合室などの安全な場所に行くことができるかどうかを確認す
ることをしないでそのまま車両の連結部から三両目の車両に赴き引き続き同車両内
に居残つた旅客の整理に当つたこと、そして前記居眠り客二名に降車を促しまたは
これを助けて車外に連れ出すなどして旅客整理を終え、中央のドアーからホームに
出るや、直ちに前記駅務掛Cを介して車掌Dに対し客扱い終了の合図をしたが、右
合図前に右三・四両目の連結部又はホームとの近接部を点検注視して線路敷に転落
した者の有無など旅客の安否を確認することが可能であつたに拘らずこれをも怠つ
た為被害者Eが三両目と四両目との連結部の間隙(その地点は、被告人が客扱い終
了の合図をするため立つていた地点から僅か一一・四メートル距つているにすぎな
い)から線路敷上に転落していたのに気付かなかつたこと、よつて、右合図により
右車掌Dをして戸閉操作をなさしめたうえ、原判示運転士Fをして本件電車を発進
させたため、原判示のごとく右被害者を四両目右側下部とホームの間で圧轢死させ
るに至つたものであることを認めることができ、これと反する被告人の原審第一回
および第六回公判調書中の各供述記載部分ならびに被告人の当審公判廷における供
述部分は、措信することができず、他にこれをくつがえすに足りる証拠資料はな
い。してみると、本件のいわゆる交通事故は、駅務手として原判示の業務に従事し
ていた被告人において、相当酩酊をしていた被害者EがB駅のホームにある待合室
などの安全な場所に行くことができるかどうかを確認しなかつたことと自己の担当
する車両とホームの近接する周辺に、旅客がいたかどうかを注視する業務上の注意
義務を怠つたために惹起されたものであるから、前記判例の趣旨に徴しても、被告
人は、本件の所為につき過失による罪責を免れることはできない。(なお、原判示
車掌Dにも、本件の交通事故につき、B駅に下車した旅客の、ホームにおける安全
を確認することについての過失があつたのではないかとうかがわれるふしもある
が、これは別の問題とする。)。されば、原判決が、被告人の本件所為につき業務
上の注意義務違反があると認定判示した一部には、やや措辞妥当を欠くきらいがあ
るけれども、被告人に対する本件所為についての過失責任を認めたことは正当に帰
するものであつて、同判決には、所論のような事実の誤認はないから、各所論は採
用できない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 小林健治 判事 遠藤吉彦 判事 吉川由己夫)

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