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判決 平成15年1月20日 神戸地方裁判所 平成14年(レ)第48号 請負代
金請求控訴事件(原審・神戸簡易裁判所平成13年(ハ)第2254号)
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決中控訴人に関する部分を取り消す。
2 被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
本件は,被控訴人が控訴人に対し,主位的には請負代金及びこれに対する遅
延損害金の支払いを,予備的には事務管理に基づく費用及びこれに対する遅延損害
金の支払いを求める事案である。
1 争いのない事実
(1) 当事者
ア 控訴人は,一般区域貨物自動車運送事業,自動車運送取扱事業等を業と
する株式会社である。
イ 被控訴人は,自動車の鈑金塗装修理及び販売,自動車,建築用機械のリ
ース業,事故・故障車輛の牽引移動等を業とする株式会社である。
(2) 本件事故の発生
A株式会社従業員は,平成12年11月28日,同社の所有するトレーラ
ーヘッド(以下「本件トレーラーヘッド」という。)を運転して,控訴人所有のト
レーラーシャーシを牽引走行中,神戸市兵庫区a町路上において横転事故を発生さ
せた(以下「本件事故」という。)。
本件事故により,本件トレーラーヘッド,本件トレーラーシャーシ,及び
それに積載したコンテナが横倒しになり,コンテナ内のタイヤ約80本が路上に散
乱した。
2 争点及び当事者の主張
(1) 主位的請求(請負契約の成否)
(被控訴人の主張)
本件事故現場において,被控訴人は一刻も早くレッカー作業に取りかかる
べく,控訴人従業員であるBに作業の確認を申し出,Bもこれに同意したため,レ
ッカー作業に取りかかった。その後,被控訴人は横倒しになった本件トレーラーシ
ャーシ等を引き上げて摩耶埠頭まで牽引し,また,散乱したタイヤを回収した。以
上により,本件事故現場において,被控訴人と控訴人との間に,本件事故復旧を目
的とする請負契約が成立し,これに従って被控訴人は復旧作業を完了した。以上の
作業代金は32万3400円であった。
被控訴人は控訴人に対し,平成13年1月12日到達の書面において,同
書面到達の3日後までに上記請負代金を支払うよう催告した。
よって,被控訴人は控訴人に対し,請負代金32万3400円及びこれに
対する弁済期の翌日である平成13年1月16日から完済まで商事法定利率年6パ
ーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。
(控訴人の認否)
被控訴人主張の催告を受けたことは認めるが,被控訴人の請求は理由がな
い。
上記Bが被控訴人から同意を求められたという事実はない。
そもそも本件事故によって第一次的に責任を負うのはA株式会社であるか
ら,請負契約が成立しているのも,A株式会社と被控訴人との間である。
(2) 予備的請求(事務管理の成否及び事務管理費用の額)
(被控訴人の主張)
仮に,控訴人と被控訴人との間で請負契約が成立していないとしても,被
控訴人は横倒しになった控訴人所有の本件トレーラーシャーシを撤去するなどの復
旧作業をしたのであるから,少なくとも控訴人所有の本件トレーラーシャーシの撤
去費用について事務管理が成立する。
被控訴人は控訴人に対し,平成13年1月12日到達の書面において,同
書面到達の3日後までに上記事務管理費用を支払うよう催告した。
よって,被控訴人は控訴人に対し,事務管理費用25万2000円及びこ
れに対する弁済期の翌日である平成13年1月16日から完済まで民法所定の年5
パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。
(控訴人の認否)
事務管理が成立するとしても,控訴人の所有する本件トレーラーシャーシ
についてのみである。被控訴人請求の事務管理費用の金額は,控訴人の所有でない
コンテナ(在中のタイヤを含む)の撤去費用等も含まれており妥当性を欠く。
第3 当裁判所の判断
1 主位的請求(請負契約の成否)について
(1) 証拠(甲3,5の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認め
られる。
本件事故発生後,被控訴人は警察からの出動要請を受けて現場に急行し,
復旧作業にあたっていたところ,本件事故現場に控訴人専務取締役,控訴人従業員
B外1名(以下「控訴人側3名」という)が駆けつけた。被控訴人代表者は,その
場において,控訴人側3名の内の誰かから「ごくろうさん。」と声を掛けられ,
「ああ,やっときます。」と応答した。そこで,被控訴人は横倒しになった本件ト
