弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を高松高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人戸田隆俊の上告理由について
 一 本件請求は、上告人らが被上告人に対し、上告人らの所有する不動産に設定
された被上告人のDに対する求償債権等を被担保債権とする根抵当権(以下「本件
根抵当権」という。)の設定登記の抹消を求めるものである。原審の確定したとこ
ろによれば、被上告人からDに対して本件根抵当権の被担保債務の履行を求める訴
訟が提起され、昭和五七年四月一八日に被上告人勝訴の判決が確定しているところ、
被上告人は、平成四年四月三日に本件根抵当権の実行としての不動産競売を申し立
て、これに基づいて、同月七日に競売開始決定がされ、同年六月一三日に債務者で
あるDに右競売開始決定正本が送達されたものである。
  上告人らは右判決確定の時から一〇年を経過した平成四年四月一八日に本件根
抵当権の被担保債権は時効によって消滅した旨を主張し、被上告人は不動産競売の
申立てをした同月三日に右債権についての時効中断の効力が生じた旨を主張してい
る。したがって、本件においては、物上保証人に対する不動産競売の申立てによっ
て時効中断の効力が生ずる時期が、債権者が競売を申し立てた時であると解するか、
競売開始決定正本が債務者に送達された時であると解するかによって、消滅時効の
成否の判断が左右されることになる。
 二 原審は、物上保証人に対する不動産競売の申立てによる被担保債権の消滅時
効の中断の効力は、債権者が執行裁判所に競売の申立てをした時に生ずると解する
のが相当であるところ、本件においては、時効期間の満了前に本件根抵当権の実行
としての不動産競売の申立てがされているから、これにより本件根抵当権の被担保
債権の消滅時効は中断されたとして、上告人らの本件請求を棄却すべきものとした。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
  債権者から物上保証人に対する不動産競売の申立てがされ、執行裁判所のした
競売開始決定による差押えの効力が生じた後、同決定正本が債務者に送達された場
合には、民法一五五条により、債務者に対し、当該担保権の実行に係る被担保債権
についての消滅時効の中断の効力が生ずるが(最高裁昭和四七年(オ)第七二三号
同五〇年一一月二一日第二小法廷判決・民集二九巻一〇号一五三七頁、最高裁平成
七年(オ)第三七四号同年九月五日第三小法廷判決・民集四九巻八号二七八四頁参
照)、右の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる
と解するのが相当である。けだし、民法一五五条は、時効中断の効果が当該時効中
断行為の当事者及びその承継人以外で時効の利益を受ける者に及ぶべき場合に、そ
の者に対する通知を要することとし、もって債権者と債務者との間の利益の調和を
図った趣旨の規定であると解されるところ(前掲昭和五〇年一一月二一日第二小法
廷判決参照)、競売開始決定正本が時効期間満了後に債務者に送達された場合に、
債権者が競売の申立てをした時にさかのぼって時効中断の効力が生ずるとすれば、
当該競売手続の開始を了知しない債務者が不測の不利益を被るおそれがあり、民法
一五五条が時効の利益を受ける者に対する通知を要求した趣旨に反することになる
からである。
 したがって、右の場合に、債権者が競売の申立てをした時をもって消滅時効の中
断の効力が生ずるとの見解に立って、上告人らの本件請求を棄却した原審の判断に
は、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすこ
とが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件に
おいては、被上告人は、債務者であるDが昭和五七年一二月二二日に本件根抵当権
の被担保債務を承認したとの主張をしているので、更に審理を尽くさせるため、本
件を原審に差し戻すことにする。
よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決
する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    河   合   伸   一
            裁判官    福   田       博

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