レーラーシャーシ等を引き上げて摩耶埠頭まで牽引し,また,散乱したタイヤを回
収した。控訴人側3名は被控訴人の行うレッカー作業を認識しつつも,被控訴人に
対してこれを中止するよう要請はしなかった。
(2) 以上の事実経過に基づき,本件において控訴人と被控訴人との間に,請負
契約が成立しているか否かについて検討する。
ア まず,控訴人は,本件事故は,A株式会社がトレーラーを運行中に起こ
した事故であるから,被控訴人との間に請負契約が成立するとしても,その当事者
はA株式会社であると主張する。
確かに,前記争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば,本件事故当
日,トレーラーを運行していたのはA株式会社であること,本件トレーラーヘッド
と本件トレーラーシャーシは取り外しが可能であり,控訴人が所有していたのは本
件トレーラーシャーシのみであり,本件トレーラーヘッドはA株式会社の所有に属
すること,本件コンテナ及びその積荷(タイヤ)も控訴人の所有には属さないこと
が認められる。
しかしながら,本件トレーラーヘッドと本件トレーラーシャーシは一体
となって初めて貨物運輸の用に供することができる性質のものであること,控訴人
は,A株式会社とのトレーラ相互使用契約(乙11)に基づいて,各々が所有する
トレーラーを相互に利用し合うことにより,互いに活動範囲を拡大し,利益を上げ
ていたと認められることに鑑みると,たとえA株式会社が運行していた場合におけ
る事故であっても,控訴人は共同運行供用者として,これによる危険や損害の発生
を防止すべき責任を負うものというべきである。そして,本件事故は交通量の多い
国道上で発生したもので,トレーラーが国道を塞ぐ形で横転し,積荷のタイヤ約8
0本が道路上に散乱して,約4キロメートルにわたって通行止めとなった大事故で
あったこと(甲2)に照らすと,控訴人としては,かかる状態を放置することなく
現状に復すべき責任があったと認められる。
従って,被控訴人の行った本件事故の復旧作業については,控訴人も請
負契約の当事者となり得る地位にあったと認められる。
イ また,控訴人は,本件事故現場に赴いた控訴人側3名には請負契約を締
結する権限がないと主張する。
しかしながら,前記のとおり,控訴人には,本件現場を原状回復すべき
責任があることに照らすと,控訴人から派遣された者には,本件事故現場の処理に
関する権限が付与されているとみるのが自然であるから,本件事故現場に赴いた控
訴人側3名には,復旧作業のための請負契約を締結する権限があったと認められ
る。
ウ もっとも,控訴人と被控訴人は,上記のとおり,「ごくろうさん。」
「ああ,やっときます。」という程度のやりとりをしたに過ぎず,これをもって,
請負契約の申込と応諾といえるかが問題になる。
しかしながら,上記認定のとおり,本件事故現場は緊急状態にあったこ
と,控訴人は本件事故の復旧について責任を負う立場にあることに鑑みると,控訴
人が現に復旧作業を行うために赴いた被控訴人に対してこれを依頼しないことは通
常考えられないことである。このことに,上記認定のとおり,控訴人が被控訴人に
対して特に中止要請をしなかったことを併せ考えると,上記認定のやり取りをもっ
て請負契約の申込と応諾と認めることができるから,控訴人と被控訴人との間には
請負契約の成立を認めることができる。
(3) そして,証拠(甲1,5の1・2)によれば,控訴人の行った作業代金
は,32万3400円であったと認められる。
(4) 被控訴人が控訴人に対し,平成13年1月12日到達の書面において,同
書面到達の3日後までに上記代金を支払うよう催告したことは,当事者間に争いが
ない。
(5) 以上の事実によれば,請負代金32万3400円及びこれに対する弁済期
の翌日である平成13年1月16日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合に
よる遅延損害金の支払いを求める被控訴人の主位的請求は理由がある。
2 よって,被控訴人の主位的請求を認容した原判決は相当であって,本件控訴
は理由がないから,これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法6
7条,61条を適用して,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第4民事部
裁 判 長 裁 判 官    上   田   昭   典
裁 判 官    太   田   敬   司
裁 判 官    北   岡   裕   章

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